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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部二年生
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第百六十四幕 部活動勧誘

「魔導テニスで青春を感じないかー!?」

ほうきで世界を取ろう!」

「我々と共に様々な魔導の研究をしてみよう!」

「そこの子猫ちゃん達……我がクラブのお客様になってみる気はないかい?」

「舞台の上で輝く自分を想像してみよう!」

「青春とは音楽だァーッ!」


「……す、スゴい盛り上がり……これ全部部活動への勧誘なんだ……」

「私達は方針的にもそんなにしてなかったけど、こんな感じなんだね~」


 次の日の放課後、学院は早速部活動への勧誘が大盛況だった。

 ビラを配っている人達に、実演して見せている人達。ダイバース部ではそんな事してなかったらしいけど、今回からは本格的にやってくよ!


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! あの伝説のルミエル・セイブ・アステリア先輩や“イェラ・ミール”先輩が所属していたダイバース部へ! なんと去年は個人の部で代表戦にまでもつれ込んだ実力! しかし人数も少なく、レギュラーになる日も本人の努力次第ですぐ! この波に乗らない手はないよ~!」


「ルミエル先輩の名前……確かに許可は貰ってますけど」


 部活動へ加入させるならそこから出ている有名人の名前を使うのが一番。だから遠慮無く使って頂戴! 広告塔にするのが良いわよ! ……と、ルミエル先輩から直々に許可を得てその名前を使っているけど、こんなに大々的に言って良いのかな。

 取り敢えず、それに加えて今までの実績や人数によるレギュラー競争率の緩和など、メリットになる部分は話していた。

 これで入って来る人はどれくらいなのか──


「──“魔専アステリア女学院”のダイバース部!」

「数々の栄光を得たルミエル様の出身部!」

「ど、どうしようかな……」

「きゃー! ルミエル先輩達が使っていた物も置いてあるのね!」

「「「わー!」」」「「「きゃー!」」」


「お、思った以上に来てくれた……」

「何人かは俗っぽいけど、まあどの道……だもんねー。それじゃ、案内するよ。ティーナちゃん!」

「はい! メリア先輩!」


 ルミエル先輩の効果は絶大であり、一気に何十人も入部希望者が名乗り上げた。

 こんな大人数じゃさばき切れないけど、メリア先輩の言う通りどう転んでも今現在の数からは減少する。なのでそこを突いての宣伝だった。


「それじゃあ、この森の先に部室があるよ~! 入部出来るかどうかはここで決めるから~!」

「入部出来るかどうか……?」

「一体どういう事かしら」

「さあ……」


 メリア先輩の言葉に困惑する後輩達。

 そう、既に入部試験は始まっている。この時点で部室まで到達出来なかったから少人数の中でもレギュラーになれないかもしれないし、中等部から高等部までの六年間を棒に振る必要は無いからね。

 全員に杖や防衛用の物を持たせ、私は森の中へと入っていく。


「それじゃ、私は先に待ってますのでメリア先輩。後輩達をお願いします!」

「オーケー! 任せてー!」


 そこで待機し、準備する。

 部活動体験の基本はそれを実際にやってみたり目の当たりにする事。私達もそうだった。

 そんなに無茶はさせないから、えーと……頑張るよ!

 指定位置に付き、メリア先輩達がやって来た。


「それじゃ、ここから気を付けてねみんな~」

「「「気を付ける?」」」


 後輩達が疑問を浮かべた瞬間、私はママに魔力を込めた。

 次の瞬間には周りの植物が呼応し、一気に伸びて動き出す。私達がやってるんだけどねぇ。


「これは……!?」

「ティーナ・ロスト・ルミナス先輩の植物魔法!?」

「一体何故!?」


 流石に植物魔法の情報は漏れてるみたいだね。……けど、ふふ。先輩……かぁ。

 遠くで聞いているだけだけど、なんか嬉しいかも!

 メリア先輩はそんな後輩達に説明をした。


「そう! これがダイバース! 名付けて、“森林脱出ゲーム”! 君達は多分まだティーナちゃんに勝てないから、この植物から無事逃げ延びて部室まで到達したら勝ちねー!」


「ちょっと先輩!? 私達、まだ入部するかどうかも決めてないんですけど!?」

「普通こう言うのって、見学したり手順を踏んで行くものじゃないんですか!?」


「だからまさに今がそれだよ! 単純な練習風景だけ見ても、ぶっちゃけ魔導の授業と変わらないもん! ちょっと魔法・魔術の範囲や威力が高くなるだけ! それならと、どうせ使うんだし可愛い後輩達にも体験させようって魂胆!」


「聞いてませんよ~!」


 植物が降り掛かり、後輩の子達が慌てて逃げ惑う。

 サプライズのつもりだったんだけど、ちょっと可哀想かな? だけどこれくらいしなきゃダイバースの体験って感じじゃないよね……。ルミエル先輩の特訓はこの十倍くらいキツかったからかなり抑えてるけど……。


「わ、私は帰る!」

「ウチも!」

「こんな所に居られませんわ! 私は寮の自室に帰りますの!」

「無理ですぅ~!」


「うーん、残念だなー。ルミエル先輩もたまにはOBとして部活に顔を出すって言ったんだけどー」


「「………!」」

「「………!」」


 その言葉の瞬間、後輩達の目付きが変わった。

 弱々しかった表情がキリッとし、植物達へ向き直る形となる。

 これってもしかして……。


「そうでした。ルミエル先輩に出会える可能性が一番高いのは“魔専アステリア女学院”のダイバース部……!」

「その為ならば例え火の中水の中、植物の群れでも……!」

「乗り越える事が出来るって訳……!」

「や、やりますよぉ……!」


 本当にスゴいね。ルミエル先輩効果。

 本人から広告塔に使って良いと言われてるけど、まさかこれ程までの影響を及ぼすなんて。

 当然それだけじゃ動かない人も居るけど、今話した四人は特に気合いが入っている感じがする。


「ウチの力を見せてやんよ! “火鳥”!」


 一人が魔力を込め、杖から鳥の形をした炎を放射。放った植物が燃やされた。

 オレンジっぽい髪のこの子はボルカちゃんと同じく炎魔法の使い手みたい。ただの初級魔法じゃなくて形体変化を可能にした技。それに植物魔法が防がれる事は前提にしてなかった!

 やっぱりこの学院に集まる子達は全員が実力者なんだねぇ。


「やってやるさ。“風鋸かぜのこ”」


 もう一人の緑色の髪をした子は風をノコギリみたいにして樹を切断。

 風魔法が得意分野なのかな? ちゃんと風の性質を生かした上手い魔法の使い方してるね!


「見せてやりますわ! 私の力を! “岩石上昇ロックアップ”!」


 そしてルーチェちゃんみたいな話し方をする茶髪の子は見た目によらず土魔術の使い手。

 自分自身の拳に魔力を込めて遠隔で岩を造り出して操っているみたい。


「ひぃ~! ムリですぅ~!」


 そしてもう一人、毛先が青い白髪の子は涙目で植物から逃げ回っていた。

 控え目で怖がりなのかな。ちょっとシンパシー感じるかも。

 そんな感じで他の子達もなんとか植物魔法を除けながら進み、数百メートルは進んだ。結構遠いからね~。


「これが部室までの道のり……」

「植物魔法から逃げながらだから超疲れた~」

「全く……だらしないですわね……貴女方……」

「人に言えないよ……」


 普通に行くだけなら、よっぽど体力が無い人以外はそんなに疲れない道中。実際インドア派だった私も行けたもんね。

 だけど今回の植物魔法から逃げながら進むというルールもあり、それなりに疲弊していた。


「もうギブ~……」

「私も~」


「あー、また二人~。どんどん数が減っちゃうなぁー」


 リタイアした人はメリア先輩がほうきで安全に入り口まで運ぶ。人数は多い時は植物魔法も手を貸してね。

 そんな感じで十人以上居た数も一桁に。目の前には次なる難関が待ち受けていた。


『『『…………』』』

「これは……」

「木兵……!」


 植物魔法で作り出したゴーレム達の軍団。

 そんなに魔力は込めず、簡単に破壊出来るように調整したけどそれなりの疲れが見える今、少し大変かもしれないね。


『『『…………』』』

「来る……!」


 そしてゴーレム達がけしかける。

 武器は素手か棍棒か。先端部分は柔らかくしてあるからそんなに痛くないけど、痛いは痛いから苦労するかもね。

 巨腕や棍棒が振り下ろされ、後輩達は飛び退くようにかわした。


「ひぃ!」

「“火射”!」

「一つ一つはそんなに頑丈じゃないみたいだ。“風切”!」

「これくらいなら何とかなりますわ! “岩槍”!」


 火が射られてゴーレムが焼かれ、風魔法で斬られ、足元から生えた岩によって貫かれる。

 相変わらず青い子は逃げてばかりだけど、ここまでリタイアはしていないから根性はあるのかもね~。

 ゴーレム達は突破し、また何人か減った。植物の追跡も継続中だから。

 そして一番目立った活躍を見せた三人と逃げ回っていた子だけが残り、最終関門へと突入する。

 最後の相手は──


『ブモオオオォォォォッ!!!』

「……っ。ミノタウロス……!」

「ウラノ・ビブロス先輩の……!」

まさしく“番人”ですわ……!」

「怖いよぉ……」


 ──ウラノちゃんが召喚したミノタウロス。

 もちろん魔力は少なく、結構弱めに作ってある。だけどここまでの疲労を思えば大変かもね。

 実力を見せてきた三人は早速行動を開始する。


「多分逃げるのが目的だろうけど、別に倒しても良いよね! “火斬身鶏かざみどり”!」


 オレンジの子が早速炎魔法を使用。さっきよりも大きな火の鳥がミノタウロスの体にぶつかり、発火させた。

 そこへ追撃するように他の子達も仕掛ける。


「サポートしてやろう。“風薙ぎ”!」

「蒸し焼きにして差し上げますわ! “石窯”!」


『グモオオオォォォォッ……!』


 燃え盛るミノタウロスへ風が放たれ炎は更に広がり、周りを岩で囲って身動きを取れなくする。

 私達も似たような戦法を使った事があるね。懐かしいなぁ。

 その牢獄は戦斧が振り回され、一瞬にして破壊された。


「そんな……!」

「腐ってもミノタウロスって訳か……!」

「腐ってますの!?」


『ブモオオオォォォォッッ!!!』


 障害物を薙ぎ払い、大地を踏み砕いて加速。三人はそれを避け、今さっきまで立っていた場所にはクレーターが形成された。

 当たらなかったからいいけど、少しやり過ぎなんじゃ……。


『グモッ!』

「……ッ!」

「「……!」」


 次の瞬間に瓦礫が飛ばされ、一人に激突して吹き飛ぶ。

 これって本当に弱めてるよね……!? 本当に大丈夫なんだよね!? メリア先輩はリタイアした子達を送っているからまだ戻ってないし、私が出た方が良いかな……。


「なんて馬鹿力……!」

「これはマズイ……!」

『グモオオオォォォォッッッ!!!』

「「……!?」」


 吹き飛ばされた子に気を取られていた瞬間、ミノタウロスは二人の眼前に迫っていた。

 既に戦斧は掲げられており、今にも振り下ろされる直前。

 流石にマズイよね……! 私は植物を操り、あの子達の方へ──


「や、め、て━━っ!!」

『……!』

「「……!」」


 ──刹那、逃げ回っていた子が手をかざしており、ミノタウロスの動きを止めていた。

 何だろう。あの力。超能力に近いけど、なんか違う。ちゃんと魔力の気配があるから魔法や魔術の一つみたいだけど。

 そんな事を考えているのも束の間、その子は更に魔力を込めていた。


「友達を傷付けないで!」

『……ッ!』


 巨大な水の塊がミノタウロスに直撃し、その体を吹き飛ばす。

 ミノタウロスは無数の木々を砕きながら飛び行き、数百メートルは離れた場所で水の破裂を確認。消え去り、本の中へと戻っていく。


「……危なかったわね。周りにある魔力の影響で必要以上の力になってたみたい」

「……! ウラノちゃん」


 どうやらウラノちゃんにとっても不測の事態らしく、既に止める準備はしていた。私も当然してたけど、その必要は無かったみたい。

 頃合いにメリア先輩が戻ってくる。


「ありゃ……この破壊痕……スゴいね! 君達がやったの!?」

「えーと……私達ではなく、此方の……」

「わ、私がやりました……すみません……」

「全く……早く本気を出して欲しかったですわ……」

「まーまー、一件落着だから良いっしょ!」


 この予想以上の力にメリア先輩も驚愕の表情。私もスゴく驚いたもん。あのミノタウロス、前に私達が戦ったのと遜色無い力だったよ。

 その後、再びメリア先輩案内の元、四人は部室の前にやって来た。

 満を持して、待機していた私達は出迎えた。


「ようこそ! “魔専アステリア女学院”ダイバース部へ!」

「先程の勝負は貴女達の勝利ですわ!」

「おめでとう」

「良かったなー!」


「あ、ありがとうございます」

「酷い目に遭いましたよ。先輩」

「お詫びになんかしてくださーい!」

「えーと……えーと……」


 これまた個性的な子達。でも怖い目に遭わせちゃったから売店とかで何か買ってあげよっかな。

 部活動への新入生勧誘。それは多分、無事に成功を収めるのだった。

 ……あ、まだ入部前だった!

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