第二百三十五幕 代表戦・第一試合終了
【「“死霊の腕”!」】
「“フレイムバーン”!」
「“ウィンドブロー”!」
バハさんが魂さん達からなる腕を放ち、ボルカちゃんとメリア先輩が防御。数が減って二人だけでも受け止められるくらいになった。
なので私はその間に別方向から嗾ける。
「“樹海猛進”!」
【「地味に樹海の進行速度が上がってんな。同じような魔法でも呪文によって威力が変わるのはよくあるが、ティーナ・ロスト・ルミナスが扱う植物魔法の場合は元が強大だから違いが分かりにくいぜ」】
背後から樹海を出現させて圧倒的な質量で強襲。バハさんは背中から纏った魂さんの一部を放ち、樹海を防御。刹那に離れ、ボルカちゃん達の攻撃と私達の攻撃をぶつけて相■した。
次の瞬間には上から無数の力を放ち、雨のように質量のある魂さん達を降らせる。
ドドドドド! とミサイルが如く降り注ぎ、辺りを埋め尽くした。
「“上昇樹林”!」
【「ま、この程度じゃ倒せんわな」】
木々を上に放ち、バハさんを狙う。この攻撃はあくまで囮と目眩まし。本命はすぐ近く!
「“通り炎魔”!」
「“風通り”!」
【「………!」】
炎と箒で加速し、上へと到達した二人がすれ違い様に炎と風を放出。バハさんはそれらに包まれ、その体は炎上した。
通常なら魔力強化があっても炎による窒息と熱のダメージで気絶してもおかしくないけど、代表戦クラスの出場者はそんなに柔じゃないよね。
【「ハッ! 効いたァ!」】
黒い力が爆炎の中から姿を見せ、さながら多頭龍のように枝分かれする。
粉塵が全て振り払われ、全方位に黒い力が広がった。それらは一斉に私達へ襲撃。
「はっ! 闇を照らすのは炎だぜ! “フレイムピラー”!」
「私の速度はそう簡単に捕まらないよー!」
「範囲なら負けてません!」
炎の柱が立ち、黒い力を焼き尽くす。メリア先輩は箒を巧みに操って見事に避け、私は大量の木々で応戦。
触れた瞬間に塵になるけど、その側から更に追加。そう、消されるならその速度よりも速く多く嗾ければ良いだけ。これが私の最適解。
「“樹海再生”!」
【「復活すんのか……!」】
消され、押し掛け、更に消され、更に押し掛ける。
次第に競り勝ち、少なくなったのも相まって黒い力の隙間を通り抜け、植物にボルカちゃんの建てた炎の柱が引火。瘴気に強くなり、そのまま一直線にバハさんへと突撃。打ち抜いた。
【「……ッ! にゃろ……!」】
一撃食らい、片手に力を込めて体勢を立て直す。でも、
「まだまだァ!」
【「……っ」】
追加するように植物を叩き付け、乱打して力を込める隙すら与えない。
さっきは私が成す術無かったもんね。そのお返し。ボルカちゃんやメリア先輩が駆け付けてくれたお陰でバハさんに届いた。
「──“樹木乱連弾”!」
【「ぐがァァァ……!」】
ドドドドドッ! ドドドドドドドッ!! ドドドドドッ!
リズミカルに。打楽器を奏でるみたいに、植物の猛攻がバハさんへ。鮮やかな緑色が黒と混じり合って世界を彩り、カラフルラッシュを叩き込む。
バハさんは押しに押され、地面へと埋め込む。そこから更に追撃し、その場所は半径数百メートルのクレーターとなった。
「一気に叩き込んだけど……どうだろう」
「守りも浅くなってたし、効果的ではあると思うぜ」
「だよねー。こんなに大きな穴が空いたんだもん。底は見えない」
念の為に少し離れ、穴の様子を窺う。
確かな多撃は与えた。疎らにではなく、ちゃんとバハさんを狙って。
それによる成果の程は……。
「……っ。致命傷だ……全部剥がれちまった……お陰で助かったけどな……」
「……!」
結論だけ言えば、成果はあった。
身に付けた全ての魂さん達を引き剥がし、バハさん自身もボロボロ。
もうトドメを刺す事も叶う。その圏内に入っている。
私達はトドメの一撃を──
「俺もヤバいんで……これで終わりだ。せめてお前らだけは倒して自主リタイアをする」
「「「…………!?」」」
ザワッ……と、バハさんの……周りの気配が高まった気がした。
これが最後の攻撃。終え、仮に私達がやられたらリタイアするとの事。
今回のルールでは、そう言った自主的なリタイアも可能。どちらか全員が倒れるまでやっても疲弊するだけだもんね。リタイア出来るのはある一定の範囲とかそう言う制約はあるけどね。
とにかく、一定数倒してリタイアすれば相手にはポイントも行き渡らなくなる。合理的な判断。勝つ為にはそう言う選択も出てくる。
殆どの場合は戦闘で消耗した時、私みたいにどこかで休んで再開するけど、魔力が切れたりするとどうしようもないもんね。みすみす相手にポイントを与える方が愚作。魔族の特徴的に敵を全部倒さずにリタイアするのは思うところもあるだろうけど、様々な魂さん達を経て感性を育んだバハさんはチーム第一に考えて行動しているみたい。スゴいよね。
……でも、私達も負ける訳にはいかない。これで終わりと言うのなら、私達の勝利で終わるべき。
バハさんの周りに漂っていた気配は片腕に集中する。
「今から放つ技の威力だけに限れば、死霊の全纏い以上のものだ。溜めは必要だがな」
「なら、私達も最大の攻撃を仕掛けなきゃマナー違反だよね」
「そうだな。応えてやるぜ。バハさんよ」
「最年長として私もやるよ~!」
片腕のエネルギーが高まり、気配だけで海が荒れ、天が割れる。
私達もそれに応えるべく最上級の集中をし、最大級の力を込める。
間違いなく、これで終わる。そう言う確信があった。
その時は今──
「──“一点集中の一撃”!!!」
「“世界樹”!!」
「“焦熱地獄”!!」
「“スーパーセル”!!」
片手に込められた魂の叫びが放たれ、余波で周囲を抉りながら迫る。でも思ったより範囲が狭いのは、力を一点に込めているからこそ半端な破壊を生まないんだと思う。
対する私達は全員が初お披露目の魔導。
私は思い付く最大の植物、世界樹をイメージした大樹を放つ。ボルカちゃんはエメちゃんと前に見たと言う光景を模倣。メリア先輩は自然現象の再現。
イメージの世界である魔導だからこそ、最大の技は自分の思い付く最大のものとなる。
「朽ち果てろォ!!」
「負けません!!」
「やられっかよ!!」
「負けないよ!!」
四つの魔導が正面衝突。大地が抉れ、山河が崩壊し、海が退ける。
ステージその物が崩壊の一途を辿り、私達の視界は暗転した。
─
──
───
「……此処まで……か……」
「ハァ……ハァ……」
「ゼェ……ゼェ……」
「……。……はぁ……」
バハさんが光となって転移し、私達も疲労のあまり倒れる。
次第に意識も遠退き、海岸ステージが消え去るのを目の当たりにした。
───
──
─
《結果発表ォォォ!!! 総合得点!! 人間の国“10ポイント”!!! 魔族の国“9ポイント”!!! 魔物の国“1ポイント”!!! 幻獣の国、残念ながら“0ポイント”!!! よって勝者!! 人間の国“魔専アステリア女学院”ンンン━━ッ!!!!》
「「「わあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」」」
「「「ドワアアアアアアアアァァァァァァァァァッッッ!!!!!!」」」
『『『ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッ……!!!!!!』』』
『『『キュオオオオオオオオォォォォォォンンンッッッ……!!!!!!』』』
《尚! 個人点では1位がバハさんで“7ポイント”!! 2位がティーナさんの“4ポイント”!! 3位がボルカさんの“3ポイント”となりましたー!! 最後に行われた“魔専アステリア女学院”と“イルム街立アスリー科学専門学校”のぶつかり合いにてステージに居た全員がリタイアとなり!! 人間の国と魔族の国に大量得点が入る結果となりましたァァァッッッ!!!!!》
──おそらく転移した控え室にて、前代未聞の舞台に誰も居ない勝者の発表を見る。
最後の衝突。それは予想以上の破壊と衝撃を生み、この様な結果になったみたい。
因みに私達の得点は発表通り私が4ポイント。ボルカちゃんが3ポイント。メリア先輩が2ポイントでディーネちゃんが相討ちの1ポイント。ベルちゃんは残念ながら0ポイントに終わっちゃったね。
他のポイント表は映像伝達の魔道具からなるモニターに映し出されており、魔族の国ではゼルさんが0ポイント。
ボルカちゃんと戦ったと言うキアーさんって方も0ポイント。
バハさんが最高得点の7ポイントで、ディーネちゃんと引き分けたジュヌーさんが1ポイント。
そして誰も会ってないけど、チエさんって選手が1ポイント取っていたみたい。
魔物の国はヒドラさんだけで、幻獣の国は無し。そう言う結果に終わった。
第一試合でこれ。ここから更にまだまだある訳だから、目が離せないね。
「んじゃ、次の試合を見よーぜ。ティーナ!」
「うん。ボルカちゃん!」
適切な治療を施された私達はもう完治した。互いの力が打ち消し合い、ステージ全体に広がった事で意識は失ったけど軽傷と呼べるダメージで済んだの。
ダイバースの代表戦、ポイント制の総当たり。まずは人間の国が少しリードだね!




