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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
334/458

第三百三十三幕 聖なる夜の大乱闘

「“樹木行進”!」

『これだけの兵を生み出し、場を制圧した上で更なる攻撃を出来るのか』


 “ホーンシップ”の拠点にやって来た襲撃者達を前に、私達は応戦する。

 手始めに樹を正面へと放ち、相手にはそれをかわされた。巨大ツリーを占拠されているからあまり大きな攻撃は出来ない。壊しちゃったら本末転倒だもんね。

 私達も樹を伝ってツリーの上に登り、周囲から植物を放ってけしかける。


「“鞭の樹”!」

『変幻自在だな。だが、私には当たらん』


 放った樹を避け、羽ばたいて私達の眼前へ。あの人、遠目だったから把握していなかったけど、人型の鳥さんみたいだね。

 神話に出てくるガルーダにも近いかもしれないけど、多分種族は別。性別も女性。高い機動力が特徴かな。


『外界の者がこの速度に付いてこれるかァ!?』

「…………」


 一回の羽ばたきで高速移動し、ツリーの周りを巡回する。

 うん。確かに速い。通常の鳥さんよりは遥かに上。動きが残像となって見えにくくなり、気付いた時には私の近くに来ていた。


『貰っ──』

「でも、大会じゃそんなに珍しくないね」

『……!?』


 ダイバースの大会じゃ彼女以上の速度でより細かく動き回れる選手達が居る。レモンさんやシュティルさん。エメちゃんにユピテルさん。チームメイトならボルカちゃんもそう。

 だから速いけど追い付けない速度じゃ全く無かった。

 体に植物が巻き付き、締め上げる。これで動きは止めた。背後には別の気配が。


『シャアッ!』

「蛇さん。植物魔法の方が長いよ」

『……!』


 蛇型の魔物さん。

 私は今植物で作り出した足場に立っているんだけど這い登って来たみたいだね。だけど気配で読めているから別にどうって事はない。他の植物で絡み、そのまま力を込めて窒息させる。


『ガ……グァ……』

『これがティーナ・ロスト・ルミナスか』

「アナタは……」


 四足歩行に鋭い牙。見た感じ猪さんとかの一種かな?

 猪さんは大きく踏み込み、ツリーを駆け降りて私達の方へと突進してくる。

 勢いはあるけど、


「シュティルさん風に言うなら、直線的過ぎるかな?」

『……!』


 凄まじい勢いの突進。複数の木々やゴーレムにビースト達を粉砕しながらやって来たけど、これも追えない速度じゃないし真っ直ぐしか来ないから少し魔力量を増やして強度を上げた植物の壁で防ぐ事は出来た。


(上がガラ空きだ……!)

「……降ってくる」

『……!』


 猪さんを止めた辺りでツリーの上から何かが降ってきた。

 なので植物の傘で防ぎ、樹木を打ち込んで吹き飛ばす。どうやら牛の魔物さんだね。此方も拘束した。


(チチチ……他の奴らを相手にしている間に、死角からその喉元噛み切ってやる……!)

「気配はあるけど姿は見えない……どうでもいいけど」

『チュ!?』


 小さな何かが高速で私の周りを走り回っているのが分かった。

 なので足場の植物を全て鋭利にし、樹のトゲからなる剣山を形成して捉えた。鼠の魔物さんかな? さっきは気付かなかったから、思ったより沢山の魔物さん達がここに居るのかもしれないね。


『はあ!』

「貴女は……魔物なの?」

『ええ、そうよ』


 兎さんのお耳が生えた女の子が蹴りを打ち込み、ツリーが揺れる。パッと見は人間に見えるけど、彼女も魔物みたい。

 そんな彼女に気を取られていると遠方から粉塵が上がっていた。また別の魔物さんが来るね。


『ヒヒーン! 俺っちの速さに付いて来れるかァ!?』

「同じような文言はさっきも聞いたよ」

『ヒヒ……!?』

『わあ!?』


 お馬さんの魔物。多分ケンタウロスかな。ちょっとお馬さん成分が多めみたいだけどね。

 兎の魔物さんと一緒に捉え、気付いた時周りにはフワフワの何かがあった。


『“スリープ”』

「羊さん……睡眠魔法かな……」


 フワフワの中に魔力が込められており、それが睡眠薬の役割を担うみたい。使用者は羊の魔物さん。

 多分空気の中に睡眠成分が含まれていると思うから、息を止めつつ仕掛ければ良いかな。


「これで全員?」

『くっ……』


 綿を吹き飛ばし、植物で拘束。数の有利からなる囲みに睡眠などの搦め手を交えたからラセツさんはやられちゃったみたい。

 植物魔法によって数の差を有耶無耶うやむやにしつつ、広範囲の制圧で盤面を支配。連携も崩し、大半を捉える事が出来た。

 でもまだみたい。


『この者達をたった一人で捕縛するとは。やるな。ティーナ・ロスト・ルミナス』

「アナタが親玉? 群れのボス?」


 ツリーの星下からこちらを見下ろす何者か。

 遠目からでも分かるように派手な見た目をしているね。黄色い体に黒いシマシマ。虎の魔物さんだ。

 虎さんは返答するように言葉を続ける。


『残念ながら、そう言った役割には就いていない。役職を述べるのならこの者達と同じくチームの主力ではある幹部が近い』

「そうなんだ」


 虎さんも主力ではあるけど、リーダーではなく幹部などが近いとの事。

 じゃあ今捕らえた人達と実力は近しいのかな。だったら簡単……とまではいかないけどやれそう。


「じゃあ、幹部は全員捕まえよっか」

『『『…………』』』


『植物の兵隊。所々に邪魔が入り、他の者達の連携が上手くいかなかった要因の一つだが……』


「……!」


 虎さんは天辺から降り、悠然とたたずむ。

 次の瞬間、周りを囲んでいた植物の子達が粉砕された。

 同じ幹部でも、実力は虎さんの方が遥かに上みたいだね。他の魔物さん達はある程度の足止め出来ており、結果的に少数と順番で相対する事が出来たから。


「他の子達より上みたい」

『そうだな。ボスを除けば、我とウェルフの二強だ』

「ウェルフさん……人狼ウェアウルフさんの事だね。そう言えばまだシュティルさんも戻ってきていないや。他の魔物さん達と同程度の実力ならもう終わってる筈だもん」


 虎さんと狼さん。元々強い動物さん達が魔物化した姿。実力も相応みたい。

 それじゃあシュティルさんが戻って来るまでも少し掛かりそうだから、ここで止めて置かなきゃね。


『我にやられるつもりはない』

「でもやるよ。折角のパーティーを台無しにして……許せないから……!」


 植物を展開し、辺りを一気に飲み込む。

 地面に落とされた拠点の装飾品も包み込み、イルミネーションの植物が形成された。

 月明かり以外の何も無くなっちゃったけど、光源は確保出来ている。


「“樹拳”……!」

『その程度、遅い!』


 樹木の拳を放ち、紙一重で避けると同時にその上を駆け来る虎の魔物さん。

 でもその上も私達のテリトリー。次々と植物を生やして進行を阻害。煩わしく感じたのか跳躍して上部の植物を足場に、踏み込んで私達の方へ突撃した。


「“網の樹”!」

『植物なんぞ、容易く切り裂ける』


 植物の網で防御を図ったけど、それは鋭い爪で切断された。

 本人……本虎? も豪語するように確かな実力を有している。でもそれが私達の止まる理由にはならない。この魔物さん達はみんな、パーティーの邪魔をしたから!


「楽しい時間の……邪魔をしないで!」

『……! これは……!』


 更なる植物を展開し、虎さんの全方位を囲む。周りの植物は全て鋭利な槍となり、魔力を今一度込め直す。


「“槍枝地獄”!」

『やられるか……!』


 全てを降り注がせ、虎さんは牙や爪で噛み砕き切り裂いて直撃を避ける。

 まだまだ足りない。更に力を込め、無数の植物で畳み掛けた。


『キリが無い……ならば……!』

「……!」


 ガチン! と牙を思い切り鳴らし、火花を散らす。そのまま飛び交い、加速した。


『“炎上牙”!』

「炎を……」


 噛み砕き、柔らかな繊維を剥き出しにして火花を当てる。それと同時に自身も駆け出して勢いを付け、発火させた。

 それによって植物は火の海となり、他の魔物さん達も抜け出す。


『助かった……!』

『おのれ人間……!』

『このままでは済まさぬぞ!』


「………」


 完全なる逆恨み。でも何度も言うように、一番許せないのは私。

 既にラセツさんの体は植物で連れ出して味方の魔物さん達に預けている。もう、誰も巻き込む事はない。


「“フォレストゴーレム”……」

『ウオオオォォォォッ!!』


『……! 巨大なゴーレム……!』

『小さい奴なら何体も倒した!』

『たかが巨大化しただけ!』

『何の問題も無い!』


 壁の装飾品はこの魔物さん達が侵入した時に崩れ落ちちゃったけど、幸いツリーはまだ無事。

 この人達を倒せばパーティーの再開も出来る。……だから、まとめてやる。

 ゴーレムに向けて魔物さん達はけしかけ、私はボルカちゃんに魔力を込めた。


「終わり」

『…………』


『『『…………!?』』』

『『『…………!?』』』


 炎を伝達させ、熱線を射出。呪文の付与はしていない。だってツリーも倒しちゃうから。

 熱線が着弾すると同時にドーム状の大爆発が巻き起こり、辺りを熱と衝撃で吹き飛ばした。


『これが……ティーナ・ロスト・ルミナスの実力……!』

『敵わん……!』


 辺りは白く染まり、意識を失った相手が積み重なる。そのタイミングでシュティルさんも戻ってきた。


「遅くなったが、どうやら無事だったようだな。ティーナ」

「うん。ラセツさんや傷付いたみんなは避難させたから、後はこの魔物さん達を拘束しなきゃ」

「そうだな。ラセツ達には治療も施した。後々回復するだろう」

「それで遅れたんだね」


 シュティルさんが遅れた理由。それはウェルフさんを倒した後で負傷者の手当てをしていたみたい。

 ヴァンパイア族の血には治療効果があり、少量なら鬼化せず回復の促進を促せる。適任だね。

 私達は早速攻めてきた魔物さん達の拘束を──


『──やれやれ。情けない者達だ。中心部の幹部総出で仕掛け、返り討ちに合うとは。やはりまだまだ任せられんな』


「「………!」」


 その時、聞こえてきた声。

 でも下方などではなく、もっと高いところからその声は響いていた。

 私とシュティルさんは空を見上げ、その姿を捉える。


『部下達が世話になったな。直々に来てやったぞ』

「あれは……」

「ボスの御出座しという事だな」


 鱗に覆われた体。鋭い牙にツノのような物。龍やドラゴンの類い。

 中心部の魔物達の長は龍種だったんだ。

 攻めてきた魔物さん達を倒した頃合い、それら全ての大ボスと直面した。


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