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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
351/458

第三百五十幕 ハーフ&ハーフ

《試合終了ォォォ━━ッ!! 勝者は“英傑セイブルス学院”!! ラトマ選手ゥゥゥ━━━━ッ!!!》


「「「どわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」

「「「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」」」

『『『グギャアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!』』』

『『『キュオオオオオオオォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』


 試合が終わり、会場は更なる盛り上がりを見せていた。

 まさかこんな結果になるなんて。ユピテルさんの攻撃を無効化して倒しちゃった……。

 途中までは彼女が優位に立っていたんだけど、ここまでの強さなんて。分かっていた事だとしても目の当たりにするととんでもないね。


「強いな。ラトマ。能力の無効化……こりゃ当たる事があったら体術メインになりそうだ」

「その体術が一挙一動で山河……ううん。それ以上の島を破壊するレベルなんて……」

「魔導が無効化されるのに素であのレベルなんだろ? ほとんど生身であれとり合うとか勝ち目かなり薄くなんな~」

「うん……。他のみんなは体術とか武術も鍛えてあるけど、私に至っては基本的にマ……植物魔法に頼りっぱなし。ちょっと厳しいかも」

「ま、それは当たったらの話だ。先に当たるのがアタシやレモンなら戦えるし、負けるつもりは毛頭無い。勝ち目が薄くなっても無くなる事はないからな」

「……そうだね」


 ラトマさんの実力に私は気圧けおされるけど、ボルカちゃんは勝つ気満々だった。

 体力は多少付いたけど、やっぱり戦い方にも変化は必要なのかな。でも今からスタイルを変えたら逆に本調子を出せなくなりそうだし……うーん。

 今は置いておいてラトマさんと当たる事があったら考えよっか。現状じゃ対策は思い付かないし、考え過ぎて次の試合がおろそかになったら元も子も無いもんね。

 何度も言うようにラトマさんのみならず、全員が優勝候補。一試合足りとも気は抜けない。


「まだまだ強敵揃いだね」

「ああ、そうだな」


 次の試合に集中。初日と二日目は特に試合数が多いからね。その全てに気を抜けないんだからある程度は割り切らなきゃ。

 そして次の試合も無事に突破した私とボルカちゃんにレモンさん。そしてラトマさん。私は選手用の観戦席に戻る。するとバッタリその人達と出会った。


「丁度良いタイミングで終わったみたいだね」

「ああ、此処まで来るとブロック数も収束し、試合が始まる時刻も終わる時刻も同じくらいになるな」

「あ、おーい! ラトマ。アンタも来たらどうだ? “ニューイヤーフェスティバル”で知り合った仲だろ? 来いよー!」

「たった一回会っただけでそこまで親しくならないと思うんだけどな……。それに、集まってる面子で俺以外全員種族も性別も違うのは気が引ける」

「案外小心者なんだな~」

「そう言われると少しピリッと来るな……はぁ……分かったよ」


 ボルカちゃんは半ば無理矢理ラトマさんを呼び込んだ。

 彼は少し距離を置きつつ座り、周りからは色々と視線を感じた。


「なんだ彼処のメンバーは……」

「ティーナ・ロスト・ルミナス。ボルカ・フレム。ルーナ=アマラール・麗衛門レモン。そして今回注目のダークホース、ラトマ・───」

「優勝候補達が勢揃い……」

「やはり強者同士には特有のコミュニティが築かれているのか」

「まさか、互いに協定を結んで自分達が勝ち上がる為の工作を……」

「「「いや、それはないな」」」


 なんか目立っちゃってる……。でも確かに私達は有名になったし、無名だったラトマさんも今大会で爪跡を残しているからこれも納得。

 そこへもう一人合流する。


「いやはや、やられてしまったよ。まさか優勝候補の一角が無名の選手にやられてしまうとはな」

「ユピテルさん」

「その節はどうも。正直、俺があんなに何も出来なかったのは初めての経験だった。ダイバース自体始めて間もないけど、間違いなくダイバース内の相手では最上位だよ」


 治療を終えたユピテルさん。

 対戦を終えた二人で話、ラトマさんが空けていた隙間の所に彼女が座る。そしてラトマさんはまた一つ横に逸れる。本当に恥ずかしがり屋さんみたいだね。

 そんな感じでまた観戦に集中。これが二日目の最後となるブロック。私達の試合は終わっているので今、残るはここに居ない友達の戦い。


《──シュティル選手vsエメ選手ゥゥゥ!! この二方、片やヴァンパイアと魔族のハーフ! 片やエルフと人間のハーフ!! 人間・魔族・幻獣・魔物!! 世界に連なる四種族のハーフであるこの二人が織り成す種族の垣根を越えた戦いが今──》


 シュティルさんとエメちゃん。彼女達は二日目の最終試合を飾る事になる。私達からすれば代表新人戦、個人の部に置ける初の友達同士の対決。ラトマさんは私とボルカちゃん以外知らなかったから“友達同士の対決”からは除外しておく。もうユピテルさんと仲良くなりつつある……と思うけどね~。

 何はともあれ、司会者さんの言うように二人は他種族のハーフ。出身国は魔物の国と人間の国だけど、その種族の組み合わせから世界各国が注目している試合。

 この二人の戦いは二日目の目玉と言っても過言じゃない気概があった。


「私達の登場で会場も大盛り上がりだな」

「そ、そうですね……」

「何を緊張している。友の友なれば赤の他人よりかは親しき仲。気楽に行こうではないか」

「そうですね……」

「うーむ、イマイチ噛み合っていないような。まあいい。共に高め合おう」

「はい……」


 シュティルさんを前に……と言うよりは会場の注目を前に気が引けている様子のエメちゃん。

 何だかんだで二日目まで勝ち残った彼女だけど、場馴れしているシュティルさんに比べるとちょっと落ち着かないみたい。

 それを理解したのか気遣っているけど、観客席から見ても分かるように固まっちゃっているね。


《無論! そのお二方だけではありません! この試合! 全ての対決が──》


 そして司会者さん側も話を纏めに入り、選手達は移動。二日目の最終試合が始まった。



*****



 ──“闇の森ステージ”。


「さて、開始されたか」


 今回の舞台となるステージに転移した。

 此処は“闇の森”。大層な名だが、単純に夜の森ステージと言うだけ。夜目の利く私には好都合な場所だな。

 ティーナの友人であるエメ・フェアリ。人間とエルフのハーフ。私としても、種族的には真逆に位置するのだが妙な親近感が湧く。人間と幻獣。魔物と魔族のハーフ同士。平常時は仲良くしたいものだが、今は戦いに集中するとしよう。

 実力の程はしかと理解している。代表決定戦の映像や此処までの試合も目を通しておいたからな。魔法にもけているが、基本的には近接戦主体。私の得意分野だ。


「……向こうか」


 その気配を読み解き、夜の森へと入っていく。

 暗くて足元は悪いが、人間で言うところの昼間のようにこの森の全容は把握している。早めに決めに掛かるか。

 そう考え、暗がりの森を駆け抜け闇夜の急襲をけしかける。音は無く、迅速に。


「……!? いつの間に……!?」

「……ほう……?」


 エメを見つけ、急襲と同時に爪にて切り掛かる。……が、そうか。音を出さずに仕掛けたのだが、鋭い勘で避けたか。

 直前まで気付かなかった様子ではある。まあ、気配も完全に消し去って仕掛けていたからな。元より気配を読まれても無意味ではある。その上でギリギリをかわすとなると、この者の有する高い実力が見受けられる。


「初撃は避けたが、次はどうだ?」

「……!」


 周りに溶け込み、この世から気配を絶つ。

 古来よりヴァンパイアは気配を消すのが上手いからな。音も気配も漏らさず、完全なる死角からけしかける。


「そこです……!」

「……! ほう?」


 死角の方を振り向き、魔力からなる弓矢が射られた。その矢は紙一重でかわしておく。

 しかし驚いたな。今回も完全に気配は消していたが、先程のようにまた直前に……いや、今度はもっと早くに気付いた。

 となると話は別。また変わってくる。エメ・フェアリが如何様な方法をもちいて私の気配を読んでいるのか。それが分からねば不利になろう。

 私としても全く手札は切っていないが、相手のギミックが分からなければ仕掛けようとするたびに無駄足を踏むだけ。永遠に避けられ続けたらキリが無いからな。

 ともすればやる事は一つ。気配の読み方を明かすのみ。


「吹き飛べ」

「……!」


 念力にて大気を集め、それを爆発させて前方を衝撃波で吹き飛ばす。

 これは防がなかった。すなわちエメのやれる範疇にこの技の防御は入っていなかったという事。だとしたらこの技だけを使えば良いか。答えはNOだ。


「はっ!」


 得意の雷纏で距離を置きつつ、射程外から魔力の矢を放ち続ける。

 つまりこう言う事。態々(わざわざ)危険地帯に足を踏み入れるバカは居なかろう。安全圏から仕掛け続ける事が出来ればそれで良いのだからな。

 流石にまだ雷速を捉えるレベルには達していない。それが可能なのは雷を切る事の出来るレモンくらいだ。

 だから永遠に距離が離れ続け、いずれは連続攻撃で一時的に意識が飛んでしまう可能性がある。レモンやティーナに負けた時の在り方だな。再生出来ても脳を一定時間破壊され続ければ一瞬だけ機能が停止する。その一瞬がダイバースのルールでは敗北に繋がる。

 故に私のやれる事は、一先ず相手の逃げ場を塞ぎ続ける事。離れる位置は、エメの動きが上手く正確だからこそ読みやすい。


「……!」

「さて、今から登山をするのも大変だろう」

「流石ですね……」


 念力にて大気や天候ではなく、土塊や木々を持ち上げて操り逃げ道を閉鎖した。

 生憎あいにくの通行止めからなる数百メートル程度の小ステージ。この中でも逃げ回り続けるのだろうが、動きはかなり制限される。

 後は此処から対策を組み立て、勝利をもぎ取るのみ。


「さて、追い駆けっこの始まりだ。鬼役は吸血鬼ヴァンパイアに相応しいだろう?」

「……はい。とっても……!」


 動きの制限は完了。相手は雷を身に纏いつつ弓矢を構える。

 さて、此処からが個人戦の本格スタートだ。


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