第二百十二幕 期末テスト終了・打ち上げ
──“期末テスト・二日目”。
──“地理”。
(人間の国・幻獣の国・魔族の国・魔物の国の首都となる国名をそれぞれ書き記せ。人間の国は──)
最初は地理の問題。世界の基礎知識だね。それぞれの国の主要国を書く問題だけど、各種族の国とその中に更に国があるってちょっとややこしいかも。
でも問題自体は簡単なのでサッと終わらせられた。
──“科学”。
(化学変化によってどんな物質に変わるか……普通に考えてこれだね)
次は科学。魔導科学と違って魔力無しの場合で考えた現象が出題される。
どの様な変化が起こるかとか、基礎的な事だから簡単に解ける。化学反応式もあるけどそれも何とかなったよ。
──“生物”。
(再生力の高い幻獣や魔物の細胞変化の時に起こる現象を答えよ……確か体内の魔力とかが活性化して……これかな)
今日の最後は生物。
主に幻獣や魔物の生態等を行う。人体の不思議とかは保健体育の科目に入っているからちょっと違うんだよね。
一括りに幻獣・魔物って言っても種族ごとに性質は違うから、中等部二年生の問題はスライムとかヴァンパイアみたいなメジャーどころがメインかな。だからまだ分かりやすいよ。
因みにヴァンパイアは肉体構造が人間に近いのもあって、その他を含めた生物の時に執り行うのは問題ではないか的な議論が行われているとか。そしてそれに伴い、高い知能を有する幻獣達からも抗議の声が出ているとの事。
でもそれはあくまで一部の人達から。大多数は無関心なんだけど、近い将来にはまた別の科目に加えられるかもね。何なら既に載ってる物が違ったりもしているよ。
何はともあれ、これで今日のテストも終了。残すはあと三日。真ん中まで来たね!
──“期末テスト・三日目”。
──“世界史”。
(かつて抑止力となっていた各国の主力。四つの国で冷戦状態が続く中、それぞれの者達が配置されていた国の現在地を述べよ。これはここだね)
最初は世界史。正直地理や歴史でも世界の事をやるからどう違うんだろうって思うけど、一応別物。
世界で起こった出来事は沢山あり、二つの教科に纏まらないからもう一つの区分を作ったとか。苦労しているんだろうねぇ。
──“倫理”。
(○○さんから成果の発表があり、それについて××さんが意見を述べた。××さんがそう述べた理由を答えよ。……これは倫理的に考えたらこうなんじゃないかな……ちょっと難しいけど)
次のテストは倫理。ちょっと苦手な科目かなぁ。そう思った事が外れちゃったりすると私って倫理観変なのかなって思っちゃうし。
中間テストでは一番点数が低かったけど、勉強のしようがなくてまた大変。
でも取り敢えず三日目はこれで終了。真ん中も終わったね~。そろそろテスト期間その物が終了だー。
──“期末テスト・四日目”。
──“魔導”。
(属性変化と魔力による関係性かぁ。これを知らなきゃ魔法なんて使えないけど、ちょっと複雑な魔力の使い方をしているみたい。でもこの魔力とこの魔力を掛け合わせる事で生じる事象なんて限られてるし、この文脈から考えたらこれかな)
四日目の最初は魔導。
最もポピュラーな科目と言っても過言じゃない教科。勉強が苦手な人でも、その人が魔法使いか魔術師なら赤点は無いんじゃないかな。
私の……と言うよりママのだけど、魔法はちょっと特殊だからその辺が少し大変なくらいかな。特殊魔法だったり、そもそも魔法を使わない、使えない人からしたら高難易度なのかも。
日常的に触れ合う機会は多いからそれでも解けると思うけどね~。
──“魔導薬学”。
(この薬草と有害な物質を加える時に起こる変化へ魔力を足すと回復の薬が作られる。その時魔力に起こる変化からどんな存在へ変貌を遂げたのか説明せよ。確かこれは……この成分とこの成分が主体なんだよね)
次の教科は魔導薬学。
魔導や魔導科学と違い、完全に医療方面へ吹っ切った科目。
将来的にお医者さんになりたい人以外はあまり真剣に取り組まなくても殆ど影響は無い教科なんだけど、私はちょっとその辺の分野に興味があるからちゃんとする。
特に薬草とかの知識。それは植物魔法に大きな影響を及ぼすもんね。
そして四日目も二時間で終了。残るはいよいよ明日、最終日! ラストスパート突っ切るよ!
──“期末テスト・五日目”。
──“保健体育”。
(人体の不思議。体内を流れる魔力ですが、それによって人には様々な影響が及びます。その変化として正しいものを次から選べ……これはここだよね。いつも使ってるから何となく分かる)
一時間目は保健体育。
これも魔導薬学とかとはまた違い、完全に人間主体の問題。でもたまにヴァンパイアとかエルフとか、人間に近い種族の事も出てくるよ。
その二種族は生物の時間でも入っていたから、勉強する事は多いね。
──“家庭科”。
(改めてこれってテストに出るんだ……えーと、それぞれの名称について……)
最終日、最後の科目は家庭科。
……って、なんか一つだけ異質な気がするよね。教科の多いこの世界では期末テストごとに出てくる科目が割と頻繁に変わるんだけど、なんか違う気がする。
具体例は天文学とか政治とか技能とか色々あるんだけど、なんでだろうね。私は得意科目だから良いけど。
そんな感じで最後のテストも終了。私達は四人が集まった。
「テスト終わりー! 遊ぼーぜ!」
「初日もそんな事言ってたような……」
「まずは後輩や先輩達に打ち上げの確認ですわ!」
「何故私まで拘束されてるのかしら」
私とボルカちゃんでウラノちゃんの両腕を掴み、ルーチェちゃんの言葉通りディーネちゃん達やメリア先輩達に確認を取ってみる事にした。
まずは中等部三年生の教室。今日まで部活動は無いから行かなきゃね。
「──て事ですけど、行けますか? メリア先輩」
「勿論OK! 特に予定も無いからね!」
メリア先輩は快く了承してくれた。優しいから来てくれるもんね~。
レヴィア先輩とリタル先輩は学年以前の問題で、所属学部が違うからやっぱり誘えそうにないかな。
でも代表戦後の打ち上げには誘えるかも。去年のルミエル先輩達も確かそんな感じだった気がするし。
一先ず達成。次は中等部一年生の教室へ行ってみる。
「あ! ティーナ先輩ですわ!」
「ボルカ様もいらっしゃる!」
「ルーチェさーん!」
「ウラノ先輩ー!」
「な、なんかスゴく盛り上がってるね」
「ハハ、代表戦まで勝ち上がったからなぁ。ティーナは去年の時点で名が知れ渡ってたし、更に火が着いたみたいだ」
「ふふん、悪くない感覚ですわ!」
「あまり目立つのは嫌なんだけど」
一年生のクラスがある場所へ行くと、他の後輩ちゃん達が私達の方に寄ってきた。
テスト期間だったからあまり外に出なくて実感なかったけど、私達ってこんなに人気になってたんだ。
嬉しさより驚きが先に来ちゃうや。
「一年棟に何か御用ですか!?」
「ダイバース関連でサラさん達にですか!?」
「まあそんなところだな。テスト終わった直後だけど居るか?」
「はい! 居ますよ! 私が案内します!」
「あ! 抜け駆け! 私が案内しますわ!」
「「「私がー!」」」
「んじゃ、名乗り出た全員に頼むよ」
「「「はい! お任せあれ!」」」
ス、スゴい。後輩達の勢いもそうだけど、ボルカちゃんの対応の手際の良さもスゴい。
ボルカちゃん自身は元々初等部から有名だったんだもんね。なんならルーチェちゃんもファンの一人だったし。こう言う場に慣れてるんだぁ。
「オーイ、ティーナ。行こうぜー!」
「あ、うん!」
感心する私を呼び、ディーネちゃん達の教室に。
外からも中からも私達を注目する視線を感じ、ちょっと緊張。ディーネちゃんも緊張してるみたい。
なのでボルカちゃんはササッと話を済ませられるサラちゃんに訊ねた。
「てな訳で、どうだ? 打ち上げ」
「もち! 行っきまーす! ね! みんな!」
「当然ですわ!」
「は、はい……! 楽しみ……です!」
「テスト明けでストレスも溜め込んでいますからね。お供します」
ディーネちゃん達も快く了承。周りの子達は「打ち上げかぁ~」とか「良いな~」って言っていたけど「連れていって」と言う声はなかった。
ルミエル先輩を前にした去年のみんなもそうだけど、憧れつつも深入りはしないように空気を読んでるみたい。良い子達だねぇ。
そしてそれから数日後、私達は打ち上げパーティを開いた。
──“打ち上げパーティ”。
「楽しんでるか~!」
「「イエーイ!」」
「「ですわー!」」
ボルカちゃんが音頭を取り、メリア先輩とサラちゃん。ルーチェちゃんにベルちゃんがジョッキ(中身はジュース)を持って乾杯した。
来た瞬間に盛り上がっちゃってるね~。
そして更に今回は大所帯。その理由はこれ。
「フッ、まさか私達まで誘ってくれるとは」
「我に至っては代表戦に行けないと言うに、親切な者達だ」
「そ、そうだね……」
レモンさん、ユピテルさん、エメちゃんと都合が合った何人かのチームメイトも参加しているから。
“都市大会及び代表決定戦お疲れ様”の打ち上げと、“代表戦おめでとう”の打ち上げを兼ねてのもの。
長期休暇前は大抵期末テストがあるらしく、レモンさん達ものんびりしたいって気持ちがあったみたい。
「代表戦では頼りにしてますわ! ヨーコさん!」
「私達の時に見せた以上の力を期待しているよー!」
「……ふん。貴女達もすぐに負けないようにね……」
「コラコラー。私達は先輩なんだよ~」
「生意気な狐さんだなぁ~」
「ひょ、ひょっほ……」
ツンケンした態度の一年生、ヨーコちゃん。人間と狐のハーフなんだって~。
彼女と私は戦ってないけど、彼女の姉に当たると言うタマモさんとは戦った事があるんだよ。
そんなヨーコちゃんはウラノちゃんタイプの子で、あまり感情を表に出さない。けどルーチェちゃんとメリア先輩に頬を軽く引っ張られてちょっと顔を赤くしていた。
「僕も呼ばれて良かったのかな」
「拙者らも苦楽を共にした中。満喫しようぞ」
「男か女か分からない二人が揃ってんな~」
「どちらでも良いんだ。ぬらりくらりと、掴み所が無いのが僕だからね」
「拙者もそうぞ。忍の世界に男女は関係無いからな。主の思う性別として扱ってくれ」
そしてヌラさんに忍者の人。両方とも性別不詳。それについてボルカちゃんが指摘すると、二人は敢えてそうしてるみたい。
本当にどっちなんだろうね。胸があるようにも見えるし、無いようにも見える。髪型からも推測出来ないし、顔も声音も中世的。不思議な感じ~。
「そう言やレモン。あのとんでもなく強かった緑色のアイツは来てないのか?」
「ああ、彼は河童と呼ばれる妖と人間のハーフだ。最近雨が増えてきたのもあり、心身を鍛える為にテストが終わるや否や山籠りをしている」
「そうなのか~。アタシは殆ど運で勝ったみたいなものだからいつかは決着を付けたいぜ」
「奴は手強いぞ。“神妖百鬼天照学園”では三本の指に入る。私とほぼ互角の存在だ」
「レモンとか~。去年は試合に出てなかったな」
「ああ。二年生で私と同学年だが、入部したのは今年なんだ。ダイバースの試合を見て感銘を受けたと言っていた」
「ほへ~。強かったなぁ~」
ヌラさん達の方からレモンさんの方に移動したボルカちゃんは不在の人を気にしていた。どうやら負け掛けたとか。そんな事を大会の後に言っていたんだよね~。
レモンさんの話を聞く限り本当に強い人みたい。代表戦では味方になるのは頼もしいね。
「ヨーコ! ウチらと同学年なんしょ! だったら仲良くしよー!」
「馴れ馴れしい……私は別に……」
「お! 早速新しい友達! 練習試合に参加していなかったんだから此処で仲良くなるのはありだねー!」
「いってらっしゃい!」
「ちょ……“魔専アステリア女学院”の人達はこんなのばかりなの……!?」
ヨーコちゃんは同年代のサラちゃんに引かれて向こうの方へ。
他にもエメちゃんやユピテルさん達と話している双方のメンバーが居た。
「賑やかな雰囲気は嫌いじゃないですけど、落ち着きませんよね」
「うん、分かるよディーネちゃん。その気持ち」
「何れは私の風も雷へ昇格させようかと思っています。ユピテルさん、指導願いませんか?」
「リゼとやら。我の霆は魔導のそれとは異なる。エメ辺りに聞くのが良いだろう」
「ティーナ殿。主も私達と共に過ごそう」
「うん。レモンさん」
そして私も呼ばれる。
来ているメンバー同士、親睦が深まった気がするよ。代表戦に備えてこう言った所で絆を深めるのも良いよね!
何はともあれ、代表決定戦もテストも無事終了し、学期末となる。そろそろ長期休暇に入るから、代表戦に向けた練習を頑張りつつ息抜きもしよっかな。
諸々の打ち上げパーティ。それは日が暮れるまで続くのだった。




