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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
196/457

第百九十五幕 代表決定戦・二年目・開幕

 ──“祝勝会”。


「“魔専アステリア女学院”の代表決定戦出場に……カンパーイ!」

「「「「イエーイ!」」」」


 優勝が決まり、“魔専アステリア女学院”ダイバース中等部はレストランに来て祝勝会をおこなっていた。

 メリア先輩、ボルカちゃん、ルーチェちゃんにサラちゃんにベルちゃんはノリノリ。私も楽しんでるけど、そこまではっちゃける事は出来ないなぁ。

 静かに過ごすウラノちゃんとリゼちゃん。私とディーネちゃんが近くの席に座ってる。そしてエメちゃんのチームの人達も誘っていたから人数はそれなりに多いね。

 因みに乾杯したのはフルーツジュース等のアルコールは一切使われていない物。あくまで雰囲気作りなんだって。

 そんな感じで数日振りの祝勝会が始まった。

 私は早速ボルカちゃんとエメちゃんの方に訊ねてみる。内容は昨日の事について。


「ボルカちゃん。エメちゃん。昨日はどこに行ってたの?」

「ん? 不思議な場所だな。多分製作途中のステージか何かだと思うけど、そこに配置されたモンスターが強いのなんのって」

「本当にそうですよね。ルミエルさんが来てくれなければ今頃どうなっていたか……」


 ボルカちゃんとエメちゃんが居た場所はどこかのステージとの事。

 モンスターが配置されてるタイプのステージらしく、ボルカちゃんとエメちゃんの実力を以てしてもかなりの強敵だったとか。

 本当にルミエル先輩が間に合って良かった~。


「とても強いモンスター以外にはどんなステージだったの?」

「うーん……端的に言えば“天国と地獄ステージ”……みたいな感じかなぁ。片方は湖に草原にお花畑。もう片方は岩山に炎に煙。とまあ、両極端なステージだった」

「へえ~。本当に天国と地獄みたいだね」


 相反する景色の連なるステージ。そこにボルカちゃん達は行っていた。

 言葉だけで想像は付くけど、目の当たりにするとまた違った感想が生まれるのかな。一度見てみたいや。

 ボルカちゃんは更に口を開く。


「そうだ。そこで会った人なんだけど、なーんか見た事があったんだよなぁ……」

「そこで会った人?」


 見た事がある人と会った。でもなんだか曖昧な雰囲気。

 ボルカちゃんは頷いて言葉を続ける。


「そうそう。おしとやかで綺麗で優しくて、一度も話した事がないのに妙にシンパシー感じて、割と気が合う女性だ」

「そうなんだぁ。有名人とか?」

「うーん……有名人ならもっと気が引けるかも。親しみやすさはかなりあったぞ」

「へえ~。そんな人が居たんだ。私も一度会ってみたいなぁ」

「ティーナもすぐに仲良くなれると思うぜ。だって、確かその人の名前は……」

「……?」


 スゴく良い人そうだけど、ボルカちゃんは言葉を噤む。

 なんだろう? 変な止まり方。例えるなら話している途中で何を言おうとしたのか忘れたような。そんな感じ。割とあるとは聞くけどね~。でもまだボルカちゃんはそんな年齢じゃないし……。

 私が疑問符を浮かべているとボルカちゃんはますます頭を抱える。


「聞いた事ある名前だったんだけどな~。印象に残るからそれについての質問もしようとしたし……でもそれも含めて全部忘れた……と言うより頭にもやが掛かったような感覚。んんん、牴牾もどかしい……」


「その感覚なら私も何度かなった事あるよ~。考えても分からないから深く考えないようにしてるんだ」


「ま、やっぱそれくらいの方が良いよな。転移の魔道具やルミエル先輩の疑似空間魔術にあのステージの独特な空気感とか、色々あり過ぎて忘れちまったって事にしておこう」


「それが良いよー」

「それもそれで問題な気がしますけど……」


 一先ず思い浮かばないなら深く考えるのはやめる事にした。

 エメちゃんの言うように思考放棄するのも問題とは思うけど、仕方無いよね。本当に分からないなら。

 何はともあれ、今は祝勝会を楽しむ。大事なことなら思い出すと思うし、多分大丈夫じゃないかな。私も気になるけどね~。

 都市大会突破の祝勝会は門限ギリギリまで続くのだった。



*****



 ──“代表決定戦”。


 数日後、私達は一年ぶりに代表決定戦の会場に来ていた。

 都市大会が終わってから祝勝会を行い、数日間練習を挟みつつゆっくり休めたから体調は万全。

 去年はレモンさん達“神妖百鬼天照学園”に惜敗しちゃったけど、今年こそは勝ち進むよ!


「今年も勝ち上がってきたか。“魔専アステリア女学院”の者達。ティーナ殿」

「練習試合振りだな。ますます磨きが掛かったようだ。だが、我も更に鍛え直したぞ」

「レモンさん! ユピテルさん!」


 会場に入るや否や、レモンさんとユピテルさんが話しかけてきてくれた。

 新入生の子達もおり、ディーネちゃん達……厳密に言えばサラちゃん達と楽しそうに会話する。

 全国的に知り合いも増えてきたねぇ~。試合ではみんな強くて怖いけど、基本的には気さくで良い人達だから楽しく過ごせてるよ!


「ティーナ・ロスト・ルミナスにルーナ=アマラール・麗衛門レモン。そしてジュピター・ユピテル」

「“魔専アステリア女学院”に“神妖百鬼天照学園”と“ゼウサロス学院”」

いずれも全国レベルの強豪校」

「他の二校もそうだが、特に“魔専アステリア女学院”はルミエル・セイブ・アステリアが抜けてから弱体化したと思ったが……」

「まさかすぐにティーナ・ロスト・ルミナスと言う逸材が入ってくるとは」

「元より初等部には登録されていなかった特待生。そして今年の新入生もディーネ・スパシオを筆頭に粒揃い」

「強豪には強者が入ってくるのだな」


 私達は楽しく過ごせているけど、他の人達からしたらそうじゃないみたい。

 当たり前だよね。ここに居る人達は全員がライバル。もちろん仲の良い人も居るけど、敵意のある視線はどうしても多くなっちゃう。

 既にディーネちゃん達まで研究されてるんだろうな~。ダイバースは情報がかなり重要。手の内はほとんど明かしているから二年目からが一番大変かもね。


「な、なんか視線を感じますね……」

「ウチらに恋しちゃった人が居るとか?」

「それならロマンチックですけれど、違うようですわ」

「都市大会までのデータはまとめられている筈。私達も参加する事があれば警戒は最大限に高めないとな」


 ディーネちゃん、サラちゃん、ベルちゃんにリゼちゃんも視線は感じていた。

 レモンさんやユピテルさんの所の知り合いと話していながらも意識をそちらに向けたりする。

 思えば和やかに見えるこの会場、私達の空間以外はどこかピリピリしてるかも。


「やあ、今日はよろしく!(このチームで一番警戒すべきはコイツだ。身振り手振りから癖を見抜いて試合に備える)」

「ああ。良い試合にしよう(なんだ。僕の偵察か。稚拙な低能が考えそうな事だな。いくら対策しようと無駄な物は無駄なんだから)」


「やあ。練習試合振りだね(練習試合をしたが、このチームは大した事無かったな。あれからの成長を加味しても我らに負ける道理はない)」

「今度は負けねえぞー!(練習試合では手を抜いてわざと負けた。勝ち誇った奴にこそ隙は生まれる。練習はいくら負けても良いんだ。本番を掻っ攫おう)」


「ひっさりぶりー!(フフ、その可愛くも憎たらしい顔。イジメ抜いて歪めてあ・げ・る♪)」

「そうだねー! 頑張ろー!(ぶりっ子を演じるのも楽じゃないなー。けど、これをする事で相手は油断する。ヘイトは買いそうだけど、勝つ為なら手段は選ばない。ダイバースの代表決定戦、及び代表戦にはそれだけの価値がある。就職にも進学にもね♪)」


 な、なんだろう……。私達以外の人達も良い笑顔なんだけど、どこかぎこちなさや偽りの気配を感じる……。

 気のせいかな……。


「フッ、肌がヒリつくな。この感覚。皆が私達を警戒しているぞ」

「愚かな者達だ。我らを前にこの敵意を見せ付けるとは。どちらが狩られる側か、しかと思い知らせてやろう」

「あ、やっぱりレモンさんとユピテルさんも気付いていたんだ」

「「無論だ」」


 やっぱり気のせいじゃなかったみたい。気のせいであって欲しかった。

 ある意味やる気満々なんだけど、もっと穏やかに出来ないのかな。レモンさんとユピテルさんは慣れた雰囲気。でも確かに個人戦と違ってチーム全体の今後が掛かってるもんね。そうなるのも頷ける。


「慣れてきたのもあるけど……かえってそれが去年より怖さも醸し出しているかも……」


「フッ、だがプラスに考える事も出来よう。それはつまりティーナ殿の感覚が鋭くなったという意。また一つ成長したのだ。ダイバースは気配の読み合いとも取れるからな」


「確かに……相手の動きをいち早く察知出来るとその分有利に運べる……。だからティ……私のお人形も重宝しているもんね」


「そう言う事だ」


 周りの空気感が伝わるようになったのは、私が少しずつ気配を読めるようになっているから。

 それなら確かに成長の一つとして見て取れる。私、ちゃんと強くなれてるんだ。


「さて、そろそろ開会式も始まろう。当たらない可能性もあるが、君達との試合、楽しみにしているぞ」

「当たったとて容赦はせぬからな」

「私達こそ! 絶好調だから負けないよ!」


 レモンさん、ユピテルさんと一時的に別れて開会式の舞台へ。

 私達のダイバース、代表決定戦が始まろうとしていた。



《さあさあ! やって参りました!! 来ましたよォーッ!!! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 代表決定戦、開幕だァァァ━━ッ!!!!》


「「「どわあああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」」」


 司会者さんの声と共に会場は大盛り上がり。流石の代表決定戦。地区大会や都市大会を遥かに凌駕する賑わいを見せていた。

 去年も来た舞台だけど、二度目となる今年は全体を広く見渡せているかも。これもまた成長なのかな。


《長い歴史のあるこの競技大会──》


 開会の言葉が紡がれ、去年の優勝チームが壇上へ。

 例年通りのやり取りを行い、開会式は無事終了。早速試合が開始される。

 今回の私達は第一試合。一番最初の見せ場だね!


《始めましょう行いましょう! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 第一試合!!! “魔専アステリア女学院”vs──》


 私達のチームと相手チームが発表。代表決定戦まで残ったのはいずれも都市大会を潜り抜けてきた強豪。一瞬足りとも油断は出来ない。

 一回戦はお馴染みのチーム戦。まあ全部チーム戦なんだけど、チームによる戦闘……的な。最もポピュラーでシンプルなルールと言っても過言じゃないけど、だからこそ様々な戦術がある。まさにダイバースを象徴としたルール。

 一回戦が始まった。



 ──“山岳ステージ”。


「それじゃあディーネちゃん」

「はい。ティーナ先輩……!」


 一回戦の舞台となる場所は大小様々な山に囲まれた山岳ステージ。

 本来ならその山々を遮蔽にしたり利用したりで多様の戦術を行う場所だけど、チーム戦での出だしはいつも通りの在り方。


「“樹海生成”!」

「“破壊水球”!」


 私が植物魔法で全体を包み込み、私達優位のフィールドとする。

 そしてとにかく当てずっぽうでも良いからディーネちゃんが広範囲に及ぶ水魔術をもちいるやり方。

 地区大会や都市大会はこの方法だけで一気に相手を減らせるけど、代表決定戦はそう簡単にはいかない。でもやらない理由は無いので行うのだ!

 植物達は山岳地帯全域へと広がり、ディーネちゃんの放った水魔術は山を貫通して一気に直進。遠方にて大水の爆発が巻き起こった。


「これで私達の居場所はバレちゃったね。さ、移動しよっか!」

「はい!」


 水魔術の軌跡を辿れば私達の位置把握は簡単に出来る。なので撃ったら即座に移動。

 既に他の参加メンバー。今回はボルカちゃんにウラノちゃん、ルーチェちゃん。彼女達はこの場から離れているから残るは私達だけ。

 植物に包まれて入り込み、広がった樹海を移動。これなら姿も見せないからリカバリーも利く。

 私達の先制攻撃により、開戦の合図が切られるのだった。

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