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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第二百三幕 二年目の代表決定戦・決勝

 ──“三日目”。


《試合終了ォォォ━━━ッ! 代表決定戦、準決勝!! 勝者は“魔専アステリア女学院”となりましたァァァ━━━ッ!!!》


「「「わあああああぁぁぁぁぁぁ━━━ッ!!!!」」」


 準々決勝を経ての三日目。いよいよ代表決定戦も最終日に入り、初戦の準決勝は私達が勝利した。

 残るは決勝戦だけ。現時点で準々決勝以上の成績を収めているチームは代表入りが決定しているけど、このまま私達の代表決定戦初優勝を飾っちゃおう!

 そして、そんな決勝戦の相手はもちろん……。


「フッ、やはり勝ち上がってきたか。“魔専アステリア女学院”の者達よ。“ゼウサロス学院”を破った時点で確信はしていたぞ」

「そうなんだー。ふふ、信用してくれてありがとね」

「だが、私達が敗れる未来は見えぬがな」

「流石だね。その自信。でも、私達も去年よりは強くなってるからね。レモンさんには見えない新しい未来を見せてあげるよ……。……ふふ、なんてねー♪ 恥ずかしいセリフ言っちゃった」

「フッ、そうだな。しかし、“未来”という言葉は何かと使いたい気分になるんだ」

「分かるよー。その気持ち!」


 お互いにライバル的なやり取りをし、茶化すように笑って話を終わらせる。

 何となく決勝戦ってこう言うやり取りしたくなっちゃうよね。お互い頑張ろうだけじゃ物足りなくなるというか、取り敢えずそれっぽくしたい中等部二年生の心境。

 そんな感じで会場へ。司会者さんの代表決定戦最後となる試合前の演説が始まる。


《さあさあさあさあ! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 代表決定戦、決勝!!! “魔専アステリア女学院”vs“神妖百鬼天照学園”ンンンッ!!! 既に代表戦入りが決定したこの二チームですが! 次に決めるのはそう、人間の国の“最強”ォ!!! これからの試合は魔族の国! 魔物の国! 幻獣の国を含めた世界大戦!! 故に! 中等部までの年齢に置ける人間の国の最強はこの決勝戦で決まるという事になりまァァァす━━ッ!!!》


「「「どわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」」」


 そう、今回決まるのは“人間の国”に置ける世界最強。

 それによって得られる物は色々あるけど、一番はなんだろう。栄光かな?

 楽しむのも必要。でもやっぱり勝ちたい気持ちも強めだからしっかりやらなきゃね!


《代表決定戦、決勝!! お馴染み“チーム対抗バトル”!! 最後まで残ったチームの勝ちとなるシンプルなルール!! さあ、熱く楽しんでいきましょう!! 試合……スタァァァトォォォ━━ッ!!!》


 その言葉と同時に私達は転移。舞台となるステージへ。

 今回のステージは数百年前の街並みや世界を再現した“中世”。



 ──“中世ステージ”。


 転移が完了し、私は周りを見やる。

 今回の転移先は街中だったね。あくまで中世の世界を再現したステージなので森や河川に転移する可能性もあったけど、建物の多いここに来たのは吉と出るか凶と出るか。


「ボルカちゃん達は……いないみたい」


 チーム対抗バトル自体は今大会でも何度かおこなっている。しかし今回は一人一人が別々の場所に運ばれるタイプの転移みたい。

 ここまで団体の実力は見せてきたから、今度は個々の強さを測るのが目的かな。

 と言っても結局は集合する事も多い。私もなるべく早く移動して身は潜めておこうかな。レモンさんならすぐに見つけてやって来るかもしれないから。

 彼女の転移先が街じゃなければ他のみんなと当たる可能性の方が高いけどね。


「目の前……ううん。全方位に壁かぁ……」


 数百年前の中世の頃。魔物は今のように友好的な種族ではなく、問答無用で襲ってきていたのが大半だったと言う。

 なので魔物が嫌う成分を含んだ数十メートルの壁を築き、人々はその壁の中で暮らしたとか。

 今でもその名残りで、人間の国に昔からある街は丸い形をしている事が多い。

 過酷な環境だったんだろうねぇ。今では想像も付かないけど、人間も魔族も幻獣も魔物もみんなが敵同士。辛くて悲しい時代だったんだと思う。

 そんな事を考えながらも既に移動は開始している。今回はいきなり周りを植物で囲んだりしないよ。広がる方向を特定されたら私の位置がバレちゃうもん。

 初動は肝心。それによって戦況は大きく変わる。なのでなるべく息は潜め、気配を消しながら行く。でも気配を消す方法ってこれで合ってるのかな? 思えば魔力の基本的な使い方は反復練習したけど、気配の読み方や消し方は習ってなかった。


(でもま、やってみるしかないよね。取り敢えず心を落ち着かせて……)


 呼吸の間隔を一定にし、自然に紛れる。

 詳しいやり方は知らなくても何度か目の当たりにはしていた。見様見真似での方法だけど、大体いつもそんな感じだもんね。

 ルミエル先輩は理論派だけど感覚的な事もしょっちゅうあった。それもある意味の教えなのかも。


(息を潜めて……魔力の流れを整える……)


 シーン……と辺りは静かな雰囲気。

 今、既に戦いが始まっている場所もあるかもしれない。でもそんな気はせず、このステージには私だけのような……って、それは違うか。ママとティナにボルカちゃんが居るもんね。

 そう、私は一人なんかじゃ──


「……! 気配……!」


 要らない思考の最中に何かを感じ取り、周りへ植物を張り巡らせて警戒を高める。

 この時点で目立っちゃうけど、多分もう見つかってるもんね。この感じ、すぐに姿を見せない事からレモンさんじゃないみたいだけど、妖怪……って呼ばれる魔物とのハーフが多い学校。気配を消すのはお手の物かな。


「取り敢えず、全部壊せば良いよね!」


 張った植物を更に伸ばし、周りの建物ごと倒壊させる。

 どこかに身を潜めていたとしても更地になってしまえば問題無い。植物の中にも隠れられそうだから自分の周りにだけ残し、全ての植物を消し去る。

 辺りは瓦礫の山。なのでその瓦礫も撤去。天空へ放り、一つ残さず粉微塵にした。

 これで隠れる場所は無く、遠くへ逃げたとしても私が襲われる事がないから安全圏。


 ──……ただ一つ、


「……」

「……!?」


 ──私の目にも止まらない速度で迫ってくる可能性を除けば。

 疾風のような何かが居るのは確認した。なので正面と周りに植物を張って仕掛けるけど多分止まらない。

 大樹を薙ぎ払って蹴散らし、木の上に立った事でようやくその姿を視認出来た。


「メチャクチャにやりおる。これがティーナ・ロスト・ルミナス。底知れぬ魔力よ」

「……話し方がレモンさんっぽい……」

「第一印象がそこか。拙者らの国の者は基本的にこうなので御座る」

「な、なんだろう。独特な話し方……」

「拙者からすれば外国の主らが独特ぞ」


 そこに居たのは顔を頭巾か何かで完全に覆っており、男性とも女性とも取れない中性的な声の持ち主。

 でも体格的には女性らしさもあるような……。ジャージや“日の下(ヒノモト)”の特徴である着物とは違う感じの変わった衣類を着用しており、微かに目しか見えない全身を隠したスタイルだった。

 レモンさんともまた違う感じの訛り。武器の小太刀もなんか黒くて小さいや。


「しかしながら、やはり此方こちらへ来て正解だった。その凄まじき魔法。早めに打ち倒しておくのが吉のようだ──」

「……!? 消え……!?」

「反応が遅い」

「……!」


 会話の途中、相手は霞のように消え去り気付いたら私の背後に現れていた。

 立ち入ったら自動的に発動する植物を仕掛けていたからなんとかダメージは食らわなかったけど、スピードだけならレモンさんより速いかも……。


「周りの植物が邪魔だな。“火遁の術”!」

「……!」


 魔導やユピテルさんの雷とは違う性質を持った術が放たれ、辺りが燃え盛る。

 不思議な力。なんだろう、これ。周りを燃やしたのは下準備だったのか、その人は手を小まめに動かし、大きく息を吸った。


「“三連火球の術”!」

「……!」


 三つの火球が放たれ、私は植物に乗って移動。木々は燃え盛り、相手は身軽な動きで私の眼前へと迫って黒い小さな小太刀を突き付けられた。

 それを植物で弾いて距離を置く。


「変な形の剣……ナイフ……?」

「クナイを知らぬか。まあ今の時代、他国の武器事情などは科目に入っておらぬからな。むしろ好都合に御座る」

「その御座るってなに……?」

「口癖ぞ」

「そうなんだ……」


 黒い小さな小太刀は“クナイ”と呼ばれる武器らしい。本来は金属か何かなのかな。多分あれはレプリカ。と言うかそれが大会のルールだもんね。

 話し方も武器も技も特徴的な相手。知らない事だらけで苦戦しそう……。ウラノちゃん辺りは詳しそうだけど、合流出来るかな。

 あ、そうそう。今回のメンバーを言い忘れてたね。今回の初期メンは私とボルカちゃんにウラノちゃんとルーチェちゃん。そしてメリア先輩。ディーネちゃん達は控え室で待機。交代する時も来るかもしれないよ。

 最初は去年の時点で関わりがあるメンバーで挑むの。所謂いわゆるリベンジマッチかな。全員が参加した訳じゃないけど。


「何かしらの思案している御様子。なれど容赦せぬ」

「……! 相変わらず速い……!」


 一歩踏み込んだかと思いきや、瞬間的に加速。まるで消えているみたいな移動速度。

 足音も無く、確かに居る筈なのに全く掴めない。


「……」

「そこ……!」

「フム、厄介なのはやはり植物」


 感覚を鋭くさせた植物を張り、相手が私の側に近付いた瞬間に反応するようにしてあるけど、それ込みでも防御がやっと。

 周りを更地にして良かった。建物とかに隠れられたら手の施しようが無かった。


(忍の本業は暗殺と諜報。建物を取り壊されたのは厄介よの。植物はあるが、あれは向こうの意のまま。利用するには少々リスクが高い)

(何か考えてるのかな……でも私にやれる事は植物を張り巡らせるくらい)


 割と軽いノリで話してはくれるけど、いざ戦闘が始まれば黙り込んでそちらに集中する。

 当然のやり方だけど、スゴい仕事人って感じ。感情も何もかも消し去っているのが伝わってくる。


「“風遁・鎌鼬”!」

「風の刃……!」


 本格的に周りの植物を削る事に力を入れてきたかも。

 少しでも気を取られるとすぐに視界から消え去って次の行動に移ってる。判断の早さがとんでもないや。

 こんな人が去年は出ていなかったなんて、新入生なのかな……。でも違うような雰囲気もある。って、それどころじゃないよね。

 取り敢えず当たらないのも承知で全方位を埋め尽くせば糸口が見つかるかも。


「“植物地獄”!」

「また闇雲な在り方か」


 足元から大量の木々を生やし、その全てをもちいて全方位を強襲。

 次から次へと生やしては利用されるよりも前に消し去り、生やしては消し去る。

 それだけじゃない。私とママ達だけじゃ心許ないもんね。更なる増援を作り出す。


「“フォレストゴーレム”&“フォレストアニマル”!」

『『『…………』』』

『『『…………』』』


「樹術にて兵力の増加。難儀よの」


 それにより、攻め込み難い陣形を作る。

 私は自分の植物ともっと位置を近くし、強度を増させて更なる防御態勢に入る。

 その間にゴーレムや動物達が相手をしてくれているけど、


「一つ一つは大した事無いな。昔の魔物の等級に値するならC級上位からB級下位だ」

「昔の……」

 

 確かにそれは聞いたことがあるかも。昔は“任務依頼”や“クエスト”って物があって、“冒険者”や“騎士”って呼ばれる人達がそれを受けていたとか。S級からC級まであって、C級が一番簡単とか。

 今では完全に撤廃された制度。のこっているのは“上級魔法”とかそう言う概念のみ。と言うか、C級上位からB級下位って……中堅より少し弱いくらいの強さしかないんだ……私達の植物魔法。

 ちょっと悲しいけど、特筆するのは数の多さ。個々で劣っても数で勝る。一気に仕掛けさせた。


「しかしまあ、無限に再生する魔導人形は厄介よ」


 クナイで突き刺し切り裂き、火炎で焼却。風で吹き飛ばし、星みたいな形の投擲武器を当てて打ち倒していく。

 相手は着地し、地に手を当てた。


「“土遁・地割れ落とし”!」

「……! ゴーレム達が……!」


 それによって地面が割れ、中にいくつかの子達が落ちる。同時に閉まり、押し潰す形として粉砕された。

 四大エレメントは全部使える感じかな。加えて持ち前の身体能力。小さなクナイで確実に急所を突く技量。

 レモンさんだけじゃない。全員が強いからここまで勝ち残ったんだもんね。最初からしていないけど、油断大敵。それをより身に染み込ませる。


「まだまだ仕掛けます!」

「難儀な」


 更なる刺客を召喚生成。少しでも隙を見せたらやられちゃう。だから盤面は常に私達有利に……!

 代表決定戦決勝。“魔専アステリア女学院”vs“神妖百鬼天照学園”。最初の相手から大苦戦の予感……!

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