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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第二百八十八幕 二年目の魔専アステリア女学院対抗体育祭・午後の部

 ──“体育祭・午後の部”。


《さあてさあて! “魔専アステリア女学院”の体育祭! 午後の部では皆さんご存知、学年対抗ダイバースを執り行います!》


 始まった午後の部の学年対抗ダイバース。体育祭に因んだ競技がダイバースとして出され、執り行われる。学年対抗だから六チーム。同じ学年からは二つ出てるから計十二チームかな。その中でトップが競われるの。

 強敵はディーネちゃん達の居る中等部一年生にメリア先輩の居る中等部三年生。リタル先輩の居る高等部一年生にレヴィア先輩の居る高等部二年生。そして総合的にレベルの高い高等部三年生。要するに全チームが強敵だね。やるぞー!



 ──“中等部二年・第一種目・超大縄跳び”。


 最初の競技は超大縄跳びで、対戦相手は同じ中等部二年生のもう1チーム。……って、超大縄跳びってなに……?

 会場を見てみればとてつもない大きさの縄が持ち込まれていた。もしかしなくてもあれを回して跳ぶって事だよね……。跳ぶ方は大丈夫だと思うけど、回す方が大変かも……。だって身体能力強化の魔力でどうにかなるような物でもないから。

 それは勿論分かっているのか、回す係の人達は土魔法や土魔術で大きなゴーレムを造り出して両端を持たせた、そして開始となる。


『『…………』』

「よし! タイミングを合わせるんだ! 今回の参加者はアタシ達五人だけじゃないからな」

「うん!」

 

 超大縄跳びはチーム全員が参加者。だからこの大きさなのかもね。それは納得。

 最初の競技だから洩れがないように全員参加って形なんだね。それならみんなで勝ったと言い切れる。

 超大縄は回され、暴風が吹き荒れる。各チームの風によって打ち消され、私達は跳躍した。


「「「いーち!」」」

「「「にーい!」」」

「「「さーん!」」」


 次々と跳び行き、数を数える。

 この大きさなら速度も緩やかであり、疲れるまで跳び続ける事も可能かもしれない。

 でも、そんなに甘い試合にはならないのが“魔専アステリア女学院”。


『『…………』』

「速度が上がってきたな」

「最後の方には音速を越える事もあるそうよ」

「そんなのとても避けられませんわ!」

「だけど魔法の使用がありなら何か出来るかも!」


 次第に縄の速度が上がり、風圧で地面を抉っていく。

 これを続けると音速以上。だったら何かしらの手を打たなきゃならない。


「……! そうだ……!」


 そして私は思い付いた。

 この方法なら魔力が切れるまで引っ掛かる事はない。だけどそれを全員に伝えなきゃならないもんね。

 その時に有用なのがティナ。私は魔力を込め、ティナで全員に方法を伝えた。


「成る程」

「分かりましたわ」

「同時ですね……!」


 この方法は一度成功すればほぼ勝ちが確定するけど、全員が同じタイミングで飛ばなきゃ引っ掛かってしまうのがオチ。

 それを伝える術もティナにある。音声伝達が可能であり、魔力の解釈を広げればティナを繋ぐ糸にも言葉を通せるからね。

 そして私達は同時に飛んだ。


『せーの!』


 チームのみんなの耳にだけ入るように掛け声を出し、一斉に魔力を放出。そのまま空中で止まり、空中浮遊を可能にした。

 そう、方法って言うのはこれ。縄の当たらない部分で飛んでいたら魔力切れまで耐える事が出来る。

 他の人達も思い付く方法だと思うけど、全員に的確な指示を出さないと前述したように引っ掛かっちゃうからね。ティナあってこそのやり方。

 これにより、徐々に早まる超大縄跳びを乗り越え、中等部二年生では私達が勝ち上がる事が出来た。

 次の相手は順番的にディーネちゃん達だね!



 ──“第二種目・魔導合戦”。


 次の競技は魔導合戦。単純な魔力の打ち合いだね。

 より多くの相手を倒し、より多くのポイントを取った方が勝ち。これも五人だけじゃなくて二、三十人くらいのチームで行う。相手はディーネちゃん達。油断はならないね。


「勝ちますよ。先輩!」

「私こそ! 後輩ちゃん!」


《第二種目、魔導合戦! スタート!》


 互いに陣地へ入り、魔導合戦が始まった。


「先手必勝だ!」

「「「おー!」」」


「撃ち込みます!」

「「「おー!」」」


 ボルカちゃんの言葉と同時に複数の魔弾が撃ち込まれた。

 一年生チームの子達も放ち、魔力同士の衝突で辺りに魔力が散る。


「防衛ラインは作ったから魔力が足りなくなった人は入って!」

「ありがとう! ティーナさん!」


 魔弾の撃ち合いではあるけど、魔導の使用もあり。

 だけどある程度は制限されており、一部に限られているの。その使用権限は多様に使える私達の植物魔法に与えられており、防御空間を作った。

 大きさも限られてるけどねぇ。その辺は一方的にならないように配慮されてるんだ。体育祭はあくまでお祭りだからね!


「“空間掌握・固”! みんなはここに入って!」

「ありがと! ディーネ!」

「サンキュ! スパシー!」


 向こうの防御はディーネちゃんみたい。空間魔術を思えばピッタリな役割だね。

 疲れた人は植物と空間の防御地で休み、ボルカちゃんや動ける人達は避けながら魔弾を放っていた。


「くっ……!」

「うわっ……!」

「くぅ……!」


 魔力の撃ち合いでチームメイト達がどんどん減っていく。

 見る見るうちに人数は一桁へと差し掛かり、私達は五人で向こうはディーネちゃん達四人が主力となって残る。

 まだ居るけど、減っちゃうのも時間の問題かもね。そこでウラノちゃんは他のみんなに指示を出す。


「みんな。一旦近くに集まって。乱雑に撃つんじゃなくて作戦があるの」

「「「……?」」」


 みんなを集め、魔弾を守りながら作戦会議。

 耳打ちし、その行動へと乗り移った。


「撃って!」

「「「はあ!」」」


「……! 並びを変えて順番に……!」

「魔弾が途切れなく来る……!」


 魔力を撃ち込む際、力を込めて放つまで少し時間が掛かる。

 ウラノちゃんの作戦は、その時間を短縮する為に前列と後列で分かれ、前列が撃った瞬間に後列へ。後列が撃ったらまた前列へと交互に撃ち込んで行うものだった。

 他の列が撃っている間に弾は込められるから時間の短縮になり、隙間なく放つから効果的なの。


「押し切られる……!」

「防御空間には入ったばかりだから……!」


 防御の空間は居れる時間も限られている。そうしなきゃずっと籠っちゃって破れないもんね。

 それもあり、次第に一年生チームの子達は追いやられ、最後に残ったディーネちゃんに魔弾が撃ち込んで倒した。


「やった! 二回戦も突破!」

「うぅ……先輩達に一回も勝てない……」


 中等部一年生チームに勝利を収め、次の相手へ。私達の次に当たる予定なのはメリア先輩の居る中等部三年生かリタル先輩の居る高等部一年生。

 どっちが相手になるのか、放送部の部長さんが司会を発した。


《お次は第三種目! 中等部二年生vs高等部一年生! スタートです!》


 対戦相手はリタル先輩達高等部一年生。メリア先輩達中等部三年生は残念ながら負けちゃったみたいだね。

 言い渡された種目は、大玉入れ。



 ──“大玉入れ”。


「負けませんよぉ~」

「私達も負けませんよ!」


 大玉入れ。魔導玉入れの大サイズバージョンだね。

 相手はリタル先輩。本人も強いけど、周りへ及ぼす影響の大きさが何より強い。チーム力でメリア先輩を倒したんだろうね~。

 試合は始まった。


「そ~れぇ~」

「「「はあああ!」」」


「魔力の質が一気に向上して……!」

「リタル先輩の本領発揮だね……!」


 先輩達は、元々人数が少ないのもあってダイバースの大会では思ったより振るわない結果になってしまっている。

 だけど今回の体育祭では大人数が参加している事なので先輩の香料魔法の効果は絶大だった。


「こりゃ一筋縄じゃいかないな……!」

「気合い入れて行きますわー!」

「「「おおー! ですの!」」」


 高等部一年生の先輩達が全員、リタル先輩の香料魔法によって通常の数倍の力となる。

 魔力の気配を読めるようになったからこそ、それを犇々(ひしひし)と感じるようになった。

 だけど直接対決ではなくあくまで大玉の数を競うもの。負ける気は無いよ!


「“樹海の手”!」


 植物魔法で手を作り、大玉を持ち上げてカゴの中に入れる。

 ボルカちゃん達も次々と入れていた。


「玉は大きいけど、直接ブチ込めば問題無いぜ!」

「ダンクシュートですの!」

「それって玉入れかしら? 物語ストーリー──“ミノタウロス”」


 ボルカちゃんは大玉を下から支え、炎で空中へと飛んでそのまま入れる。

 ルーチェちゃんは光魔法の衝撃波で大玉を浮かせ、ウラノちゃんはミノタウロスを使って入れていた。

 他のみんなは数人で力を合わせたり魔法を使ったりで入れ、順調に進んでいた。

 高等部の先輩方はと言うと。


「入れますわー!」

「力が溢れますわー!」

「やりますわー!」


「す、スゴい気迫……」

「身体能力が向上してんな~」


 私達の倍の速さで動き周り、大玉を籠へ放り投げていた。

 このままじゃ勢いで押されてしまうかもしれない。私達も力を入れ直し、より多くの植物で大玉を入れて得点を稼ぐ。

 制限時間は三分。つまり、もう終わりを迎えた。


《終了~! それでは! 結果を発表致します!》


 一つにつき一ポイント。大玉の数を一つ一つ数え、最終的な結果が表れた。


《中等部二年生チーム! 103個で103ポイント! 高等部一年生チーム! 86個で86ポイントとなりましたー!》


「……あれ? 思ったより先輩達の得点が少ない……」

「多分あれが原因かー?」


「力が有り余り、狙いが定まりませんでしたわ!」

「この力の行き処は!?」

「どうなんですのぉ!?」

「あらら~。調整が利きませんでしたかぁ~」


「あぁ~。そんな感じなんだね」

「玉入れは意外と精密な狙いも必要だものね」


 高いは高いけど、思ったよりもポイントが少なかった理由はバフが玉入れって競技に合わなかったみたい。

 確かにそれは納得かも。溢れ出て調整出来なかったら飛び越えちゃうもんね。

 何はともあれ、これでリタル先輩達にも勝利を収めた。次は決勝、去年はルミエル先輩とイェラ先輩が居たから特別編成で試合数が多かったけど、普通はこれくらいなんだって~。

 決勝の相手は高等部の三年生かレヴィア先輩の居る高等部二年生チームのどちらかだね。

 “魔専アステリア女学院”の体育祭も終盤へ差し掛かるのだった。

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