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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第三幕 初めての友達

 ──“一限目終了後”。


「よーし、10分休憩! 次は魔導学。言わばこの学校での主体だ。中等部からの者は予習とか頑張れよー」


「先生相変わらず大雑把ですね」

「定型は教えておかなきゃならないからな!」


 教本を抱え、先生は教室の外に出る。

 ふう、家庭教師さん以外の授業は初めて受けたけど、マンツーマンと違ってどのタイミングで質問が来るかも分からないから対応するのが大変。

 既に習った所の応用だから大丈夫だったけど、この学院はかなりレベルが高いんだよね。

 取り敢えず言われたし、次の予習をしたら休憩しよっかな。

 教科書を取り出し、準備の途中で隣の席のボルカちゃんが話し掛けてきた。


「やっほ。さっきの横から見てたよティーナちゃん。スゴいね。あんなに人形を扱えるなんて」

「ボルカ・フレムちゃん……?」

「そ、アタシはボルカ・フレム。自己紹介から覚えててくれたんだ!」

「うん。みんなと仲良くなりたいから……全員は覚えられなかったけど……」

「そっか~。けど、なーんかしおらしいな。ホラホラ、スマイルスマイル!」

「ひゃ……ボ、ブォルキャひゃん……!」


 笑顔で頬を摘まみ、イーッと私の口を横に引っ張る。

 確かに人見知りしててさっきの子達やボルカちゃんと上手くは話せなかったかも。そんな私を気に掛けてくれたみたい。……今の表情じゃちょっと話しにくいけど。

 ボルカちゃんは言葉を続ける。


「てな訳で、友達欲しいならアタシが立候補してあげよっか?」

「え! いいの!?」

「お、おう。食い気味だねぇ。いいよ。なんか君、面白いからさ」

「面白い? 私が?」

「うん。人形魔法なんて初めて見るし、君のその初対面にはオドオドしているのに、寝ている人にイタズラするような肝っ玉の太さが気に入った!」

「うっ……」


 バレてた……。

 寝てるフリだったのか眠りが浅かったのか。ガッツリいびき掻いてたし後者かな?

 けどそれが原因で気に入られたのなら良かった……のかもしれない。結果オーライってやつ?


「ま、ヨロシクな~」

「……! う、うん! よろしくね!」

「ハハハ、すげえ喜んでるじゃん」

「だって嬉しいんだもん! ずっと自宅学習だったからお友達が出来た事なくて……」

「そっか。それじゃ、アタシが記念すべき友達第一号つて訳だ。どんどん頼ってくれて良いよ! 不安があったら聞いてくれ! 君は基本的に塞ぎ込んでるし、何かあったらアタシが助けてやる! 友達だし、ティーナって呼ばせて貰うよ!」

「……! うん! ボルカちゃん! 私はボルカちゃん呼びがしっくりくるかな!」

「そっか!」


 友達が一人増えた!

 初めてのお友達……! やった! これからどんな事があるんだろう? 楽しい事かな? 悲しい事もあるのかな? けどどんな事も乗り越えられる気がする!


「心踊ってんな~」

「え? 分かるの!?」

「その様子を見たら誰でも分かるぜ」


 アッハッハ! と豪快に笑うボルカちゃん。

 性格的には私と真逆の位置に居るけど、何となく気は合いそう。話している様子からして元々面倒見が良い人みたい。


「よーし、次の授業に入るぞ~!」

「お、先生が来たな。それじゃ次の休憩時間に」

「うん、ボルカちゃん」


 二時間目に入り、先生がやって来て各々(おのおの)の席に戻った。

 と言っても隣の席同士だから距離はそんなに無いんだけどね。あ、予習してない。まあ大丈夫……かな? 切り替えてこ。

 さて、次の授業は魔導学。

 エレメントとかの基礎知識は家庭学習で身に付けたけど、実践は私の主体魔法からして初。いきなりって事はないだろうけど、期待と不安がせめぎ合っている状態だよ。


「一時間目の時に言ったように次の授業は魔導学だ。この学院の目玉とも言える教科だな。後半にチラッと実技もやる。前半は初等部でやった事の復習だ」


「「「はーい!」」」


 実技は最後の方みたい。

 よし、じゃあやるぞ~。学科の方はちゃんと覚えてる!


「それじゃあ、中等部からの者に聞いてみようか。この学院に入れただけで相応の学力はあるだろうが、やっぱり初めてだからな。まずは近くにいたティーナ。魔法の基礎を説明してくれ」


「は、はい!」


 き、来た……。いきなり先生に当てられちゃった……!

 確かに席は教卓から近いから目に入るよね……! けど大丈夫! ちゃんと学んでいるから!


「えーと、まずは魔導。主に魔法・魔術に区分されるものは基本的に火、水、風、土からなる四つの系統が主体で、そこから組み立てて様々な属性に変化させます!」


「うむ」


「例えば風から派生させて雷へ。水から派生させて氷へ。土から派生させて様々な鉱石へ。その全ては体内に流れる魔力を変化させ……──」

───

──

「──よし、良いぞ!」

「はい!」


 お、終わったー! 緊張したけど、上手く答えられたみたい。

 ちゃんと学んでいた事を言えて良かった~。

 そんな訳で、他の生徒達も習っていた事をまとめ、新しい魔法・魔術の授業が始まった。


「初等部では基礎の基礎をやっていたな。つまり四大エレメントだ。中等部からは先程ティーナが話した“魔法・魔術の派生”を主体としていく。魔力の込め方や魔力の“色”のイメージを変化させればおのずと他の属性へと変えられる」


「色?」


「雑多なイメージだ。火なら赤。水なら青。風なら緑。土なら茶色と何となく属性に対して色のイメージが湧くだろう? 火には橙や黄色があるとか、風は無色透明とか野暮なツッコミはしないでくれよー!」


「しませんよ~」


「取り敢えず、色同士を混ぜる事で様々な物になる。そのイメージを強く持てよ! 絵の具を思い浮かべればなんとなく感覚を掴める筈だ!」


 フムフム、なるほど。魔力にはイメージになるような色があって、属性変換とか派生とかは色の変化をイメージする必要があるんだって。

 絵の具を混ぜて様々な色にするように、魔力を混ぜると属性になると。勉強になるなぁ。あれ? けど……。


「すみませーん。人形操作の私は何色をイメージすればいいんでしょうか?」

「良い質問だ。どのエレメントや属性にも属さない魔法・魔術は無色透明。もしくは白となる」

「え? じゃあ存在しないって事でしょうか?」

「そうじゃない。白は何色にも染まるだろう? つまり、イメージはより自由。素質があれば思った通りの力となれるのだ」

「思った通りの……!」


 属さない魔力の色は無。だからこそイメージ次第で何色にもなる。

 それを魔法・魔術として落とし込むと何色にも染まる。そうあると思い込む事で私の人形操作は何にでも変化するんだ。

 今はお人形さんを持ってないけど、いつか手に入れたら好きな姿に出来るんだね。


「そんな訳だ。属性のイメージが出来なくても気に病むなよ~。それは(イコール)不特定、未知数。なんでもありって事だからな!」


「はい!」


 なんでもあり。それはとてもスゴい事。

 別に気には病んでないけど、解釈次第でどこまでも広がるのは便利だよね。

 よーし、色々学んで実技で鍛えよ!


「さて、授業の続きだ。後半は宣言通り魔法・魔術の実技に移るからな~」


「「「はーい」」」


 みんなが返事をし、授業の続きへ。

 数十分で座学は一通り終え、魔法・魔術の実技へと移行する。


「魔法・魔術は使わなきゃ鈍る。筋肉と同じだな。だから毎日とは言わないが、魔導学の後は定期的に発散させるぞー。出席番号順で得意魔法を撃ってけー」


 その言葉と同時に出席番号一番の子が杖を構えた。

 魔法は杖や剣、得物を触媒にして放つ魔力の事。魔術は触媒を必要とせずに放つ力の事。

 聞くだけなら魔術の方が便利だけど、魔法は触媒が必要となる分、魔力の消費量が少なかったり魔力が尽きても何らかの形で戦闘を続行する事が出来るのが利点。

 とは言っても、今の時代に戦争とか戦いとかはないんだけどねぇ。それでも魔法を長く使えるのは日常的に便利だよね。


「“ファイアボール”!」

「“ウォーターショット”!」

「“ウィンドカッター”!」

「“ランドフィスト”!」


 そんな事を考えているうちに魔法・魔術の撃ち合いが開始されていた。基本的には初級魔法。

 出席番号順とは言っていたけど、時間も時間だから一回につき四、五人が力を放つ態勢になっている。

 私の番もやって来た。


「ティーナは人形操作か。何か得意技はあるのか?」

「えーと、踊らせたりとか……」

「平和的だな。まあ、魔法を見せるだけだから必ずしも戦闘向けである必要も無いしな。じゃあそれで行こう」

「はい!」


 お人形は持っていないけど、今回もママとティナに頼ってみる。

 右手と左手の指先から魔力の糸を出し、二人へとくっ付けた。


「そーれ!」


 そして立ち上がらせ、また私達の舞踏会を開く。最初は左右へのステップからかな。

 だけど他の子達には既に舞踏会を見せたから、何か新しい事にもチャレンジしてみたいかも……。

 そこにママが提案する。


『それじゃあティーナ。ワルツ以外の事をしてみましょうか。私に魔力を込めてご覧なさい』


「ママに?」


『ええそうよ。昔に見せたでしょう? 私の使う“花魔法”を。あれは水、風、土の系統からなる派生魔法。魔力があれば起こす事が出来るわ』


「うん、分かったよ。ママ」


 昔にママが見せてくれたお花さん達。

 確かにあれは綺麗だったなぁ。ママに魔力を込めて伝えばあの時の魔法を使えるんだ……!


【ほら、ティーナ。見ててご覧なさい。“フラワーマジック”……】

【わあ! きれー! すごいすごい! すごくすごいよママ!】


 ママが魔力を込め、手の平にお花を咲かせた。

 赤、青、黄色、鮮やかな彩りのお花たちを前に私は目を輝かせた。

 ママは微笑んで返す。


【フフ、そうでしょう。……ケホッ……】

【ママ……!】

【大丈夫よ。大丈夫……うん、すぐに治っちゃうから!】

【……うん……】


 ふふ、思い出したら懐かしい……。ママはちゃんと治ったもんね。ちょっと疲れちゃって小さくなっちゃったけど、ちゃんとここにいる。

 物思いにふけっていると先生が話し掛けてきた。


「どうしたんだ? 一人で呟いて。人形は立たせたが、何もしていないぞ」

「ううん! なんでもありません! 今から魔法を使ってみます!」

「む? そうか。よし、やってみろ」


 一人。傍から見たらそうなるんだよね。ママもティナもちゃんと居る。絶対に。いない訳がない。

 じゃあ早速ママに魔力を込めて、こんな感じかな?


「“フラワーマジック”!」

『そーれ!』


「「「わあ……!」」」


 糸を操り、込めた魔力を解放。

 それによってママを中心に綺麗な花びらが散り、辺り一面がさながらお花畑のようになった。

 心地好い香りが鼻腔をくすぐり、目に優しい光景が広がる。周りのみんなは感嘆の声を上げてくれた。

 うん、出来た! ママがやったみたいなお花魔法!


『スゴいわティーナ。私の時より遥かに広範囲じゃない』

「えへへ、あの時のママは病気だったから」

『ふふ、そう。けど、アナタの魔力のお陰よ』


 ママに褒められると嬉しい。成功したんだって実感が湧くもん。

 色鮮やかに咲き誇る花々を前に、先生は驚嘆の色を見せていた。


「まさか……既に魔法系統の掛け合わせを可能にしているのか……! ティーナ。命ある植物を生み出すレベルとなると既に高等部最上位……いや、それ以上の力だぞ……!」


「へえ! そんなにスゴいんですね! ママの花魔法って!」


「ママ?」

「……あ……」


 失言だったかも……!

 これは先生をママって呼んじゃうアレじゃなくて、ちゃんと今も目の前に居るママを指し示しての言葉。

 パパや爺やに学校では明かさないよう言われていたのに……!

 と、取り敢えず弁明しなきゃ!


「こ、これはママから教えて貰った魔法で、よく私に見せてくれたものなのです!」

「……ああ、なるほど。相伝の魔法という事か。何と何を掛け合わせているのかとか聞いていないか?」

「えーと、水と風と土だって言ってました」

「フム、植物魔法に必要な属性だ。ティーナ。君の色はこの花や植物の色から考えれば分かりやすいかもしれない。謂わば“命を創り出す魔法”だな」

「は、はい!」


 なんとか誤魔化せた!

 けどそっか、色合いを考えると私は植物とかそっち方面なんだ。植物なら緑? お花さん達はカラフルだよね。木は鈍色……。

 それにしても……命を……創り出す……あれ? なんだろう……とても素敵な事なのに頭の中にモヤが掛かったような変な感じになる。

 授業に集中しなきゃ……。


「よーし、それまで。これで全員終わったな。それじゃ、このまま休憩時間にする。次の授業は移動教室だから場所を間違えるなよ~」


 そう言い、先生は去っていった。

 ふう、これで二時間目も終わり~。移動教室かぁ。こう言うのも学校の醍醐味だよね。ダンスとか音楽以外で定期的に教室が変わったりするのが新鮮で面白いや。

 私の初学校。次は三時間目だよ!

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