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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
249/457

第二百四十八幕 代表戦・二日目終了・三日目へ

 第一試合を突破した私達は、次いで他のチームの試合観戦をする。

 応援の主体はレモンさん達“神妖百鬼天照学園”の人達。心配要らないと思うけど、しっかり応援するよー!

 そんな選手用の観客席にはダクさん達“レイル街立暗黒学園”のメンバーもやって来た。


「やっほー! 隣良いー?」

「と言いつつもう座ってんな~。ま、別に構わないけどさ」

「悪ぃな。リテが面倒な事しちまって」

「良いって良いって! 戦った仲だしな!」

「負けちまって悔しいぜ!」


 来たのはダクさん、リテさん、そしてボルカちゃんとウラノちゃんが戦ったと言うゾルさん。

 “レイル街立暗黒学園”の上位三人って考えて良いのかな。席順はボルカちゃんの隣にリテさん、ダクさん、ゾルさんって続く形。

 思えばこのチームとは去年の新人戦から繋がりがある訳だし、種族が違う他国で言えばシュティルさん達の次くらいには深いかもね~。

 そんな感じで、主にリテちゃんが中心になって雑談しつつ試合を眺める。レモンさん達の第一試合が始まった。


──

───


《試合終了ォォォ━━ッ!! 今回も素晴らしい戦いを見せてくれましたァ━━ッ! 結果の程はモニターに──》


 そして数分後、流石に二日目なのもあり、強敵揃いだったから多少の苦戦はあったものの、レモンさん達は余裕を持って試合を終わらせた。

 やっぱり強いね。私達も少しは近付いたけど、まだ点差がある。今回のレモンさん達は味方だけど、やっぱり勝ちたい気持ちもあるから追い付くよ!

 それから全ての第一試合が終わり、お昼休憩。午後からは第二試合だね!


「やっぱりレベル高ぇな~。ダイバースの代表戦。アタシ達もこの位置で止まっている訳にはいかないって感じだ」

「そうだね~。レモンさん達は相変わらずの実力だし、私達も頑張らなきゃ!」

「もうとっくに頑張っております事よ。しかし、私の出番はこの後。次の試合メンバーを思い、引っ張って行きますわ!」

「そうね。人数的に第一試合のメンバーも出るけど、ティーナさんとボルカさんはお休み。貴女がしっかりしないといけないわ」


「私もやるよー! と言うか、私こそが引き続き出るメンバーの最年長! 君達を引っ張るのはこのメリア・ブリーズだよ!」


「アハハ……スゴい気合いですね……」

「やる気満々って感じ。ウチも負けとらんよー!」

「そうだな。先輩達が繋いだ順位。私達がキープしなければ」

「思い詰め過ぎですわ。しかし、概ね同意ですの。リゼさん」


 私達はみんなでご飯を食べながら次の試合への意気込みを話していた。

 前試合で結構魔力を消費しちゃった私、ボルカちゃん、ウラノちゃん、ディーネちゃんはお休みだね。

 次の試合にはルーチェちゃん、サラちゃんにベルちゃんとリゼちゃん。そしてメリア先輩の五人が出る事になってるの。

 みんなも主力だからメンバー的には十分。いざという時は私達も出られるように控えには居るから大丈夫。

 代表戦なんて全試合が決勝戦みたいなモノだから、結果的な所得ポイントの割には毎試合苦戦しちゃうんだよね~。

 だけどそれくらいじゃへこたれない。ルミエル先輩所属時以降、初のダイバース優勝を飾りたいよね! 特に今年はメリア先輩が中等部としての活動引退。高等部に入ったらやると思うけど、最後のダイバース。それまでのはなむけにしたい。

 気合いを入れちゃうよー!


「あ、そうそう。私、今年いっぱいでダイバース辞める事にしたから! その辺よろしくね! みんな!」


「「「「…………え……?」」」」

「「「「…………え……?」」」」


 和気藹々とした場の空気が、メリア先輩の一言で凍り付くのを感じた。

 脳の処理が追い付かず、今告げられた言葉の意味を理解する為にフル稼働する。

 瞬間、弾けるように言葉を発していた。


「や、辞めるって! メリア先輩がですか!?」

「またなんで!?」

「嫌になりましたの!?」

「何か家庭の事情が……?」


「辞めちゃうんですか!?」

「何でですか!? 何でなんですか!?」

「……理由をお聞きしても……? 悩みがあるなら相談に乗りますよ。同じ風使いとして」

「辞めないで欲しいですわ!」


「わー! わー! 落ち着いて落ち着いて。別に嫌になったとか悩みがあるとかそんな深刻な理由じゃないから! あ、でも多少は深くなきゃなんか悪いか……」


 唐突に告げられたメリア先輩の引退宣言。先輩の反応を見る限り深刻な事にはならないみたいだけど、その理由に付いて知りたいのは変わらない。

 先輩は私達をなだめ、ゆっくりと説明する。


「単刀直入に言うと、高等部からはほうきレースの部活動に入ろうかなって思ってるんだ。ダイバースはとても楽しかったし、みんなの事も大好きだけど、やっぱり私はその分野でプロになりたいの!」


「ほうきレースのプロになる為……」


「……確かに、中等部まではあまり評価に関係しないけれど、高等部の部活動は進路に大きく影響する場合がありますものね。中等部から基礎を鍛えるのも大事ですが、ダイバースならばそれを担い、あらゆる形で学ぶ事が出来る。その為に入っていたのでしょう」


「流っ石ウラノちゃん! よく分かってる~! ……私としてもさ、このまま高等部もダイバースして大学辺りで本格的に乗り出そうと思っていたんだけど、同年代のライバルはやっぱり中等部……それどころか初等部から所属してるのが当たり前で、私もちょっと焦りみたいなモノが出てきちゃってね~」


「そうなのですか……」


 将来的な進路について。“魔専アステリア女学院”は基本的に自由であり、出身というだけで大きなアドバンテージになる。

 だからと言ってそれに甘んじていては先に進めず、ライバルとの差が開いてしまう。才能や実力は二の次で運やコネが一番重要とも言える文学や美術関連はともかく、自分の実力のみが結果を左右するスポーツなどはまさにそれ。

 メリア先輩としても、ある程度のノウハウは中等部のダイバース部で積み上げたのでそろそろ本気で取り組むつもりみたい。

 だとしたら引き止められない。他の人の夢を止める権利なんて誰にも無いもんね。


「それではメリア先輩と一緒に活動出来るのは今回が最後に……」

「そうなっちゃうね。校内で会う事はあると思うけど、部活動は終わりかな」

「そんな……」


 メリア先輩の言葉に私達は口を噤む。

 多分気持ちはみんな同じ。辞めて欲しくない気持ちと、夢を追うのなら止められない……二つの気持ち。

 なので私達は何も言う言葉が思い付かなかった。


「ああ、ごめんね。ちょっとしんみりさせちゃったかな。折角楽しいお昼ご飯だったのに水を差すような真似しちゃって。水浸しのサンドイッチは美味しくないもんね」


「いえ、でも実感が湧かなくて……寂しいです」

「ああ。メリア先輩はなんだかんだ先輩が高等部を卒業するまで居てくれると思っていたので……」

「寂しくなりますわ……」

「……。右に同じ」


「私達も……三ヶ月程の付き合いでしたけど、皆様と同じくとても良い先輩立ったので寂しいです……」

「ポッカリと穴が空いちゃう感じ……」

「今までお世話になりました」

「ゆっくりとお休みくださいませ……」


「みんな……って! なんかしんみりの仕方が少し違くない!? 私、肉体面は健康その物で“魔専アステリア女学院”からは数年、この世からも今から数十年は居なくならないよ!?」


 それくらい寂しい事だけど、確かにちょっと大袈裟な気がするかも。

 だけどこの空気を打破しようと和ませてくれたのかな。そうだよね。これから第二試合なのにいつまでも沈んではいられない。

 気を取り直し、私達は昼食に戻る。


「一先ず、メリア先輩の最後のダイバース。もちろん優勝を目指して行きます!」

「ああ。それが引退祝いだ!」

「ですわ!」

「そうね」


「私達も頑張ります!」

「任っかせてー!」

「精進します」

「やりますわ!」


「ふふ、みんなありがとー。それじゃ、今日の残り試合頑張ろうね!」


 和やかな雰囲気に戻し、和気藹々と過ごす。

 胸の奥に寂しさは残っているけど、それもまた一つの道。私もいずれは何かを決断する時が来るかもしれない。それまでの参考にしよう。

 昼食が終わり、午後の部へ。メリア先輩達が試合会場へと向かった。



*****



《試合終了ォォォ━━━ッ!!! 白熱した第二試合ですが、何が起こったのでしょうかァ!? 元より強者揃いの“魔専アステリア女学院”ですが、圧倒的な強さで間違いなくポイント上位へ連なりましたァァァ━━━ッ!!!》


 数十分後、私達“魔専アステリア女学院”。メリア先輩の話を聞いてから奮起したのもあり、断トツで上位へと名を挙げた。

 みんなの気合いの入り方がスゴかったね。ダクさん達程の実力者はそうそう居ないけど、ここまで残ったのがこれから戦う全てのチーム。その中でさっきのレモンさん達よりも良い成績を収める事が出来た。

 今回の獲得ポイントが発表され、司会者さんは言葉を続ける。


《これにより、ポイントの集計を終わります! 1位通過はもちろん“魔専アステリア女学院”!! おめでとうございまーす! これは明日の試合も期待大ですねー!!》


「「「わあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」」」

「「「ドワアアアアアアアアァァァァァァァァァッッッ!!!!!!」」」

『『『ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッ!!!!!!』』』

『『『キュオオオオオオオオォォォォォォンンンッッッ!!!!!!』』』


 大歓声が上がり、二日目も好成績を収めて終える事が出来た。

 だけど依然として人間の国では2位。レモンさん達がそれ程強い訳なんだけど、何が起こるのかが分からないのがダイバースだもんね。最終的に人間の国が優勝を飾ればメリア先輩への餞別せんべつになるよね。

 その後、二日目も軽くみんなでご飯を食べ、学校の寮に戻る。

 二日目は終了。翌日、ダイバース代表戦後半の試合が始まろうとしていた。



 ──“ダイバース・三日目”。


「……こ、これって……」

「……まあ、獲得ポイントからしておかしくない結果だよな」


 当日、発表されたブロックを見て息を飲む。

 私達のブロックは変わらず前日に同じくらいのポイントを取ったチーム。十分に強敵なんだけど、個人が特筆した最強格って人は居ないところ。

 問題は最終優秀チームのブロック。そこにあったチーム名。


【神妖百鬼天照学園】

【神魔物エマテュポヌス】


「シュティルさんとレモンさんのチーム……!」

「こりゃ、事実上の決勝戦って言っても過言じゃねえかもな~」

「皆様も頑張っておりますのであまり好ましくない表現ですけれど、今回ばかりはそうですわね……」

「どんな試合になるのかしら」


 レモンさんとシュティルさん。まだ決勝戦のような舞台ではないにせよ、この二チームが当たる事となった。去年の新人戦を思い出す組み合わせ。

 私達も油断は出来ないけど、やっぱり気になるのはこの試合。ダイバースの代表戦、波乱の三日目が始まった。

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