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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
339/458

第三百三十八幕 年の瀬

 ──“後日”。


「──て事があったけど、楽しい一日を過ごせたよ」

「へえ。ティーナは相変わらず巻き込まれ体質だなぁ」

「行くたびに魔物の国の騒動に巻き込まれておりますわね」

「貴女と一緒に居ると退屈しなさそうね」


 女神様の日のパーティーから少し経ち、そろそろ新しい年となる頃合い。いつも通りの部活動で私達は期間中にあった出来事について雑談していた。

 話している途中でもちゃんと練習はしているから大丈夫。無意識下での魔力操作の練習みたいなものだね。

 一番手は私からであり、ドランさん達との出来事を話した。

 やっぱり傍から見たらよく巻き込まれてるなぁって感じなんだね。


「ボルカちゃんやみんなは?」

「んじゃ、左から順に行くか。次はアタシだな。魔族の国の女神の日もまあまあ騒ぎにはなったな。パーティー中に闇討ちしてきた抗争相手のチームが居てな。撃退したんだ」

「ボルカちゃん達も争いに巻き込まれたんだ……」

「だなぁ。そう言や、アタシもティーナに巻き込まれ体質って言えないぜ」


「魔物の国も魔族の国も治安があまりよろしくないですものね」

「退屈していて刺激を求める人が居たらそれらの国に旅行するのが良いかもしれないわね」


 ボルカちゃんも争い事に巻き込まれたとの事。

 魔族の国も魔物の国程じゃないけど治安があんまり良くない。そう言う出来事は日常茶飯事なんだね。

 常日頃から争いが行われているこれらの国が戦闘で強いのは当然なんだなぁと改めて理解した。

 そして次はルーチェちゃん達の番。


「私ですわね。私の方は二人に比べるといささか物足りないかと存じ上げますわ」


「それで良いのよ。いくら治安が悪いとしても、観光地として成立している場所がほとんどで、本来はそう言う場所にみずから進んで入らなければ巻き込まれる事なんてないんだもの。ティーナさんとボルカさんが特殊なのよ」


「アハハ……それは否定出来ないかも」

「確かにな~。“暗黒学園”って名前はあれだけど一応普通の学校なんだけどな」


 無法地帯に入った私と普通の学園に集まって巻き込まれたボルカちゃん。そう考えると私達が巻き込まれたのは必然的な気がする。

 でもまあ、楽しかったから良いよね。交友関係も増えたし、魔物さんの知り合いが多くなったよ!

 取り敢えず私とボルカちゃんの話は終わっているので、ルーチェちゃん達の思い出に耳を傾ける。


「私の方は特に問題なども無くエルフ族や幻獣達の皆様と過ごしましたわ! 貧しかったり幼い子達の為にプレゼントなどを配りましたの! 途中で別グループのウラノさん達とも合流し、最終的には皆様と過ごしましたわ!」


「そうね。一人一人、一匹一匹の元にプレゼントを配るのは面倒とも思ったけど、子供達の笑顔が見れたのは悪くなかったわ」


「そうなんだぁ~。ハートフルエピソードだね!」


 同じ国だったのもあり、ルーチェちゃんとウラノちゃんは途中から一緒に過ごしたんだって~。子供達にプレゼントを配っていくなんて優しいね。今度は私もそうしようかな?

 そこでボルカちゃんが話す。


「そう言や、アタシ達はティーナやビブリー達みたいに治療したりプレゼントを配ったりは無かったなぁ。プレゼント交換とかはしたけど、子供達に何かしてやるのも良かったかもしれないぜ」

「ふふ、それもそれで良かったんじゃないかな? 私達も敵襲が無かったら身内だけで済ませちゃってた訳だし」

「そうか……いいや、来年はそう言うほのぼのエピソードを作ってやるぜ! ティーナ達と用事がブッキングしたらなんとか合間を見つけてな!」

「早くも来年の目標を見つけたね! 私もそんな感じの事しよっかな~って思ってたんだ!」

「ハハ、同じタイミングで似たような事を考えたんだな。アタシ達」

「そうだねぇ~」


 そんな感じで幻獣の国でのやり取りも終え、ウォーミングアップも丁度良く終了した。

 今日も部活動。春の代表戦に向けて頑張らなきゃね!

 平穏ないつもの一日が過ぎていくのだった。



*****



 ──“更に数日後”。


「今年はどうする? 年越し」

「去年は日の下(ヒノモト)でレモンさんと過ごしたんだよね~。今年はどうしよっか」


 残っていた女神様の日気分も抜け出た頃合い、数日間は部活動がお休みの私とボルカちゃんは街に繰り出しつつ、今年の年末について話していた。

 街の雰囲気もすっかり年越しムードとなっており、ようこそ新しい一年の文字が大通りに飾られている。

 切り替えが早いね~。と、そんな風に思っている私だけど、私としても感覚を切り替えているんだよねぇ。みんな適応力が高いや。

 私達は話を続ける。


「やっぱりみんなで集まって祝うのが無難かなぁ」

「ま、そうなるな。場所はどうする? アタシの家はティーナ達に比べたら広くないし、ビブリーの家はそもそもの所在が不明。ティーナかルーチェの所になりそうだけど」

「ルーチェちゃんと相談してみないとかなぁ。何かと私のお家に集まってくれて、それはとても嬉しいんだけど、ルーチェちゃんからもみんなを招待したいって気持ちが見え隠れしてるもん」

「ハハ、確かにな。そんじゃ、それについては……いっその事今相談するか? しばらくは部活動も休みだし、実家に帰省中のアタシ達は学校に行く機会も無いからな」

「いいかもしれないけど、ルーチェちゃんは忙しいんじゃないかな?」

「そん時はそん時だ。シルヴィア家の忙しさなら連絡を取る事も出来ないだろうし、ルーチェ個人の用事なら断りを入れる筈。連絡してみてその後の対応で確めるだけだから掛け得だ」


 そう言い、ボルカちゃんは通信の携帯魔道具でルーチェちゃんへ連絡してみる。

 言われてみればそうだね。流石に一分一秒を争うレベルで多忙って事は、まだ学生の私達には無いだろうし、出られないくらい忙しいなら出ない。出たとしても用事があるなら切る。その二択になるもんね。

 そんな感じで、歩きながら連絡するのは危ないので近くのカフェに寄り、軽く摘まめるお菓子と紅茶などの飲み物を頼んで実行してみる事にした。


「あ、もしもーし。今話せるかルーチェ?」


 どうやら出たみたいだね。

 後は話し合いが出来るかどうかの確認。流石に人の多いここで広域モードには出来ないから話が出来るのはボルカちゃんだけ。

 私はその様子を横目に運ばれてきた紅茶などを嗜む。


「うん。そうそう。でさぁ、年の瀬の集まりなんだけど……」


 前に座る私には聞こえる程度の声で予定について言い、そこから話が展開していく。

 どうだろうねぇ。私のお家でも、都合が合えばルーチェちゃんのお家でも。どちらのお家でも楽しく過ごせそうだけど。


「ああ~。うん、確かにな~。ビブリーの都合を考えると……」


 ウラノちゃんの話へ方向転換。もちろん彼女も誘うつもりだから話に出てくるのはおかしな事ではない。

 私が紅茶を一杯飲み終わる頃、ボルカちゃんの話も終了した。結構早かったね。

 魔道具を仕舞いながらボルカちゃんは返答を話す。


「その日はルーチェも空いてるし家に来ても自分が出掛けても問題無いみたいだけど、ビブリーは多分寮に居るだろ? もしくは街の図書館。だからビブリーに判断を委ねるってさ」


「ああ~、それでウラノちゃんの話が出てきてたんだ。確かにウラノちゃんは寮から動かないかもねぇ……単純にその方が効率的だから」


 他意は無く、言ったまんまの意味。

 去年はウラノちゃんの好きな“日の下(ヒノモト)”。そこの“神社”と呼ばれる場所を訪れたから来てくれたけど、私達のお家だと「それって寮で良くない?」……と難色を示すかも。

 実際問題、距離は近いし暖房設備も完備してあるし、“魔専アステリア女学院”の寮部屋はちょっとしたお家並み。一切の反論が出来ないのが困り処。

 だけどやっぱり、折角の機会なんだからいつも集まっている寮じゃなくてみんなの家とかで過ごしたい気持ち。完全に感情論だね。むしろそれが一番。


「ビブリーを攻略するのが一番の難関だな。何か方法は無いか」

「うーん、好きそうな本とかを用意してみるとか」

「……っし、じゃあこうしよう。ビブリーの寮部屋前に本を並べ、ビブリーはその本に釣られて進んでいく。本を拾って読み進めていくうちに、気付いた時にはティーナかルーチェの家の前って訳だ」

「成る程!」

「──そんなのに釣られる訳無いでしょう……」

「アハハ……そりゃそうだよねぇ」

「だなぁ。でもビブリーって意外と……ビブリー!?」

「ウラノちゃん!?」


 あり得ない仮定の話をしていた時、私達の近くにはウラノちゃんがやって来ていた。

 思わず大声を出してしまい、お客さん達の視線が一瞬集まる。

 だけどこの時間帯なので人は少なく、今居るのは私達を含めて常連さんばかりなので特に注意なども無かった。……けど、ちゃんと気を付けよっか。迷惑だもんね。


「なんでこのカフェに……!?」

「此処は静かでお茶もコーヒーも美味しいからね。私の行き付けのお店でもあるんだけど、ボルカさん。私が意外となんですって?」

「いやぁ、そのぉ……ハハハ……」

「誤魔化さないで頂戴」


 どうやらここはウラノちゃんもよく通っている場所との事。確かに学院からも近いけど、今まで会う事なんて無かったのに。

 でもここにウラノちゃんが来てくれたのは好都合かもね。


「実はかくかくしかじかで、年越しの日にウラノちゃんも誘って誰かのお家で過ごそうかなって話になって……」

「ほら、ビブリーって面倒臭そうにはするけど何だかんだ付き合ってくれるだろ? だから意外と優しいし了承してくれるんじゃないかなって思ったんだ」

「……嘘ではないみたいね。チョロいと思われていたのかしら?」

「それとは同義語に近いけど、ちょっと、いや大分違うぞ? ……てか、なんで嘘発見の魔道具持ってるんだよ!?」

「私の本魔法は色々と取り出せるのよ」

「そうじゃなくて……まあいっか。嘘を言うつもりは無いしな」


 ウラノちゃんに事情を説明。彼女はあまり断ったりはしないタイプ。嫌々ながらも付き合ってくれるんだよね。

 それを踏まえて改めて誘ってみた。


「それで、どうだ? ビブリー。生憎あいにく新しい本とかはないけど、一緒に過ごすのは」

「お願い!」

「……」


 腕を組み、ジト目で見つめるウラノちゃん。さっきあんな風に話しちゃっていたし、流石に今回は厳しいかも……。

 数十秒黙り込み、彼女は口を開いた。


「……はあ。仕方無いわね。この時期は新刊もしばらく出なくて暇だから付き合って上げるわ」

「ホント!?」

「流っ石ビブリー! 付き合い良い!」

「取り敢えず静かにしなさい。これでも声量は抑えている方でしょうけど、静かで良い雰囲気の場所なんだから邪魔しちゃダメよ」

「「ラジャー……」」


 これでウラノちゃんを誘う事に成功した。

 後は私のお家かルーチェちゃんのお家かを決めるのと、一応ディーネちゃん達後輩や先輩達を誘ってみる。

 女神様の日は無理だったけど、今回はどうだろうね。出来ればみんなで過ごしたいよねぇ。

 そんな思いを胸に、私達は年末に向けた話し合いの続きを行うのだった。

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