第二百七十六幕 ダイバース・二年目の新人戦
──“新人戦”。
後日、二年目となるダイバース新人戦の会場に私達“魔専アステリア女学院”は揃っていた。
大きな試合を見たり体感していたのもあり、予選会場は小さく見えるけど活気に満ち溢れている。
全員が本気で挑んでいる大会だもんね。特に新人戦は個人戦があるので自分のアピールには最適。気合いの入り方も違うと言うもの。
「見ろ。“魔専アステリア女学院”だ」
「チーム戦個人戦共に優勝候補の筆頭……」
「相手にとって不足無し……!」
「当たればだけどな……!」
当然私達は一際大きく注目を浴びている。今までの成績が成績だもんね。真っ先に対策されると思う。と言うか進行形でされてる。
でもそれを打ち破らなきゃ優勝なんて到底出来ないもんね。頑張るよ!
《始まりましたァーッ! 今年も行われる“多様の戦術による対抗戦”!! 司会進行は私──》
司会者さんの話も入り、開会式が行われる。
最初はチーム戦。後日に個人戦。代表戦とかを経験して更に強くなったけど、運で決まるゲームとかもあるから油断は出来ない。大抵は実力だけどね。要所に運が必要かもしれないとかそんな感じ。
相手チームもこの一年間でスゴく努力してる筈だし、どちらにせよ油断大敵なのは変わらない。一年生の実力はほぼ未知数だもんね。
《それでは! 早速試合を始めて行きましょう!!》
開会式も終わり、いよいよ試合へ。
やるよー!
──“チームバトル・一回戦・カードゲーム”。
「……おっと、此方に来てしまったわ。マズイ状況ね。ほら、アナタの番よ」
「……そうか。では遠慮無く……」
お互いに睨み合い、牽制を兼ねて様子を窺う。
一回戦はカードゲーム。詳しいルール説明は省略。引いてはいけないカードを残さないと言うシンプルなものだからね。地区大会一回戦には丁度良い難易度。
簡単だからこそ奥が深く、相手に心理戦を仕掛ける必要がある。そしてそれは、ウラノちゃんの得意分野。
「……あら、今度こそ来てしまったわ。ほら、アナタの番」
「なに?(今度こそ……? さっきは来ていなかったのか? 何の為にそんな嘘を? 一度仕掛けたという事はもう一度ある可能性も……しかし……いや、真の狙いはこの疑心暗鬼を誘って……?)」
(手に取るように考えが分かるわね。心理学の本もある程度読んでいる。人間の本質は分かりやすい。いえ、種族問わず思考出来るなら嵌める事は容易い)
そして、見事策略に嵌め私達は一回戦を突破した。
──“二回戦・謎解き脱出ゲーム”。
「これらの文を繋ぎ合わせると“見つめる先の下を掘れ”になる。ま、それっぽく書いてあるだけで要はこの下を破壊すりゃ出口への道が出てくるって訳だな」
「大雑把だね……その通りなんだけど」
謎を解きながらゴールを目指すゲーム。難易度は新人戦向けであり、二回戦相当。私達にとっても簡単な謎だね。
書かれた通り下方を破壊し、階段を見つけて地下の道へ。そこにもまだまだ謎はあるのでドンドン解いて行き、見事に先着で脱出した。
──“三回戦・宝探し”。
「ヒントの碑文を繋いだ交差地点に宝が埋まってる。簡単だったな」
「ライバル達は全員倒しちゃったもんね~。後はゆっくり探すだけだよ」
初日のラストゲームは宝探し。選手間の対決もあったけど、私達は余裕を持って突破する事が出来た。
今のところ順調だね。残りのチーム戦も終わらせて都市大会へ行こー!
──“ダイバース新人戦・二日目”。
《“多様の戦術による対抗戦”!! 二日目となりましたァーッ! 今日は果たしてどの様な──》
初日に全勝して順調に勝ち上がった私達は、チーム戦の二日目に挑む。
昨日のゲームを思い返してみると頭脳を使った物が多かったね。今年はそう言う方針なのか、それとも今日は戦闘メインとかそんな風になるのか。何にしても負ける訳にはいかないよ。
因みに試合数は参加チームによって結構変わる。必ず学校じゃなきゃダメって訳じゃないからね。あくまでその年齢なら全員が対象になるの。
何はともあれ司会者さんの挨拶も終わり、早速試合が開始される。
──“四回戦・魔獣ハンティング”。
「ティーナ! 行ったぜ!」
「任せて!」
四回戦は魔力から作られた魔獣を倒していき、一番多くポイントを手に入れた方が勝ちなシンプルなもの。
ボルカちゃん達が倒しながら大多数を引き連れ、私達が植物魔法で一網打尽にする作戦。
これによってステージの魔獣達は消滅していき、私達は最高得点で勝ち抜いた。
──“準々決勝・魔導レース”。
「今の私は光その物ですわ!」
「それにしては遅くないかしら?」
二日目の最終試合は魔導のレース。
何度か行った箒レースと違い、自分の魔法や魔術でゴールへ行くと言うもの。
ルーチェちゃんが光の爆発で加速し、ウラノちゃんが龍の背に乗って突き進む。
私は植物に乗り、ボルカちゃんは炎の加速で突き行く。残りの選手はサラちゃんであり、ボルカちゃんの後を追うように炎で向かっていた。
レース関連も得意分野。後に名を馳せる予定のメリア先輩から色々教わったからね!
五人がトップ5でゴールし、勝利を飾って二日目も終わった。
──“ダイバース新人戦・三日目”。
《昨日の白熱した試合から──》
地区大会のチーム戦では最終日となる三日目。司会者さんの振り返りから始まり、会場はより一層盛り上がりを見せる。
今日勝利を収めればチームの方で都市大会が決定する。相手もここまで残っている強敵達。負けられないね! ずっと!
試合の方へと移行した。
──“準決勝・陣取りゲーム”。
「行くぜみんな!」
「うん!」
「はい……!」
「任せましてよ!」
「御意……!」
地区大会の準決勝は陣取りゲーム。選手は私とボルカちゃんにディーネちゃん、ベルちゃんにリゼちゃん。
昨日参加しなかったメンバーを中心に、場の制圧に長けた面々。
植物と水で陣地を覆い、土と風で妨害。ボルカちゃんが切り込み、相手を倒して試合が終わる時間までに全ての陣地を自軍の物で埋め尽くして勝利を収めた。
次はいよいよ地区大会の決勝戦!
──“決勝・チームバトル”。
決勝は恒例となっているチームバトル。単純に魔導や身体能力で決めるもの。ダイバースで最もポピュラーと言っても過言じゃないルール。
私達は万全のメンバーでそれに挑む。
「“樹木行進”!」
「そらぁ!」
「物語──“ミノタウロス”」
「“光球連弾”!」
「“水球”!」
植物魔法で盤面を制圧し、ボルカちゃんが炎剣で斬り込む。ミノタウロスが場を蹂躙し、光球による無数の爆発。巨大水球が突き抜け、相手を一掃した。
それによって全員を倒し、私達の勝利となる。
《勝者! “魔専アステリア女学院”ンンンーッ!! 前評判通りの実力で圧倒的に勝ち抜きましたァーッ!》
そしてチーム戦では都市大会へ出場が決定する。
次は明日からの個人戦だね。地区大会では他のみんなと当たる事があるかな。それだけが気掛かりだね。どちらにしても都市大会では当たっちゃうからその時は覚悟を決めよう。
今日は終わりを迎えるのだった。
──“ダイバース新人戦・個人の部”。
《昨日までのチーム戦は如何だったでしょう! 今日から始まるは個人戦! 一人一人が行う激しい戦いを──》
個人戦へと移行し、司会者さんの言葉が会場に響く。
ついに始まったね。チーム戦も大事だけど、新人戦ではこの個人の部が主体とも言える。1vs1の戦いはそんなに行われないもんね。
個人戦はチームメイト同士で戦う可能性も出てくる。何人かは都市大会まで行けると思うけど、地区大会でも油断は出来ないね。
《それでは早速始めましょう! “多様の戦術による対抗戦”!! 個人戦!! スタァァァトォォォッ!!!》
「「「どわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」
「「「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」」」
『『『グギャアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!』』』
『『『キュオオオオオオオォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』
更に大きく盛り上がり、個人戦が開始する。
今年は特に試合数が多く、初日でも五試合くらいはする事になりそうだね。
負けないよ!
──“一回戦・バトル”。
「“鞭の樹”!」
「ぐはぁ!」
一回戦はシンプルな対決。相手の意識を奪った方が勝ちのルール。
個人戦でも色々なゲームがあるからね。ただ1vs1ってだけで。
取り敢えず一回戦は突破し、私は次へ進む。ボルカちゃん達も全員が勝ち上がったみたいだね。
──“二回戦・謎解きゲーム”。
「ここに水を通すなら……“押しの樹”!」
これまた恒例の謎解きゲーム。今回の謎はAからBに繋がる水路を造れというもの。
ただし水魔導は使ってならず、Aの水場から全てをBに移さなければならない。
だから私はAからBに続く場所へ坂道を作り、それを水路とした。
神話でヘラクレスさんがやってたやり方だね。前人に習うって事。
──“三回戦・押し出しゲーム”。
「これって二回戦のやり方をそのまま相手にやれば良さそう」
「うわあ!?」
三回戦はリングの外に出した方が勝ちになるゲーム。
二回戦に行った方法を用いて植物魔法による質量で押し出し勝利した。
今のところ順調だね。体力もまだ残ってる。
──“四回戦・奪取ゲーム”。
「それ!」
「しまった……!」
四回戦は相手から旗を奪うゲーム。植物を伸ばして絡み付かせ、そのまま奪取した。
これで四回戦も勝利。順調だね! ボルカちゃん達も無事に全員突破しているみたい。
今日の試合も最後。連戦だったけどまだ余裕もある。さあ、試合に臨むよ!
──“五回戦・開始前”。
《いよいよ今日も大詰め! 次第にチームメイト同士の戦いも見え始めてきました! そしてなんと! 同じ“魔専アステリア女学院”による戦いも始まろうとしています!》
「……トーナメントの組み合わせから分かってはいたけど……まあ地区大会でも当たっちゃうよね」
「そうですね。とても残念です……」
五回戦、ルールはまだ未発表。だけど一つだけ分かっている事、相手は私の後輩、ディーネ・スパシオちゃん。
予想はしていたけど、ここで当たる事になるなんてね。出来れば都市大会までは行かせてあげたかったけど……。
「ごめんね。私が勝って本選まで行くから!」
「その言葉、そっくりそのままお返しします……!」
互いに牽制し、ステージの方へと向かう。
ダイバース新人戦、個人の部。初日最後の相手はディーネちゃんになった。




