第二百二十三幕 代表戦・本選
──“ダイバース代表戦・当日”。
《皆様ァ!! いよいよ始まります!! 待ちに待った最強最大最高の超大型イベント!! はたまた祭典!! そう! これこそが多様の戦術による対抗戦!! 代表戦ンンンンン!!!》
「「「どわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!!!」」」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!!!!」」」
『『『グギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!』』』
『『『『キュオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!!!!』』』
司会者さんの声と共に会場は、巨大地震でも起こったんじゃないかと間違う程に揺れた。
去年の新人戦では代表戦の会場に来れたけど、本番とも言える今回の舞台。比べ物にならない程とてつもないね。
「こ、これが代表戦の……」
「凄まじい熱気だ……」
「とてつもないですわ……」
「観客席からは何度も見てたけど……」
選手として初めて代表戦の会場に立つディーネちゃん達はその雰囲気に気圧されていた。
ディーネちゃん、リゼちゃん、ベルちゃんはともかくサラちゃんまでこうなるなんて凄まじいね。逆にちょっと新鮮な感じかも。
ボルカちゃん達も選手として代表戦の会場に立つのは初だけど、出場選手の関係者として一般席より近場で見ていたりしたのもあって結構落ち着いていた。
「これが代表選手としての肌感か……! ヒリヒリして気持ちいいぜ!」
「武者震いがしますわ……! ようやく此処に立つ事が出来ましたの!」
「そうね。程好い緊張感。ちょっと楽しみ」
「中等部の三年間、最初で最後の代表戦! 燃えて来たよーッ!!」
特にメリア先輩はダイバースで三年間行い、一回も行けなかったのもあってより力を込めている。
そうだよね。中等部としては最後となるダイバース。来年も居るとは思うけど、特別な感覚になっているみたい。
司会者さんの話と開会式が終わり、代表戦の選手達は自分達の知り合いと話したりしている。もちろん私達も。
「今年はこちらの大会でも参加出来たようで何よりだ。ティーナ及び“魔専アステリア女学院”の者達」
「シュティルさん!」
魔物の国代表の一つ、“神魔物エマテュポヌス”のシュティル・ローゼさん。彼女も無事、今年も代表戦に来れたみたい。去年はルミエル先輩達とも高等部相当の人達が戦ったりしてたし、常連チームみたい。
勿論キドナさんも来ており、人間換算で同年代のメリア先輩と話していた。
他にも顔見知りの人達が雑談する。
「前の海以来だな。ティーナ殿ら。そしてシュティル殿とはそれなりに久々か」
「レモンさん!」
「去年の新人戦以来か? 本当に久々だな。ルーナ=アマラール・麗衛門」
レモンさん率いる“神妖百鬼天照学園”の人達。
今回はユピテルさん達が会場に居ないのはちょっと残念だけど、改めて他国にも知り合いの人達が結構増えたねぇ~。……人間の国以外だと親しい人はシュティルさん達以外思い付かないけど。
「やっほー! ティーナちゃーん! 去年振り~!」
「え?」
そんな事を思っていると水色の髪をした女の子が親しげに話し掛けてきた。
えーと……この人は確か……。
「あ、忘れてる。リーダー! ティーナちゃん私達の事忘れてますよ~!」
「一回会っただけだからそうだろうよ。面倒だな……。俺達は会場全域を埋め尽くさんばかりの植物魔法って言う忘れられない光景を見たが、向こうからしたらその力を使う不特定多数のうちの一人でしか無いんだから。ああ、面倒だ」
「リーダー……同じチーム……人間の国の代表決定戦では見覚えが無いから他国の人で……容姿からはヴァンパイアとか魔族とかそっち方面……=去年の代表戦、新人の部で会った……もしかして、一回戦と二回戦で戦った魔族の人ですか?」
「そ! 思い出してくれた!?」
「待て。何処の国所属かは知られたけど、名前までは思い出してないようだ。出会った経緯のみを思い出したって感じだな。その面倒な先走る性格は改めた方が良い。──……取り敢えず、面倒だけどもう一度自己紹介しておくか。俺はダク。魔族の国“レイル街立暗黒学園”のリーダーだ」
「もう! 私はリテ! 去年の一回戦で貴女に負けた可愛い超能力者!」
「あ、リテさんにダクさん!」
説明され、ようやく思い出した。
去年の一回戦で戦ったリテさんに二回戦……で戦ったダクさん。
二回戦の記憶は少し曖昧だけど、確かにその記憶はある。
レモンさんやシュティルさんみたいにその後の交流が無いのもあって忘れちゃってたけど、少しずつ鮮明になってきた。
「ごめんなさい。なんだか新人代表戦の記憶が曖昧で……」
「無理もない。何かしらの地雷を踏んだ可能性があるからな」
「そう言えばそうだな。まあ嫌な記憶がフラッシュバックでもしたのだろう。気に病む事はない。私はちゃんと覚えて貰っていたがな」
「そりゃ交流があったからだろーが。シュティル・ローゼ」
「私達だってこれから覚えて貰えるようにするよ!」
シュティルさんも入り、四人で会話する。意外と私にも他国との繋がりは結構出来てたんだね~。
親しい人達や顔見知り達との和やかな時間が進んでいく。今は楽しいけど、レモンさん以外の全員が敵なんだもんね。気を引き締めていかないと……!
ステージの準備も整い、今回の総合ルールが発表された。
*****
《さあ!! 今回の総合ルールは最もポピュラーと言っても過言じゃないルールのうちの一つ!! 四ヶ国入り乱れの“総当たり”です!! その国同士以外の全てのチームと当たる可能性があるこのルール!! 更に!! 今回は最後まで残れば良いのではなく、選手一名を倒すにつき1Pが入り、その総合得点で結果が決まりまァす!! つまり逃げ隠れは程々に! ドンドン倒しちゃいましょう!! 単純が故に戦略の幅は広く!! 他のチームがどの様な戦い方を見せてくれるのか大層楽しみで御座いまァァァすッ!!!》
「「「どわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」」」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!」」」
『『『グギャアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!』』』
『『『キュオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォンンンンンンンッッッッッ!!!!!』』』
ルール説明だけでこの盛り上がり。相変わらずだねぇ~。
そんなルールは“総当たり”。と言うか最もポピュラーなルールのうちの一つって……“最も”なのに複数も存在するんだ。言いたい事は何となく分かるけども。
何はともあれ、今回も各ブロック毎に分かれ、勝率の高い国同士で戦うもの。AブロックとかBブロックとかそんな感じで、ブロック内で総当たりを行うの。
流石に全部の参加チームとは戦わないからその辺は安心。全く安心出来ないかもだけど。取り敢えず今までと違ってポイント制のルールみたいだね。去年みたいにずっと潜んで漁夫の利を狙う戦法は難しいかな。
代表戦、各ブロック毎の試合が始まろうとしていた。
──“控え室”。
「さて、四つの国が入り乱れた総当たり……の一回戦みたいなものだ。厳密に言えば違うけど、取り敢えず分かりやすく認識しておこう」
「そうだね~。それで、今回の参加メンバーはどうするの?」
「取り敢えず最初の試合。でも全部が優勝候補の強敵揃い。こっちも最高戦力で行きたい……ところだけど、連戦で疲れちゃうから全試合出場は現実的じゃないな。それにつき、決めた参加メンバーは──」
控え室で作戦会議と参加メンバーの選定を行う。
ボルカちゃんの言う通り全チームが優勝候補の揃い踏み。なので戦力は削れないけど、自分達の体力的な問題もあるのでそれを踏まえて決める事にした。
そう考えると全試合出ており、その上で圧勝していたルミエル先輩とイェラ先輩のとんでもなさが際立つ。
とにかく今はチーム決め。メンバーを指定し、私達はステージへと転移した。
「アタシ、ティーナ。メリア先輩にディーネ、ベルだ」
「私ですの?」
「ああ。バランス的にはそれが良い。他の試合ではビブリー達も出るからちゃんと準備しててくれよ? 何なら控えとの入れ替えで出る可能性もあるしな」
「そ、分かったわ」
「分かりましたわ!」
今回のメンバーは私とボルカちゃんにメリア先輩。そしてディーネちゃんとベルちゃん。
攻守に索敵を備えた四つのエレメント使いに加えて私達の植物魔法。そんな感じの組み合わせであり、バランスの取れたメンバーで挑む事にした。
──“第一試合・海岸ステージ”。
「……」
ザザーン……と波が砂浜を覆う音がする。キラキラと輝く青い海と空。白い雲、光輝く太陽が私達をお出迎えする。最近見た光景だねぇ。
海岸ステージ。砂浜のみならず、近くの山や海上から海底までが舞台。ちゃんと水の中でも呼吸は出来るようになってるよ。
とは言え、抵抗とか浮力とかはあるからあまり自由には動けないかもしれないけどねぇ。
そして今回の転移先は全員がバラバラみたい。先ずは近くの人と合流するか、近くの敵と相対するか。
まだ気配を上手く掴めない私に敵か味方を選別する事は出来ないけど、開始直後でやれる事はするつもり。私達も他のチームも、これが切っ掛けに動き出す事になるかもね。
「“樹海生成”!」
ママに魔力を込め、海岸ステージを樹海とする。
今までの流れを思えば私達に有利なこのフィールドは一部がすぐに破壊される筈。相手にも私達にも一部の場所が分かり、戦場は加速するよね。
「……!」
すると、いくつかの場所で早速破壊工作が行われた。
山と会場に何人、何匹か。でも私がそこに居ないと海底までは届かせられないから海の中に居た人にとっては何が起こったか分からないかもね。太陽の光が何かに遮られた程度の認識になりそう。
それについては出会ったら対処するとして、今は私なりの行動を起こさなきゃ。
「“フォレストゴーレム”&“フォレストビースト”!」
『『『…………』』』
『『『…………』』』
私達の戦力を更に増加させる。上手く行けば他の選手を倒してポイントが入るかもしれないし、倒せなくてもボルカちゃんや仲間達のサポートも出来る。
一つ一つはそんなに大きな力にならないけど、囮や陽動。それだけで十分。
これで盤面は整ったかな。後は今見えた場所の何れかに向かって戦うだけ。もしかしたら既に私の居場所を特定している人も居るかもしれない。どう転んでも戦闘は避けられない……!
「──“風の刃”!」
「……!」
そう考えていた瞬間、どこからか風の刃が迫り、私の居た場所を切り裂いた。
植物を張り巡らせていたから気付けたけど、当たっていたらタダじゃ済まなかった。
「アナタは……!」
「避けたか! やるな! ティーナ・ロスト・ルミナス! 何やら開始前はダクやリテと言った“暗黒学園”の奴らと親しげに話していたが、真の最強はこの俺! “イルム都立アスリー科学専門学校”のゼル様だァ!」
「ゼ、ゼルさん……! 科学の専門学校なのに魔術師なんですか……」
「この世界じゃ差して珍しくもない!」
イルムって都市のアスリー科学専門学校出身のゼルさんとやら。名前が長いね~。
なんか元気な人だなぁって感想が出てくるけど、さっきの風魔術による破壊痕からその高い実力は窺えられる。
とんでもない強敵なのは変わらないよね。
「さて! 最初に出会えたのは幸運! 魔族でも使える者が少ない植物魔法! その力を特と見せてくれ!!」
「……! エレメントを全て……!」
ゼルさんの周りに顕現される、轟炎、大水、暴風、巨土。どうやら全てのエレメントを高水準で扱える人みたい。中等部並みの年齢でこの実力者。相変わらず世界の壁は高そう。
そしてその言葉から彼は魔族なんだね。あれ? けどなんか私って魔族と縁があるような……。ルミエル先輩もシュティルさんも、種族は人間とヴァンパイアだけど半分は魔族だもんね。
まあそれは置いておこうか。余計な事を考えていたら勝てない相手なのは明白だもん。
私達の代表戦、第一試合。盤面を整えた辺りで魔族の国代表のゼルさんと相対した。




