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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
203/457

第二百二幕 二年目の代表決定戦・準々決勝

 ──“二日目・準々決勝”。


 ユピテルさん達に勝利を収めた私達はそのまま次の試合、準々決勝へと進んでいた。

 これで二日目の日程は全て終了。後は明日以降となり、代表決定戦もいよいよ終幕に近付く。

 場合に依りけりではあるけど、この辺りから代表戦を視野に入れた単純な魔法の打ち合いがメインとなるので細かいルールは必要無くなる。なので純粋な魔導力や戦闘センス。身体能力が物を言う。

 相手も準々決勝まで勝ち上がった猛者もさ。代表戦に匹敵する実力があると踏んで良い人達。

 “ゼウサロス学院”に勝ったからと言っても油断はせず、集中して挑むよ!


《それでは! 準々決勝!! チーム対抗バトル!! スタァァァァトォォォォ━━━ッ!!!!》


「「「どわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」」」


 司会者さんの声とお客さん達の大歓声が響き渡り、私達は今回のステージへと転移。

 準々決勝が始まる。



 ──“岩山ステージ”。


「今回は……」

「殺風景なステージだなー」


 岩山ステージ。ゴツゴツとした岩肌が過半数を占め、植物や水辺は少ない。一応あるにはあるんだけど、地の利を利用するのは余程よほどの策士じゃなくちゃ思い付かないかも。

 地形的には沢山の岩があるから身体能力メインの人とかは投擲とか出来るかもね。ぶつけるだけで単純な攻撃力はある。

 それでも私達のやる事は変わらないかな。


「“樹海生成”!」


 岩山を一瞬にして森林へと変え、私達のフィールドにする。

 次の瞬間、樹海の複数箇所が同時に消え去り、変化させた場所が岩山に戻ったのを確認した。

 やっぱり代表決定戦の準々決勝ともなるといつもみたいに私達の世界に取り込むのも一筋縄じゃいかないか。


「居場所は特定出来ましたか? メリア先輩」


「ダメだね~。空から見てたけど、ほとんど同時に複数箇所が消されちゃったよ。今回の転移地点はチームメイトが同じ場所。ティーナちゃんが発動した時間を思っても早過ぎるや。あれだけで見つけるのは難しいかな」


「分かりました!」


 メリア先輩は上空から様子を見ていたけど、相手の特定までは出来なかった。

 今回のメンバーは私とボルカちゃん、ウラノちゃんにディーネちゃんの五人メンバー。

 やれる事の多さからこの五人が標準になっちゃってるかもしれないけど、ちゃんとみんなに活躍の場は設けられているから均等に経験値が積めてるかもね。

 何はともあれ、分かっていた事だけど相手の実力はかなりのもの。上手く運んで行かなきゃね。


「……うーん……向こうにうっすらと気配を感じるような……感じないような……」

「曖昧だな~。ま、そこに行ってみようぜ。向こうは全員で来るか複数チームに分けてくるかは分からないし、単独行動は避けた方が良さそうだ」

「うん、そうだね。ボルカちゃん」


 少しずつ気配を読めるようになってきているけど、まだまだ曖昧。成功率は多く見積もっても六割くらいかな。

 取り敢えず当てはそれくらいしかないし、ボルカちゃんに手を引いて貰って別方向にはティナを先行させる。私とボルカちゃん。メリア先輩とウラノちゃんにディーネちゃんの班に分かれ、ティナを含めた三つの部隊で相手を探してみる。


「どうだ? 全体的に見渡してみて」

「まだ見えないかな。遮蔽がほとんどない岩山だけど、やっぱりここまで残った相手だけあって上手く紛れてる」

「視野を大きく広げてもそのレベルか。やっぱり手強いな。ワクワクすんぜ!」

「アハハ……頼りにしてるよ。ボルカちゃん」

「任せとけ!」


 半分はティナ。もう半分はボルカちゃんの言葉に返答出来るようにしてある。

 最初の頃は戸惑ったけど、案外慣れるもので今では両方に意識をいても判断出来ている。だけど見つからないんだよねぇ。

 私達も身を潜めながら移動してるけど、果たして上手くいっているのか──


「“ファイアショット”!」

「はあ!」


「「……!」」


 ──その瞬間、どこからか炎魔法か魔術が放たれ、一人が私達目掛けて飛び掛かってきた。

 遠距離と近距離の二人組。見つかっちゃったみたい。

 だけどこの早さ。植物の広がる範囲から大凡おおよその位置を把握していたとしても到達まで早過ぎる。つまり気配を読まれたという事。やっぱり準々決勝ともなると気配を察知されちゃうんだね。


「先手は打たれたけど、向こうから出てきてくれて助かったぜ。当たらずに済んだしな」

「一部は消されちゃったけど、植物魔法を張り巡らせていたお陰だね!」


 炎の連続した弾丸。散弾に近い物だったから上手く植物が遮蔽になってくれたみたい。

 だけどまだ近距離の人が近くに居るから対応しなくちゃならない。


「はっ!」

「近接戦なら負けないぜ!」

「“樹海壁”!」

「囲んだか」


 回し蹴りが放たれ、ボルカちゃんが炎で加速した蹴りにて迎撃。衝撃波が散り、埋めた壁の隙間から炎の人が入り込んだ。

 中は完全に密封。何者の侵入も拒む形だよ。


「上手いな。一定の範囲に絞る事で我らの自由を抑制したか」

「そんなところです……!」


 本人が炎で加速し、私の方へ。対戦相手は自然と決まったかな。

 戦闘フィールドは半径百メートル程。本フィールドに比べたらかなり狭まっている。相手は機敏に動くタイプみたいだからこれくらいの範囲で十分かな。ボルカちゃんもそのタイプだからそんなに有利にはならないと思うけどね。


「はあ!」

「それしか言ってないッスね! えーと、先輩ッスか?」

「我らはチーム全員中等部の三年生だ」

「んじゃ、丁寧な態度で挑みますか!」

「どこがだ!」


 拳が放たれ、ボルカちゃんは紙一重でかわす。そのまま炎で加速して裏拳を打ち込み、相手はしゃがんだ。そこから跳び蹴りを放ち、仰け反って避けたボルカちゃんが相手の足を掴む。

 その足を持って投げ飛ばし、植物が開いて鋭利な形となる。


「そうか。この場所は向こうのもの。意のままか……!」


「私と戦いながら味方のサポートとは余裕のあるものだ」

「私は基本的に後方支援ですので……!」


 その人は鋭利な植物を掴み、突き刺さるよりも前に停止。一方で私の相手は炎の拳を打ち付け、私は植物の壁で防御。

 植物は意外と火に強いからちゃんと防げたけど、当然のように遠距離だけじゃなくて近接戦もやれるんだね。


「後方支援にしては前線に出ているイメージがそれなりにあるがな。ティーナ・ロスト・ルミナス」


「魔法の性質上、最後まで残る事がチラホラあるので……! 前の試合は早期離脱してしまいましたけど……!」


 植物を霧散させて弾き、相手は炎で勢いを緩和させて着地。中距離から炎を放ってけしかけ、防いだ瞬間に回り込まれる。

 ボルカちゃんがおこなっていたやり方。牽制した直後に自分を加速。攻撃の隙を突く方法。

 相手が炎使いならその事は視野に入れて行動を起こす。


「……! 死角へ既に植物を……!」

「弱点も熟知してますから……!」

「フッ、そうこなくては相手にならぬ!」


 仕込んでいた植物で弾き、全方位から攻め入る。相手は周りに火炎を放出して消し去り、連続して炎を出す事で勢いと加速を付け、凄まじい速度で迫り来る。


「この速さに付いてこれるか!」

「……!」


 縦横無尽に飛び回り、私の方へと直進。それにより、私は相手を(・・・・・)捕らえる(・・・・)事に(・・)成功した(・・・・)


「……!? 植物の……網……!?」


「はい……! 速い人対策は常に練っているので! 割と破られる事が多く、映像データだけで確認してるなら気付かれないと思いました!」


 攻撃を仕掛けながら張り巡らせていた植物の網。今までの経験上、あまりにも速い人は自分の速度に慣れるまで時間が掛かる場合が多い。

 あくまで魔力による外付けの加速だもんね。魔力自体は体内で生成されるけど。

 なのでクモの巣のように張っていれば意識外からの拘束が可能になるの。

 動きを止め、大量の樹木を一気に降下させる。


「これで終わりです!」

「……ッ!」


 圧倒的質量を打ち付け、重いラッシュで意識を奪い去る。相手は光の粒子となって転移した。

 一方のボルカちゃんの方もそろそろ決着が付くみたい。


「くっ……仲間がやられた網を利用し……!」

「へへん。ティーナとアタシのコンビネーションは最高峰なんだぜ!」


 張り巡らせた網をそのまま使い、網から網へと移動して翻弄ほんろう

 相手もなんとか隙を狙って拳や脚で仕掛けるけど攻撃は当たらず、ボルカちゃんは炎剣を生成して振り掛かった。


「見えたぞ!」

「今日のアタシはスカートじゃなくてショートパンツなんだけどな」

「そうじゃない! 同性のを見て何になる! 剣の軌跡だ!」


 ボルカちゃんが振り下ろした剣へ魔力を込めた拳を放ち、粉砕。しかしボルカちゃんは態勢を低くし、既に握り拳を作っていた。


「……! まさか、剣は……!」

「ああ。炎の剣は視覚的に目立つだろ? 囮だよ!」


 肘から火炎を放出し、勢いを付けて打ち出す。炎剣を砕いた体勢のままだった相手に加速したボルカちゃんへ反応する術は無く、頬を殴打。そのまま更に加速して殴り飛ばした。


「素手相手にはちゃんと素手でトドメ刺すぜ。例外はあるけどな!」

「不……覚……」


 ガクッ……と意識を失い、その人も転移。私達は植物魔法を解き、周りに他の刺客が居ないかを確認した後、ようやくホッと一息吐く。

 残りの相手も見つけなきゃね。


「くっ……! ボルカ・フレムにティーナ・ロスト・ルミナス……!」

「ティーナ」

「任せて!」


 それから数分後、私達はまた一人の相手と会った。その人は魔力の矢を射る遠距離タイプ。放たれる無数の矢は炎と植物で消し去り、二人で挑んだから余裕を持って勝利。


「“空間掌握・止”!」

「……っ! まさか……!」

「あの魔法は囮……!」

「そうね。ディーネさんが確実に捕らえる為の技。そして今、トドメになるわ。“龍風裂刃”」

「“トルネードブラスト”!」


 ディーネちゃんが動きを止め、ウラノちゃんの龍が風の刃。メリア先輩が竜巻の魔法を放出。防御する事も叶わない相手はそのまま飲み込まれて転移。


《勝者! “魔専アステリア女学院”ンンン━━━━ッ!! 余裕を持って準々決勝を突破しましたァァァ━━━━ッ!!!》

「「「どわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」」


 ウラノちゃん達も見事に勝利を収め、準々決勝も見事に突破する。会場に広がる大歓声。

 ふふ、これで二日目も終了だね!

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