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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
151/457

第百五十一幕 代表戦個人の部・一回戦

「それ!」

『ブオオオォォォォッ!!!』

「流石に今の私でこの質量は止め切れないか」


 三〇メートル級フォレストゴーレムの巨腕がリテさんに迫る。

 この質量は念動力でも止められないみたい。代表戦は山とか簡単に壊しちゃうような人達の集まりだけど、中等部の新人戦ではまだその領域に達していない人が多いのかな。団体戦や他の人達の試合を見た感じ、全員スゴいけど高等部の代表戦には流石に劣ってるもんね。

 だったらまだ私にも勝ち目はある!


「“フォレストレイン”!」

「森が降ってくるなんて……何処にこんな魔力を秘めてるんだろう」


 森その物よりは流石に小さいかもしれないけど、それなりの質量を誇る木々を雨のように降下。

 こんなに派手な土煙が舞えばマイラさんやリフォンさんも気付くかな。ここに全員を集めて一網打尽にする程の実力は私に無いし、なるべくダメージは受けないように気を付けて敵同士の戦いで消耗を待った方が得策かも。


「けど、姿はもう確認済み」

「……!」


 次の瞬間、少し離れた場所に居た筈のリテさんが私の隣へ現れた。

 超能力者ならテレポートくらい使えるよね。周りも固めて置かなきゃ手痛い一撃を食らっちゃいそう。

 まずは今仕掛けられるよりも前にカウンター、


「“フォレストビースト”!」

『『『…………』』』

「現れたのを即座に認知して防御体勢に入る……迅速な判断をしているね」

「ルミエル先輩に鍛えられましたから!」

「そ」


 ビースト達はまた破壊される。けど今回はさっきとはまた違う攻め方!


「“トラップ”!」

「(壊した植物獣達がツタになって私の体に……)やるね」

「またテレポート……!」


 リテさんの体は一時的に捕らえたけど、すぐに抜け出されちゃった。

 衣服ごとテレポートしてるから密着すれば出来ないって思ったけど、真っ直ぐな植物が少し歪んでる。念力でツタとの間に小さな隙間を作っていたみたい。

 それなら……完全に締め付ければ捕まえられるかな。


「洞察力も高いみたい。私の脱出のタネをすぐに見抜くなんて」

「……! 思考が……テレパシーだ……!」

「そうよ。けど、少し変。浅いところの考えは読めるけど、深層心理の部分は無数の何かで覆われて読めない……。お陰でテレパシーもブツブツ。貴女の考えを読み取るのは少し回線が悪いみたい」

「な、なんの事ですか!?」

「気付いてない……そう言う体質なんだね」


 よく分からないけど、私の思考は読み難いみたい。

 表情にすぐ出るから考えはボルカちゃんとかによく読まれちゃってるけど、それとはまた別の思考。とにかくテレパシーが効き難い体質なのは有利に運べるかも。


「やあ!」

「無尽蔵に攻め立てる植物……脅威的な魔法だね」


 植物を放ち、次はフェノメナキネシスの類いで破壊して防ぐ。

 フェノメナキネシスって言うのはサイコキネシスとかの総称みたいなもので、さっき使ったパイロキネシスとかエアロキネシスとかの事。

 そこから更に無数の植物を打ち込み、またリテさんを拘束。彼女は切り離して抜け出した。

 あれ? 切り離して……テレポート使った方が早いのに。……そっか!


「私も少し読めましたよ! 貴女のテレポートは少し時間を置く必要がありますね! 連続使用は出来ないみたいです!」

「ふふ、さあどうだろうね。ただ防げるから防いだだけかもよ?」

「どちらにせよ、仕掛け続ければ消耗する筈です! 魔導も超能力も身体能力ですから!」

「それはお互い様」


 間隔は短いけど、テレポートの連続使用はやりにくい様子。多分転移の魔道具と同じように跳ぶ場所を見定めなきゃならないからその分ラグが生じるんだと思う。

 植物魔法が全方位に仕掛けてあって、いくつかは自動的に動くようにしてあるから、はからずとも一つの能力を制限させる事が出来たんだね。

 そしてこの範囲に敷き詰められた植物に一ヶ所だけ空けておけば、必然的にそちらに入る事になる。

 狙い目はそこ!


「やっちゃって!」

『ブオオオォォォォッ!』

「誘い込まれた……」


 巨腕が迫り、リテさんはサイコキネシスとエアロキネシスの緩衝材で防御。けどさっきも感じ取ったみたいに、この質量は防ぎ切れない。

 このまま一気に押し込む!


「「………!」」


 次の瞬間、遠方にて火山の噴火みたいな爆発が起こった。

 ティナがいち早く探知し、リテさんも轟音と揺れで気付く。

 ここは岩山だけど火山地帯ではない。私達以外にも戦いが始まったみたいだね。ドーン! ドン! ドドーン! と連続した爆発が……あれ、と言うかドンドン近付いて来てる……?


「……! 巻き込まれる……!」

「ふふん、私にとっては好都合!」


 飛び退き、先程まで私達が居た場所も炎に飲み込まれた。

 そこから更なる爆発が起こり、植物が焼失しながらその主達が姿を現す。


『楽しいな! グリフォンよ!』

『此処ではリフォンを名乗っている。キマイラよ』

『此処ではマイラを名乗っている!』


 マイラさんが口から火炎を吐き、リフォンさんが風を放出して相■(そうさい)。爆発的な熱風が吹き抜け、辺りが更地になった。

 でも私の環境なのは変わらない。全員が集まったので広範囲の植物を纏め上げて一定距離に留め、私とティナから一人と二匹を視野に入れる。

 この二匹は速いけどまだ線の移動だから何とか追える。点から点に移動する事が可能なリテさんが一番見失っちゃダメな人だもんね。


『……! この気配、どうやら他の者達も此処に居たようだ』

『それは好都合。纏めて打ち倒してくれよう。幻獣の国は全体的にダイバースの成績が振るわないのでな。名誉挽回と行こう』


 気付かれた……と言うか、むしろまだ気付いてなかったんだ……。

 本当に偶々(たまたま)戦闘中にここに来ただけ。まあ偶然でも確認出来たのは良いよね。前向きに考えよう。


『纏めて焼き尽くしてくれる。──カァッ!』


 マイラさんが跳躍し、上空から下方へ火炎を吐き付ける。

 頭がライオン。体がヤギ。尻尾がヘビのキマイラ。飛行能力は持っていないけど、跳躍だけであんなに高く飛べるなんて。本当に魔物の身体能力はスゴいねぇ。


「“防火樹”!」

『……!』


 でも、これ以上焼き払われる訳にはいかない。火に強い樹を掛け合わせ、水の成分を多めに。オリジナルの植物でその火炎を防いだ。


『火が樹に防がれるか。フッ、やはり代表戦は面白い。見せて貰おうか。ルミエル・セイブ・アステリアの後釜とされるその力!!』


「そんな事一言も言った事ありません!! この試合見てる記者の方!! ルミエル先輩には遠く及ばないと訂正してくださーい!!」


 やっぱりこの話は魔物の国まで広がってるんだ……シュティルさんもそうだったもんね……。

 憧れの先輩の後継者って思われるのは嬉しいけど、私の実力がまだ伴ってない。もう少し後……それこそ本当に近付いてから大々的に発表してくれないかな……。


『相手には私も居るぞ。“風の刃(ヴァン・ラム)”!』

「風……!」


 火を防いだ瞬間、リフォンさんが風の刃を前足から放出。木々が切断される。

 だったら今度は硬い植物を掛け合わせて強度も上昇させる。風の刃からなる雨を防ぎ、私の隣にはリテさんが来ていた。


「隙あり」

「……ッ!」


 念動力で吹き飛ばされ、植物を粉砕しながら岩山に激突。

 これだけで意識が遠退くけど、即座に植物で治療。回復魔法程の効力は無いけど、応急処置くらいは出来る。

 岩山も植物で覆っていたからぶつかったダメージ自体は軽減されてるしね。


(ダメージを見せたら集中狙いされちゃう……)


 弱っている方を狙うのはこのルールの定石。なのでゴーレムで辺りを薙ぎ払い、リテさん達を私から引き離した。


『この森もゴーレムもあの少女が生み出した物……相変わらず人間からは魔物以上の怪物が生まれるな』

『ある種、幻獣よりも稀有な存在だ』

「お、種族トーク。魔族は……基本的に人間の上位互換だから私の方がスゴい!」

『『何を言っている貴様は』』


 一人と二匹を離す事には成功した。その場所で会話をしながら炎と風。念力がぶつかりあって天変地異を引き起こしていた。

 一挙一動が上級魔法相当。まるで出し惜しみしていない。次の試合で対策されるかもしれないのに……。


「いや……違う……」


 そう、だね。ここはそう言う大会だった。

 油断禁物は大前提として、対策されるのも承知の上で手の内を明かし、アドリブで次の試合を立ち回る気概も見せなきゃ。

 やっと理解した。代表戦はそうしなきゃ勝ち残れない。単純な試合はこれまでで終わらせている筈だから……! 求められているのは……!!


「……! この気配……」

『これ程の……』

『どうしてくれる。リテ。貴様の攻撃が切っ掛けで厄介な事になった』

「え!? これ私の所為せい!?」


 一人と二匹はなぜか攻撃を止め、私の方を見る。

 やる気になった事がバレたのかな。でも大丈夫。私にはママ達が居るから。


「──やろっか。ママ」

『……ええ、そうね。ティーナ』


 魔力を込め、一点に集中。周りの森を全てかき集める。

 今まで学んだ事を全てぶつけて……勝つ!


「──“フォレストドラゴン”」

『ガギャアアアァァァァッッッ!!!』


『森の……龍……!』

『これ程の魔力を操り、一瞬にして縮小と拡大を済ませるとはな……!』

「やっぱりあの子、強いなぁ」


 前はまだ未完成だったけど、魔力を一点に込めて威力を上げる術。そして今見た口から炎を吐く構造。それを合わせれば森林龍は完成する。

 リテさんにはテレポートで逃げられるかもしれないから、岩山全域を薔薇の道に変えて移動した瞬間に傷を負うようにする。

 後は百メートルくらいのゴーレムを複数体生み出して空中からも逃げ場を阻み、この一撃を加える。


『これ程の魔力操作を、我らが動くよりも前に終わらせるとは……!』

「これじゃ逃げられない……負傷覚悟で行動しなきゃ……!」

『せめて誰かは倒し、点を取らなければ……!』


「やって」

『──!!』


『「『────!!』」』


 代表戦にまで残ったプレイヤー達は数秒の猶予を与えるだけで打開策を見つけちゃう。

 だから私はそれをさせるよりも前に指示を出し、フォレストドラゴンはボルカちゃん経由で一点集中した爆炎を放出した。

 威力はマイラさんの倍以上。逃げ場も無く、確実に倒す。

 光線は真っ直ぐに進み、遠方の岩山を粉砕。一人と二匹は白熱光線に飲み込まれ、転移の魔道具で控え室へ飛んだのが見えた。

 という事は──


───

──


《──勝者ァ!! ティーナ・ロスト・ルミナスゥゥゥッ!!! なんと全員を一人で倒し、高得点と共に勝利を飾りましたァァァ!!!》


「「「どわあああああああァァァッッッ!!!!!!」」」

「「「うおおおおおおおおォォォッッッ!!!!!!」」」

『『『グギャアアアアアアァァァッッッ!!!!!!』』』

『『『キュオオオオォォォンンンッッッ!!!!!!』』』


 気付いた時、私は会場の方に居た。

 宣告と共に大歓声が響き渡る。つまりこれは……!


「やった! 勝ったんだ! 代表戦での初勝利!」


 一回戦、私は参加者全員を倒し、無事に勝利を飾る事が出来た!

 ふふふ、私って結構強いのかなぁ♪


《やはりルミエル・セイブ・アステリアの後継者という前評判に狂いはありませんでしたァァァッッッ!!!》


「……!?」


 って、それは訂正させてえええ! 調子乗ってごめんなさーい! まだまだルミエル先輩には及ばないからぁぁぁ!!

 相変わらず覆らない過大評価はさておき、一回戦は勝利した私達。次の試合に備えなきゃ!

 よーし、このまま行ける所まで行きたいな!

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