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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
282/457

第二百八十一幕 二年生ダイバースの新人戦・地区大会終了

 ──“控え室”。


「…………」


 ウラノちゃんとリゼちゃんの試合を見、息を飲む。つい熱中してしまっていた。

 仲間同士の対決は毎回手に汗握るよね~。どっちにも勝って欲しいけど、勝ち残るのは一人だけ。結果、今回はウラノちゃんが制した。

 今後個人戦があるとしたら高等部二年生の時。それまではお預けになっちゃうね。

 すると、控え室の扉が開いて今しがた試合を終えた二人がやって来た。


「ウラノちゃん! リゼちゃん! お疲れ様~! 良い試合だったよ~!」

「ありがと。でも次は貴女の番でしょう? 準備は大丈夫なのかしら?」

「大丈夫! 呼ばれたらいつでも行けるよ!」

「もう始まるけど」

「あ!」


 時間が迫っていたのであまりお話は出来なかったけど、少しは話せたから良かった~。

 私は慌てて控え室を飛び出し、準決勝に臨む。そして勝利を収めた。


「勝ったよー! これでみんな決勝まで行けるね!」

「二年生のメンバーだけだけどな~」

「地区大会で後輩達全員と当たってしまいましたものね」

「そうね。でもそう言うものよ。去年の私達も通った道……先輩はメリア先輩だけだったけどね」


 準決勝は無事突破した。ウラノちゃんに触発されて頑張っちゃった!

 これで残るのは決勝戦のみ。決勝は基本的に1vs1のシンプルなバトル。私達の得意分野かもしれない事柄。

 ディーネちゃん達は私達と当たったばかりに終わっちゃったけど、打ち負かした先輩として優勝しなきゃね!



 ──“決勝戦・個人バトル”。


「先手必勝! “樹木一点槍”!」

「速い……!」


 決勝が始まり、相手の気配を探知と同時に植物魔法を放出。しかも一点集中バージョンの高威力仕様。

 対戦相手の体を打ち抜き、意識を奪い去って決勝戦も突破した。

 ボルカちゃん達はどうかな?



「──ほらほら、遅いぜ!」

「くっ……速い……!」


 炎で加速し、相手を翻弄。

 ビブリー達の戦い見て気合い入ってっからな。今のアタシは数倍強いぜ。

 炎の軌跡を描き、相手の周囲を回る。既に勝負は決まった。


「一丁上がりぃ!」

「……っ」


 炎剣で切り伏せ、意識を奪い去る。それによってアタシの勝利は確定。

 今更地区大会じゃ相手にならないぜ。っと、調子に乗ってると足元掬われるからあまり乗らないで置くか。去年のアタシ達みたいな例年まで記録がなかった強者つわものも居るかもしんないしな。

 取り敢えず、決勝戦は無事突破だぜ。心配する程でもないと思うけど、他の連中は大丈夫そうか?



「──“光球連弾”!」

「……っ。息も吐く暇が……無……!」


 対戦相手に向け、光球を無尽蔵に撃ち込み続ける。一撃が当たる度に意識が遠退き、一際大きな爆発と共に光の粒子となって転移した。

 気合いが違いますものね。私の勝利ですわ!

 おそらく皆様も大丈夫でしょう。



「──それで、終わりで良いわよね?」

「カハッ……!」


 丸太に腰掛け、ミノタウロスに持ち上げられてボロボロの相手へ銃口を向ける。

 こんなになっても意識があるのは中々の耐久力だけど、私には及ばないわね。準決勝が事実上の決勝戦だったと考えても良さそう。

 藻掻くので揺れて狙いは定まり難いけど、リゼさんの風に比べたら大した事も無し。銃弾を撃ち込み、意識を奪い去って試合に勝利した。

 既に他のみんなは終わっているかもしれないわね。

 その後会場に戻り、決勝戦を突破したメンバーと表彰式に出る。まだ都市大会も代表決定戦も残っているから表彰なんてする必要が無いと思うんだけどね。



*****



 ──“数時間後”。


「やったー! これでみんなと都市大会に行けるね!」

「だな。一番の強敵は当然と言うか、サラだったぜ」

「私もなんだかんだベルさんが一番苦戦しましたわ」

「私もリゼさんがそうね。結局身内だけの地区大会になっていたかもしれないわ」


 地区大会が終わり、解散となった頃合い。私達四人は感想を言い合っていた。

 都市大会は来週にも始まり、勝ち抜いたとして代表決定戦は来月。そこも突破した代表戦は来年に入ってから。先ずは数日後に行われる都市大会からだね。


「あ、せんぱーい!」

「表彰式が終わったのですわね!」

「お疲れ様です……」

「強かったです」


「あ、みんなー!」

「丁度話してたんだ。結局一番強かったのはお前達だなーってな!」

「そうですわ!」

「常に私達と高め合っているから当然と言えば当然なのだけれどね」


 大会終了後、外で待ってくれていたディーネちゃん達とも合流する。

 今日は打ち上げ……まではいかないにせよ、夕御飯は食べて帰ろうかな。近くのレストランにダイバース部のみんなで行き、軽く食事を摂る。

 これにてダイバース新人戦、地区大会は終わりを迎えるのだった。

 後は来週の都市大会だね。猶予は意外とそんなに無いの。



*****



 ──“翌日”。


 次の日、大会後だったから今日はお休み。でもすぐに都市大会は始まるからあまりのんびりはしていられないよね。

 そんな事を考えながらもお休みは大事なのでゆっくりと休憩する。


「この辺りにこれを置いて……お隣は……」


 趣味のミニチュア&お人形製作をしながら。

 内観は一通り整えた。なので次はいよいよお人形の方に当たる。今居るのはママ、ティナにボルカちゃん。

 だとしたら……ルミエル先輩達にルーチェちゃん達。ディーネちゃん達を作ろっかな。もう知ってる事だけど、お友達が沢山増えたよって教えなきゃね。


「うーん……難しい。特にルーチェちゃんの縦ロール……この絶妙なうねり加減。どうやって整えよう……」


 そして早速行き詰まった。

 まずは一番身近なルーチェちゃんとウラノちゃんを作ろうとしたけど、最初にルーチェちゃんを作るのは失敗だったかもしれない。作っていて楽しいけど造形がとても複雑で難しい。主に髪型が。

 でも髪型以外のパーツは作っちゃったし、この難所を乗り越えなくちゃ……!

 するとそこに、ノックする音が響いた。


「ティーナ居るか~? 暇だったらどっか行こうぜ~!」

「ボルカちゃん!」


 ノックの主はボルカちゃん。

 暇って程じゃないけど、ちょっと行き詰まっちゃってるもんね。気付いたら数時間は作ってるし、息抜きがてら行くのも悪くないかもしれない。

 取り敢えずテーブルの上にそのまま置いておき、扉を開けた。


「よっ!」

「うん! 今ね、お人形製作してたんだけどルーチェちゃんを作ってみたら髪型が難しくてさ~」

「あー、そりゃ確かにそうだな。あの髪型は複雑だ。布をこう、ペンか何かでクルクルしてみたらどうだ?」

「あ、それ良いかも」

「でもそれなら遊びに誘うのは迷惑かもな」

「ううん。数時間くらい熱中しちゃってたし、ずっと同じ体勢だったから体をほぐす的な意味でもグッドタイミングだよ」

「そっか。良かったぜ。んじゃ、いつもの雑貨屋にでも行ってなんか面白そうな物が入荷してないか見てみようぜ」

「そうだね!」


 場所は特に決めていないけど、行き着けの雑貨屋さんに行く事にした。

 変わり種の魔道具とか普通のお店より色々置かれており、人も少な目で落ち着くからよく行ってるんだ。

 でも私達が通ってるってなったら人が増えちゃうかもしれないし、その辺は気を付けておく。前の“魔導戦線”の影響で私達の方は緩和したから大分マシになったけどね。

 何はともあれそこへ向かう。



 ──“雑貨屋”。


「いらっしゃい。おや、君達か」

「はい。お休みなので来ちゃいました」

「なんか面白いのありますかー?」


 いつもと変わらず、色々な物が置かれている雑貨屋さん。

 薬局の側面もあり、薬草とかの植物コーナーも豊富。だからかな。なんか居心地が良いんだよね~。

 女性店主さんは返す。


「面白い物か。難しい注文だな。特に新しい魔道具とかも無いが……ああ、これはどうだ? ルミエル・セイブ・アステリアが研究している次元の観測を可能にするメガネだ。サンプルとして試して欲しいと一台貰ったんだが、私には理解出来なくてね」


「ルミエル先輩が?」

「確かにそんな事を言ってたような……」


 次元の観測。ルミエル先輩ってそんな事してるんだ。ボルカちゃんは何か心当たりがあるみたい。

 でも確かに“魔導戦線”の時に次元の云々を説明していたような気もする。取り敢えず試着……試用? は無料。装着してみる事にした。眼前に広がる光景は……点?


「なにこれ?」

「一次元の世界らしい。横のダイヤルを回すと魔力に反応して二次元や三次元、四次元へと順を追って体感出来るらしいぞ」

「成る程な~。点や線、立体。時空間だっけか。ティーナ。回してみたらどうだ?」

「うん、やってみる」


 カチカチとメモリを合わせて次の次元へ。

 二次元世界は線。なんか平坦に見えるけど認識は可能。三次元は普通に私達が見てる景色だね。ちょっと質の良いメガネって感じ。

 そして四次元世界。


「……!? な、なにこれぇぇぇ!?」

「どうした!?」

「ふふ、分かる。私もそうなった」


 私が見た四次元世界は、とにかくよく分からないの一言に尽きる。

 色んな物がなんか変な感じで違和感があってグチャグチャで、壁の向こうまで見えちゃう。

 多分私達の居る三次元の言葉じゃどの言語をもちいても言い表せない世界なんだと思う。

 ずっと見てると混乱しちゃうので試したがっているボルカちゃんに渡した。


「うおああ!? なんじゃこりゃあ!?」


 初めて見る四次元世界の光景に、ボルカちゃんも思った通りの反応。既に経験した私と店主さんは「うんうん」と頷く。

 本当に理解の向こう側にある感じ。だけどあれを見た後のこの世界で私は、何でも出来そうな全能感に包まれた。一瞬四次元を体感しただけでこの感覚。ルミエル先輩の研究が成功したら文字通り世界が変わるのかも……。


「どうだ? 面白かったか?」

「面白いっちゃ面白いけど、なんかもうハッチャカメッチャカだ」

「それを言うならしっちゃかめっちゃかな気もするが……まあまだ脳が休まってないのだろう。お菓子とお茶でも出そう。常連だから奢りって事でな」

「お、あざーす!」

「ありがとうございます……!」


 お茶とお菓子を貰い、疲れた脳を休める。

 ルミエル先輩の研究の果てに何があるのか、楽しみだけどなんか怖さもあるね。

 取り敢えず、確かな息抜きにはなったかな。これでまたインスピレーションや創作欲湧いてきた。お人形を完成させるよ!


「それじゃ、来週の都市大会頑張りなさいや」

「うーっす! 勝ってきますよ~!」

「頑張ります!」


 都市大会へのエールを貰ってお店を後にする。一瞬だけど認識した四次元。これもなんかに生かせないかな。色々とアイデアは浮かんでくる。

 何はともあれ、多分体も休まった。休日としては上々かな。

 いよいよ来週に始まるダイバース新人戦の都市大会。負ける訳にはいかないよね!

 私達はその日に向けてまた練習を続け、万全の状態で都市大会へ臨むのだった。

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