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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第百八十六幕 打ち上げ・都市大会

「──地区大会突破、おめでとー!」

「イエーイ!」「ですわー!」「やっほー!」

「……」


「えーと……」

「イエーイ!」

「サラは一緒に盛り上がっているな」

「わ、私も盛り上がるべきなのでしょうか。ルーチェ先輩が乗っておりますものね」


 地区大会の決勝が終わり、私達は手頃なお店を貸し切ってプチ打ち上げをしていた。

 居るのは中等部のメンバーだけであり、後輩達は少し状況が理解出来ない様子だった。

 確かに詳細は告げずに来ちゃったもんね~。


「見ての通り打ち上げだよ! みんな! 騒いでもOKなお店を貸し切ったから無問題!」

「さ、流石はお嬢様校……散財なんてなんのそのな豪快さです……」

「まだ地区大会を突破しただけなのですが……」

「ふふん、堅い事は気にしないものですわ! 一つ一つの事柄に一生懸命取り組んだのですもの! ご褒美はいくらあっても困りませんのよ!」


 これが“魔専アステリア女学院”の在り方……みたいなものかな?

 練習も何もかも厳しいと思うけど、だからこそ結果が伴った時のご褒美は大きい。それがチームのモチベーションにも繋がるもんね!

 それと単純に、ボルカちゃんとルーチェちゃん、メリア先輩がパーティ好きだからってのもある。

 何はともあれ、どうせなら楽しんだ方がお得だよね!


「さあ! どんどん食べ進めて行きましょう!」

「ふふ、ではルーチェ先輩のお言葉に甘えますわ」

「私は普段から少食なのであまり……」

「全く。ディーネはこれだから。体作りの基本は食にある。色々と大きくならないぞ!」

「だよねー。ウチもどんどん食べてくよー!」


 運ばれてきた料理やお菓子に飲み物。みんなでそれを囲み、食事会へと移行する。

 沢山あるけれど、ちゃんと分量とかを弁えた上での物。体を動かしたからそれに必要な栄養素とかをもちいた料理が多く、考えられたメニューだった。

 流石だね。ルーチェちゃん。ただ食べたい物を選んだだけじゃなく、そう言ったバランスを考慮しているや。


「さあ、遠慮無く戴いてくださいまし!」

「んじゃ、いただきまーす!」


 早速料理を手に取るボルカちゃん。彼女が選んだのはお肉料理。

 豪快に頬張り、満面の笑みで食べる。ふふ、ボルカちゃんって本当に美味しそうに食べるよね~。見てるとこっちの食欲も湧いてくる。

 私達も運ばれてきた料理に手を付け、お皿からどんどん無くなっていく。


「は、早い……」

「アハハ。みんな食べ盛りだからねぇ」


 その光景に呆気に取られるディーネちゃんと慣れたもんだと見守る私。

 恒例となった打ち上げパーティも楽しんで行われ、それは盛り上がりを見せた。


「都市大会や代表決定戦も突破出来たらまたみんなでパーティだね!」

「出来ると良いですね。……私個人としてはあまり賑やかなのは苦手ですけど……」

「ふふ、私も同じだよ。でもみんなと居ると楽しいんだ~。そのうちディーネちゃんもそう思ってくれると良いな~」

「先輩達と過ごすのは楽しいですよ。ただちょっと賑やか過ぎると言うか……」

「私も去年はそんな感じの事も結構思ってたけど、今は慣れてるからね~。ディーネちゃんも来年には後輩達に私と同じような話をしてるかも」

「ふふ、あり得ますね。現時点で以前よりは耐性が出来てる感じしますもの」


 なんだかんだ、ディーネちゃんも楽しめているようで何より。気が乗らない人を無理矢理誘うのは悪いもんね~。

 そんな感じの打ち上げパーティは日が暮れるまで続くのだった。



*****



 ──“大浴場”。


「んーっ。この時間帯になると、広いお風呂が私達ダイバース部の貸し切り状態だねぇ~」

「そうだなー。人数で言えば九人でいつもよりちょっと少ない程度だけど、結構新鮮な経験だ」


 門限までに“魔専アステリア女学院”の寮に戻った私達はお風呂に直行した。

 何気にこのメンバーでお風呂に入るのは初めてかもしれないね。そもそもが寮生活だから合宿とかもしないし、お風呂や夕飯の時間は自由だからみんながバラバラだもん。


「すっかり遅くなっちゃいましたね」

「そうだねぇ~。ディーネちゃん。大丈夫だった?」

「はい。あんなに長い時間賑やかな場で楽しめたのは初めてでした」

「それは良かったよぉ~。長時間拘束しちゃったかなぁって思っててさ~」

「心配要りませんよ。先輩の気遣いのお陰で苦なんて一つもありませんでしたから」

「ホント? 良かった~」


 ニコッと笑って話すディーネちゃん。私は良かったって何度も思っちゃった。

 人付き合いが苦手な所とか、私に似通った所があるから過保護になっちゃってたかな。

 でもボルカちゃんに会うまで友達なんて一人も居なかった私だし、最初からサラちゃん達と仲良しのディーネちゃんは心配する必要が無かったかもね。

 お湯を肌に馴染ませ、軽く自分の腕を撫でながら会話を続ける。


「取り敢えず、今日一日お疲れ様。どうだった? 初めての地区大会」

「様々な魔導の使い方があって大変勉強になりました。次の都市大会、今から期待と不安で半々です」

「ふふ、私もそうだったよ~。でも試合中はそんなに周りが気にならないんだよね。やっぱり相手に集中しちゃうから」

「あ、確かにそうですね。一応お客さん達の前で試合してるんですけど、案外気になりません」

「そうそう。それでさー」


 そんな感じにディーネちゃんと楽しく会話をする。

 周りではボルカちゃんとメリア先輩にサラちゃん。ルーチェちゃんとベルちゃんとか、みんなで和気藹々としていた。

 ウラノちゃんとリゼちゃんはゆっくりと多くを語らず湯船の感覚を楽しんでいる。落ち着いているねぇ~。

 怒濤の地区大会。無事に終了して体も十分に休めた。

 次の都市大会も頑張るぞ~!



*****



 ──“数日後”。


《さあさあさあ! 地区大会を勝ち抜いた猛者達の集い! いよいよ開催されます! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 都市大会!! お集まりになった選手達は今日、如何様な活躍を見せるのか──》


 地区大会から少し経ち、都市大会の会場へとやって来た。

 今現在行われているのは開会式。相変わらずの盛り上がりを見せており、お客さん達も今か今かと待ちわびた面持ちで賑わいを見せていた。


《おーっとぉ? ご託は良いと言った表情ですねぇ~。ええ、ええ。それでは始めましょう! 始めちゃいましょう! 学生達の見せる血と汗と涙の結晶、都市大会! 第一試合は──》


 大会が始まる。

 私達は少し後になるから今回も選手達の場所から他の試合を観戦しておくよ。

 飲食店が並んでおり、試合前のリラックスタイムでまだ出番が来ない選手達は色々購入して見守る。第二試合の子達は結構緊張したりしてるね。

 そして地区大会となると、ここには知り合いも居る。


「あ、エメちゃん!」

「ティーナちゃん。後輩ちゃん達も」

「お久し振りです。エメさん」


 エルフとのハーフ、エメちゃん!

 会うのは前の練習試合以来で、一ヶ月振りくらいかな?

 代表決定戦まで行けるチームは一つになっちゃうから最終的には戦う事になるけど、バチバチしたりはしないよ!


「やっほー。エメ」

「貴女達も無事地区大会を突破したのね」

「はい。あれから後輩達も更なる成長を見せませたし、仕上がりも上々ですよ!」

「これは去年以上に強敵となっておりますわね~」


 ボルカちゃん、ウラノちゃん、ルーチェちゃんとも話すエメちゃん。

 同年代にも関わらず丁寧な対応だけど、出会った時に比べたらかなり話しやすくなったよねぇ~。

 後輩達も前の練習試合以来仲良くなってる子が居たりして、試合まではエメちゃん達のチームと一緒に行動する事にした。


「今のチーム強かったね~」

「そうだねー。負けちゃったけど、魔導の応用は無限にあるって思わせてくれる戦い方だったよー」

「奥が深いよね~」


 のんびり試合観戦。

 雑談しながら他の人達の戦いを見届ける。

 白熱した戦いはどんどん進んでいき、私達の出番がやって来る。


「それじゃエメちゃん。私達が勝ち上がれたらまた後でね~」

「うん。頑張ってね。ティーナちゃん」


 観戦席から移動し、ステージの壇上へ。司会者さんが音声伝達の魔道具で話す。


《此処までも大盛り上がりを見せていた会場ですが、此処からは更に更に拍車が掛かり白熱し、盛り上がって参りますよ~! 最初に入場頂きますは、前回の都市大会王者“魔専アステリア女学院”ーッ!!!》


「「「わああああぁぁぁぁっっっ!!!」」」


 地区大会の時よりも盛り上がりを見せ、私達は入場。

 相手チームの人達も入り、出場選手が出揃った。


《それでは始まります! 一回戦、第四試合! チーム戦! スタートォォォ!!》


 その言葉と同時に今回のステージへと転移する。

 今回は都市ステージ。



 ──“都市ステージ”。


 光に包まれ、ここに降り立つ。

 ビル群に囲まれた大きなステージ。遮蔽は多く、植物は少ない。

 勿論無人で生き物も居ないから思う存分戦えるね。ステージによってはモンスターとか配置されてるけど、ここは心配無し。都市には基本的に入って来ない設定だから。


「それじゃ、ディーネちゃん。いつもの私達のやり方を伝授するね!」

「は、はい。頑張ります!」


 今回の“魔専アステリア女学院”陣営は私とディーネちゃん。そしてボルカちゃんにメリア先輩、ベルちゃん。

 この布陣にしたのはちゃんと理由があっての事。その理由を今から遂行する。


「最初にする事それは試合前に話した通り──」

「分かりました……!」


 私とディーネちゃんは魔力を込め、メリア先輩はほうきで空へ。ボルカちゃんもビルの上へと行き、ベルちゃんが土魔術でドームを形成。

 次の瞬間にそれらを放つ。


「“樹海前進”!」

「“大水砲貫”!」


 辺りに植物魔法を張り巡らせ、それらを一気に押し出して直進。

 ディーネちゃんは水魔術からなる水球を撃ち出し、私達のそれらはビル群を粉砕しながら全方位へと突き進んだ。


「な──」

「まさか……!」

「そんな……!」


 辺りを更地に変え、いくつかの光の転移を確認。

 ボルカちゃんはビル群が崩れるよりも前に高速でビルからビルへと跳び移るように進み、メリア先輩はほうきで上空から索敵。

 ベルちゃんは私達を余波から守った土魔術の壁を解き、そのまま私達は植物と土に乗って移動した。


「まさか……やられてしまったのか……!?」

「案ずるな。アンタも今からやられるさ」

「……!」


 光の方向に向かわせたティナとの感覚共有でボルカちゃんと残った人を確認。

 その人は魔力を込め、次の刹那にはボルカちゃんの炎剣が切り裂いていた。


「カハッ……!」

「先手必勝ってやつだ」


 それによって意識の消失。光に包まれ転移。近場の別の所ではメリア先輩も相対していた。


「“疾風奪酸”」

「……っ!?」


 風魔法にて周りの空気を巡らせ、酸素を消し去る。呼吸困難に陥った相手は何も言えず窒息し、意識を失って転移。

 それにより、勝負は決した。


《なんと言う速さ! 正確さ! 勝者、“魔専アステリア女学院”!! 試合開始とほぼ同時に終わらせてしまいましたァァァ!!!》


「「「どわああああぁぁぁぁっっっ!!!」」」


 私達は会場に戻っており、ディーネちゃんへ笑い掛けて話す。


「これがチーム戦での私達のやり方だよ。始まった瞬間に自分達の領域を広げて一気に仕掛けるの。広範囲攻撃を抜けた人はボルカちゃんやメリア先輩みたいな速い人達がトドメを刺すやり方!」


「す、スゴいです……。こんなに早く都市大会の一回戦を終わらせるなんて……」


「通じるのは都市大会までだけどね~。ディーネちゃんみたいに私に引けを取らない魔力出力の子が入って来て良かったよ~。お陰で更なる範囲を埋め尽くせるもん! それに、実は私達に土魔法とか土魔術が得意なメンバーは居ないから、防御面でベルちゃんはとても頼りにしてるよ!」


「そんな……私なんてまだまだで……」

「ふふん♪ これが私の実力です事よ! ティーナ先輩♪」


 謙遜するディーネちゃんと喜びが隠し切れてないベルちゃん。

 ふふ、後輩ってこんなに可愛いんだね~。ルミエル先輩が気に掛けてくれてた理由が少し分かったかも。

 何はともあれ、都市大会の一回戦。それは順調に突破するのだった。

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