第三百八幕 各クラスの出し物
──“午後”。
「よーし! 午後は見て回っぞー!」
「おー!」
「ですわー!」
「多忙だったのに元気ね」
午後に差し掛かり、私、ボルカちゃん、ウラノちゃんにルーチェちゃんのいつもの四人は一緒に見て回る事にした。
総合的な時間だと午前中の方が少ないよね。忙しさはどっこいどっこいだけど。
取り敢えず学院内を探索探索ー!
「っと、その前に腹拵えでもすっか~」
「そうだね~。午前中も忙しくてお腹ペコペコ~」
ぐぅ~っとお腹が鳴り、私達は昼食を摂る事にした。
ここの飲食店はどれも高クオリティ。レストランで摂るのとなんの変哲も無い。だからどこに行くか迷っちゃう。
「ま、飲食店ってもスイーツとかが多いし片っ端から入ってくか。腹に溜まるのが良いな~」
「相変わらず品の無い言い回し」
「取り敢えずはお腹いっぱいになるお店だよね~。ステーキとか良いんじゃないかな?」
「良さそうですわね。私も今日はカロリー消費が多かったので沢山食べたいですわ!」
まずはステーキとか焼き肉など、お肉屋さんに入る事となった。
普段はそこまでガッツリ食べないけど、今日は特別。学院祭が特別な日なのはそうだけど、特別お腹が空いてるから。
そのままお店を探して数分。高等部の区画に入った辺りで良い匂いがした。
「お、良さそうな場所発見。行こうぜ!」
「あ、待ってよボルカちゃん!」
「私も行きますわ~!」
「まるで餌につられる小動物ね」
「ビブリーも早く来いよー!」
「……分かったわよ」
駆け足で向かい、そのお店へ。お昼時なのもあって混み合っており、みんな忙しそうだった。
お店の前には受付役の先輩が呼び込んでいる。
「いらっしゃぁ~い~。美味しいお肉、ありますよぉ~」
「あ、リタル先輩!」
「あらぁ~。いつものメンバーじゃありませんかぁ~」
「ウーッス!」
そこに居たのはリタル先輩。
ここはリタル先輩のクラスだったんだね。先輩はお肉のお店をやってるみたい。
「なんと言うか意外ッスね~。リタル先輩が受付ってのは。看板娘って感じかも」
「そうですかぁ~? 香料魔法があればぁ、より増強された美味しい匂いにつられてお客さんが沢山来てくれるんですよぉ~」
「成る程~。確かに先輩の魔法と飲食店の相性良いッスね」
匂いは様々な効果を発生させる。それもあり、リタル先輩が看板役なのは適任だった。
一先ず知ってる先輩のクラスだし、私達も列に並ぶ。数十分は掛かったけどみんなと話していたらあっという間で、体感ではすぐに入れた気分。
そこはステーキや焼き肉と言ったお肉全般を取り扱っており、自分で焼く事も出来る場所。ボルカちゃんの火加減は最適であり、とても美味しく食べる事が出来た。
「っし、食事の後はアクティブ系の場所に行こうぜ!」
「うん!」
基本的に私達のリーダーはボルカちゃん。私達が悩む間にも次々と思い付いてくれるから最終的には一番満喫する事が出来るの。
そんな感じで体を動かす系の出し物へ向かう。私達のクラスじゃ候補に挙がらなかったけど、色々と用意はされてるんだよ。
──“脱出ゲーム”。
「これは……多分これの事だな」
「そうね。示す文章から考えても合っていると思うわ」
……ちょっと思ってたのとは違ったけど、確かに体も動かして頭も働かせる必要があるから食後にはピッタリの脱出ゲームに参加していた。アクション要素もあり、結構体力を使うね。
これにはウラノちゃんも乗り気であり、サクサクと謎を解いて抜け出した。
──“魔弾射的”。
「よっと」
「それ!」
去年もやったかもしれない射的。魔力の弾を撃ち出し、的に狙いを定めて当てるゲーム。全国的に行われているから目にする機会は色々あるかもしれないね。
“魔専アステリア女学院”の射的は豪華景品が並べられており、一般のお客さん達も沢山並んでいた。
──“水族館”。
「まさか本当に水族館を用意している所があるとはなぁ」
「被らなくて良かったね~」
「……いや、アタシのような庶民出身からすれば被る被らない以前の問題なんだけどな」
プールを一つのクラスが貸し切り、魔法や魔術で壁を建てて作った水族館。ボルカちゃんはそれについて驚いていた。
お魚達もちゃんと管理がされており、数日間だけ本格的に行うみたいだね。
──“即席遊園地”。
「流石に此処まで行くとやり過ぎじゃないか?」
「複数のクラスの合同だってね~。確かに一つのクラスじゃ難しいかも」
「そういう問題じゃない」
次に来たのは遊園地。合同とは言え、流石に限りがあるのかアトラクションは全部で五つ程だけ。予算の方は問題無いけど、安全性とかに問題があるんだってね~。
だから完全に保証があるのはこれだけになったとか。ボルカちゃんはまた驚いていたよー。
──“キャッスルカフェ”。
「い……いらっしゃい……ませ……先輩方」
「可愛いー! ディーネちゃん!」
「いらっしゃい! お待たせしましたぁ!」
「ハハ、サラも似合ってんな。ノリノリだ。てか、出し物として漸く軌道が戻ったと言うかなんと言うか」
「……? どういう事ですかー?」
「いや、アタシの話だ。数年居ても庶民心は忘れてないって感じだな」
「そうなんですね~?」
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
「フフ、似合ってるじゃない。リゼさん」
「よくぞお越しくださいましたわ!」
「お似合いですわ! ベルさん!」
脱出ゲームや他の出し物巡りで少し時間を経たのでこれが本日最後の場所。ディーネちゃん達の経営する“キャッスルカフェ”に来ていた。
その内容は名前の通りお城をモチーフにしたカフェであり、ディーネちゃん達がそれに合った格好をしている。
ディーネちゃんはメイドさん。サラちゃんは執事さん。リゼちゃんが騎士さんで、ベルちゃんがお姫様。
王様や王子様などは他の子達が担っており、丁重にお出迎えしてくれていた。
「こちら、メニューとなります」
「何にしよっかな~」
「“お姫様のパスタ”。“騎士の一突きステーキ”。“王の威厳”。“使用人の即席パン”……中々奇抜な名前だね……」
「お城に関するそれぞれをモチーフにした料理みたいね」
「“王の威厳”に至っては名前だけでは何の料理かも分かりませんわね。メニューには詳細が書いてあるので分かりやすいですけど」
名前だけじゃ分かりにくい物もいくつかあるけど、メニューにはその写真があるからちゃんと分かるようになっていた。
“お姫様のパスタ”は金髪をパスタとしてチーズと一緒に作った物。お姫様役のベルちゃんは茶髪だけどね~。
野菜類をティアラとか宝石とかに見立てており、栄養バランスも考えられたメニューだった。
“騎士の一突きステーキ”は、見た目を言えば大きなお肉に骨が刺さった物。骨を槍とし、お城を護衛する騎士さんが敵を仕留めた事の証明みたいだね。
焼き加減も丁度良く、写真越しでも食べたくなるような代物だった。
“王の威厳”は、意外にもデザートだった。
アイスやチョコレートにクッキーやフルーツ類などを、これでもかと乗せた威圧感のあるパフェ。
王冠に見立てたお菓子や高位を示す高さなど、まさに威厳のある見た目。
そして“使用人の即席パン”はシンプルに揚げたパン。
忙しい使用人さん達が少しでも美味しく食べられるようにちょっとした調味料を使って作った……という設定なんだって。前述通り、メニューの一覧にはそれぞれの設定が書かれてるの。
即席だけあってシンプルな見た目だけど、動くのに必要なエネルギーを効率良く摂取出来る組み合わせ。このまま発売しても良さそうな商品だね。
「他には“怪魚の仕留め焼き(焼き魚)”とか“黄竜の涙(コーンスープ)”。“底無し沼の罠(カフェイン)”。“シェフの気まぐれサラダ(シェフの気まぐれサラダ)”……よくこんなに作ったね~」
「全部それっぽい名前にしているだけですけどねぇ……」
「ううん。材料も集めなきゃだし、味付けとか頑張ってるんでしょ!」
「見た目にも気を使ってるしな~。殆ど料理した事がないメンバーな筈だし、素材の厳選に下処理とか仕込み。肝心の調理を含めて結構早朝から準備してたろ?」
「はい……色々初めてなので食堂のシェフに教えられて作りました……」
「やっぱりなー」
「流石有識者のボルカちゃん……私のフォローより的確……!」
「まあな~!」
ブイッ! とピースを作り、ドヤッと笑みを浮かべる。この自信満々なのも彼女の良いところだよねぇ~。
そんなこんなでメニューを注文。お昼から三、四時間は経ってるから軽食を摂るには頃合いって感じだね。
でもあまり多いのは食べ切れないから、本当に軽いメニューにした。
ボルカちゃんは“騎士の一突きステーキ”と“王の威厳”という特大メニューを選んでいたけどね~。相変わらずスゴい食欲。まさに成長期って感じ。
「ご馳走さまでした~」
そして食事を終え、学院祭の初日も終了時間を迎える。
お客さん達は全員が満足そうであり、無事に大盛況で幕を降ろした。
だけどまだまだ始まったばかり。数日はやる事が同じだけど、魔導パフォーマンスショーも最後のダンスパーティーも残っている。明日以降も楽しみだね!
“魔専アステリア女学院”の学院祭。更に数日を経て、魔導パフォーマンスショーの日がやって来た。




