第三百五幕 学院祭・出し物&催し投票
──“数日後”。
「それでは、私達のクラスからなる出し物とステージで執り行う催し物の提案を募集したいと思います」
新人代表決定戦が終わり、いつもみたいに友達やそのチームのみんなと打ち上げも終えてから数日。近くに迫った学院祭に向けての話し合いが行われていた。
決める内容は去年と同じくクラスの出し物と演じる劇。去年は男装喫茶と“蕾のお姫様”と言うおとぎ話だったね。
「アイデアのある方から──」
「喫茶店!」「飲食店!」「カフェ!」「お化け屋敷!」「レストラン!」「お土産屋さん!」「展覧会!」「今年も男装喫茶!」「博物館!」「博覧会!」「魔石コーナー!」「歴史館!」「美術館!」「大人のお店!」「魔導書館!」「箒の展示会!」「絵画教室!」「エクササイズ!」「舞踏会!」「プラネタリウム!」「水族館!」「コスプレ喫茶!」
「催し物の募集も──」
「“月姫様”!」「“海王子と深海魚たち”!」「“星屑ファクトリー”!」「“美人薄命”!」「“僕には君がいない”!」「“アナタにとっての君が私ならいいのにな”!」「“夢の売人”!」「“ハッピーエンドはバッドエンド”!」「“ロックオンフューチャー”!」「“白昼のナイトメア”!」「“目覚めたリアルの大噴火”!」「“カコとイマが未来を生きる”!」「“三神の異界巡り”!」
聞くや否や、怒涛に流れ込む提案。
出し物にも催し物にも沢山のアイデアが示された。
スゴいのはその言葉を聞いて一言一句逃さず書き記す学級委員長。一通り出揃ったところで更なる言葉を続ける。
「沢山出揃いましたが、出し物については後程考えるとしましょう。催し物は何も必ず劇でなくても良いのですよ。例えばダンスとか劇とは違うパフォーマンスと言うのも考え様です」
「なるほど~」「確かにそうですわね」「それでは如何しましょう?」「ライブを行い世界デビューですわ!」「規模が大きいですの!?」「けどそれくらいの気概は大事ですわよ!」「そうですね!」「それかショーなど如何でしょう!」「ならば動物達を準備しましょうか?」「その手のプロを雇っても宜しいですけど、私達の物ではありませんわよね~」「今から動物を躾るには時間がありませんの」
劇以外OKなのは知っていたと思うけど、勢い任せだったから抜け落ちちゃっていたのかな。
それについてもみんなは色々なアイデアを出して話し合い、何をするか大きく盛り上がっていた。と言うか、動物とかのショーをするとしたら一から躾ようとするんだね。気持ちは分かるかも。
「そう言えば、ティーナさんからは何かありませんか?」「そうですわ! 私達のクラスの誇りですもの!」「ボルカ様は色々とアイデアを出しておりますわよ!」「ティーナさんからも是非聞きたいのです!」
「え……!?」
すると、みんなが私の方に案を求めてきた。
前の代表決定戦から私とボルカちゃんへの認識や好感度は爆発的に上がり、学院祭が近付いてきてようやく収まってきた頃合い。こんな感じで求められる事は多いの。
「えーと……そうだね……クラスの出し物は候補の中からで良いとして……劇やパフォーマンスは……」
「「「…………」」」
期待と羨望の眼差しで見られる。少しは慣れたけど、やっぱりまだ緊張しちゃう。
下手な事は言えないもんね……。誇張ではなく一つ一つの発言が大きく左右しちゃう。だから出来るだけ良いアイデアを……みんなでやれるようなそんなアイデア……。
「うーんと……」
私は思考を急速に回転させる。まだ時間で言えば十秒も経過していない。
みんなでやれる且つ感触が良さそうな物。最近流行りの物……人気の何か。周りと被りが無さそうな、被ったとしてもその分野で他のクラスを凌駕出来るような。
「……!」
そこで思い付いた。
この世界、何だかんだ魔導を用いた物は多いもんね。魔力の少ない人や魔力を持たない人用に色々と開発されているけど、その人達もショーを見るのは好きだし。
「ショーはショーでも、魔法や魔術を使ったパフォーマンスショーとかどうかな……? “魔導パフォーマンスショー”……的な」
その内容は、魔導パフォーマンスのショー。
似たようなアイデアは出ていたし、それに合わせた感じなら賛同を得られるかもしれない。
私のアイデアを聞き、周りの反応はと言うと。
「魔導パフォーマンスショー……!」「良いじゃないですのー!」「確かにダイバース世界一のメンバーが居る私達なら困りませんわ!」「植物魔法に本魔法、聖魔法に光魔法と特殊な魔導も揃っておりますもの!」「シンプルな炎魔法や炎魔術に置いても右に出る者の居ないボルカ様がおりますの!」「適任じゃないですかー!」
好感触だった。
良かった~。否定されたらちょっと落ち込んじゃっていたもん。
取り敢えずこれで矛先は変わり、学院祭への話に戻る。
催し物の方は殆ど私のアイデアが採用されつつあり、肝心なクラスの出し物を中心に話が回される。
「それでは、クラスの催しは“魔導パフォーマンスショー”になりました。次は出し物について話し合いましょう。……そうですね、主張があればどうぞ話してください。出し物のアピールタイムです。時間も時間なのでお手柔らかに」
「“喫茶店”は学院祭の王道ですわ! 午前の部と午後の部に別れれば皆様が楽しめますの!」
「飲食店もですわ!」
「カフェもですの!」
「それならレストランだって!」
「男装喫茶も!」
「コスプレ喫茶も該当します!」
「大人のお店……即ちバーにて心地好い一時を提供させたいですわ」
「それでは似たような系列をひとつなぎにします。カフェ等は“飲食店”のジャンルに含み、男装やコスプレを兼ねましょう。バーコーナーと男装は合いそうですし。……とは言え、あくまでそれに決まった場合の話ですけどね」
「「「はいですわ!」」」
案の多かった飲食店関連について、それらは一括りとなった。
確かに名前だけが違う似たような物になっちゃうもんね~。それは良いアイデア。
委員長は言葉を続ける。
「では次のアピールお願いします」
「展覧会は知識を広める事が出来、感性を育てる事に長けています。由緒正しき“魔専アステリア女学院”だからこそそう言った知育を促進させる必要がありますわ!」
「それならば博物館もそうですわ! 歴史を知る事で新たな道が切り開けますの!」
「歴史館こそより深い歴史を知る事となりますわ!」
「博覧会もですわ!」
「魔導中心の世界だからこそ美しい魔石コーナーを設けるべきでしょう!」
「感性という意味なら美術館が最善ですの!」
「知力ならば古今東西、あらゆる書物の揃った魔導書館こそNo.1ですよ!」
「基礎となる様々な箒の展示会によって魔法への感心を深められますの!」
「それらも一括りに出来そうですね。展示物を提案者や協力者が持ってきて頂ければ揃いますね」
「「「はーい!」」」
展示系も一括りとなり、それらの展示会という形になった。
使える場所は教室だけだけど、流石にそれらを全て置けるスペースは無いよね。でもその場合は空き教室とかをそのまま利用出来るから許可さえ降りれば可能だよ。
空間接続の魔道具を使えば行き来も簡単に出来るからね!
「水族館で可愛いお魚見たーい! 私のパパの下請け業者にお願いすればお魚は準備出来るよ!」
「絵画教室を開いて皆様と絵を描きましょう!」
「体を動かすエクササイズ教室は大人の方も来てくれるかもしれませんわ!」
「やはりお嬢様学校らしく、舞踏会で皆様とダンスを踊りましょう!」
「プラネタリウムで天体観察は綺麗ですよー!」
「やっぱり来てくれた皆様にお土産を差し上げなくては!」
「フム……総合的な結果は皆様で選びますけど、選ばれなかった場合でもそれらの要素要素を繋ぎ合わせてみる事は可能かもしれませんね。一部分だけなら他のアイデアと併用出来そうです」
「「「頑張りますわ!」」」
そして共通点の無い物も選ばれたならそれで良し。選ばれなくても一部要素を組み込む事も可能と話した。
最後のアピール者は、去年からずっと押し続けているボルカちゃん。
「アタシは変わらず“お化け屋敷”を押すぜ。推奨ポイントは沢山の人の反応を楽しめる! ってのはアタシがやりたい事で、商業的には怖い物にも一定以上の需要があるからな。恐怖って感情にはアドレナリンが分泌されて快感に変わるんだ。新規性……つまり新しい価値を提供する事が出来る。需要と供給。それらが満たされるビジネスの形って訳だな」
「成る程。流石はボルカさん。的確な意見を述べましたね。お見事です。……それでは、各自アピールタイムは終了。投票へ移行します」
どの出し物をするか、一通りのプレゼンは終了。後はクラス投票。自分のに投票する人は多いと思うけど、精々クラスの三分の一くらい。十分に決める事は出来る。
その投票でもある程度の意見を出し合い、結果はこうなった。
「では、私達のクラスの出し物は“飲食も可能なお化け屋敷”。そして催し物は“魔導パフォーマンスショー”となりました」
「「「意義無ーし!」」」
「やりぃ!」
「やったね。ボルカちゃん!」
大部分はお化け屋敷であり、そこを抜けた先にはあらゆる装飾が置かれた飲食店。帰りにはお土産コーナーも設置された。
全てのアイデアを均等に分けた形だね。要素は多いかもしれないけど、意外と纏まりは良くごちゃついていない。丁寧な仕上がり。
私の提案した“魔導パフォーマンスショー”が採用されたのはちょっと驚いたけど、決まったからには本気で取り組まないとね!
“魔専アステリア女学院”による学院祭。残りの数日で準備と練習を頑張ろう!




