表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
293/457

第二百九十二幕 二年目のダイバース新人戦・団体の部・決勝戦開始

「やっぱりレモンさんは強いねぇ。ユピテルさんもとても強かったけど、あと一歩及ばずって感じかな」

「そうだな~。“ゼウサロス学院”も層は厚いけど、あくまで代表決定戦の平均的って感じ。“天照学園”のメンバーには敵わないか。アタシですら勝てるか怪しいのがチラホラ居るし」


 レモンさん達の試合が終わり、私とボルカちゃんで感想を言い合う。

 本当に“神妖百鬼天照学園”の人達はレモンさんのみならず、全体的に分厚い層を持っている。妖怪って種族の血筋だけじゃここまではならないもんね。国民性が勤勉だから手を抜かずにやるべき事をしっかりとしているんだ。

 でも、だからと言って負ける訳にはいかないよね。私達も準決勝は突破した。残るは決勝戦。前回大会もそんな感じだったね。これはもう恒例って言って良いんじゃないかな~。

 何はともあれ、決勝戦が始まろうとしていた。


「やはり此処まで勝ち上がってきたか。いや、今回は私達の方が少し遅かったな」

「相手が相手だからね~。でも、私達も強い人達と戦ってきたんだから。負けられないよ!」

「良い試合にするとしよう。観客達の盛り上がりも最高潮に達しているからな」

「そうだね~」


 決勝戦は単純に人間の国ではどこが一番強いのかを決めるものとなっており、代表戦入りのチームも確定しているので基本的にはお客さん達も選手達も気楽に見れる催し物だった。

 だけど私達からしたらそうじゃない。いつも本気だけど、より気合いを入れていくよ!


《それでは“多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”! 団体の部決勝戦!! ──“大将討ち取り合戦”! スタァァァトォォォッ!!!》


 試合が始まった。



 ──“お城ステージ”。


 今回の決勝戦は“大将討ち取り合戦”。名前がちょっと物騒だけど、やる事は今までとあまり変わらない。

 一つだけ注意点があるとしたら、“大将”が取られたらその時点で敗北が決まっちゃうという事。

 既に控え室で誰が大将の役割を担うかは話し合ったよ!


──

───


 ──“数分前・控え室”。


【んで、次の“大将討ち取り合戦”だけど、まあ大将はビブリーが適任だな】

【そうだね~。指揮官の役割も担う訳だし、私達の誰かが守り続ければ良いもんね!】

【そうですわね。私としては前線に出た方が良いのでピッタリですわ!】

【そうね。あまり動きたくないから丁度良いかも】


 今回のルールはチーム内から大将を一人決め、相手の領土に攻め込んで倒すというもの。

 両軍共に大将を取られたらその時点で負けが決まる。なので選考基準は視野の広さ。取られ難い強さを有し、あまり前線に出ない人。その条件にはウラノちゃんが合っていた。

 これで大将は決まり。次は勝利条件である相手チームの大将が誰かを話し合う。


【まずレモンは無さそうだな。強さは申し分無いけど、本人がガンガン前線に出るタイプ。やられたら終わりって事を踏まえても大将やるにはリスクが大き過ぎる】


【そうなると誰だろう。“神妖百鬼学園”も基本的には二年生が中心のチームだったから、前大会と主力もあまり変わらないよね】


【だな~。ヌラって言う存在の認識を阻害させるヤバい能力の人は三年生だから居ないとして、候補は忍者とやらにカッパって種族とのハーフに妖狐ってのに……後は新戦力の誰かとか】


【姿を眩ませる事が得意な忍者。単純に能力の高い河童カッパ。姿を自在に変えられる妖狐。いずれも可能性は高いわね。河童さんは前線に出るか沼や池からの奇襲を仕掛けるかだから大将の線は薄いかもしれないわ】


【そっか。そう言やビブリーはヒノモトの事情に詳しいんだったな。色々とアドバイスくれ!】


【ええ、良いわよ。どの道私としては団体の部が新人戦最後の試合ですもの。そこまで勝利には拘らないけど、折角だから本気になってみるわ】


 侍、忍者、妖怪。聞き馴染みの無い存在についてはウラノちゃんが詳しく知っている。

 なのでそのアドバイスを参考に、相手は誰が大将とするかを判断する。

 除外したレモンさんやカッパさんも片隅には候補として入れてあるよ。何事も可能性は0じゃないもんね。

 向こうの候補は大分絞る事が出来た。

 次は私達の番。


【んで、次はアタシ達の参加メンバーだ。大将のビブリーは確定で、斬り込み隊長のアタシや防御の要であるティーナも決定。残り二人をどうするか】


【みんなの得意分野はそれぞれだもんね~。ルーチェちゃんやリゼちゃんで遠距離攻撃や牽制とかのサポートを整えたり、ベルちゃんで防御をより固めたり、単純にディーネちゃんやサラちゃんで攻撃力を上げたり】


【役割分担は必要だな~。今決まってんのが指揮官と守衛を担うビブリー。攻撃と防御、兵力の増強を担ぐティーナ。単純に速度と攻撃力でせめて攻めて攻めまくるアタシ。現状バランス型って感じだ】


【やっぱり遠距離攻撃は欲しいわね。みんなも出来るけど、両立は負担が多くなるもの。長けてる人が後衛に居るだけで色々と捗るわ】


【それなら私が立候補しますわ! 光魔法による遠距離牽制。そして聖魔法によるサポートも担えますもの!】


【私としても賛成です。先輩達にはまだまだ及ばない事が多いので】


 一人はルーチェちゃんが立候補し、諸々の理由から適任と判断してリゼちゃんも引き下がった。

 結局は私達四人になっちゃったね。残りの一人は誰が行く事になるか。


【これで大将、近距離、中距離、遠距離が決まったな。後は足りない部分を補えるような人員が必要だけど、みんなはどうする? 意思は尊重するぜ】


【大将がやられてはいけないのなら、やはり守りを固めるべきでしょうか……】

【けどさー。今回のルール的に必ずしも防衛ってだけじゃないみたいよー。流れ的には一方が相手陣へ攻め込んで一方が守衛って感じー?】

【役割はその時に決まるみたいだな。勿論どちらも大事だが、攻めと守りじゃ勝手が変わってくる】

【状況次第で交代もありですわね。汎用性の高い方が先鋒として出た方がよろしいかと思いますわ】


 ボルカちゃんの言葉に一年生達が話し合う。

 そう、今回はゲームが始まるまでどちらになるか分からない仕様。攻める側でも守りは必要になるけど、突破力が無ければその防御も意味が無くなってしまう。

 その辺のバランスも考えなきゃね。


【って、そろそろ話し合いの時間も無くなってきた。パッと決めなくちゃな】

【それでは、改めて役割を話、手薄な所を埋めましょう】

【“魔専アステリア女学院”が守衛でも攻衛でも、ボルカ先輩が斬り込みのアタッカー。ティーナ先輩が防衛、索敵、人員補強の中距離担当。ルーチェ先輩が大将の近くで遠距離とサポートを担い、ウラノ先輩が大将。明らかにティーナ先輩の負担が大きく、防衛が手薄ですね】

【じゃあ必要な役割はもう一人の側近だね。攻防一体型のバランスタイプが求められるかも】

【となると、結局は二つの魔術系統を持っているディーネっちになりそうだね】

【んじゃ決まり。取り敢えず一番選出率の高いいつものメンバーだ】


 時間が押してきたので話し合いは終わらせる。魔法や魔術の形からして一つの系統でも十分に臨機応変な戦いが出来るけど、やれる事が多いのは大きなアドバンテージになる。

 なので残りのメンバーをディーネちゃんとし、参加メンバーは決まったのだった。

 それから私達は転移し、今に至る。


───

──


「どうやら私達は攻め込む側みたいだね」

「そうみたいだな~」


 改めてこの“お城ステージ”。私達は川を挟んだ目の前のお城を見やる。

 お城と言っても馴染みのある所じゃなく、ヒノモトの形に近い。塔のように積み重なっており、おそらく四階建て。ヒノモトに行った時によく見た形だね。

 それを見、ボルカちゃんは話す。


「取り敢えず、大抵大将ってのは一番高い所に居るもんだよな。四階に行きゃ良いのか」

「正しくは五階よ。あのお城、外から分かりにくくするように屋根に隠れた階層があるの」

「へえ。ちゃんと考えられてるんだな。このまま行ってたら思わぬ奇襲を受けたかもしれないぜ」

「でも空から行けば問題無さそうですわ」

「迫兵戦向けのお城だからね。でも、向こうがその対策をしていない訳は無いわ」

「それはそうですわね」


 白兵戦向けの構造であるこのお城。魔導を使えるなら空から攻められるけど、対策は勿論されてるよね。

 何はともあれ、こうして話し合っているうちにもレモンさん達は行動に移っているかもしれないから此方も動かなきゃならない。


「じゃあ早速陣形を整えようか。“防衛樹林”&“フォレストゴーレム”+“フォレストビースト”!」


 攻め込む側も拠点は必要。なので正面以外の全方位を囲み、外側にゴーレム達を配置。ティナを先行させて索敵。ボルカちゃん達も準備を整えていた。


「お城までの距離はざっと500メートルくらいかしら。それじゃあ作戦通り仕掛けましょうか」

「ああ。すぐに城を攻め落としてやるぜ!」

「私も途中でのサポートを頑張るよ!」


 拠点での待機組は大将のウラノちゃん。側近のルーチェちゃんとディーネちゃん。

 私とボルカちゃんが前線に出て戦う感じ。私は中距離で前衛と後衛のサポート主体だけどね~。

 向こうの大将と作戦は不明。取り敢えず仕掛けてから考える。ボルカちゃんなら単騎で向かっても大丈夫という信頼があるからね。

 私達は拠点を飛び出した。


「“フォレストゴーレム”&“フォレストビースト”!」

『『『…………』』』

『『『…………』』』


 兵力は増やせる。ゴーレムとビーストを向かわせ、ティナとは半分だけ五感を共有してお城の様子も確認。あまり近付き過ぎると見つかっちゃうからある程度距離は置いておく。

 でもよくは見えないね。紙のような窓で防がれてるや。障子って言うんだっけ。


「じゃあボルカちゃん。私はここで待機してるよ!」

「OK! 任せとけティーナ!」


 中間程の距離に来て待機。ステージ全域にはゴーレム達を配置しているから何者かが近付いたらすぐに分かるようになっている。

 ボルカちゃんはゴーレム達を連れてお城に突撃し、私は周りの気配を……。


「……?」


 今、何かが通ったような気がした。気配を隠す事も当然可能。追った方が良いよね。

 そちらに行こうとした時、また別の気配を感じた。


「ティーナ殿。此処で相対しようではないか」

「……レモンさん……!」


 レモンさん。いつも通り不意討ちなどをせず、堂々と姿を見せた。

 ここにレモンさんが来たという事は、さっきの不確かな気配に信憑性が増すよね。


「今、誰か来たよね。レモンさん」

「さあ、どうだろうな。どちらにせよ、私がティーナ殿を倒して向かい行くから結果は変わらぬさ」

「それもさせられないね……!」


 誰かが来たとして、レモンさんが最大戦力なのは変わらない。ここで彼女を見過ごす訳にはいかないのも事実。

 拠点に居る大将はウラノちゃん。両翼にはルーチェちゃんとディーネちゃんが待機しているから問題無いよね。その信頼も信用もある。


「それじゃ、ここで相手の主力を倒しておくのが最適解だよね……!」

「最高戦力の一つを崩すのは私としても同じ。いざ尋常に勝負!」


 木刀を抜いて構え、魔力を込めて周囲に植物を展開。ゴーレムやビースト達も囲む。

 私達の行うダイバース新人戦団体の部。決勝戦が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ