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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第三百三十九幕 友達のママ

 ──“年末・シルヴィア家”。


「オーッス。もう全員来てるな」

「と言うか貴女が一番最後よ?」

「ボルカちゃんの家が遠いから仕方無いよ~」

「私のお屋敷とはかなり離れておりますものね」


 話し合いの結果、私のお家には去年、女神様の日にみんなで集まったので今年はルーチェちゃんのお家で過ごす事になった。

 改めて考えてみたら別荘には何度か行ったけど、ルーチェちゃんのお家その物には来てなかったよね。

 だから今日はスゴく楽しみ!


「コホン。では改めて、此処がわたくしの住み処、シルヴィア家ですわ!」

「「「お帰りなさいませ。お嬢様方」」」


 門の前に来るや否や、使用人さん達が一糸乱れぬ動きで出迎えてくれた。

 門前でこれ。私のお家よりも使用人さんの数が多いね。これで全員じゃないだろうし、私達の中では一番大きなお家に住んでいるみたい。


「ここがルーチェ先輩の……」

「来て正解! ホントは女神様の日も一緒に過ごしたかったから、叶って良かった~!」

「私のお屋敷と比べると……フム、僅差で……ですわ」

「やれやれ。ご令嬢のプライド的な物か? そんな風に比べたがるのは……」


「大きな家だねぇ。ルーチェちゃん!」

「私のお屋敷より大きいですわぁ~」

「流石はシルヴィア家と言ったところだね」


 今回は後輩達や先輩達も一緒なんだ~。

 みんなでお着替えなどの荷物は持ち込み、今日から少しだけお泊まり。私達のお家の事もあるから二日くらいだけどねぇ~。

 流石に学校中のみんなとまではいかない。この広さなら入れると思うけど、他のみんなにも都合があるからね。

 そんな感じで来たのはダイバース部のメンバーだけとなっている。


「それではご案内しますわ!」

「ふふ、楽しそうだね。ルーチェちゃん」

「みんなで来たからな~」

「そうね」


 浮き足立っている様子のルーチェちゃん案内の元、門から中庭へと入る。

 外門からの距離もそれなりだけど、馬車や絨毯があるので移動は楽。遠目からでも分かる程にお屋敷は大きく、広い敷地なんだなという事が分かった。

 整った道を行き、ガーデニングされた場所を通り、様々なオブジェや石像なども目に入る。色々な動物さん達がモチーフみたいだねぇ。

 お花のトンネルを抜け、噴水広場も進む。お庭の一角を見ているだけでテーマパークに来たみたい。テンションのボルテージが上がっていくのを感じた。

 そんな景色を楽しみつつ、ルーチェちゃんのお屋敷の中へと入っていく。


「「「ようこそお越し下さいました。“魔専アステリア女学院”一同様。シルヴィア家へようこそ」」」


「ここも沢山のお出迎えだねぇ~」

「私のお友達が来ると聞いてお父様が張り切っておりますの」

「へえ。将来の事とか厳しい家柄だと思っていたけど結構可愛がってるんだな~」

「うーん、だからこそ過保護になってしまっていると言ったところでしょうか。故に家柄や将来に確実な安寧を約束出来るような環境作りと言うか……」

「成る程な~。幸せを願っているからこその厳格さか。まあ今のままでも本当にガチガチの家に比べたら自由は多い方か」

「ですわね。部活動で私が怪我する事も渋々ながら受け入れておりますし、比較的マシな方ですわ」


 ルーチェちゃんの家は、厳しいは厳しいんだけど一部に比べたら優しい方みたい。

 思えば自分の子供が部活動で大怪我とかを負う事を黙認してくれるなんて本当に過保護な所に比べたらかなり甘いもんねぇ。傷自体は余程じゃなきゃ数分で完治するんだけどさ。

 そんな感じで大歓迎を受けた私達はお屋敷へと足を踏み入れる。景観は割とよく見る装い。宝石類の装飾とかシャンデリアとか絵画とか、ステータスになるような代物はほとんど同じだもんね。

 後はソファーや奇抜なデザインのテーブル等も置いてあるね。広いお屋敷だから休憩するのに良いかも。


「お部屋はそれぞれに割り当ててありますわ。後は基本的な水場とか暇を潰す為のお部屋とか色々紹介しておきますわ」

「ありがとー!」


 次はお家の案内。割り当てられたお部屋に荷物を置き、と言うよりメイドさん達が運んでくれてルーチェちゃん家を見て回る事になった。

 お泊まりだもんね。浴場とかおトイレとか必要な場所は知っておかなくちゃ。


「此処が──」


 食堂、大浴場、水洗場、図書室、運動ルームetc.

 色々なお部屋があって本当にテーマパークみたいなお家。みんなと居るから暇になる事なんて無いけど、ここに住んでいるなら退屈しなさそうだね。

 私のお屋敷も似たような場所はあるけど、やっぱりルーチェちゃんの方が広いや。


「これくらいですわね。他にも気になる物や欲しい物があったら私や使用人の皆様にお聞きくださいませ! 後一応、お父様の仕事場等は立ち入り禁止ですわ」


「オッケー!」


 案内が終わり、ルーチェちゃんのお家で改めて過ごす。

 特にやる事も無いからお話したりして夜まで時間を潰す。お庭の方も見てみたりした。ここはお花畑や様々な植物があるガーデン。これまた私のお家にも似たような場所はあるけど、やっぱり植物類って癒されるねぇ。

 ルーチェちゃんはその先へ指差した。


「この先には別館があり、使用人の皆様が寝泊まりしておりますわ。それとは別に、敷地内ではありませんが少し離れた場所には水族館や遊園地も完備しており、一般の方も利用しておりますの」

「そうなんだ~。もしかしてそれらの経営もシルヴィア家の生業なりわいなの?」

「そうですわね。詳しいお仕事内容は一応部外者なので皆様にも教えられませんけど、色々と手掛けているのですわ。なのでこの時期でもお父様は休み無し。忙しそうにしておりますわ」

「あ、私の所も同じ~。常に何かしらの仕事が入ってくるからお休みの日が滅多に無くてねぇ~」

「お互い苦労しておりますわね」


 お互いに親は忙しく、私達に構う時間は無い様子。大きな家に住んでいても中々帰れないのが現状なんだよねぇ。

 そんな感じでルーチェちゃんと話していると、ガーデンにある椅子に誰かが座っていた。

 ルーチェちゃんと同じように柔らかそうな金髪。肩に掛かるくらいの長さで艶があり、とても綺麗に丁寧にお手入れされているのが遠目からでも窺えられた。

 私達が近付くと微笑み掛ける。


「あら、ルーチェ。その方達が大切なお友達?」

「ええ、お母様」

「え!? お母様!?」


 その人はルーチェちゃんのママだった。

 確かに顔立ちが似ている気がする。縦ロールじゃないけど金の長髪という点も共通。穏やかそうな人であり、優しそうな雰囲気を醸し出していた。

 ルーチェちゃんは言葉を続ける。


「右からティーナ・ロスト・ルミナスさん。ボルカ・フレムさん。ウラノ・ビブロスさんに──」


 私達の紹介をし、軽く会釈する。

 一通り終わるとルーチェちゃんのママは立ち上がった。


「あらあらまあまあ、こんなに沢山のお友達が出来ちゃって。ルーチェが怪我をしそうなダイバース部に入って不安だったけど、楽しくしているようで何よりだわ!」


「急に雰囲気が……」

「これがお母様ですの。一見すれば穏やかそうですけれど、素の性格はこれですわ」

「ハハ、ルーチェの母親らしいや」

「どういう意味ですの?」


 紹介が終わるや否や、さっきまでとは一変。とてもハツラツとした雰囲気になった。

 確かにルーチェちゃんも傍から見たらザ・ご令嬢って感じだけど、仲良くなったらよく一緒にはしゃいでるもんね。

 その辺は親子で似ている。話し方は違うけど、多分それは教育の賜物かな。なるべく丁寧な言葉で話すように言われてるんだと思う。

 ルーチェちゃんのママは金髪を揺らしながら更に続けた。


「これからも末永くルーチェをよろしくね。お友達の皆様」

「はい! 勿論です!」

「良い子! 本当に恵まれたわねぇ。この子ったら実は──」

「ちょっとお母様!」


 ルーチェちゃんのママの背を押し、私達から少し遠ざける。

 アハハ……お友達を見たママの反応ってあんな感じになるんだ。私のママは──


「……?」


 あれ? 何を思ったんだろう。私……そうそう、ママがお人形さんになったままだからリアクションが見れないってだけだよね。ただそれだけ。本当にそれだけ。それ以上でも以下でもない。何もない。


「み、皆様! そろそろ別の場所に移動しましょう! これ以上はお母様によって色々と掘り返されたくない事が明かされてしまいますわ!」

「アタシは気になるけどな~」

「だから嫌ですの!」


 全く必要無い、この世に要らない事を考えていたら現実に引き戻された。

 そうだよね。何も関係無い。私もルーチェちゃんの秘密とか色々みんなで騒げば良いだけ。それが一番の幸せ。


「気になるなぁ。ルーチェちゃんの秘密!」

「ティーナさんまで!?」

「ふふ、あらあら。本当に仲が良さそうね♪」


 ──ルーチェちゃんの事、色々知ってる筈だもんねぇ。これは聞いてみなくちゃ! ふふ、楽しい~♪

 ━━そう、今はこのまま、いつも通りみんなと過ごせば良いだけ。折角のこの集まり。要らない事は考えない。必要無い。

 ──みんなで集まった年越しの日、ルーチェちゃんのお家を見て回る楽しい時間! 今から夜が楽しみだよ~!

 ━━私のママはお人形。

 ──まだまだ昼間だし、家を案内されるだけでも楽しいね! これからも、ずっとずっと楽しい時間が続くんだよ!


 ━━(──)私は(今日は)記憶の底に(とても楽しい時間が)蓋をした(続いていくのだった)


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