第二百十四幕 勉強会(仮)
「ここがディーネちゃんの部屋で、四つ並びにサラちゃん、リゼちゃん、ベルちゃん達一年生の部屋が続いているよ」
「広いですね~。私の部屋より一回りくらい大きいです!」
「ご厚意、痛み入ります」
「私の自室よりほんのちょっぴり小さい程度ですわね」
まずはお部屋案内。やっぱり“魔専アステリア女学院”に通っているだけあって実家は大きかったりするんだね~。
部屋の作りは基本的なもの。ベッドに棚にテーブル等々。必要になりそうな物は一通り揃っているよ。
既に荷物も丁寧に置かれており、お泊まりするには十分な状態が作られていた。
因みにここには居ないサラちゃんだけど、私のお家について色々知ってるボルカちゃんが案内してくれてるから心配は要らないね。先輩達は個々で探索中って感じ。
そんな感じでお屋敷案内を続ける。
「この辺りが書庫になるから勉強するにはここもありかもね~。リビングかこの場所かのどこかになるかな?」
「成る程。快適な環境で勉強しやすそうですね」
「書庫ならすぐに調べ物も出来ますものね。けれど本ばかりで疲れてしまうからリビングにてゆっくりと行うのも捨てがたいですわ」
「そう言えばティーナ先輩。このお屋敷涼しいですね。寒冷の魔道具とか導入してますか?」
「してはあるけど、今はまだ点けてないよ。近くに森や湖があるから自然の風も涼しいんだ~。虫が入ってきたりする事もあるから虫除けの魔道具でお屋敷は覆っているけどね~」
書庫にするかリビングにするか、勉強場所はその時の気分次第だね。
そしてこの季節、魔道具からなる暑さ対策は必須だけど、元々が涼しい場所にあるこのお屋敷にはあまり関係無いの。
前述したように虫除けくらいかな。寒冷も虫除けも、魔道具の使い方は魔力を込めるだけだからお屋敷全体を覆ってもそんなに疲れないんだ。一回魔力を込めれば一週間は持つから結構快適だよ。
魔力が少なかったり無い人には魔力の供給サービスもあるから便利な世の中だよねぇ~。
取り敢えず書庫の案内も終了。もう少しだけお屋敷を見て回る。
「ここが食堂で、お昼御飯とか夕飯はここで摂る事になるからね~。使用人さん達が呼んでくれるよ!」
「広々とした良い場所ですね」
「やはり何処のお家も似たような感じになるんですわね~」
「スゴいピカピカです!」
みんなでご飯を食べる事になる食堂の案内。その後、浴場やトイレみたいな水場とか、ベランダとか息抜きにのんびりする場所の案内をした。
見て回るだけでそれなりに時間が経ってお昼の時間。私達はさっき紹介した食堂に集い、昼食となる。
「ではごゆるりとお過ごし下さいませ。お嬢様にお友達の皆様方」
「「「いただきまーす!」」」
昼食の時間もみんなで過ごす。今日のメニューはこの季節に合わせ、暑さ対策となる物や季節の野菜を使った物。
自宅は落ち着くけど、家に帰ってからこんなに賑やかな食事は初めて。去年とか泊まりに来た時は毎回楽しいんだけどね~。
食事も終わり、軽く休憩。正午から一時間の辺りでやっと勉強会が始まった。
「っても、ティーナやビブリーに何人かは既に課題終わらせてるし、本当にただ勉強してるだけになっちまってるな~」
「そうだねぇ。でもお陰で気楽に過ごせるよ。それに勉強は大事なことだからね!」
「ま、リビングも涼しいしな!」
今日の勉強場所はリビング、書庫でも良かったけど、そこまで調べる物も特に無いからね~。
一年ちょいで大学受験があるレヴィア先輩にリタル先輩とか、元々書庫が好きなウラノちゃんはそっちで勉強してるけど、私達はここでしてるの。
「でもやっぱりボルカちゃんはスラスラ解いてくね~。これなら明日も同じくらいの時間すれば課題全部終わるかも」
「ま、問題自体は単純で分かりやすいしな。飲み物もお菓子もあるし涼しくて快適だ」
普通は会話をしながら解くなんて難しいんだけど、ボルカちゃんは課題の方をおまけにそれを実行している。
複数の事を同時に行えるマルチタスクの才能。彼女にはそれがあるみたい。その更にレベルが上バージョンかな。
「流石はボルカ先輩……! っし、ウチも同時に課題をするよー! あっ!」
「サラ。飲み物を溢すな」
「ご、ごめんなさいティーナ先輩~!」
「だ、大丈夫だよ。それにボルカちゃんはスゴいんだから同じ事をするのは大変かもしれないよ」
「そうッスよね~……」
「ふふん。ま、アタシは天才だからな!」
鼻高々なボルカちゃん。実際そうだもんねぇ~。
サラちゃんが溢した飲み物はリゼちゃんが風魔法で乾かす。
そのまま乾かすと匂いとかが移っちゃうかもしれないけど、その辺は大丈夫。リゼちゃんの風に私が植物魔法で洗浄効果を与えているから! 厳密に言えば洗浄効果のある植物だね。
そんな感じだけどサラちゃんも当然頭は良く、問題集自体はサクサクと解いていた。
私のお家に二泊三日で残りをルーチェちゃんやベルちゃんのお屋敷で過ごす算段だったけど、このペースなら課題自体は明日のうちに終わっちゃうね。
そんなこんなで楽しい勉強会は進んでいく。
「お嬢様方。晩餐のご用意が出来ました」
「あ、もうこんな時間みたい」
「おー、そうだな。集中しちまってたぜ」
「やりぃ! 課題も殆ど終わった~! やっほー!」
「良かったね~」
「私はもう終わらせましたわ! 後輩さん達!」
「ふふ、私も終わらせましたわ!」
「ウム、有意義な時間を過ごせた」
「勉強に集中出来たねー!」
メイドさんがリビングに来、夕飯の案内をする。多分ウラノちゃん達も呼びに行ってるかな~。
手を付けられていなかったボルカちゃんとサラちゃんの課題はほぼ終わり、ルーチェちゃんにベルちゃん、メリア先輩は終わらせた。
私、ディーネちゃんにリゼちゃんも勉強が捗り、本当に有意義な時間だったね~。
そしてみんなで食堂に集まり、夕飯の時間となる。
「ビブリー達はどうだったんだ?」
「ええ。悪くない時間を過ごせたわ」
「私も課題を終わらせましたよぉ~」
「書物の数が多く、勉強に集中出来たな」
「全員良い時間を過ごせて良かったです!」
ウラノちゃん達の成果報告。彼女達も捗ったみたい。
夕飯のメニューは野菜中心のヘルシーな感じ。でも味が薄過ぎるとかそんな事は無く、当たり前だけどとても美味しい。
夕飯は食べ過ぎない方が健康に良いらしく、その辺の栄養管理もちゃんとしてるんだ~。
食事も終わり、二時間程の休憩を挟んで私達はお風呂に向かった。
このメンバー全員で入るのは何気に初めてかもしれない。時間が合わないのもあるけど、一緒に入る機会は大体ダイバース後とかだから今度は高等部の先輩達と都合が合わないんだよね~。
「この人数でも余裕があんな~。ティーナん家の風呂は排水溝直行型だっけ?」
「うん。だから湯船の中だけじゃなくて床の所で体を洗っても大丈夫だよ。“魔専アステリア女学院”や“日の下”のお風呂と同じ仕様」
「そりゃいいや。泡風呂になるのも悪くないけど、その後の掃除が大変なんだ」
「ボルカちゃんの家ではボルカちゃんが掃除してるんだ」
「ああ。一番体力あるからって理由でな。アタシもお嬢様なら使用人とか雇えるんだけどな~」
「そんな。立派だよ。ボルカちゃん」
「まだそんなに立派になってないけどな~。体の方は」
「か……!?」
自分でお風呂場の掃除をする。そんな発想は無かったなぁ。本当に立派なボルカちゃん。体じゃなくて心意気が。あ、体が立派じゃないって意味じゃないよ? えーとその……。
と、取り敢えずそんな感じ。お風呂は楽しいよ。
「成る程……やっぱ高等部ともなるとかなりのものに……」
「何を見ている。サラ」
「見ても何もありませんよぉ~」
「ねえ! 逆になんで私は見ないの!?」
「いや~。ウチ的個人的な主観による見立ての順番はリタル先輩、ルーチェ先輩、レヴィア先輩、ティーナ先輩、ウチ、ベル、ディーネって感じで……ボルカ先輩、ウラノ先輩、リゼ、メリア先輩は同率って感覚なんですよ~。同率でも順位を決めるなら名前を出した順って感じです」
「答えになってない!? 私ってそんなに……!?」
「聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ……!」
「風の系統ってそうなのかしら」
一体何について話しているのか、私は聞かなかった事にする。
ちょっとした言い合いもまた賑やかで良いね~。
そんな戯れを挟みつつ、お風呂の時間も過ぎていく。
──“リビング”。
「いや~。ティーナん家の風呂もやっぱり良いな~」
「そう思ってくれて嬉しいよ♪」
お風呂上がり、火照った体を冷ます為にリビングへ。湯冷めはしない範囲でね。
ボルカちゃんはタオルを首元に巻き、使用人さんが持ってきてくれた飲み物を飲んでいた。私達も貰ったよ~!
お風呂上がりに勉強はしないでおく。手が汚れちゃうからね~。だからこの時間は各々で自由に過ごす感じ。何人かは外の方に出ている。
ちゃんとこの辺を詳しく知ってる使用人さん達が付き添ってくれてるから安心安全仕様!
「にしても、勉強合宿。結構良い案だっただろー?」
「うん。そうだね。みんなで勉強出来て学べる事も多かったよ! 言い訳を兼ねた突発的な案だとしても正解だったね!」
「おいおい、アタシは何から何まで計算済みだぜ~?」
計算済みで今回の合宿を提案したと言うボルカちゃん。
ふふ、そう言う事にしておこうかな。実際とても良い時間を過ごせたもんね♪
「とまあそんな感じで、明日のうちに課題は終わりそうだし残りの休みは遊ぼうぜー。今年は部活に次ぐ部活で全然遊んでないからな~」
「そうだね。早ければ明日の午後から遊びに行けるかも」
「だろ? それとまた海か山に行きたいな。残り日数的に行けて一ヶ所だけど」
「うん。予定空けとく。元々無いんだけどね~」
そして行われる遊びの話し合い。
他のみんなは都合が合わなくなる可能性もあるけど、何人かは行けると思うもんね。去年も楽しかったし、実質的な休みは少ないからその間に色々遊んでおくのは賛成。
「じゃあ決まりだ。明日のうちにやれる範囲の課題は終わらせるぜ!」
「頑張ってね! ボルカちゃん!」
明日も明後日も楽しみ。ダイバース代表戦が始まるまでの束の間の休息。十分に英気は養っておかないとね。
楽しくお話をしたり夕涼みをしたりで過ごし、夜は更けていくのだった。




