第三百二十九幕 魔専アステリア女学院・パーティー会場
──“魔専アステリア女学院・校内”。
「うわ~……キレイ……」
「だなぁ。てか気合い入り過ぎだろ。先輩達」
「ふふ、そうだねぇ~」
ボルカちゃんと一緒に装飾された校内を行く私。道行く学院生のみんなも私達と同じような感想を言いながら進んでおり、楽しそうな雰囲気が漂っていた。
まだ始まっていないのもあって他のみんなも会場以外にも沢山居るね。
「イルミネーションのバリエーションも沢山あんな~。ただ光ってるだけじゃないっ言ーか」
「星みたいとか?」
「それもあるな。小さい頃、満天の星空を見てそこに行ってみたいって思った事はあるけど、宇宙の事情を知るとそんな気になれないし、幼少期の夢はこれで叶ったかもなー!」
「だねぇ。実際の宇宙は危険だけど、ここなら安心だもんね!」
キラキラ輝く鮮やかなイルミネーションの渡り廊下。まるで星の川道を通っている様。そこから中庭へと出、樅ノ木や動物型の装飾を横に通り抜ける。
外でも賑わいを見せており、この装飾を撮っている生徒達もチラホラ居た。折角だし私も写真撮っておこうかな~。
「よし、ティーナ。アタシ達も記念撮影だ」
「うん!」
ボルカちゃんも同じ事を思ったみたい。
なので小型魔道具を撮影モードに切り替え、私とボルカちゃんはイルミネーションを写真に収めた。
「後でルーチェやビブリーとも撮ろうぜー!」
「いいねー!」
この装飾自体は当日まであるみたいだから、今日解散した後もみんなと写真を撮ったり探索する事が出来る。
光る置物の並ぶ道を進み、光る噴水を抜け、別の校舎に入る。
夜の学校って、前に七不思議探した時は不気味だったけど装飾があるとこんなにも幻想的になるんだねぇ。
“魔専アステリア女学院”は大きな学校。まだまだ見る場所はあるよ!
──“食堂”。
「へえ、今日って食堂で特別メニュー出してんのか」
「ケーキにチキンに油で揚げたポテトに生地をチーズとトマトで包んだ物……お肉や野菜にチーズをパンで挟んだ物に、とにかく色々。慣れた物から普段見ない物までチラホラあるね!」
「アタシら庶民に馴染んだ物も多いな。場所が場所だから全部に漏れ無く高級な素材使ってるけど」
「そうなんだぁ。じゃあ今度作ってみたーい!」
「自家製で作るのとはまた違う感じだけど、やれない事はないな。んじゃ、いつか作ってみっか!」
「うん!」
慣れ親しんだ料理から見慣れない物まで多種多様。
聞けばボルカちゃんは作れるみたいだし、いつか作る約束をした。
他の生徒達も沢山並んでいたし、まだ見て回りたいので軽食だけ摂って私達は散策を再開する。
──“教室”。
「教室の窓にも工夫してある。外からでも中からでも楽しめるね!」
「だな~。丁寧に装飾の周りは光らせてあるから夜でも安心だぜ」
授業で見慣れた、基本的には無機質で飾りのない教室も、今日だけはお化粧して煌びやかに瞬く。
窓にも剥がしやすいシールのような物が貼ってあるので学院の装飾の一部となっていた。
──“図書室”。
「棚にはイルミネーションがあるけど、本を取るのに邪魔な位置にはないね」
「ああ。逆に明るいから夜に本を借りるなら利用しやすくなってんな」
本棚付近の照明。それは明るく綺麗であり、読書をしたい人達の邪魔にもならない工夫が施されていた。
流石は“魔専アステリア女学院”。隅々まで装飾があっても、隅々まで配慮しているね~。
でも今回は読書をする人の方が少ないかも。この時間に開いてるのは珍しいけど、みんなイルミネーションに夢中だった。
──“体育館”。
「聖なる夜のこの時に……!」
「嗚呼、何故アナタは……!」
「へえ。今の時間でも演劇やってんのか」
「今日のイベントに合わせた劇みたいだね。大盛況みたい」
体育館にも装飾はしてあるけど、演劇部の人達が劇を行っている方に目がいった。
今日に合わせての活動。その成果は出ており、全員が学院生だけどスゴく盛り上がっている。
私としてももう少し見ていきたいけど、そろそろパーティーも始まるから長居は出来ないかな。
一時間くらい見て回ったけど、まだまだ場所はある。学院の広さも相まり、とてもじゃないけど開始前には無理そうだね。
「そろそろ行こっか。ボルカちゃん」
「だな。少しは見れたし、後はルーチェやビブリー。出来たら先輩達や後輩達を誘ってみるか~」
「それが良さそうだねぇ」
十数分くらい劇を見、名残惜しいけど会場の方に戻る。
会場に着く頃にはさっきより遥かに人も増えており、此方も大盛り上がりを見せていた。
初等部、中等部、高等部の一貫校だから総合人数は数千人。入学時の案内で見た一〇〇〇人以上って言うのはあくまで中等部と高等部のみ。初等部を含めたら更に倍以上になっちゃうよね。
その全員が優秀なんだからあらゆる分野で名門を謳われる理由がよく分かるねぇ。
何はともあれ、本格的にパーティーが始まった。
*****
──“パーティー本番”。
「あら、ごきげんよう。ティーナさんにボルカさん。お二人でデートですか?」
「そんな感じかなぁ~。だけどまだまだ見切れなくてね~」
「ああ。全体の二割未満だ。あとでルーチェやビブリーも行こうぜ!」
「あら、私の冷やかしが流されてしまいましたわ」
「一緒に見て回るくらい女の子同士でも男の子同士でもあるんだもの。別に変な反応じゃないわよ」
会場に戻るとルーチェちゃんとウラノちゃんを発見。二人もちゃんとおめかししており、お洒落ながらこの時期に合った格好だった。
これでいつもの四人は揃ったね。次はパーティーを堪能しながらディーネちゃん達や先輩達でも探そっかな。
「あ、おーい! ティーナちゃん達~!」
「メリア先輩!」
「なんか久し振りッスね~」
「ごきげんようですわ!」
「こんばんわ」
そんな事を考えていたらメリア先輩を見つけ、向こうから声を掛けてくれた。
こんな日でも箒は手放しておらず、いつもの雰囲気でお話する。
「確かに久し振り~。部活動を終えてからは高等部に向けて箒の練習をしててさ~。中々顔を出す機会が無いんだ~」
「目指すはプロですもんね~」
「その通り! 応援&フォローよろしく!」
「勿論してますよ!」
「身内から有名人出たら良いッスね~! 先に目を付けていたアタシ達の審美眼が輝くって事ッスよ!」
「言うね~。と言うか、君達は既に有名人だよねー!」
「そッスね!」
メリア先輩を応援するのは当然として、以上の理由で送別会以降あまり会う事は無かった。
本気で目指しているからこそ抜かり無く、手も抜かない。そんな姿を見て応援したくない人の方が少ないよね。ちょっとひねくれてる人とかはそうかもしれないけど、私は応援してるよ! 当たり前だね!
「先輩は誰かと待ち合わせとかですか?」
「そんなところかな。と言っても同学年の人達は基本的に友達だから、今回のティーナちゃん達みたいに通り掛かったら話しかけてる感じかな」
「そうなんスね~」
今は誰と行動している訳ではないメリア先輩だけど、知り合いも友達も多いからたまたま誰かが通り掛かったらそのまま会話をしてるみたい。
そんな事を話しているうちにもメリア先輩の友人が現れ、一通り話したりしていた。
わざわざ誘わなくて大丈夫そうだね。
「それではメリア先輩」
「うん、じゃあねー!」
「後輩ちゃん達~。私達とも仲良くしてね~」
「は、はい! 精進します!」
「精進する事じゃないよ~」
結果的に私達の交友関係も増えた。交“友”とはちょっと違うかもしれないけど、悪い人じゃないなら知り合いが増えるのは良い事だよね。
そしてまた会場散策を再開する。会場には先輩達やみんなも結構居るね~。
「楽しんでるか? 去年は無かったけど、たまにあるんだ。こう言う行事がな」
「レヴィア先輩! はい! 楽しんでますよ!」
「さっき食堂で軽食摂ったんですけど、手が止まりませんね!」
「下品よ。ボルカさん」
「立食パーティーの要素もありますけど、ボルカさんの食欲には驚かされますわ」
「ふふ、楽しんでいるなら何よりだ」
レヴィア先輩。私達を見てほっこりした感じで笑ってるねぇ。
「楽しんでますねぇ~」
「リタル先輩!」
「ええ、とても楽しんでまーす!」
「ふふふ~。実は食べ物の匂いなどが気にならないように、私も香料魔法で会場を包んでいるんですよぉ~」
「言われてみればそうですわ。お食事の良い香りはありますけど、嫌な残香などは感じませんの」
「確かに落ち着くような、心が盛り上がるような匂いね」
リタル先輩。会場は先輩の魔法で包まれてるから過ごしやすいんだぁ~。
「あ、先輩方!」
「チーッス!」
「こら、サラ。失礼だぞ」
「奇遇ですわ!」
「ディーネちゃん達~!」
「そっちも楽しんでるようだな~」
「ごきげんようですわ~!」
「元気そうね」
ディーネちゃん達。私達と同じようにいつもの四人メンバーで行動中みたいだね。
「ティーナさ~ん!」
「ボルカ様ぁ~!」
「ルーチェさ~ん!」
「ウラノさ~ん!」
「よっ。みんな」
「みんなも参加してるんだね~」
「私も有名になりましたわね!」
「クラスメイト相手に何言ってるのよ」
クラスメイトのみんな。
こんな風に色んな人達と交流しつつ、ダンスパーティーやレクリエーション。その他にも色々な催し物で楽しんだパーティー会場。これこそお休みの醍醐味って感じ!
そんな自由に各々で満喫したパーティーは次第に夜が暮れ、お開きとなる。
「そうだ。終わり際にもう一つ。さっき行ってた場所で写真撮ったりギリギリまで装飾された学院を見て回ろうぜ~」
「賛成ー! 行こっ! ルーチェちゃんにウラノちゃん!」
「無論ですわ~!」
「……まあ、付き合ってあげるわ」
そしてパーティーとはまた別に、最高の思い出がもう一つ出来た。
みんなでワイワイ楽しみ、過ごしたパーティー会場。時間ギリギリまで堪能し、充実感と共に終わりを迎えるのだった。




