第二百八十二幕 二年生ダイバース新人戦・都市大会・チームの部
──“数日後・ダイバース新人戦・都市大会”。
《さあ! 始まりましたァ!! “多様の戦術による対抗戦”!! 新人戦都市大会!! 地区大会を勝ち抜いた猛者達による──》
翌週、私達は都市大会の会場へと集まっていた。
ここからは勝ち抜く難易度が一気に上昇する。来る度に言っている事だけど、全員が地区大会を勝ち抜いた人達だもんね。
そして都市大会と言えば、
「エメちゃん!」
「こんにちは。皆さん!」
エメちゃんが居る。地区大会は当然勝ち抜いたみたいだね。
司会者さんの話も終わったので試合が始まるまでちょっとした雑談。今年もどこかでエメちゃん達と当たっちゃうのかな。
「今年は出来れば決勝戦で当たりたいね~」
「そうだね。この際その辺りまで勝ち上がるのを前提として、それなら上位チームは代表決定戦まで行けるもん」
都市大会から、優勝メンバーのみならず上位数チームが代表決定戦まで行けるようになっている。
なのでいつも途中で当たり、激戦を繰り広げているエメちゃん達も一緒に代表決定戦まで行ける可能性があるの。
今回は中等部最後の新人戦だし、一緒に行けたら良いな~。
その前に強敵揃いの都市大会を勝ち上がらなきゃいけないけどね!
「それでは、もし当たったら容赦しませんので……!」
「うん。その時は私も全力で取り掛かるよ!」
そう交わし、一回戦へと臨む。
都市大会も行うのがチーム戦と個人戦なのは一緒。今日はチーム戦からだね。
勝ち進んで行くよー!
──“一回戦・チームバトル”。
「じゃあ早速行くか!」
「うん!」
一回戦はジャブ感覚で単純な戦闘から入る。
地区大会は優勝したチームが相手。油断はしないし出来ないね。
先陣を切るのは気配が読める私とボルカちゃん。一回戦なので他の三人は一年生であり、サラちゃん、ベルちゃん、リゼちゃんが参加している。
後進育成って感じかな。一年生のみんなはそんな事する必要が無いくらい優秀だけどねぇ。
「っしゃ、サラ! コンビネーション的な技決めようぜ! 折角のチーム戦なんだからさ!」
「りょ! ボルカ先輩!」
既に植物魔法で相手の誘導は終えている。後は全員で仕掛ければ良いだけ。
「そらそらそら!」
「ほらほらほら!」
「上手いな。炎の操作!」
「ウチも練習してますから! 先輩♪」
「なんてやつらだ……!」
「速い……!」
炎で加速し、相手を翻弄して攻め立てるボルカちゃんとサラちゃん。炎使い同士通じる物があるらしく、瞬く間に相手の意識を奪い去った。
私達も負けていられないね。
「頼んだよ! ベルちゃん! リゼちゃん!」
「任せてくださいまし!」
「やってみます」
「周りが囲まれて……!」
「土と風に押される……!」
「チクショー!」
植物で取り囲み、寄せた所に土と風による攻撃。
風に吹き飛ばされ、地面によって圧縮される。それにより相手の意識は消え去った。
これで一回戦は突破だね!
──“二回戦・かくれんぼ”。
「こっちだな」
「うん」
二回戦はかくれんぼ。ルミエル先輩と一番最初にしたゲームだね。
単純なそれなら気配を読むだけで見つける事が出来るんだけど、今回は隠れる側になったので見つからないように気を付ける。
時間制であり、一定時間隠れられたら勝利。探す相手の場所も分かるので無事に勝つ事が出来た。
──“三回戦・迷路”。
「こっちか~?」
「こっちじゃないかな?」
三回戦は迷路。迷宮脱出ゲームと同じようなものだけど謎解きとかは無く、本当にただ抜け出すだけ。
周りや風を読んでどこから来ているのかを把握し、多少は迷いつつも相手チームより先にゴールする事が出来た。
これでダイバース新人戦、チームの部初日で勝ち残る事を達成する。
──“二日目・準々決勝・ポイント奪取ゲーム”。
《それでは──》
いつも通り司会者さんの話を終え、二日目がスタートした。
四回戦はポイント奪取。地区大会でウラノちゃんが行ったゲームのチームバージョンって考えて良いね。
なので今回の出場者はウラノちゃんと一年生四人。私達の温存や一年生の育成を兼ね備えた選出。
みんなとても強いし、ウラノちゃんの司令塔としての能力を考えれば不安要素は無いね。
「ディーネさんはこの位置、サラさんとリゼさんが挟み、ベルさんは守衛を中心に取り掛かって頂戴。私は召喚獣で貴女達の位置に向けて囮や陽動を担うわ」
「はーい!」
「はいですわ!」
「はい……!」
「はい」
作戦を立てて指示を出し、自分はあまり手を出さない。
危なくなったら手を貸すけど今回は育成メインだから必要な時まで行動を起こさない方針みたい。チーム的に余裕があるから回せるんだね。
四人は指定位置に付き、ウラノちゃんは魔力消費の少ない本の鳥達とかで担う。
「これはウラノ・ビブロスの本……!」
「という事はどこかに本体が居るかもな」
「警戒はしてよね」
「言われなくても」
「誘われている可能性もあるが、どの道近付かなければ始まらない。防御魔法の準備はしておこう」
まんまと誘い込む事に成功し、本の鳥達を追って指定位置へ。
当然警戒はしており、防御魔法を展開する準備も出来ていた。だけどウラノちゃんはその先まで読んでいる。
「“水球”……!」
「やはり誘われていたか!」
「ディーネ・スパシオの魔力であろうと、我らが力を合わせれば防ぐ事も敵う!」
ディーネちゃんが水魔術を放ち、相手は全員でそれを防ぐ。
周りへの警戒は怠っておらず、ちゃんと迎撃態勢にも入っていた。……けど、
「貰い!」
「覚悟!」
「……! 左右から……!」
「慌てず態勢を……!」
「ダメです! 速過ぎます!」
二人の速度を低く見積もっていたみたいだね。
炎と風で簡単に回り込み、そのまま仕掛けて数人の意識を奪い去る。残った相手は狙いを定めてサラちゃんとリゼちゃんに魔法の準備をした。
「“土壁”!」
「「「……!」」」
だけど攻撃前にベルちゃんの防御が発動し、事前に攻撃を防ぐ。
ここはウラノちゃんの指定位置だもんね。全体を見渡せるかつ土魔術の届く場所にベルちゃんはおり、相手の動きを認識したから即座に守る事が出来たみたい。
反撃が不発に終わり、出鼻を挫かれた残りの人達も倒し、ウラノちゃんと一年生四人のチームで勝利を収めた。
──“準決勝・水上レース”。
「普通のレースとは違うのか?」
「ほうきレースとかとも違うね。乗り物が決まってるみたい」
準決勝の舞台は水辺。箒とも違う船的な乗り物でレースを行うみたい。
レース系のゲームは毎年入ってくるね。でもいつもと少し違う感じ。
出場選手は私とボルカちゃんにサラちゃんリゼちゃんディーネちゃん。加速を中心に行えるメンバー。入り組んだ道でも細かな調整は利かせるよ。
レースがスタートした。
「“包囲樹木網”!」
「“アクセルフレイム”!」
「“炎加速”!」
「“加速風”!」
「“水上加速”!」
「「…………!?」」
「「…………!?」」
「なんだと……!?」
──そして全員を植物で覆い、繋ぎ合わせて一斉に加速魔導を放出。あらゆる道を抜け、一瞬にしてゴールへと到達した。
これで準決勝も突破。チームの部は明日に行われる決勝戦だけ。
あれ? そう言えば今回はまだ当たってないチームがあるね。
──“三日目”。
《“多様の戦術による対抗戦”! 都市大会! いよいよ最終日となりましたァ!! とは言ってもチームの部はですが、これにより勝ち残ったチームは──》
ダイバース新人戦。チームの部としては最終戦を迎えた今日、司会者さんの話を余所に今回戦う人とお話しする。
「エメちゃん! まさか本当に決勝戦で当たる事が出来るなんてね!」
「そうですね! これで勝っても負けても代表決定戦は決まりになります! ……でも、負けませんよ……!」
「うん。私達も負けないよ。決勝戦はシンプルなバトル。決着を付けよう!」
「私は負けっぱなしですけどね……! だから今回はより一層気合い入ってます!」
エメちゃん達のチーム!
今までは序盤で当たる事が多かったけど、ついに決勝の舞台で相見える事になる。
これで両チームの代表決定戦入りも必然的に決まったようなもの。だけど、だからと言って手を抜く訳にはいかない。それは相手にもお客さん達にも悪いからね。
それに、私は今まで1vs1でエメちゃんに勝った事は無かったかもしれない。そう言う意味でも決着を付けたいね。
「じゃあエメちゃん。決勝のステージで」
「はい。負けませんよ……!」
「アタシ達も忘れんなよ~!」
「エメさんの仲間達もね」
会話が終わり、丁度その頃合いに司会者さんも大きく言い放った。
《それでは決勝戦!! チームバトル!! スタァァァトォォォ!!!》
「「「どわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」
「「「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」」」
『『『グギャアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!』』』
『『『キュオオオオオオオォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』
それと同時に今回のステージへ転移。私達とエメちゃん達による決勝戦が始まった。




