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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第三百二十六幕 帰郷

 ──“冬休み”。


 二学期が終わり、長期休暇に入る“魔専アステリア女学院”。その初日、私は寮部屋の整理をしていた。

 年明けも含まれる長いお休み。折角だから私のお屋敷で過ごそうかなって考えたんだ~。

 一通りの荷物も纏め、準備は完了。魔物の国から帰って来て一週間も経っていないけど、また数週間はこの寮を空ける事になっちゃうね。

 とは言え、この時期の“魔専アステリア女学院”は他の長期休暇よりも学院から居なくなる人が多い。英雄の記念日や年末年始とかだからね。家族と過ごそうって人が増えるの。全体的に静かになるんだよ。

 纏めた荷物を持って部屋を出て、ちゃんと戸締まりする。寮部屋と寮その物が閉ざされるから厳重だけど、念の為にね。


「お、ティーナも里帰りか」

「まあね~。と言っても他のみんなよりは比較的近い場所に家があるから里帰りって程でもないけど。ボルカちゃんもなんだね!」

「ああ。たまには顔見せようってな。滅多に帰らないし、良い機会だ」


 外に出るとボルカちゃんとバッタリ出会した。どうやら彼女も荷物を纏めて一時的に帰郷するみたいだね。

 そう言えば、私とルーチェちゃんの家には何度か集まったりしてるけどボルカちゃんやウラノちゃんの家には行った事が無かったね。どんな感じなんだろう。

 気になったので聞いてみる。


「そう言えばさぁ、ボルカちゃんの家ってどの辺りにあるの~?」

「ん? ああ、確かに場所は教えてないな。この学院から割と離れた場所で……此処の国よりは“日の下(ヒノモト)”に近いんだ」

「そうだったんだ~」


 ボルカちゃんの家は私達の居る国より、同じ人間の国でも“ヒノモト”の近くにあるとの事。

 一国を跨ぐ距離。そんな遠い所に住んでいたんだね~。


「それじゃあヒノモトの方に知り合いとか居たりするの?」

「……んー、居たとしても初等部よりも前。ぶっちゃけほとんど覚えてないな~。記憶力には自信があっても、幼少期の出来事ってあまり覚えてないだろ?」

「幼少期の……確かにあまり覚えていないかも」


 小さい頃の私。よくお人形遊びやダンスを踊っていた記憶はある。ママに見て貰っていて……それから……どうだっけ。ある一定期間からの記憶が薄いような気がする。

 どの期間かは自分でも分からないんだけど……何となく……そんな気がする。今はその記憶も置いておこうかな。


「ま、久々の帰郷だ。テキトーにブラブラ歩いてりゃかつて知り合いだった誰かとかに会えるかもな。んじゃーなー。ティーナ!」

「うん、またね。ボルカちゃん。また新学期……か年末年始で~!」

「おう! 連絡先は知ってるし、暇な時にでも連絡するよ!」


 これでボルカちゃんとは別れる。

 今の時代……と言ってもずっと前からだけど、連絡する手段は通信の魔道具を使えば自由に出来る。場所の移動も多人数絨毯や転移の魔道具で可能。遠いようで結構近いんだよね~。

 そんな感じで挨拶も済ませ、私は寮の外に出る。学院前では既にお出迎えの馬車を待たせているよ。


「ティーナお嬢様。お待ちしておりました」

「来てくれてありがとー。比較的家も近いし今の私ならちょっと身体能力を強化すれば徒歩でも帰れるけど、やっぱり従者さんが恋しくなっちゃって」

「貴女様に我が馬車を求められるとは光栄であります。では、足元にお気をつけて」

「うん!」


 久し振りに見た従者さんの顔とお馬さん。一人と二匹は昔から私のお世話係りをしてくれている馴染みなの。

 馬車に乗り込む直前、他の人もやって来た。


「あら、ティーナさん! ティーナさんもお帰りになりますの?」

「ルーチェちゃん! うん。やっぱり一度は帰って置きたいからね~。あ、従者さん。少しお話してきて良いかな?」

「無論で御座いますとも。貴女様の御友人。それは私奴わたくしめにとっても嬉しい限りです」

「ありがと!」


 此方も荷物を纏めており、魔法の絨毯から身を乗り出したルーチェちゃん。

 ルーチェちゃんは特に荷物が多いもんね~。普通の移動でも馬車より広い絨毯を使わなきゃならないんだって。

 またすぐに会えるけど、今学期はお別れだからお互いにお話をする。


「ルーチェちゃんも自分のお屋敷に行くんだね。今回は別荘とかじゃないの?」

「ええ。この時期になりますと色々立て込みますからねぇ。私としても一度帰り、お手伝いなどをしなくては」

「もう家業のお手伝いとかしているんだね~。そう言えば……最近は無くなったけど、前は用事で来れないとかも度々あったもんねぇ」

「そうですの。将来的にシルヴィア家を背負うに当たり、初等部の頃から色々とやる事がありましてね。一種の帝王学とも取れますが、まあまあ多忙なのですわ。もう慣れましたけれどね!」

「大変だねぇ。私は結構自由にしているよ。弟妹きょうだいとかもいないけど、パパのお仕事は従業員の誰かが受け継ぐ事になるとか。だから私は将来を自分で選択するかな~」

「そうなんですの。いいですわねぇ~。私も将来的には由緒正しい人を夫として迎え入れ、事業を継がせる事になりそうですけれど……学生で無くなったらその瞬間から自由の身から掛け離れちゃいますわ」

「想像には難しくないね。パパもその立場だったらしいの。娘である私には自由であって欲しいからその代で方針を変えたんだって」

「そう言うのって勝手に変えるのはよろしいのでしょうか……」

「勿論お祖父じいちゃん達からは猛反発を受けたとか。だから一時的に勘当されちゃって……仲の良かったクラスメイトや後輩達と一緒に立ち上げ、実力で事業を大きくして……最終的に再び認められた後でルミナス家に戻ったとか」

「うーむ……利益を挙げれば良しですの。方針にそむいたとは言え、あまつさえ勘当した身を再び呼び戻すとは……こう仰有おっしゃるのは失礼ですけれど、なんか勝手ではありませんの? ティーナさんのお祖父様」

「うーん、でも立場上仕方無い事だったんだって~。既に大きくなった会社は代表でも個人の力で動かすのが難しいらしくて、周りの目もあるから名目上の勘当せざるを得なかったんだってさ。だからお祖父じいちゃんも縁を切ったように見せては裏方でやれる限りの援助や支援をして、大きくなかった頃のパパの会社を支えたとか。パパの方もそれを理解しているからお祖父ちゃん達が受け入れてくれるならと戻ったの」

「成る程。そう言えば初めからお祖父様“達”としか仰有っていませんでしたものね。個人ではなく不特定多数の“達”によってはばまれていたんですの。苦労してますわね」

「組織は一枚岩じゃないからね~。一人一人にも家族とか大事な人が居る訳だから、方針を変えようとして不安がつのるのは仕方無い……ってパパが小さい頃に話してくれたよ」

「その苦悩や苦難を乗り越えてこその当主ですわね。よーし、時期当主候補として私も頑張りますわよ~!」

「ふふ、どうなるか楽しみだね♪」

「ですわね! 仮に当主になれずとも、自身で立ち上げれば良いだけ。私の聖なる未来は最高に光輝いていますわー! ……おっと、少々長居し過ぎてしまいましたわ。それではティーナさん、ご機嫌」

「うん、じゃあね~」


 つい話し込んじゃったけど、従者さんは微笑ましそうに待ってくれていた。

 お互いのお家の事となると話の輪は広がるもんね~。お嬢様やご令嬢の共通点的な?

 何はともあれ、私とママにティナは馬車に乗り込み、お裁縫セット等の荷物類も乗せて街を行く。すっかりイルミネーションなどに包まれており、この季節の彩りが見受けられた。

 少し進むと、見覚えのある後ろ姿が視界に入る。


「あ、ウラノちゃん!」

「あら、ティーナさん。今帰り……成る程ね。寮ではなく自宅に帰っている途中みたいね。ボルカさんやルーチェさんもそうだったかしら」

「そうだよー!」


 それはウラノちゃん。近くに馬車を止め、顔を出して彼女とも話す。


「ウラノちゃんは長期休暇、寮と実家のどっちで過ごすの~?」

「私は寮よ。その方が色々と楽だからね。家に帰ってもやる事は無いし、連絡ならいつでも出来るからわざわざ顔を出さなくてもいいかなと思ったの」

「そうなんだ~。これからどこかに行く途中? 良かったら乗せて行こっか?」


 ウラノちゃんは実家に帰る事もなく寮で過ごすとの事。彼女らしいね~。

 見たところ進行方向的にも学校とは真逆なので、どこかに行くなら一緒にと誘ってみた。


「そうね。馬車の方が効率的だわ。だけどティーナさんや従者さんはいいの? 私の寄り道に付き合ったら帰りが遅くなるけれど」

「大丈夫! さっきもルーチェちゃんと話し込んだし、しばらくはお屋敷に居る訳だから今日の数時間は大した差にはならないから!」

「私奴も構いませんよ。ティーナお嬢様の御友人なれば大歓迎です」


 本人は良いかもしれないと考えていたけど、私達の都合を気に掛けてくれた。

 だけど私達に迷惑なんて無いので快く了承。そもそもで誘ったのは私の方だもんね。

 ウラノちゃんは言葉を続ける。


「そう。それならお言葉に甘えさせて貰うわ。今日発売の本があるから本屋さんに行きたかったの」

「OK! 従者さん! この辺りで一番の本屋さんに行こー!」

「はい。かしこまりました」

「別に小さな所でいいんだけど……まあついでに新しい発見があるかもしれないから構わないけれどね」


 折角なので大きな本屋さんに行ってみる事にした。

 その後目的地に着き、ウラノちゃんは欲しかった本と新しく見つけた本を購入。私もついでにまだ読んだ事の無い植物図鑑やお裁縫の本を取り、良い買い物をする事が出来た。

 それから“魔専アステリア女学院”に一度戻り、ウラノちゃんを降ろす。


「ありがと。お陰様で良い本を見つける事が出来たわ。日も暮れてきたし気を付けてね」

「うん! じゃあね! バイバーイ!」


 そしてウラノちゃんとも別れる。主に私のままが原因で色々あったけど無事に終える事が出来、何事も無くお家に着いた。

 従者さんとお馬さんに一番苦労を掛けちゃったね。だからリラックス出来る植物を生やしてゆっくりと休んで貰う事にした。

 何はともあれ、今日から長期休暇。まずは課題を終わらせて、その後にごはん食べたりお風呂入ったりお裁縫したり色々しよーっと!

 “魔専アステリア女学院”。冬休みが始まった。

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