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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
202/457

第二百一幕 vsゼウサロス学院・謎解きゲーム・決着

「先に行け! “魔専アステリア女学院”は我らが止める!」

「心得た!」


「させる訳無いでしょう」


 サブリーダー的な立ち位置の人が指示を出し、私を抜けて行こうとする。

 でもさっきも言ったように、人数が一人少ないだけでやり方は色々あるのよ。


物語ストーリー──“龍”」

『ガギャア!』

「と言っても、基本的な移動がこの子だったからずっと居るんだけどね。呪文によるバフの付与……と言ったところかしら」


 人数の差は大した問題にならない。私なら魔力の続く限り兵力を出せるもの。

 一先ず龍だけでも大丈夫そう。……それに、


「そもそもアナタ達は去年の新人戦でティーナさんの植物魔法にしてやられたわよね。私も何人か倒した記憶があるわ」

「去年は去年。我らの成長をしかと受け止めよ!」


 新人戦、団体の部。“ゼウサロス学院”と当たった私達の大半はユピテルさん一人に大打撃を受けたけど、ティーナさんが仕掛けていた植物魔法によって多くを止める事が出来ていた。それに加えて私も何人か倒したわ。

 そんな感じでユピテルさん以外の実力差は割と此方こちらが上と思うのだけれど、あの人達も成長したらしいわね。


「成長したのは私達も同じよ。どちらが勝利を収めるか……見ものね」

「仕掛ける! “風切”!」


 風魔術によって放たれる刃。風関連の攻撃技は基本的に刃物系になってしまうのね。

 此処の場合は場所の問題もありそう。しっかり固定されていると思うけど、玉座を吹き飛ばしたら元も子も無いものね。

 そんな風は周りの建物を倒壊させていく。


「ハチャメチャですわ!」

「貴様が言うか!」


 それを見やり、ルーチェさんが手に魔力を込めて複数の光球を降下。

 至るところで光の爆発が起き、辺りは砂塵に包まれた。


(しめた。これは好機……!)

「行かせません……!」

「……! 行動を把握していたか」

「先に王様になるのは私達です!」


 どうやら砂塵の中では相手の誰かが一足先に玉座へと向かっていたみたいね。

 でもその近辺はディーネさんが塞いでいる。文字通り次元を越えた鉄壁の守りね。


「ええーい! 押し通る!」

「“空間掌握・弾”!」

「……!」


 空間に遮られ、そのままスリングショットのように吹き飛ばされる相手チームの一人。

 そこへ更に追撃が入る。


「“水散弾”!」

「……ッ!」


 魔力によって形成された無数の水飛沫が撃ち込まれ、その一人は意識を失う。それによって転移した。

  これで合計人数は私達と同じ。本魔法の分、私達が少し有利かしら。


「さてと。他の人達は──」


 動こうとした瞬間、横に何かが通り過ぎた。

 これは……やってしまったわね。

 私はそちらを振り向き、見れば手に“王の印”を有した相手チームの一人が飛び出していた。

 私が話していた風魔術の人はまだ目の前に居る。そのすぐ近くで息を潜めていたのね。

 飛び出した人は仲間の風魔術で更に加速し、自身も水魔術の勢いで速度を付けていた。

 ダメね。ディーネさんの空間魔術も本人の黙視が追い付いていないから使えず、ルーチェさんは“光魔法”を使いはするけど自分自身が光速移動出来る訳ではないから成す術無し。

 そして私は──


「“風刃射出”!」

「……やりなさい」

『ボギャア!』


 今現在も自分の相手と戦っているから動けない。とは言えあの速度を相手に私自身の本魔法は顕現までが遅過ぎるから事前に予期してなかった時点でしてやられたわ。

 もし相手の解いた謎が正解だったのなら、その時点で負けてしまう。正直言って私は別に勝敗や勝ち上がる事に興味はない。でも……──お友達が悲しむ姿はあまり見たくないかしら。


「狙って」

『ガギャア!』

「我の相手をしながら余所見とは……! 舐めるな! “風切”ィ!」

「余所見じゃないわ。相手の進行の阻止よ」


 より力を込めた風の刃が私へ直撃。でも両断はされないわね。魔力で肉体的な防御力を高めてるのもあるけど、ルールで殺める可能性のある事は出来ないから。

 だから標的を変えても私の意識はすぐには失わないと判断した。


「……! 危ないな……! だが、数秒の足止め程度。すぐに玉座へ向かえる!」

「情けないわね」


 止められた時間は炎が吐かれ続ける数秒だけ。ダメかしら。

 相手はたっぷり数秒止まり、そのまま玉座の方へ──


「ちょっと待ったァァァ!」

「……!? ボルカ……フレム……!」


 座る一瞬前。ボルカさんが炎の加速と共に現れ、相手の頬へ蹴りを打ち付けた。

 勢いよく蹴られた相手は回転しながら吹き飛び、建物を倒壊。光の粒子となって転移。遅れて衝撃波と音が響き、余波が辺り一帯を大きく揺らした。


「まさか……! ボルカ・フレムまで……! という事はユピテルさんは……!」

「おう! ティーナがぶっ倒したぜ! 相討ちの形になっちまったけどな。でも、っね~。全速力で来たけど、一瞬でも遅れてたら負けてたかもしれないんだよな? 多分。ビブリー! 謎は解けたのかー!?」

「……ええ。大凡おおよそはね。今は残りの相手を倒せば一先ずたっぷり考える時間も試す時間もあるから確実に勝てるわ」

「っし。んじゃ、サクッとやりますか!」


 謎についてはボルカさんには教えていない。連絡方法が無いものね。そう言った魔道具の使用は禁止されてるし。

 だからティーナさんの人形魔法による伝達はスゴく良いの。

 そしてユピテルさんはちゃんと倒したみたい。流石ね。転移した光が二つだったから消えたのはティーナさんとボルカさんか、ユピテルさんとどちらか一人だったもの。その辺も賭けだったわね。

 そしてまた一人減り、此方こちらの味方が一人増えた。形勢は一気に優位に立つ。玉座に就けば良いだけだからまだ相手にも勝ち筋はあるので油断はしないけれどね。


「さて……終わりにしましょうか」

「くっ……我らが“ゼウサロス学院”は二人だけとなってしまったか。だが、勝負は終わっていない……!」


 流石は全国区の強豪校。微塵も意思は揺らいでいない。素直に感心するわ。私が同じ立場なら多分諦めてた。

 何はともあれ、今回は諦める側ではなく勝利を掴む側。もう決着は付くわね。



*****



 ──“医務室”。


「……!」


 意識が覚醒し、私は治療を施された体を見て立ち上がる。隣にはユピテルさんが。

 1vs2の戦い。結果的には引き分け。でもチームは負けてない。ウラノちゃん達なら大丈夫とは思うけど、どうだろう。


「む……此処は医務室か」

「あ、ユピテルさん。起きたんだね」

「おお、ティーナ。早起き対決でも我が敗れてしまったか」

「そんな勝負はしてないけど……。それに私もほんの一瞬前に目覚めただけだよー」

「いや、この場合は一瞬差で負けた事になる。気を付けねば」

「アハハ……ストイックだね……ちょっと違うかな?」

「しかし、我とティーナは此処に居るが、他の者達の姿は見えぬな。試合の方はどうなった事やら」

「それについては私も分からないかな~。ま、ボルカちゃん達が勝ったと思うけどね!」

「何をぅ? 我の優秀な仲間達の勝ちに決まっとろうて!」

「……ふふ、どうだろうね」

「……ふっ、分からぬな」


 軽く牽制し合い、お互いに笑って返す。

 そりゃ勿論勝ちたいけど、負けたら負けたでユピテルさん達を応援する楽しみがあるからそこまで深刻には考えていない。

 試合には本気で臨んでいるし、負けたら本気で悔しいけど、その上で相手を称える余裕くらいは持っていたいもんね。

 そんな事を話していると医務室の扉が開いてボルカちゃん達が入ってきた。

 その第一声。


「勝ったぜ! ティーナ! 去年のリベンジ達成だ!」

「すみません。ユピテルさん。負けてしまいました」


「ボルカちゃん! みんな! 勝ったんだね! やったー!」

「敗れてしまったか。……ふっ、なればまた精進するのみ。今後もダイバースを続けるのならば、最低限来年と高等部の三年間がある訳だからな」


 された報告は、私達“魔専アステリア女学院”の勝利。

 去年の新人戦では負けた悔しさがあったから、勝てて本当に良かった~。

 だけどユピテルさんは落胆せず、更に鍛えようって気概になっている。これは来年の大会……ううん。数ヶ月後の新人戦で強敵になる予感。


「良き試合だった。我が謎解き側に参加出来なかったのは我の不備。すまないな」

「いえ……我らも力及ばず……!」


「どんな答えだったの?」

「そうだな。ビブリーから聞いたんだけど、問題文にあった“従者”ってのは“四人の王”の事らしいぜ」

「そうだったんだ。それじゃ“誠の王”って言うのは?」

「アタシ達“プレイヤー”の事だ。んで、誰がその王座に就けるのかとなったら、ある条件を満たしてたら誰でもOKらしい」

「ある条件?」

「ああ。率直に言うと“王の印”って言うアイテムを四つ全部持ったプレイヤーだ。すでにビブリー達はそれを集めてたから、後はアタシ達の中から選ぶとして……ユピテルの足止めと相手の攻略阻止。そして“魔専アステリア女学院”の部長であるアタシが選ばれた。そこで王座に就いた瞬間ゲームセット。試合終了。アタシ達が無事に勝利を収めたぜ」

「そうだったんだ。ふふ、流石だね。ウラノちゃん達」

「ああ。やっぱり謎解きはビブリー達に任せて良かったぜ!」


 以上の理由から私達“魔専アステリア女学院”が勝利を収めた。

 まさか文章にあった四人の王達が従者の方だったなんてね~。更に詳細を聞けばこの時代背景が英雄の十数年前とか、誠の王は英雄の事を指し示していると聞いた。

 世界的に有名な伝説だからこそ、かつての英雄達はよく謎解きゲームとかに出てくるよね。


「ティーナ・ロスト・ルミナス。ボルカ・フレム。そして仲間達よ。今回は我らが敗れてしまったが、数ヶ月後にある新人戦では我らが勝つぞ!」

「私達も負けないよ! ……でも代表決定戦まで勝ち上がれるかは分からないけど」

「いや、君達ならば絶対に勝ち上がって来るだろう。我らも登り詰める。そこでまた決着を付けよう。今後、学生での四年間もな!」

「アハハ……お手柔らかに」

「ああそれと、今年は代表戦まで上がれるよう応援しているぞ」

「うん。頑張ってみるよ!」


 新人戦で戦う約束をし、私達は観客席の方へ戻る。

 代表戦まで行けるかなぁ。運良く代表に選ばれる順位までレモンさん達とは当たらないトーナメント表だったけど、他にも強敵揃い。一筋縄じゃ絶対にいかないよね。

 だけどその中でも頭一つ抜けた強敵であり、去年は本大会も新人戦も代表戦まで進んだユピテルさん達に勝てたんだ。少しは自信を持ってもバチは当たらないよね。

 何はともあれ、“魔専アステリア女学院”vs“ゼウサロス学院”の勝負は私達の勝利となった。更に勝ち進めるよう、残りの試合も頑張るぞー!

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