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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
280/457

第二百七十九幕 二年目のダイバース新人戦・地区大会・準々決勝

 ──“個人の部・三日目”。


《さあ! 常に盛り上がりを見せた“多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”の新人戦地区大会もいよいよ今日で終わりとなります! どの選手が都市大会へと駆け上がるのか!? 一瞬足りとも目を離せぬ事となるでしょう! それでは選手達の──》


 話と入場を終え、今日の舞台に参加する面々が揃う。

 勝ち残れるのは各ブロックの優勝者だけ。今年は例年より人数が多いからそう言う選定になったんだって。

 何はともあれ、今日も勝ち上がるよ!



 ──“準々決勝・点取りゲーム”。


「そーれ!」

「……っ」


 準々決勝は点取りゲーム。名前通り点をより多く取った方が勝ちなシンプルなルール。やった事はあるね。

 ボールを一つ置かれ、リングのゴールに入れると一点。これはこれで別のスポーツでもあるよ。

 そんな感じで植物魔法の独壇場。蔦でボールを縛り、次々と入れていく。守備の方も植物でガード出来るからゴールは守れるね。

 最終的には10-0で私達が勝利した。


「………」


 ──そう、私達は勝利した……けど。

 私はこれから準々決勝が始まる別ブロックのモニターへと視線を向け、会場に居る二人に着目する。

 そのブロックでの準々決勝は私より遥かに強敵同士。



 ──“別ブロック・準々決勝”。


「まさか、貴女と戦う事になりますとはね。ベル・ノームさん」

「ええ、そうですわね。ルーチェ・ゴルド・シルヴィア先輩」


 ルーチェちゃんとベルちゃんの対決。

 いつもの口調で開始前から軽口を叩き合っており、優雅な立ち振舞いで火が着いていた。

 避けては通れない道。どちらが勝つかは分からない。


「準々決勝となるであろう、優雅で可憐な立ち合いにて決着を付けましょう」

「望むところですわ。美しき闘いで観客様方の心も鷲掴みですわ!」

「ふふふ」

「ホホホ」


《それでは始めましょう! 準々決勝! ──“お宝発掘ゲーム”! レディ……スタートォォォ!!》


「「……え?」」


 司会者さんの言葉と同時にルーチェちゃんとベルちゃんは転移。試合が始まる。



*****



 ──“準々決勝・お宝発掘ゲーム・鉱山ステージ”。


 爽やかな……ちょっと土臭いですけれど、爽やかな風が吹き抜け自慢の髪を揺らす。

 荒れた場所に咲くわたくしという一輪の華。片手には穴堀魔道具……服装は採掘用の特別衣装……って!


「何なんですのーっ!? このルール! いえ、お宝のきらびやかさは私に相応しいですけれど、もっとこう、なんかあるでしょう!?」


 雅で優雅で可憐な立ち振舞いを心掛けておりましたのに、まさかこの様なルールとなるとは……。泥臭い作業は私向けではありませんわ。

 私達の中でもこう言った作業が似合うとしたらボルカさんくらい……ダ、ダメですわ。想像してみたら汗水流して働くボルカさんの方が今の私より何倍も美しく感じてしまいましたの……。

 向き不向きの問題ですものね。私もおそらく、きっと、とても映えている筈ですわ。平常心を保たなければ……!


(そもそもお宝発掘ゲームとはなんでしょう……)


 普通の宝探しゲームと何が違うのでしょうか。あらかじめ採掘用の道具が手渡されている事以外は差違点が見つかりませんの。

 それに何を見つけるかの説明も無しですものね。知ってる情報は“お宝”を見つけるという事だけ。

 流石に目印くらいはあると思いますし、探し当てるしかありませんわね。

 私もベルさんも気配は読めないので、鉱山を掘り進めるうちに当たったら対応しましょうか。


(手始めにこの辺りを……)


 ザックザクと手当たり次第掘っていく。

 掘りやすい土質ではありますわね。それを含めての物なのでしょう。

 少し進み、限界に達した。


「もうやってられませんわ! “光球”!」


 柔らかい土質ならばと光球を放ち、地面に大穴を空ける。

 この方が早いですわね。一瞬で空いた穴を滑り降り、キラキラと輝く物を拾った。どうやらそれは金貨のようですわね。本物ではなく魔力からなる偽物ですけれど。


「これがお宝でしょうか?」


 呟き、じっと見つめていると金貨は魔道具に吸われるよう消え去り、取り込んだ魔道具に“5ポイント”の表記が。

 そう言う事ですの。一つのお宝を見つける訳ではなく、見つけたお宝の総量を競うようですわ。

 読み込む直後なら相手から奪い取るのもありとして、それは出会った時でよろしいでしょう。

 方法が決まり、まだ少し奥に金貨の気配を感じたので光球を放ち、金貨は消滅した。


「あら、やってしまいましたの(……成る程ですわ。魔法などによって消滅してしまったらポイントは入らず、損だけする。ある程度進めたら自力で掘るしかなさそうですの)」


 これで今回のルールの勝手は理解しましたわ。それに則り、より多くのポイント……もとい、お宝を取った方が勝利となるのでしょう。

 思ったよりも単純でしたわ。おそらく金貨は下から数えた方が早いポイント。もっと高価な物があると考えてもよろしいでしょう。


(そうと決まれば……!)


 先程消滅させてしまいましたが、まだいくつか金貨は残っておりますの。いえ、これは金塊ですわね。

 魔道具に吸わせると“20ポイント”の表記が。金貨の4倍。これは得をしましたわ。

 先程の物が惜しくも思いますけど、あれは普通の金貨。ルールを知る為の授業料としておきましょう。

 次なる地点を探しに行きますわ。


(洞窟内を捜索してみましょうか)


 おそらく地表にある物は大半がノーマルポイントの金貨などでしょう。先程の金塊は本当に運が良かっただけ。

 なので私は洞窟内の探索に当たる。


(この辺りが良さそうですわね)


 光魔法によるライトで照らし、手頃な場所を見つけましたわ。

 魔道具による肉体労働はあまり趣味ではありませんので、軽く光魔法を押し当てて削っていく。当てるだけですので楽に掘れますの。

 そうして見つけ出すはダイヤモンドなどの鉱石。見つかる場所にしては浅い気もしますが、その辺は本物ではないので気にしなくてもよろしいでしょう。

 これにより“10ポイント”を獲得。金貨の倍ではありますけど、より純度の高い物ならば更に行くのか、あくまで作られた物なのでポイントは一定なのか……おそらく後者と思いますわね。今回に置いてはカラット数などはあまり関係無さそうですわ。

 取り敢えずこのままの調子で掘り進めるのみですわね。


「……! あら?」


 掘っていると、何やら向こうから音が聞こえますの。この場に居る者など言わずもがな。一人だけですわ。

 私は光を消し去り、身構える。ここは奇襲を仕掛けた方が良いかもしれませんわね。まだ音だけであり、周りにも影響は無い。けれど先程までの光が見つかっている可能性もある。それも考慮した上での奇襲。

 まだ気配は掴めませんけど、音の響きからどの辺りの距離に居るか程度は分かりますの。狙い目は射程圏内に入った瞬間ですわ。

 次第に音は大きくなり、近くでカラカラと石ころが転がった。


「“光球”!」

「……!?」


 丁度向こうには見えない位置でぜ、光の爆発が洞窟内に広がる。

 いくつかは消滅しましたが、いくつかは転がり落ちたので回収してポイントを獲得。

 どうやら銀や銅もあったらしく、それらはそれぞれ“3ポイント”と“1ポイント”でしたわ。効率的にも宝石が狙い目のようですわね。エメラルドやサファイアなど、それぞれ10ポイント前後。ダイヤモンドと同じくらいですわね。本来は価値に差も出ますが、今回はそう言うルール。

 そう言えば、向こうから奪取する事も考えていましたが魔道具に吸い込まれてはどうしようもありませんわね。あくまで自分でポイントを取らなければならなそうです。


「この光の爆発……当然ルーチェ先輩ですわね!」

「そうですわー!」


 私の事を把握し、周りから土魔術が生え伸びる。

 洞窟内は向こうのテリトリーでしたわね。此方のアドバンテージは光で照らせる事ですが、私の位置を教えるも同義。活用法を考えなくては。


「“土竜蛇走”!」

「モグラなのか蛇なのか!」


 洞窟内を伝い、全方位から土の何かが迫り来る。

 細長く、槍にも鞭にも近いですわね。けれどそれくらいなら光球で破壊可能。此方も仕掛けますわ!


「“光球連弾”!」

「洞窟を壊すつもりですの!?」

「結果的にそうなってもおかしくありませんわ!」


 暗い洞窟内を無数の光が瞬き、直撃と同時に爆発。

 ガラガラと崩れ落ち、その隙間も光球が抜けて爆発を引き起こした。


「……ッ! 熱と衝撃が……!」


 ベルさんにもヒット。確かなダメージとなりましたわね。

 このままの調子で崩れたお宝は集めつつ、向こうの動きを封じ込めて私のフィールドとしましょう。


「そこですわ!」

「……!」


 しかし前述したよう、光は向こうにとっても目印。瞬いた瞬間に脇腹へ土魔術の槍が貫き、私の美しく高貴な鮮血が散る。

 これくらい安いモノですわ。けれどヴァンパイアさんへお売りになったらきっと高価なモノになるでしょうという気高い血液を溢したのですもの。勝利は掴まなければ!

 駆け出し、鋭利な壁は削りながら迫り、スライディングと同時に横投げで光球を放った。


「……ッ! こんなにアクティビティな動きが出来たんですの……!?」

「狭い洞窟内だからこそですわ! 隙間にも潜り込めますわ!」


 光球は直撃し、また一際大きな爆発を起こす。

 この洞窟内にもまだまだお宝は眠っているかもしれませんが、そろそろ持ちませんわね。数百ポイントは稼げましたので良しとしましょうか。

 その間にも妨害はしていたので、ベルさんがあらかじめ数千ポイントとかでも取っていない限りは此方が有利に働いている筈。時間的にほぼ有り得ませんが、彼女は土魔術ですものね。僅かでも可能性はありますわ。


「さらにもう一発!」

「……っ」


 立ち上がり、死角へ回り込んで光球を一撃。

 この爆発によって洞窟は崩れ、残りの宝石類も回収。向こうにもチラホラ入っておりますわね。


「品性の欠片もないやり方ですわ!」

「その様な事御座いませんわ。ほら、光と宝石がキラキラ舞い、美しいでしょう?」

「確かに……そうですわね!」

「そちらの方が汚いのではなくて!?」


 返答と同時に土魔術の槍が放たれ、肩と脇腹が抉られる。

 土……というよりは岩ですけれど、とても痛いですわ。傷口は聖魔法で癒し、途切れ途切れの呼吸を整える。

 ダメージの程はベルさんもして変わらない。切り傷か火傷かの違い程度ですわ。

 周りの土魔術は破壊して消し去り、警戒を高める。“勝利条件”はどちらがより多くのポイントを取るかでしょうけれど“終了条件”は不明。単純に考えるなら時間制か掘り尽くすか、どちらかが行動不能になるか。

 所得ポイントも分かりませんので賭けとなりそうですけれど、私達のダメージを思えば強制終了に持ち込む事は可能ですわね。

 向こうはどう出るか。答えは一つ。


「「…………!」」


 考えは同じみたいですわね。終わらせる方を選びましたの。

 特に向こうは回復手段がありませんものね。私の聖魔法を見て決定したと考えてよろしいでしょう。

 望むところですの。


「“光球多連弾”!」

「“土壁領域”!」


 無数の光球を放ち、土魔術からなる壁で防がれる。けれど次々と破壊し、移動していた私達は互いに眼前に迫り来た。

 これで終わりですの!


「“特大光球”!」

「“蛇土通路”!」


 至近距離で大きな光球を放ち、土の蛇が背後から迫り来る。

 二つの攻撃は同時にぶつかり合い、鉱山を大きく吹き飛ばした。

 それによって生じた結果は──


「……っ。私の……威力不足……!」

「一年分の経験の差ですわね!」


 僅差により、先に光球が到達してベルさんの全身を強い衝撃が叩く。

 私の脇腹はまた抉られていますが、内臓にまでは到達していないのでなんとかなりそうですわ。

 それによってベルさんは消え去り、私は膝を着く。念の為に今の衝撃で散った宝石類は読み込ませ、気付いた時には会場へ転移しており、緊急治療班が駆け付けて施されましたの。

 治療を受けながら司会者さんの言葉に耳を貸しますわ。


《同チームの対決は! ルーチェ・ゴルド・シルヴィア選手が“560ポイント”で“260ポイント”のベル・ノーム選手に勝利しましたァ!!!》

 

「「「どわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」

「「「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」」」

『『『グギャアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!』』』

『『『キュオオオオオオオォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』


 倍以上の点差で勝利は収めましたが、妨害した上でこれ。ベルさんも効率良くポイントを集めていたようですわね。勝てて良かったです。

 これにより、準々決勝は私の勝利。ティーナさんやボルカさんにウラノさん、リゼさんも順調に勝ち上がったようですわね。

 次は準決勝。私のブロックにもう同じ“魔専アステリア女学院”の強敵はおりませんわ。

 それでも油断せず行きましょう。見ての通り私は重傷ですもの。

 これにより、私も無事準々決勝を突破しましたわ! さて、次の皆様のトーナメントは──あ……。

 そして、私は次の準決勝で当たる方々を確認しましたわ。



 ──“準決勝・ウラノ・ビブロスvsリゼ・シルフ”。



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