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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第二十一幕 入部希望者

 ──“翌朝”。


「………」


 明るい日差しが窓から差し込み、その目映さに眩んで私は微睡みから覚醒した。

 昨日は夢のような一時だったけど、色々あったからスゴく疲れた。お陰で朝まで熟睡出来たけどね。

 まだ若干の眠気が残っているので顔を洗って目を覚まし、昨日やらなかった分の宿題に手を付ける。

 あ、その前にしておく事があったね。


「ママ。ティナ。おはよう」

『『おはよう。ティーナ』』


 二人への朝の挨拶。

 朝食まで時間があるのでそのうちに宿題は終わらせ、制服に着替えていつものように鏡の前で左右に頭を振って寝癖をチェック。ちゃんと髪の毛をかしてきたので特にはねている箇所はない。

 よし、準備完了!

 私はママとティナを持ち、終わらせた課題をバックに詰めて自室の外へと飛び出した。


「ふふん、もう結構慣れちゃったかも!」

『成長したわね。ティーナ』

『お見事ー!』


 ボルカちゃんはいつものように朝は遅いので私一人だけど、何となく慣れたような感覚がある。

 まだ一週間も通ってないけど二、三日で慣れちゃうもんなんだね。

 今回は前に一緒だったルーチェちゃんも居ないけど、ママとティナを除いた一人で食堂へと入り朝食を摂る。

 さて、今日も学校だー!



 ──“教室”。


「おっはー……」

「おはよう。ボルカちゃん」


 朝のホームルーム前、相変わらず朝は弱そうなボルカちゃんが登校してくる。

 パン切れをモシャモシャと食べ、鞄の中から飲み物を取り出して口に含む。そのまま席に着いてボーッとしていた。

 いつもの光景って感じ。まだ一週間も一緒に居ないけど。

 すると周りには人だかりが。


「ボルカさん! ティーナさん! 昨日の試合見ましたわ!」

「お見事ですわね! 私感動しました!」

「レベルの高いプレイヤーに果敢に攻め行く姿勢!」

「支え合うお二方!」

「そして見事、あのバロンさんと引き分けに!」

「とてもおキレイでしたわ!」


「わ! わわわ……!」

「おー、賑わいでるな~」


 昨日の試合の影響はここまで出ているみたい……。

 ボルカちゃんは軽く話してるけど、やっぱり慣れない私はちょっとタジタジ。

 そこで教室の扉が開き、先生がやって来る。


「ほら~。席に着けお前ら~。ヒーロー達は昨日の今日で疲れてるからあまり苦労掛けてやるなよ~」


「「「はーい」」」


 先生の登場でこの場は丸く収まる。

 改めてスゴい影響力を及ぼすんだね。ダイバースに勝利したら。

 ルミエル先輩の人気も納得だけど、先輩なら普通に過ごしてても人気出そう。

 だけどヒーローかぁ。ふふ、悪くないかも!


「それでは先生。ヒーローは昨日の試合で疲れたのでおやすみなさい」

「おはようございます。ほら、ヒーローに休息は無いぞ」

「とんだ過重労働だー」

「学生は遥かにマシだ。ホームルームを始めるぞ」


 寝ようとしたボルカちゃんは起こされ、朝のホームルームが始まる。

 また新たな一日のスタートだね!



*****



 ──“放課後”。


 七時間の授業が終わり、私とボルカちゃんは人気ひとけの無い森の中を歩いていた。

 理由はそう、もう一回ダイバースの部室に行こうかなって私が提案したから。


「本当に良いの? 私は楽しかったし、入部してみようかなって考えでここに来たけど……」


「構わないよ。アタシも楽しかったし、入部してみるのもいいなって思ったからさ!」


 ボルカちゃんは特にクラブやサークルに入ろうとは考えていなかったと思うけど、私に付き合ってくれるみたい。

 改めて行くのはドキドキとワクワクが合わさって変な感覚。顔見知りだし固くなる事もないんだけど……やっぱり緊張しちゃうよね……。


「うぅ~……」

「固くなり過ぎ。そう畏まる事も無いよ。ほら、リラックス。リラーックス」

「けどぉ……」

「昨日の今日で大分慣れたんじゃなかったのか?」

「そのつもりだったんだけどやっぱりドキドキしちゃうよ。正式な入部手続きは……ちょっと試合で活躍したからって調子に乗るなよとか思われないかな……」

「なんだそのバックステップ踏めそうなくらい後ろ向きな思考は。そんな事考える先輩達じゃないだろ……」

「それはそうだけど……」


 勝手に考えて勝手に不安になっちゃう。私の悪い癖。

 何事も無ければ良いんだけど、期待して悲しくなりたくないから常にダメな方向に思っちゃう。

 そんな私を見たボルカちゃんは肩を落とし、


「そりゃ!」

「うひゃん!?」


 私の脇の下に手を入れ、くすぐり出した。

 ワシャワシャと指先を巧みに動かし、私の弱い所を的確に突いてくる。

 両脇を手で抑え、力が抜けて座り落ちる。


「ぁ、ひ……ハハハハハ! くすぐったいよボルカちゃん!」

「ハハ、これで緊張はほぐれただろ? そう心配する必要無いって!」

「緊張を解す為だって……急にやられると驚いちゃうよぉ~!」


 笑い過ぎて少し息切れ。

 私が固くなっていたから和らげでくれたみたい。確かに少しは落ち着いたけど、まだ若干ムズムズする感覚が残ってる。思わず身震いした。


「ほら、要らない考えは捨てて。アタシが付き合ってあげるんだ。ティーナは堂々としてれば良いんだよ!」


「うん。ボルカちゃん。ありがと」


 緊張はほぐれた。なので改め、私達は先輩達の居る部室の方に向かう。

 まだ数回だけど道は覚えたね。迷う事なく部室前に到達し、ノックしてドアを開けた。


「すみませーん。昨日仮入部で来たティーナですけど、先輩方居ますでしょうか?」

「ボルカも居まーす!」


 あれ? こう言うのって返答の後で開けた方が良いんだっけ……。気が動転しててよく分からないよぉ……。

 そんな私達を出迎えてくれたのは副部長さん。


「やあ、君達か。よく来たな。ルミは今用事で留守にしているが、すぐに戻ってくるから寛いでてくれ」


「はい!」

「おっ邪魔っしまーす!」


 どうやらルミエル先輩は留守みたいだけど、副部長さんは快く迎えてくれた。

 そう言えばルミエル先輩は名前で呼んでるけど、副部長さんはずっと役職っぽい呼び方になっちゃってるね。“ナイト”って他の子達は呼んでたけど、それは名前じゃないと思うし……。


「先輩。先輩の名前ってなんなのでしょうか? 考えてみたらルミエル先輩とメリア先輩からしか自己紹介聞いてません」


「む? そう言えばそうだな。初めて来たのは一昨日で、交流も少なかったか。では名乗ろう。私は──“イェラ・ミール”。イェラとでも読んでくれ」


「イェラ先輩ですね!」


 イェラ・ミール先輩。それが副部長さんの本名らしい。

 副部長さん改めイェラ先輩。……あれ? けどなんでだろう。


「イェラ先輩って“ナイト”って呼ばれてましたよね? 名前のどこにも掠りませんけど」


「ああ、それについては私の戦い方によるものだな。私も魔法は使えるが、実は中等部の子達にも劣る程度の物しか使えないんだ」


「え!?」


 意外な事実。イェラ先輩は魔法が苦手だった。

 完璧そうでルミエル先輩にも劣らないくらい何でも出来そうなのに……。

 先輩は腰に差してある物を示し、言葉を続ける。


「だから主体は剣。まあ学生だから木刀や模擬刀だが、俗に言う剣士だからナイトだ」


「成る程……でも“剣士”なのに“騎士ナイト”と言うのも不思議な感覚です」


「フフ、それはイメージだろう。ルミに付き従える剣士の様が他の生徒達にとっては“騎士ナイト”のように映ったという訳さ。実は祖先も剣士だったと聞かされている。私はその血を色濃く受け継いでいるんだろうな」


 イェラ先輩の本名と二つ名の由来。

 剣士の様がお付きの騎士に見えた……なんかカッコいい。確かに先輩はナイトって雰囲気が似合うかも。ご先祖様由来なんだ。

 そんな先輩はお茶を淹れ、私達に出してくれた。

 いつもの紅茶じゃないね。なんだか緑色。


「茶の種類を見て疑問を浮かべているな?」

「え!? また表情に出ちゃってました!?」

「まあな。これは緑茶だ。かつてはアマテラスという主神が居たと謂われる東洋の……なんだったかな。そうそう、“モト”……と言う国で好まれている代物でな。紅茶よりも渋みと苦味が強めだが、そこの茶菓子とよく合うんだ」

「そうなのですか! ……んくっ……ぷはぁ~……」

「おー、マジで美味い!」

「二人の口に合って何よりだ」


 緑茶にお茶菓子。確かに強い甘味にはこの渋さが丁度良い!

 どんどん手が止まらなくなりそうな所を何とか抑え、あくまでも淑女らしく優雅に食べる。けどホントに美味しい!

 一風変わったティータイムを楽しんでいると、部室の扉が開いた。


「あら、二人とも来てたのね」

「ルミエル先輩!」


 やって来たのは用事で空けていたルミエル先輩。用事が終わったみたいだね。

 よく見るとその後ろには二つの影があった。……他の先輩達かな?

 そんな事を思っていると、ルミエル先輩は口を開いた。


「二人が来ていたなら丁度良いわ。昨日の試合に出る予定だった二人と手続きをしていたの!」


「昨日の……!」

「あー、都合で出られなかった人達ですね」


 用事と言うのは入部希望者の手続き。

 じゃあルミエル先輩の近くに居るであろう二人が私達のチームメイトになるかもしらない人達なんだ!

 私は胸を踊らせ、ルミエル先輩は横に逸れて指し示した。


「こちら、ルーチェ・ゴルド・シルヴィアさんと……“ウラノ・ビブロス”さんよ。よろしくね」

「よろしく」

「よろしくお願いしますわ! 先輩方……あれ!? ティーナさんにボルカさん!?」

「ルーチェちゃん!?」


 なんと入部希望者、その一人は金髪縦ロールが特徴的なルーチェちゃんだった!

 もしかして前に断られたのは既に色々と準備があったから!?

 確かあの時は……。


───

──


【ルーチェちゃん! これから私とボルカちゃんで部活動の仮入部手続きに行くんだけど、一緒にどうかな!】


【あら、嬉しいですけど……ごめんなさい。私、どうしても外せない用事があって……】


【あ、そうなんだ……】


──

───


 てな感じで、実はどこに入るのかは教えてなかった!

 だからかぁ~。用事って仮入部の時の試合の手続きで、次の日にまた別の用事が入っちゃったから欠席したんだ……。

 ルーチェちゃんは私の近くに駆け寄る。


「奇遇ですわね! お二人が入るつもりだったのは此処でしたの! 確かに昨日の試合は見事でしたわ!」

「うん! 友達が一緒で良かった~!」

「友達……! ふふん、悪くない響きですわ!」


 手を取り合って喜ぶ。どんな人が来るのか期待と不安で半々だったけど、知り合いなのは心強いね!

 そして一緒に入るもう一人の子、ウラノちゃんにはボルカちゃんが話し掛けていた。


「ビブリーじゃん! ダイバースに興味あったのか!」

「その呼び方はやめて。あと暑苦しい」

「ひで~な~」


 そう言えばこの子も見た事ある。いつも教室で本を読んでる文学少女だ!

 と言っても三、四日見ただけだからあれだけど、取り敢えず本をよく読む子!


「えーと……ウラノちゃん……で良いかな?」

「いいよ。別に」

「淡白……けど、よろしくね! ウラノちゃん!」

「……うん、よろしく」


 一瞬考えていたけど、私の手を取ってくれた。

 嫌われてないみたいで良かった~。

 大人しい子みたいだけど、私みたいにオドオドしていないで淡々と返してる。ウラノちゃんはスゴいクールな子なんだね!

 二人の自己紹介が終わった所でルミエル先輩は口を開いた。


「それじゃあ今から──この四人でダイバースの模擬戦をして貰うわよ!」


「え?」

「……は?」

「……はい……?」

「……ぇ……?」


 その提案は、あまりにも唐突で突拍子の無いモノだった。私達は漏れなく全員が素っ頓狂な声を上げる。

 ダイバースの模擬戦。確かにファーストコンタクトは仮入部の試合予定だったみたいだけど、それが無くなっちゃったからって事……?

 新たな新入部員。私達四人は、出会って数秒で試合をする事になった。

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