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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第百八十三幕 大会へ

 ──“魔物の国・夜”。


 古城を含め、一日の探索が終わった私達はシュティルさんのチームの街。そこのホテルに泊まる事にした。

 理由は明日も休みなのと、私達が体験した不思議な事をシュティルさんや子供達に聞かせる為。娯楽が少ないって言うし、こう言った話を聞かせる事で子供達に外の世界を知って貰う魂胆もあるんだって。


「──それでね。まるで夢でも見ていたかのような感覚になったんだ~」

『「『へぇ~!』」』


 私達の話に子供達は目を輝かせる。

 ふふ、可愛い~。興味津々で、熱心に話を聞いてくれる姿を見るのは心が安らぐね。

 この子達は見た目もスゴく可愛いの。獣の耳が生えてたり、小っちゃな牙が生えてたり、モフモフだったり色んな動物の特徴を持ってるよ。

 そんな子達が純粋な目で聞いてきたら答えない訳にはいかないよね!

 そしてそれはシュティルさんも聞いている。


「奇妙な体験をしているのだな。君達は。人間の国にはその様な不思議が転がっているのか」

「アハハ……私達の周りだけかも。“日の下(ヒノモト)”ではレモンさんと一緒だったけど、それまで別に不思議な体験はした事無いらしいから」

「君達に惹かれるモノがあるのかもしれないな。そう言う体質なのやもしれぬ」

「不思議な事が起こりやすい体質って……でも、うーん……否定は出来ない」


 考えてみたら不思議な出来事が多い私達の周り。シュティルさんの言い分を否定する事は出来なかった。

 それによって何かしらの害が及んだ事はないから良いけど、ホント何でなんだろうね~。


『ねえねえ! 他には他には!?』

『外の世界のこと、教えて!』


「ふふ、良いよ~。それじゃあね……」


 不思議な体験以外にも、ダイバースの事とか知りたい事は多いみたい。

 教えても悪影響は無いから私もどんどん話していく。するとそこにボルカちゃんの声が掛かった。


「おーい! 晩飯出来たぞー!」

「品の無い言い方。この子達の事も考えるとマイルドにして夕飯の方が良いんじゃないかしら」

「ビブリーは細かいなぁ~」

「礼節の問題よ」


 それは夕飯の合図。

 材料は私達で買って来て、この拠点にあった物も借りたり使ったりして作り上げたの。

 料理担当と子供達の話し相手担当に分け、料理が得意なボルカちゃんはそちらに付いたって事。


『わーい!』

『ごはんだー!』

「おなかすいたー!」


「ほらほら、慌てんな~。メシは逃げねえぜ」

「ゆっくり食べないと喉に詰まらせるわよ」


 お話に夢中だった子供達はご飯の方へ一直線。ふふ、流石に食欲には勝てないよね。ちょっと残念。

 でもしっかり食べて大きくなるのは大事なこと。私達もそちらに向かい、みんなで夕飯の時間とする。

 数は数百だからみんなが同じ部屋で食べられる訳じゃないけど、私達“魔専アステリア女学院”のメンバーとシュティルさんは一緒。キドナさんは他の場所でまとめてるみたい。


「ヴァンパイアもご飯食べるんだね~。偏見だけど、なんか血とか生気とかそう言うものを中心の食生活かと思ってた」


「フッ、そうだな。確かに血液はストックしてある。ちゃんと新鮮な物を腐らせぬよう真空状態でな。だが、食事をたしなむ事は出来よう。皆と共に食卓を囲むのは楽しき事だ」


「ふぅん。そうなんだ~。確かにみんなと食べるのは楽しいし美味しいよね~!」


 基本的に主食が血や生気であるヴァンパイアだけど、ご飯を食べる事自体は出来て楽しむ事もあるんだって。

 今回がまさにそんな状況。お陰でみんな楽しく過ごす事が出来た。



 ──“浴場”。


「ふぅ~。魔物の国にもお風呂ってあるんだね~」

「魔物も水浴びくらいする。更に言えば私や他の人型魔物は人間とあまり変わらぬ生活も過ごすからな。案外違いは無いんだ」


 夕飯の後、少し休憩して私達はお風呂に向かった。

 魔物の国では混浴型なんだけど、見ての通り人型の子は少なく、その子達の種族も違うので恥ずかしさは無かった。

 種族が違ってても恥ずかしいと思う異性はこの場に居ない魔族やエルフ、ヴァンパイアとかだもんね。シュティルさんは女の子だから無問題。


「それにしても、本当に肌が真っ白。人間にも色白の人とか褐色の人とか違いはあるけど、そのどれにも属さないくらいの色味だね~」

「まあ見ての通り血色が悪いからな。質感や温もりは死人と大差無い」

「そ、そうなんだ。そう考えるとちょっと怖いかも」

「フフ、そう怖がるでない」

「ひゃうっ!?」


 ピトッ……とシュティルさんの肌と触れ合う。それはとても冷たく、お風呂の中で氷に触っているような感覚だった。

 でも不快感は無い。質感も……とは言ってたけど、冷たいだけでちゃんと柔らかかった。


「オイオーイ。女同士でナニやってんだー?」

「良いじゃない。ヴァンパイアは全性愛者が多いらしいわよ」

「これもまた新たな扉かもしれませんわね~」


「ゴクリ……中等部の二年生になるとそうなんだ……」

「ティーナ先輩はウチらの一歩先を行ってるって事だね~」

「新感覚……という事ですの?」

「いや、明らかにおかしいだろ」


「ちょっとみんな~!」


「フフ、確かに我が種族では性別関係無く契りを結んでいる者は少なくない。だがそれは不老不死かつ繁殖の必要性が少ないのが要因だ。単純に共に居て退屈せず愉快ならばそこに男女の壁が無いと言うだけよ」


「そ、そうなんだ」


 ヴァンパイアは長寿の種族。なので一緒に居て一番楽しいと思える人と永遠を過ごす事が多いとの事。

 それも種族による違いって感じだね~。


「フッ、君達ならば私のつがいとしても構わないぞ?」

「アハハ……縁があったら……」


 冗談混じりに話すシュティルさん。

 そんな事を話、私達そっちのけではしゃぐ子供達を見てお風呂の時間も過ぎていくのだった。



 ──“寝室”。


「子供達は別室の大部屋なんだね。私達の部屋も四人ずつ」

「そうだなー。こうしてみると本当に普通の宿泊施設と変わらないぜ」

「そうね。至れり尽くせり。ちょっと申し訳無いわ」

「ご厚意として受け取りましょう」


 お風呂から上がった私達は四人部屋で過ごす。

 たまのお泊まり会の時はこのメンバーで過ごすから慣れた感じがするね。


「どうする? 枕投げでもするかー?」

「何故二言目がそれなのかしら。しないわよ。もう寝るの。明日は帰るんだから」

「では恋ばなでもしますの?」「話し聞いてなかった?」

「私達ってそう言うのとはまだ無縁じゃ……」


「「「「…………」」」」


 私を含め、誰も何も言わなくなっちゃった。

 私はあまり気にしない質だけど、やっぱりみんなは気になるのかな……。


「ま、いずれは出会いもあんだろ。今は今を楽しむだけだ!」

「私は生涯独身でも構わないわ」

「えー、そうですの? 私は将来的には何人かの子供達と過ごしたいですわ」

「将来かぁ~。私は何も思い付かないな~」


 そんな感じで話が別方向へとシフトチェンジ。

 ウラノちゃんは結婚とかに興味なく、ルーチェちゃんは願望強め。私とボルカちゃんは現状第一って感じかな。

 何はともあれ、浮いた話はなかったけれど楽しく過ごせた。



 ──“翌日”。


「もう帰る事になるのか。夕方くらいまでのんびりしてくれても良いのだがな」

「アハハ……大会ももうすぐだし、ちょっと練習したいって感じかな」

「……フム、確かにそうだな。この季節の大会。一番の主要と言える事柄」


 次の日、朝食を終え、子供達と少し遊んでから私達は帰る事にした。

 もっと居たい気持ちはあるけど、大会に備えて色々と準備もしなきゃならないからね。


「お姉ちゃんたち帰っちゃうの~?」

『えー! もっといっしょにいたい~!』

『もっとあそぼーよ!』


「コラコラ。ワガママをそんなに言うでない。向こうにも事情があるのだからな。それに、またいつかは遊びに来てくれる」


「『『ホントー?』』」


「ふふ。うん、また遊びに来るよ~」

「楽しかったしな~」

「ですわ!」

「……そうね」


「私もー! もっとお姉ちゃんって甘えられたーい!」

「メリア先輩……」

「相変わらずの先輩ですね」

「ウチもまた来るよ~!」

「来ますわよ!」


「『『わーい!』』」


 みんなとお別れを言い、私達は転移の魔道具へ。

 最後にシュティルさんと話す。


「もし試合で合う事があるとすればそれは代表戦だ。今年は君達が人間の国の代表になれると良いな」

「それは結構難しいよね~。だけど私達も代表入りしたいし、頑張ってみるよ!」

「ああ。私達は今年も勝ち上がるつもりだ。共に高めあおう」

「うん!」


 勝ち上がれるかは分からないけど、代表戦への約束をして私達は去る。

 いよいよ始まるダイバースの大会。新人戦じゃないので個人の部は無いから、全員で勝ち進めないとね。

 ダイバースの大会に備え、私達は“魔専アステリア女学院”へ戻るのだった。



*****



 ──“ダイバース大会・当日”。


《さあさあ! 一年ぶりに始まりましたァーッ! “多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)”!! 地区大会です!》


「「「わあああぁぁぁぁ!!」」」


 あれから一月近く経ち、最後の仕上げを執り行った私達はダイバースの地区大会へとやって来た。

 二度目の大会。空気感は新人戦ともほぼ同じだから実質的には三度目の大規模大会。少しは慣れたけど、このドキドキは完全には消えないね。


《去年も激しい戦いがありましたが、新入生を交えて行われる今回の──》


 今は開会式であり、前回大会の優勝チームが返却。

 私達も地区大会は突破してるからちゃんとそのメンバーに入っているよ!

 そこから盛り上がる言葉が次々と告げられ、いよいよ一回戦が開始される。


《では始めましょう! 前回大会、新入生主体のチームでありながら代表決定戦にまで勝ち上がった優勝候補の一つ、“魔専アステリア女学院”ンンン! 今大会も仰天するような力を見せつけてくれるのでしょうかァーッ!》


「「「わあああぁぁぁぁぁっっっ!!」」」


 チーム紹介がされ、ステージへと立つ。

 すると司会者さんは驚いたように言葉を続けた。


《おーっとぉ!? なんとなんとなんとーっ! これは一体どういう事だーっ!? レギュラーメンバーは前回大会も経験した部長のボルカ・フレム選手やその仲間達では無く、ティーナ・ロスト・ルミナス選手ただ一人!? チームメイトは今年中等部に上がったばかりのサラ・フォティ選手! ディーネ・スパシオ選手! リゼ・シルフ選手! ベル・ノーム選手! この五人で一回戦に臨むと言うのかー!?》


 その言葉に会場がざわつく。

 そう、今回の出場メンバーは私とディーネちゃん、サラちゃんにリゼちゃん。ベルちゃんの五人。

 去年のレギュラーは私だけと言う挑戦的な布陣で赴く事にした。一回戦を勝ち上がればちゃんとボルカちゃん達も試合に出るよ!


「これが本大会……」

「ふふふ……武者震いがしますわ……」

「ドキドキするねぇ~!」

「フン。いつものようにするだけだ」


 ディーネちゃん達は緊張の色が少し見えているけど、支障はきたさない範囲に留まっている。

 今日まで全国の強豪チームと練習試合をしてきたもんね。観客数も多かったし、ガチガチに固まる事は無いと思う。

 改めて、私達のダイバース大会が始まった。

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