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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第二百十九幕 ノーム家の山

 ──“ノーム家”。


「此処が私のお屋敷ですわ!」


 絨毯に乗って数十分後、私達はベルちゃんのお家に辿り着いた。

 外観はよく見る感じのお屋敷だけど、彼女のお家が代々土の系統を受け継いでいるからか全体的に岩の素材を多分に使った形跡が見受けられるね。

 お屋敷が建っている場所も自然が多く、土と共にある感じを表現していた。

 多分後ろにあるいくつかの山々はノーム家の所有地かな。


「私の家は昔から土魔法や土魔術をもちいた稼業を生業なりわいとしており、いくつもの鉱山や山を所有しておりますの」

「そうだったんだ~。でもそれって管理費の方が掛かるんじゃないかな?」

「管理に必要な人件費などで消費される物より入って来る方が多いんですのよ。ティーナ先輩」

「成る程ねー」


 ベルちゃんのノーム家。それは昔から炭鉱とかで有名な家柄との事。それは今も継続しており、そのまま金銭も入って来るんだね。

 ボルカちゃんが訊ねるように質問した。


「んで、稼業ってどんなんだ? 炭鉱ったって、今じゃ石炭を使ってる場所も限られてるしな」


「主に“魔石”ですわ。魔力を触媒に世界中のあらゆる物が動いており発展してますが、魔力の少ない方々もおります。故に魔力を使えずともエネルギーとして保存出来る“魔石”が重宝されているんですわ」


「“魔石”か。それなら魔導社会である今現在だと枯渇する事も無いかもな」


「そうですわね。誰かが魔導をもちいた時、魔力の欠片は空中に散り世界中に霧散しますの。それが雨や雪で降り注ぎ、一部はスライムなどの魔力モンスターに付与。一部は地中に蓄積して“魔石”となりますものね。私のお家が所有する山は特に魔石が貯まりやすく、向こう千年は取れると研究成果も出ていますわ」


「それならベル世代は一生安泰かもな」

「かもしれませんわ!」


 ノーム家の稼業は“魔石”の採掘。用途は説明通りで、世界に欠かせない代物。

 それじゃああの山全てがお宝の山みたいな物なのかな。確かに余裕があるね。


「それで先輩方。皆様。今日はどの様な事をしますの?」

「そんじゃ、折角近くに山があるんだし登山しようぜー。今年は色々忙しいから海か山かどちらかだけと思ってたけど、ベルん付近ならそれも可能だ」

「え゛……登山ですの?」

「ああ。採掘用じゃなくて観光用の山もあるだろ?」

「ありますけれど……私のお屋敷で色々とおもてなしの準備をしておりましたのに……」


 ボルカちゃんの登山発言に苦言を申すベルちゃん。それは登山が嫌なのではなく、色々なおもてなしをする準備をしていたから。

 確かにそれは悪いかもね。その心意気を無下にしちゃうのは忍びないや。

 それにつき、ボルカちゃんは話す。


「おもてなしの分なら帰った時でも出来るだろー? それか、多分乗り気じゃない人もチラホラ居るだろうから登山組と待機組で分かれるとかさ!」

「うーん、確かにそれならば無駄にはなりませんけど……誰が残りますのでしょうか」

「此処で決めても良いけど、暑いし屋敷に入れて貰うか」

「分かりましたわ。ボルカ先輩。それでは皆様、案内致しますの」


 提案は登山をする人と残る人で分かれるという事。

 それにつき、誰がどちらに行くかの話し合いを一先ずベルちゃん家のリビングで話し合う。

 内装はよくある豪邸って感じだけど、私のお家やルーチェちゃんの別荘と違うのは鉱石の名品が並んでいる事。単純に石好きの家庭みたいだね。

 ダイヤモンドにルビー、サファイア、プラチナ、エメラルドの原石。金にペリドット、オパール、トパーズ。更には宝石以外にも様々。目につく範囲だけでこれだけの数だから、もしかしたら世界中の宝石が全部揃ってるのかもね。

 その他にもミスリルとかオリハルコンとか、貴重な物が沢山見受けられた。

 そんなコレクションを横目に私達はリビングへ。


「そんで、アタシと登山行くやつ居るかー? 居ないなら居ないで、アタシは一人登山を楽しむつもりだけどな」


 出された飲み物を含み、飲み込んで話すボルカちゃん。

 元々アクティブな性格もあり、誰も乗らないなら乗らないで構わないって感じ。みんなと居るのは好きだけど、一人で行動するのも嫌いじゃないってタイプの性格だもんね~。

 私は挙手した。


「私は登山行きたーい。昨日レモンさんが鍛練中だったのもあって、遊ぶだけじゃダメかなぁって思ったからね」

「OK。ティーナは行くんだな。他には居ないかー?」

「ウチも行きまーす! ボルカ先輩を習わなきゃならないっしょ!」

「よーし。サラも決定。他はどうだー?」

「それなら私も……鍛えなきゃって思ってましたから!」

「私も行く行くー! 山登りも楽しいもんねー!」

「ウーッス。ディーネとメリア先輩ッスねー。もう居なさそうかな」


 名乗り出たのは私とサラちゃん。ディーネちゃんにメリア先輩。割と珍しい組み合わせかも。二人の時はよく一緒に居たりするけど、五人で行動する時はあまりないからね~。

 他のみんなはゆっくりしたかったり勉強だったりの理由で待機。私達も宿泊じゃなくて登って楽しんで降りるだけだから今の時間からして夕方前には帰ってこれるね。


「そんじゃ、早速行動開始だ!」

「「「おー!」」」

「はい……!」


 飲み物を飲み干し、ベルちゃん家にある登山グッズを借りていざ出発。

 そう言えば当初は山登りをするつもりが無かったから何も持ち合わせてなかったね。何なら近くのお店で買う事も視野に入れていたけど、家系が家系のベルちゃん家には豊富なセットが色々置かれているから丁度良かった。

 しかもどれも一級品。流石だね!


「それでは行ってらっしゃいませ。皆様」

「おーう。昼食は現地調達するから要らないぜー!」


 見送られ、私達は山の方へ。ちゃんと登山用の場所だから道はそれなりに整備されてる所が多いね。

 だけどボルカちゃんの事だから、


「よし、荒れ道を行こうぜ。その方が体力も付くし発見もある!」


 予想通り、険しい方を選んだ。

 そこも立ち入り禁止区域とかじゃないので比較的安全ではあるけど、本当に修行には持ってこいの場所って感じ。

 私達も元々そのつもりだったから賛同し、山を登り始めた。


「確か山には山の歩き方があるんだよね」

「ああ。去年も話してたな。メリア先輩とディーネとサラには話していないから今のうちに説明しとくか」


 山での疲れにくい歩き方。背筋を伸ばして垂直に足を下ろし、足の裏全体で踏み締める感じ。

 それを説明し、私達五人は険しい方の山道を進む。


「うーん、やっぱ自然に包まれた山は空気が良いな。標高もあるから地上より涼しいぜ」

「景色も良いね~。今回は去年と違って小型魔道具を持ってきたから風景を収める事も出来るよ!」

「珍しい生き物もいますね~」

ほーねー。ウチは今まで登山をあまりしなかったけど、景色とかそう言った物を楽しむんだ~」

「山は良い風が吹くなー。今度個人的に山をほうきで飛ぼっかな~」


 生い茂る木々。空を舞う鳥や茂みに隠れる小動物。

 虫も多いけど私達に構っている暇があったら自分達のエサを集めてた方が良いと言わんばかりにスルー。この高さだと来れる虫も限られてるから結構快適に進めていた。

 そんな景色を楽しみ、飽きることなく一時間程。渓流を見つけ、ボルカちゃんはそこへ向かった。


「この辺りで昼食の採取だ。野草とか魚とか果実とか、取り敢えず色々持ってきてくれ。毒があるかどうかはアタシが知ってるから気にするな。けど見るからにヤバそうなのには触るなよ」


「わ、分かりました……!」

「分っかりましたー!」


 ボルカちゃんが指示を出し、ディーネちゃんとサラちゃんで野草集め。

 ここの山も自然物の採取許可が出ており、自由に採れるの。採り過ぎは良くないから人数分の程々でね。

 メリア先輩は風魔法で魚の採取。


「それ。“ミニトルネード”!」


 小さなそよ風からなる竜巻を起こし、川魚を捕る。一方では釣竿を垂らしており、抜かりなく二重の在り方。

 結構手慣れてるけど、“魔専アステリア女学院”では中等部一年生の二学期に合宿があるからそれで自然と身に付くんだよね。まだやってないディーネちゃんとサラちゃんはちょっとぎこちないけど、だからこそボルカちゃんは野草とかそちら方面を任せたみたい。

 私とボルカちゃんも採取に取り掛かり、五人分の材料は集まった。


「メリア先輩にサラとディーネの料理の腕はー?」

「初等部の調理実習で少し……」

「同じく!」

「フフン、私はちゃんと出来るよ! この場では最年長だから頼っちゃって!」


 料理の実力を訊ね、役割分担。メリア先輩はここで一番の年上という事もあり、頼って欲しいオーラが溢れ出ていた。

 何はともあれ調理開始。


「よっと」

「お、手際良いね~」

「メリア先輩もやりますね」

ほうきも料理も精密な動きが大事だからね~。自然と身に付くんだ~」


 魚の頭を落とし、そこからナイフを刺し込んで内臓の処理。三枚に降ろして焼く。

 一方では内臓の処理のみを施した後、清潔な棒を植物魔法で作り出して刺し、焚き火に掛ける。

 二人とも手際が良いや。

 私は安全な物を分別したり手渡したり。ディーネちゃんとサラちゃんもそれが主な仕事だね。メインはボルカちゃんとメリア先輩の料理が出来るコンビ。

 お昼は物の数分で完成した。


「それじゃ、いただきまーす!」

「いただきます」

「「いっただきまーっす!」」

「いただきます……」


 焼き魚や野草のサラダを並べ、果実から作った特製ソースを掛ける。

 木の実にも甘い辛いしょっぱいすっぱい等々。様々な味があるので調整すればそのままソースに出来ちゃうの。

 楽しく食事を摂り、川で軽く水遊びをした後再び歩き出す。

 その道中も魔道具に収めたり景色を楽しんだり色々作ってみたり、そうこうしているうちにいつの間にか頂上に到達していた。


「とうちゃーく! 思ったより早かったな~」

「それでももうお昼から二時間くらいだね~」

「「やっほー!」」

「楽しかったです……!」


 大きく息を吸い、山頂からの景色を眺める。メリア先輩とサラちゃんは山びこを楽しんでいた。

 この感覚が登山の醍醐味だよね~。空を飛べば見れる景色でもあるんだけど、それとはまた違った達成感があるの。


「へえ。この山は露天風呂があるんだってさ。入ろーぜ!」

「露天風呂!? 入りたーい!」

「ウチもー!」

「私もー!」

「登山シーズンですけど、ベルちゃん……ノーム家の所有地だけあって人も居りませんものね」


 そしてこの山には露天風呂があるとの情報が。

 本来は混浴なんだけど、ディーネちゃんの言った理由から人の姿は無し。なのでゆっくりとくつろげそう。

 一応一般解放してるらしいけど、周りが鉱山だったりこの山の存在が紛れてたりであまり来ないみたいだね。

 でも恥ずかしくないから好都合。その場で衣服を脱ぎ去り、私達は露天風呂に浸かった。


「自然の風呂ってのもまた最高だな~」

「そうだね~。空いてるお風呂でこの景色を眺めるなんて贅沢~」

「気持ちいい~」

「あ~……疲れが取れて癒される~」

「良い所ですね~」


 生憎あいにく石鹸とか持ってきてないのでちょっと汚れた体でそのまま入ってるけど、すぐに汚れはキレイになっていく。

 それに温泉が汚れた気配も無いし、どこかに行ってるのかな?

 そんな事を考えながらホッと一息吐く。山頂は気温的にも丁度良く、快適な空間がここにあった。

 たっぷり数十分露天風呂に浸かり、風魔法や植物魔法のタオルで体を乾かし衣服を着用。疲れが取れたお陰で軽くなった気がするね。


「それで帰りはどうする? ボルカちゃん」

「ま、普通なら歩いてだけど他の客も居ないし飛び降りちまうか」

「そうだね」


「え!? 飛び降りるんですか!?」

「マジー!? けど確かにその方が楽っちゃ楽よね~」

「私はほうきがあるから大丈夫!」


 この山の標高は知らないけど、それなりに高い。でもダイバースではこれくらいの高さから落ちる事も良くあるし、魔力を込めれば移動も出来るので慣れてる方。

 早速私達は魔力を込めた。


「ディーネちゃんは水魔術とか空間魔術だけど、平気そう? 私の植物魔法に乗せてあげよっか?」

「だ、大丈夫です。空間魔術の応用で空を移動する方法は考えておりましたので」

「そっか。でも無理そうなら言ってね。植物の幅は広いからさ、さ!」

「ありがとうございます……!」


 飛行や移動向きじゃないディーネちゃんの魔術だけど、どうやら考えはあるみたい。

 それなら良いとして、私は植物の上に乗り、ボルカちゃんとサラちゃんは炎を放出して浮遊。メリア先輩はほうきに魔力を込めた。


「それじゃ、ベルの家に帰るか」

「「おー!」」

「うん!」

「はい……!」


 その合図と同時に落下。植物に乗って滑るように落ち、ボルカちゃん達は炎で加速。メリア先輩はほうきで乗って移動し、ディーネちゃんは空間をどうこうして浮遊を再現。

 私達はベルちゃんのお屋敷に戻る。

 長期休暇、残すは今日だけ。後はのんびり過ごして代表戦に備えるよ!

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