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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
239/457

第二百三十八幕 代表戦・二日目・第一試合

 ──“代表戦・二日目”。


 初日を終え、二日目に突入した。

 もちろん昨日もプチ打ち上げをしたけど、あまり遅くまでは居られないから早いうちに切り上げちゃったの。

 みんな私とボルカちゃんを褒めてくれたよ!


【二人の活躍でほとんど出番無かったな~】

【本当ですわ。私だってポイント取ったのに】

【ポイント差は歴然よ。良いじゃない。味方なんだから】

【流石は先輩です……!】

【ウチら一年生は大体やられちゃってたもんねー】

【ああ。不甲斐ない結果だ】

【良いんじゃないですの。私なんか結局ポイント0ですわ】


 そんな感じで、うん。多分褒めてくれてたよね。

 何はともあれ、英気は養った。初日の結果を経て二日目は所属ブロックが変わるし、試合数も少なくなる。

 分かっている事は確実に初日より強い相手って事。元々代表戦。強いのは大前提だから問題無し!


「二日目か~。代表戦ってのは数日に分けて行われるけど、割とあっさり決まるからもう中盤って言っても過言じゃないかもな」

「そうだね~。一試合一試合が決勝戦レベルの争いだから、熾烈なものだよ~」


 今回の分けられたブロックを見ながら話す。

 代表戦だけあって一つ一つがハイレベル。まだ二日目だけど、二日目以降から試合数も一試合から二試合くらいに減るから体感だと短く思えちゃうんだよね。

 何はともあれ、総合ポイントが物を言い、なるべくポイントの近いチームと当たる。二日目も頑張るぞー!


「今回の私達のブロックは……あ、ダクさんにリテさん!」

「よォ。テメェらか」

「やっほー! “魔専アステリア女学院”の人達ー!」


 今回のブロックには知り合いが居た。

 私達のポイントは結構上の方、と言うかレモンさん達“神妖百鬼天照学園”に次ぐ2位だから当然だけど、実力があるダクさん達もここに来たんだね。

 とは言え、まだ二日目なので近いポイントのチームは割とある。なのでそこから更に細かい組分けが行われているんだ。

 簡単に言えば、人間の国一位のレモンさん達。そして見た感じ魔物の国一位はシュティルさん達。その二チームは所得ポイントも近いけどブロックは別であり、まだ当たる気配は無いようになっている。

 その辺は同ランカーでのくじ引きだから完全にランダムだね。


「あの人達……“レイル街立暗黒学園”とティーナ先輩は去年当たったのでしたよね」

「そうだよ~。ちょっと記憶は曖昧だけど、強かったのは覚えてる。実際ダクさん相手には負けちゃったもんね~。ルール形式が1vs1vs1vs1だったとは言えども」


「ディーネ・スパシオちゃんだっけ。ティーナちゃんの後輩の。素直で可愛い後輩が居るんだね~」

「は、はい。お初にお目に掛かります……」

「私達の後輩って血の気が多くて血気盛んでさ~。ディーネちゃんみたいにもっと素直なら良いのにね~」

「な、撫でないでください……」


 魔族の特徴的な物なんだけど、リテさんは不満げ。慕ってくれる子が良いみたい。ディーネちゃんは大衆の前で撫でられて照れ気味。ふふ、確かに可愛いもんね。ディーネちゃん。

 そんな感じで知り合いが居るブロックだと会話も弾んで良い感じ。でも試合じゃ強敵になるから気を付けないとね。

 雑談の時間も終わり、司会者さんが音声伝達の魔導具を手に取った。


《それでは皆様ァァァ!!! 昨日は白熱した試合運びでしたねェ!!! しかァし! 二日目以降は自身の実力とより近いチームとの対戦になりますよォ!! 所得ポイントが少ない方も気に病む事はありません!! まだまだ挽回の余地は残っていますからねー!! 今大会のルール上、途中離脱のチームは無し!! 上位も下位も同時進行で執り行い、最終的な位置が入れ替わる可能性も大いにあり得る!! 何が起こるか、全く分かりませんよー!!》


「「「わあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」」」

「「「ドワアアアアアアアアァァァァァァァァァッッッ!!!!!!」」」

『『『ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッ!!!!!!』』』

『『『キュオオオオオオオオォォォォォォンンンッッッ!!!!!!』』』


 司会者さんの言葉と同時に再び盛り上がる界隈。そう、チーム数は変わらない。なのに試合数が少なくなると言うのは、上位グループはともかく、下位グループはより多くのチームによるブロック構成になるから結果的に行う試合が減るの。簡単に言えば四チームによる対抗戦じゃなくて八チームくらいによる対抗戦になったり、その他色々な理由で。私達のブロックに配置されるチーム数は変わらないけどね~。むしろちょっとチーム数が減るレベル。

 そんな感じで私達も準備に入る。準備と言っても特にやる事は無いから雑談の延長みたいに過ごす。

 そして試合開始の時が来た。

 司会者さんの言葉と同時に私達は転移する。



 ──“湖ステージ”。


 今回のステージはキラキラ輝く大きな湖が中心にある所。

 周りは森に囲まれており、遠方には塔のような建物も窺えられる。それを踏まえればこの場所は湖を生活用水とし、そこを中心に建てられた町。……って設定なんだと思う。

 私の転移先はちょうど湖の近くであり、この光景をもう少し眺めていたい気分に酔いしれる。

 でも試合本番。その気分も切り替えなくちゃね。しかも今回の相手には“レイル街立暗黒学園”の人達が居る。なんとなく第一試合の相手が大体強敵な気がするね。もちろん全チーム世界の最高峰なんだけど。

 ちなみに今回の参加メンバーは相手が相手なので相応に、私とボルカちゃん、ウラノちゃんにメリア先輩とディーネちゃん。ベストメンバーって感じだね!

 そして私は呼吸を整えた。


(……昨日の感覚を呼び覚まして……気配を探る)


 危機を乗り切ると成長を感じる。それは単なる感性の問題じゃなく、魔力の特徴なんだよね。体に合わせて成長し、より上へと昇格する。

 場面に応じて魔力が変化するから。魔力の無い人でも事故とかを切っ掛けに普通とは違う能力が目覚める前列があるので、生き物の性質。俗に言う進化とかなのかな。

 何はともあれ、既に気配は掴んだ。より鮮明になってる。何となく、今回の代表戦を経て私達はより強くなっているのかもしれない。ボルカちゃんも成長したし、私もそうなった。調子が良い。

 だから今回も……勝ってみせる……!


「向こうかな……」


 一言を呟くように言い、踏み出す。不測の事態にも対処出来るよう常に植物は展開しておく。でも樹海を作らず、あくまで自分の周りだけに。

 ティナとの感覚共有でより鮮明な気配を掴み、私はそちらの方へと移動した。


「……居た」


 見つけるや否や、植物を纏めて不意を突くように放った。

 私はまだレモンさんやボルカちゃんのように自信に溢れてる訳じゃないからこんなやり方しか出来ないけど、それが正解だと思ってる。


「“樹束掌底”!」

『……!? 植物魔法……! ティーナ・ロスト・ルミナスか!』


 相手はぶつかる前に察知し、紙一重でかわして臨戦態勢に入った。

 やっぱり手強いね。相手チームは全部昨日の試合で好成績を収めた所。不意討ちでも感知されちゃう。


『相手にとって不足無し。むしろ好都合。一大戦力の一つを削げる!』

「落とされません……!」


 剣を持った鱗のある戦士。リザードマンっぽいけど、ちょっと違うね。鋭い牙や小さな翼からするに竜人の類いかな。

 竜人さんは剣を振り上げ、口から火を吹いた。


「……って、剣じゃないんですか!?」

『陽動だ!』

「この距離で!?」


 剣かと思ったら炎。でも確かに不意は突かれたかも。避けたけどね。

 足元から植物を放ち、竜人さんを打ち上げた。


『いつの間に……!』

「私の射程範囲はステージ全体なので……!」

『地下も含めてか』


 打ち上げられた竜人さんは小さな翼を羽ばたかせ、一瞬浮いて近くの枝へ着地。

 長い距離は飛べないみたいだね。主に陸生活に特化しているから飛行能力は退化したとか。生物の授業でやったの。

 けど、逃がさない!


「空も含めてです!」

『本当に全域を覆うようだ』


 周りの木々に干渉し、足場の枝も操ってけしかける。

 鮮やかな身のこなしで避ける竜人さん。更には剣と炎で防いでいくけど、いくら速くても強くても意味を成さないのが圧倒的な力!


「力を集めて撃ち出す……まるで砲撃のように! “樹海砲”!」

『……!?』


 木々によって場所を制限。追い詰めた所で撃ち込む砲弾。

 昨日寝る前に思い付いたんだ~。今まで大雑把に展開していた樹海を一つに纏めて撃ち込む事。似たような方法はおこなっていたけど、より改良した感じ。魔法を使う際のイメージトレーニングは重要だね。それが思い通りにハマると癖になる!


『クソォ!』


 炎と剣。その全てを弾き、直撃。光が転移して消え去る。

 これで1ポイント。まだまだ。もっとやらなきゃ!

 次の気配を追い、二つの魔力を確認。そこへ向かった。


『“洪水”!』

『“噴火”!』


 到達するや否や、幻獣さんと魔物さんが戦闘をおこなっていた。

 洪水に噴火。いずれも上級の力。やっぱり代表戦はレベルが違うね~。

 でも、自然現象なら負けていないよ!


「私も入れてください!」

『『……! ティーナ・ロスト・ルミナス!! 良かろう!!』』


 今回は他の人達の試合に割って入る形なのでわざと踊り出る。一対一の試合を邪魔するのはマナー違反だもんね。

 二匹からの許可も得、私はママに魔力を込めた。その魔力を一点に集中し、更に力を高める。既に周りは植物の包囲網で覆っている為、避ける事は出来ない。元より、相手に回避の選択肢は無いみたいだけどね。


『来るなら来い! “洪水突拳”!』

『受けて立つぞ! “噴炎大爪”!』

「分かりました! “樹木正拳”!」


 洪水を一つに纏めた事による広範囲の拳。噴火を爪の形とした一撃。対するこちらは樹海を一点に集中させた大きな拳。

 それら三つの力は互いにぶつかり、打ち消し合い、最終的には水と炎が互いに消火と蒸発させてしまい、圧倒的質量の私達に軍配が上がった。


「これで終わり!」

『『………!?』』

「──悪いが、一つは俺が貰う」

「『『…………!?』』」


 樹と突如として現れた何かの衝突。それによって幻獣さんと魔物さんは光となって転移し、私の前にはさっきまで話していた人が姿を現した。


「……ダクさん……!」

「横取りするような面倒な真似して悪かったな。本当なら堂々と仕掛けたかったが、名乗る時間が無かった」


 ダクさん。

 魔族の国で三本の指には入りそうな実力者。これは誇張とかじゃなく、単なる事実。

 早くも出会っちゃうなんてね。去年のリベンジが出来るのは有り難いけど、今のもあって私はまだ2ポイントしか取っていない。ちょっと厳しいかな。


「……因みに今のダクさんは何ポイントですか?」

「あ? 今ので4ポイントになった。俺が戦ったのはいずれも幻獣と魔物。この二匹も含め、両国の数はもう大分減ったかもな」

「そうですか……!」


 計6ポイント。それはダクさんと私の合計ポイントを合わせた数。

 つまり幻獣と魔物は既に半分以上がやられちゃってる状態なんだ。ちょっと不憫かも。

 だけどそれは私達にも言える事。ダクさんを野放しにしたら被害は甚大な物となる。だから私が止めなくちゃ……!


「じゃあやるか」

「そうですね……!」


 私達は睨み合い、次の刹那に動き出した。


「“ウィンド”!」

「“リヤーフ”!」


「「………!」」


 その瞬間、二つの風がぶつかり合って周りを吹き飛ばす。この風の質は……!


「メリア先輩!」

「……スクロじゃねェか」


「あ! ティーナちゃん!」

「あ! ダクさん! 邪魔しちまいましたか!? すみませんッス!」


 メリア先輩。そして呪文名から薄々思っていたけど、魔族の国の人みたい。名前はスクロさん。

 二人は風魔法同士でぶつかり合い、流れに身を任せてたらここまで来ちゃったって感じかな。


「まァ気にすんな。細かい事を気にする方が面倒だ。存分に暴れても良い」

「分かりましたッス!」


「メリア先輩! 強そうな相手ですね……!」

「うん! 手強いけど、向こうは風魔術使いだからシンパシーも感じるんだ~!」


 タイミング的には悪くないね。私達も今始まろうとしていたところだから、この二人の乱入は戦略の幅が広がるチャンス到来。

 植物魔法は水魔法、風魔法、土魔法の複合だけど、単一で使う事はしてないもんね。メリア先輩が居てくれるだけで戦いやすくなる。


「ま、結果的に両チームの主力が揃った。やるか」

「そうですね……!」

「へへ、ダクさんに良いところ見せるッスよ!」

「慕ってるんだね~」


 互いに臨戦態勢に入り、魔力を込めて向き直る。私達の代表戦、二日目の第一試合。それが開始された。

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