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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第二百八十九幕 魔専アステリア女学院・中等部二年目の体育祭・終幕

《それでは最終戦! 第四種目! 棒倒し! 参加チームは中等部二年生と高等部二年生となります!》


 決勝となる対戦相手はレヴィア先輩率いる高等部二年生。

 総合力の高い高等部三年生に勝ったんだね。流石の実力。そもそも高等部二年生も総合力が高い筈だもんね~。

 “魔専アステリア女学院”はルミエル先輩の影響でダイバース部が一番有名になったけど、元々各種部活動も名門と言える力を秘めた学校なんだ。

 学校全体のレベルがあらゆるジャンルに置いて高水準。相応の実力は備わっているよね。


《それではスタート!》



 ──“第四種目・棒倒し”。


 決勝は棒倒し。去年もやったね。だけど午後の部じゃなくて午前の部でおこなった事だから、若干ルールの勝手が違う。

 単純に難易度が上がったって思えば良い事だけど……。


「棒倒しって……棒って言えるの……これ……?」

「塔倒しだな」

「素材も頑丈な物を使ってるわね」

「普通に押すだけじゃビクともしませんわ」


 棒……と言われる物は高さ数十メートル。幅数メートルの塔。素材や強度は説明通り。要するに、倒すのは凄まじく大変という事。

 早速選手達は前衛と後衛に分かれ、攻防の姿勢を取る。こちらの指揮官はウラノちゃん。切り込み隊長は本人の希望でボルカちゃんだね。

 そこから更に陣形を組み立て、万全を喫して臨む。


「“覆樹木”!」


 まずは塔を植物で覆い、守りを更に固める。

 私はどちらかと言えば守衛寄りかな。遠距離から植物を伸ばして攻撃も出来るからここに集中しておく。

 主な攻撃はこの子達。


「“フォレストゴーレム”!」

『『『…………』』』


 サイズは少し小さめのゴーレムを召喚してボルカちゃん達と一緒に相手陣営へ乗り込ませる。

 レヴィア先輩も植物魔法を使えるので似たような事をしているけど、魔力出力はこちらが上だもんね。なんでかは……多分ママ達の分が上乗せされてるんじゃないかな。

 迫り来る高等部二年生の先輩達を相手にしつつ、ティナを先行させて攻撃部隊の動向も窺っておく。状況次第で動きを変えられるからね!


「一番槍はアタシだぜ!」


 炎で加速し、勢いそのまま相手の塔へ蹴りを打ち付ける。それによって揺れ、カラカラと欠片が少し崩れた。


「本当に頑丈な塔だぜ。当然センパイ方も魔力で強化してらァ」

「中等部二年、ボルカ・フレム。覚悟!」

「そう簡単にはやられませんよー!」


 ほうきや魔術によって何人かがボルカちゃんの元に迫り、魔法を放出。

 ボルカちゃんはそれらを避け、着地して敵陣営のど真ん中に立った。


「さあ、やりましょうか!」

「負けられるか!」


 立つや否や踏み込み、炎で加速を加えた体術にて先輩達を相手取る。

 多くの先輩が引き寄せられ、その隙に他のみんなが手薄になった塔へ攻め立てた。

 これも作戦の一つだね。わざと目立つ行動をして相手を引き付け、その間に本命を狙う。ボルカちゃんを放置するのも問題だから策に気付いても相手する他無く、勢力の分散を図るやり方。


「“光球”!」

「“スプラッシュ”!」


 攻撃部隊にはルーチェちゃんとミナモさんも参加しており、着実に塔を削っていた。

 私の方も頑張らなきゃね! 植物魔法が信頼されてるからこそ、中等部二年生チームの守衛は人数を減らして攻撃に割り当ててるもん!


「“ファイアショット”!」

「“ウォータースラッシュ”!」

「“ウィンドキャノン”!」

「“土流押込”!」


「“守護樹林”! そして“フォレストビースト”!」


 先輩達の中級以上の魔導は植物で防ぎ、足りない数はゴーレムやビーストで補う。

 この調子ならしばらくはこらえられるね。それまでにボルカちゃん達が成果を挙げるのを期待しておこっと!


「ボルカ。好き勝手はさせない」

「レヴィア先輩。来ましたね!」


 一方で、向こうではボルカちゃんとレヴィア先輩による主力対決が行われた。

 レヴィア先輩は植物魔法だけじゃなく、他の魔法を使う事も出来る。

 一辺倒な私達と違い、様々な力で仕掛けてくるから魔力出力が私達より少し低い程度は問題にならないよね。

 対するボルカちゃんは炎のみでの応戦。だけどボルカちゃんの炎は水すら蒸発させる。


「そらよっと!」

「はあ!」


 炎で加速を付けて薙ぎ払い、レヴィア先輩は土魔法で受け止める。

 確かにこれなら蒸発はしないね。ドロドロの溶岩になる可能性はあるけど、そんな一瞬でなる訳でもないや。

 攻めも守りも順調な現在、ウラノちゃんはパラパラと“魔導書グリモワール”を開いていた。次の行動に移るのかな。


物語ストーリー──“軍隊”」

「「「…………」」」


 生み出したのは多数の軍人。既に私達の植物で数の有利はあるけど、ウラノちゃんは更に増やした。

 棒倒しだから多いに越した事はないけど、何が狙いだろう。そう思っているとティナへ指示を出した。


「──と、そう伝えてきて」

「成る程ね!」『了解!』


 作戦を伝えられ、直ぐ様私はティナを向かわせてチームメイトに作戦を広める。

 戦っている最中だから相手チームにも伝わっちゃうかもしれないけど、その辺もちゃんと考えてあるよ!


「“ファイアパンチ”!」

「“ウォーターガード”!」


 攻撃陣では攻防が繰り広げられていた。相手の炎の拳を水の守りで防ぎ、押し合いの形となる。

 そこへ先程ウラノちゃんが召喚した軍人さんが斬り掛かる。


「はあ!」

「……軍人!? ウラノ・ビブロスの本魔法ね……!」

「指示がある。此処は私達に任せ、指定場所へ向かってくれ」

「ウラノさんの……! 分かりましたわ!」


 複数人で一人を足止めし、指定場所へ向かわせる。これで分断するシンプルな方法。

 あらかじめその場所は伝えてあるから迷わずそこへ迎える。減った人数は植物魔法の動物達や軍人さん達で担っているから大丈夫!

 そのまま全員が集まったところで作戦を伝達させた。


『という事で、ボルカちゃんがレヴィア先輩の足止めしている今がチャンスなの!』

「分かりましたわ。ティーナさん」

「心得た」


 ボルカちゃんは主力であるレヴィア先輩の足止めだからその場で待機。そもそもでそう言う作戦は最初から取っていた。

 さっきもしてたみたいに、なるべく多くの人をボルカちゃんが抑える事で此方こっちの行動がスムーズに行くの。流石に植物魔法の動物達や本魔法の軍人さん達でも経験豊富な先輩達にはそこそこ簡単にやられちゃうもんね。ボルカちゃんは戦うだけで要の役割を担えている。

 作戦を伝え終え、攻撃部隊のみんなも早速行動を開始する。


「行きますわよ!」

「「「はい!」」」


 その場所に纏まり、一斉に魔力放出などで空中へ。

 狙う先は一番影響を与えられる塔の先端。私達の植物魔法も後を追い、サポートを担う。


「……! しまった……!」

「上空……!」

「位置の有利を取られてしまうわ!」

「動こうにも植物や軍人にボルカさんが……!」


 作戦の概要はこう。

 ボルカちゃんと植物の動物達。本の軍人さん達だ相手の防衛を引き付け、確実な隙を作り出す。

 気付かれないように相手を分散させ、手薄になった場所へ一気に突撃。先端に飛び掛かり、重心を寄せて勢いよく倒す魂胆。

 この入り乱れた戦い。どこが手薄になったかなんて、最初から決めていた私達以外に分かる訳がないよね!


「「「はあ!」」」


 チームメイトのみんなは塔へぶつかり、上り、引っ掛かり、体重を掛けて全員で同じ方向に押し倒す。

 植物魔法による質量の追加で更に押し、高等部二年生チームの塔は傾いた。


「マズイ! このままでは倒される!」

「だとしても……! この群衆じゃ動けないよ~!」

「まさか中等部相手に……!」


「そーれ!」


 傾いたならその方向へ引っ張るだけ。

 植物を絡めて押す動きから転倒方向への引きへシフトチェンジ。更に魔力を込め、その方向へ植物で引き、他のみんなで押す態勢が作られた。


「塔が……!」

「余所見はマズイっしょ! レヴィア先輩!」

「……!」


 傾いた塔にレヴィア先輩の意識が向かい、ボルカちゃんはその隙を突いて全身で体当たり。押し倒す形となり、主力が崩れたのもあって他の先輩達は植物と軍隊に押し負け始める。

 あと少し……もう一踏ん張り!


「せーの!」

「「「それぇ!」」」


 同時に魔力を込め、斜塔を完全に倒す。

 ズズーン! と大きな地響きが鳴り、高等部二年生チームの塔は地面と触れ合った。

 これにより、勝敗が定められる。


《終了ォ! 塔が倒れた事により、学年対抗ダイバースは──中等部二年生チームが制しましたァァァ!!!》


「「「やったあああ!」」」


 結果、私達の勝利が決まった。

 チームメイトのみんなは各々(おのおの)で喜びを表現しており、飛んだり跳ねたり抱き付いたりと嬉しそうに歓喜する。


《それでは、“魔専アステリア女学院”体育祭の閉会式を──》


 司会の先輩が話、全体の〆に入る。ちょっとした授与式もあるんだ~♪

 これにより、“魔専アステリア女学院”体育祭は私達中等部二年生チームが初優勝を飾るのだった。

 体育祭でも勝つ事が出来たし、今月の代表決定戦も勝ち進んで見せるよー!

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