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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
304/458

第三百三幕 二年目のダイバース・新人代表決定戦・決勝

 ──“医務室”。


「……!」


 試合が終わり、私は医務室で目覚めた。

 気絶していたけど、今回はそんなに長くない感覚。

 えーと……確かユピテルさんを倒したから準決勝は突破して……そうだ!


「「ボルカちゃん(ティーナ)の結果は……!?」」


 ガバッ! と起き上がり、向こうの結果を確認……したいところだけど、私と同じタイミングで上がる声が一つ。それはとても聞き馴染みのあるものだった。


「「ティーナ(ボルカちゃん)!?」」


 隣に居たのはボルカちゃん。どうやら勝負は終わっていたみたい。レモンさんとユピテルさんは居ないけど、別の場所なのかレモンさんが勝ったから居ないのか分からない。

 そうなると本人に確認を取った方が早いよね。


「「ボルカちゃん(ティーナ)の結果は!?」」

 

 そしてそれもまた被る。アハハ、息が合ってるのかな。

 先に答えちゃおうか。


「「アタシは勝った()!」」


 またまたハモる。でも確認を取る事は出来たよ。

 どうやらボルカちゃんはレモンさんを倒したとの事。流石だね! 居ないのは別の医務室って事かな?

 つまり、


「決勝戦の相手……ボルカちゃんになるみたいだね」

「ああ。アタシの相手はティーナだ」


 決勝戦、人間の国での最後の相手。それは親友のボルカちゃん。

 レモンさんが相手でも苦戦は必至。だけどボルカちゃんが相手と言うのはまた別ベクトルで大変そうだね。

 強いのは当たり前として、手の内からやれる事。多分お互いの考えまでも全て理解している。要素だけ切り抜くと単純な力のぶつかり合いになりそうだけど、果たしてそれで済むかどうか。

 考えてみたらボルカちゃんとこう言う舞台で当たる事なんて無かったかも。戦った事自体はあった……筈だけどね。


「既に傷は感知してるし、オーディエンスを待たせるのも悪い。楽しもうぜ。──ティーナ・ロスト・ルミナス」

「……。ふふ、うん。そうだね。──ボルカ・フレムちゃん……!」


 互いに手を合わせ、会話を終わらせて会場へと戻る。

 元々試合終了直後は選手の回復も兼ねて少しの休憩が入る。準決勝は毎年激戦であり、決勝戦前は特に長く休憩時間を取るので私達が目覚めるまでの間は丁度良い感じだったかな。

 そして会場に入り、確認などの簡単な手続きを終えて待機する。


《お待たせしましたァ━━ッ!!! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 新人代表決定戦! 個人の部! 準決勝が終わり、選手達も準備が終わった様子!! これが代表決定戦では最後の試合となり、代表戦に移行することになります!! そしていよいよ決勝戦!! 入場するのはこの二人!! 同じ“魔専アステリア女学院”のォォォ!! ティーナ・ロスト・ルミナス選手とボルカ・フレム選手だァ━━ッ!!!》


「「「どわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」


 司会者さんの言葉とお客さん達の歓声と共に私達は会場へ姿を見せ、言葉が続けられる。


《それでは参りましょう!! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 新人代表決定戦、個人の部!! 決勝戦!!! スタァァァァトォォォォッッッ!!!》


 私達は決勝のステージへと転移した。



*****



 ──“闘技場ステージ”。


「……成る程な。既にお互いのやり方も知り尽くしているし、探す手間をはぶけさせてさっさと始めようって魂胆か」


「そうなのかな? 偶然な気もするけど……でもまあ、確かにやり易いかもね。作戦は全然決まってないけど、試合をすぐに始める事は出来るもん」


 決勝戦の舞台は闘技場ステージ。それなりの広さを誇る円の中に私達がおり、数十メートルの距離で向き合っていた。

 探し始める必要が無いからなのか偶然なのかは分からないけど、遮蔽も無いし戦いはすぐに始められる。

 そう言えばこのステージだけど、観客席の場所に会場の様子が映し出されたモニターがあるね。そういう意味でも本格的な闘技場って感じ。


「行くぜ」

「うん」


 取り敢えずスタートはもうしている。ボルカちゃんの出方は分かっており、向こうもそうするつもりだと思う。

 だから最初の一撃は私が当ててみるよ。


「そらっ!」

「“反撃樹林”!」


 爆発的なスタートを切り、一瞬にして私の眼前へ躍り出た。

 既にボルカちゃんの片手には炎剣を持っており、炎の加速と共に振り下ろされる。

 それは想定内。なので自分の周りに植物を展開しており、炎剣が当たる直前にボルカちゃんの体へと植物を叩き込んだ。


「……ッ!」

「……!」


 直撃して吹き飛び、ザザザッと石の地面を擦って止まる。結果を言えば引き分けかな。既に炎剣によって掠り傷を負っちゃった。

 切り傷の痛みと火傷の痛みが同時に来てヒリヒリする。他のみんなはこれを受けても平然と戦っているけど、結構辛いよね。


「“ファイア”!」

「“樹木行進”!」


 止まると同時に正面から火炎が放たれ、それも見越しているので太い樹木で打ち消す。初級魔術なら樹も燃えずに消し去る事は可能だよ。

 次は多分この中を越えてボルカちゃんがやって来る筈。


「よっと!」

「“延樹”!」


 読み通り!

 まだ炎は前方に残っているけど、ボルカちゃんの速度なら完全に消え去るよりも前に到達する事が可能。

 だから大量の木々の側面から枝を伸ばし、彼女の奇襲を迎撃した。


「やるな!」

「ボルカちゃんの動きは全部分かるからね!」

「アタシもだ。ティーナがどんな風に防御するか、全部予測通りだぜ!」

「流っ石!」


 ボルカちゃんのいつもの動きは、お互いにどこまで思考を読めているかの確認を兼ねた物だったみたい。

 私がそうであるように、向こうもちゃんと全部読んでいる。だからここまでのぶつかり合いは単純な戯れ。

 動きは分かったし、ここからが本番。


「て事で、やるか!」

「うん。他の試合と同じようにね!」


 と言っても、戦い方を変える訳でもない。

 変化球や変わり種で攻めて勝利を収めたとしても、私達のどっちが強いかなんて分からないもんね。折角の決勝戦なんだから、いつも通り戦っていつも通りのやり方だとどちらが強いかを決めるだけ。

 ま、奇襲とか騙し討ちは多少挟むと思うけど、それはいつもの範疇。ボルカちゃんは炎で加速して私の背後へ回り込み、そこ目掛けて植物を複数叩き込む。

 炎の出力を巧みに使いこなしてそれらを避け、差し迫るように炎剣を差し込んだ。


「オラァ!」

「“防衛樹林”!」


 刺し込まれた炎剣は木々の壁で防御。

 即座に切断されちゃうけど一時的に凌ぐ事は可能。周りを植物で囲み、そのまま圧縮して押し潰す。

 ボルカちゃんは内部で炎を爆裂させ、周囲を吹き飛ばして消し去った。


「“ファイアショット”!」

「“樹木乱打”!」


 速い複数の炎弾が撃ち込まれ、こちらも複数の木々で迎え撃つように防御。互いに打ち消し合い、炎と樹は消え去る。そこへ瞬時に生やし、降下させる。


「“夜薙樹”!」

「“炎上ドーム”!」

「新技……!」


 降り注ぐ樹に対して自身の周りを炎で囲み、当たる前に消し炭にして防ぐ。

 新しい防御方法くらいは思い付くよね。やってる事は単純にドーム状の炎を作り出しているだけ。

 だったら攻撃は当たる。


「“上昇樹林”!」

「そう来るよな! “ファイアキャノン”!」


 足元はお留守。そこ目掛けて勢いよく樹を生やしたけど、中級魔術を下方に放つ事で武舞台ごと破壊して防がれた。

 爆風で空中に上がると同時に足へ魔力を集中させて炎で浮遊。空中戦がご所望かな!


「“浮遊樹木”!」

「本当に浮いてるって訳じゃ無さそうだけど、まあいいか」


 足元から空へ樹を伸ばして移動。上昇樹林と違って変幻自在だから横移動も可能だよ。

 お互いにフィールドはボロボロになった下方の闘技場からその上へ。正面に向き合い、片手に魔力を込めた。


「“樹拳”!」

「“フレイムフィスト”!」


 樹と炎からなる大きな拳が正面衝突し、衝撃波を辺りに散らして炎幕と木々を消し去る。

 本当に互角の戦い。今はお互いに中級規模だから、徐々にボルテージは上げていく。


「“樹海行進”!」

「“フレイムバーン”!」


 樹木を昇格させ、圧倒的な質量の樹海へ以降。ボルカちゃんも上級魔術へと移行して樹海と轟炎がぶつかり合った。

 その余波と衝撃で闘技場の誰もいない観客席は吹き飛び、上空の雲も消え去る。モニターには特別強い魔力からなるコーティングが施されているから無傷。ルミエル先輩提供の特注品なんだって。

 元々(さっ)風景な闘技場だけど、より寂しい感じになっちゃった。

 だから更に植物を集め、闘技場ステージを私達向けの場所にする。


「“樹海生成”!」

「相変わらずスゲェ魔力だ」


 闘技場ステージは見る見るうちに樹海へと早変わり。これなら至るところから植物で攻撃出来る。

 でもこれだけじゃ足りないよね。ほとんどの植物は使わないけど、フィールドとしてじゃなくて私達の攻撃としての話。要するに戦力を増やすって事。


「“フォレストゴーレム”&“フォレストビースト”!」

『『『…………』』』

『『『…………』』』


「ステージ変化による盤面の制圧に兵の追加による戦力増加。ハッ、相変わらずやってる事が一つの国家戦力並みだ」


 闘技場から樹海へと変化させ、ゴーレムやビースト達の追加で此方こちらの戦力を上乗せ。

 一つ一つは簡単に破壊されちゃうけど、ボルカちゃんは単体だから消耗はする筈。素の体力も無尽蔵なんだけどね~。

 最後にもう一つ作り、私達に有利なフィールドとする。


「“フォレストゴーレム”!」

『ブオオオォォォォッッッ!!!』


「呪文名は同じだけど、大きさが違う巨大なゴーレム。へへ、相手にとって不足無し。まだまだ始まったばかりだし、楽しめそうだ」


「ふふ、そうだね。ボルカちゃん!」


 この状況でも余裕の笑みは崩さない。

 実際、ボルカちゃんにとっては余裕で打開出来るもんね。

 でも確実に消耗はする。スタミナが無尽蔵の彼女だけど、魔力の量なら私も自信があるから!


「行くよ!」

「ああ、来い!」


 大量の植物達と共にボルカちゃんへと攻め立てる。

 私とボルカちゃんの、お互いの手の内を知り尽くしている戦い。ダイバース新人代表決定戦、決勝戦が本格的に始まった。

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