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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
149/457

第百四十九幕 ダイバース新人戦・代表戦開幕

《──さあ! さあさあさあさあさあさあ!! ッサー!!! いよいよ遂にとうとう始まりましたァァァ━━ッ!!! 多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)!!!! 新人戦ッ!!!!! 代表戦ンンンン━━ッッ!!!!!!》


「「「どわあああああああァァァッッッ!!!!!!」」」

「「「うおおおおおおおおォォォッッッ!!!!!!」」」

『『『グギャアアアアアアァァァッッッ!!!!!!』』』

『『『キュオオオオォォォンンンッッッ!!!!!!』』』


 ルミエル先輩達の卒業式から数日後、私はダイバース新人戦の代表戦へと来ていた。

 盛り上がりは代表決定戦までの比にならない程大きく、多種多様の声が聞こえた。

 これが代表戦の会場。ルミエル先輩の観戦で観客席から見た事はあったけど、選手の立場になるとこのレベルの大歓声なんだ……。

 圧力とプレッシャーで早くも緊張してきたよぉ~。


《今年の選手も凄まじい粒揃い! 将来のダイバースを背負って立つような方々が凌ぎを削って戦います!! そう、彼ら彼女らは謂わば世界のタマゴ!!!》


 将来のダイバースを背負って立つ……。思えばスゴイ期待を掛けられているんだね……。

 世界のタマゴって、将来的に私達が世界になっちゃうの……?


《それでは!! 各チームの入場と紹介を──》


 そんな感じでいつも通り開会式が終わる。

 ここにボルカちゃん達はいない……。だから緊張はスゴく凄まじい……。参加選手のチームメイトは特設の観客席で見てくれてるけど、会場には居ないから不安しかないよ……。


「フッ、緊張しているようだな。ティーナ殿」

「まあ初めての世界大会だから仕方無かろう」

「いや、私達もまだ二度目の筈なんだがな」


「……! レモンさんにユピテルさーん!」


「おっと、急に抱き付くな。本当に不安だったようだな」

「これ程までとは……」


 すると知った二人の声が掛かった。

 二人のチームは団体戦でも残っているけど、個人戦で勝ち上がったのはこの二人だけなんだって。

 本当にレベルが高い大会なんだなぁって改めて思うよ。

 でも知ってる人が居てくれて良かったぁ~。


「──ほう、この者があのルミエル・セイブ・アステリアの再来を謳われるティーナ・ロスト・ルミナスか」

『寂しがり屋な普通の女の子にしか見えないけれど』


「……え゛……? 私なんかがルミエル先輩の再来ィ!? なんでそんな事に……って、アナタ達は誰ですか?」


 レモンさん達と話している中、よく分からない人? 達が話しかけてきた。

 しかも私がルミエル先輩の再来を謳われるようになってると言うとんでもない誤報を交えて!

 その人達は言葉を続ける……片方は種族的に“人間”……じゃないのかな。そうなるともう一人も……。


「名乗り遅れた。私はシュティル・ローゼ。魔物の国“神魔物エマテュポヌス”のおさを務める吸血鬼ヴァンパイアだ。厳密に言えば吸血鬼と魔族の混血ハーフだが、数千年前に魔族の血が少し混ざっただけだな。ちゃんと純愛であったと聞いている。……ちなみに高等部は去年の代表戦でルミエル・セイブ・アステリア率いる“魔専アステリア女学院”に敗れている。これもまた何かの因果か」


『私もチームは同じ、“神魔物エマテュポヌス”。副長を務める“エキドナ”よ。まあそれは祖先から名を受け継いでいるだけで、今はキドナとしているわ。魔物の国では珍しくないけど、種族名で呼ぶのも紛らわしいからね』


「シュティルさんにキドナさん……」


 去年の代表戦、決勝でルミエル先輩達が戦ったチームの人……。

 同じ名前のチームが中等部の代表戦にも参加しているって事は、中高一貫とかじゃなくてチーム内で年齢を分けてるんだね。

 ヴァンパイアにエキドナ。血や生気を吸う様々な力を持つ種族に、下半身は蛇。上半身は美女である魔物の母とされるもの。伝承でもよく聞く程の存在が目の前に……。

 私自身が外の世界をあまり知らないから、魔物の国の人達がこんな風に普通に居るのも不思議な感覚……。

 あ、そうだ。名前は知られていたけど、一応名乗って置くのが礼儀だよね。


「ま、“魔専アステリア女学院”のティーナ・ロスト・ルミナスです! 今日は団体戦なので試合はしませんが、個人戦の時に当たったらお手柔らかにお願い申し奉ります!」

「そうか。……しかし、なんか前半と後半の言葉遣いが違くなかったか?」

「私の国の訛りが移ったな。ああそうだ。聞かれてないが、私も名乗っておこう。私はルーナ=アマラール・麗衛門レモン。侍だ」

「そして我がジュピター・ユピテル。この大会で最強の名を欲しいままにする予定の超新星だ」


其方そなたらの事も勿論把握している。手強そうな相手だ」

『もし当たったら容赦はしないから……それに、ユピテルさんだったかしら? 貴女の祖先と私の祖先は色々と因縁があるのよね……』

「因縁……?」

「フッ、そうか。主は……成る程な」

『そう言う事よ』

「??」


 よく分からないけど、家系の事情的な感じで神話の出来事が本当にあったとされるこの世界では、祖先由来の何千年も前の因縁が珍しくないみたい。

 私は完全に蚊帳の外だけど、他の人達と比べて掘り下げる部分が無いから逆に都合が良いかな。


「けど、不安だったから知り合いが増えて良かったよ~。これからよろしくね! シュティルさんにキドナさん!」

「……! フッ、これから敵となる私達を相手にその態度、面白い奴だ」

『ふふ、可愛い。けど年齢的にはシュティルと同じなのよね。私の方が年上だから先輩とかお姉様って呼んで♪』


 どうやらシュティルさんは私と同年代で、キドナさんが一つ上みたい。

 レモンさんにユピテルさんにシュティルさん。同年代で強い人達は沢山居るんだねぇ。魔物達の年齢は種族にもよるけど人間と少し違うから、人間換算で同年代って事だね。


「ティーナ。君は今日はまだ出ないのだったな。では、個人戦を楽しみにしている」

『私が相手でも負けないわよ』

「はい! その時はよろしくお願いします!」


「ああ。そしてルーナ=アマラール・麗衛門。ジュピター・ユピテル。君達とは団体戦で当たる可能性もある。此方も楽しみにしておこう」

「そうであるな。その時は受けて立つ」

「勝つのは我ら人間の国だがな」

『自信満々ね。負けるつもりはないわ』


 私とレモンさん、ユピテルさんに数言だけ交わしてシュティルさん達はこの場を離れる。

 スゴい人達が集まった大会。それが此処なんだ。その中に私が居るのも恐縮だけど、来たからには負けられない……!

 まあでも今日は団体戦だから観戦に回るんだけどねぇ~。ステージには来れなくても、専用の観客席だからボルカちゃん達と一緒に見れるの!

 でもただ満喫するだけじゃダメだよね。他国の情報は何も知らないから観戦すら貴重な情報源! やるぞー!



*****



「“フレイムノヴァ”!」

『ガギャア!』


 巨大な火球が放たれ、それを口から吐いた轟炎で受け止める。二つの炎はぶつかり合い、ステージ全体を焼き尽くした。


「“爆風砲”!」

「“烈風衝”!」


 一方では暴風の弾丸が暴風の壁に阻まれて大きな竜巻が起こる。

 一つ一つの破壊力が規格外。既にステージの地形が変わる程に大きなバトル。

 一人一つが最強クラスの団体戦。特筆すべきは──


「“ライトニングスラッシュ”!」

「やったぞ! 一気に斬り伏した!」


「やれやれ……此処まで来ていてヴァンパイアを見た事がないのか? 傷くらいすぐに癒える。そして……」


「「……!」」


 シュティルさんが天へ手を翳し、ステージ全体の天候が変化する。

 念力にも近い力。天候その物を変える程の実力者。


「既に貴様らは終わりだ」

「「……ッ!」」


 その天候を手中に収め、二人の近くで解放。ステージ全体に広がっていた暴風が一点に集って吹き飛ばした。

 手も触れずに実力者を倒すなんて、これが古来より魔物の王とされるヴァンパイアの実力……!

 団体戦のルールはルミエル先輩達の時と同じ感じ。シュティルさんのチームが順調に勝ち上がりそうだね。


───

──


「どの試合もレベルが高いや……」

「だろーなー。初手から上級魔法の応酬だ」


 一回戦が終わり、ボルカちゃん達の元に向かった私は感想を述べる。

 序盤も序盤でこの迫力。今は観客席だから気が楽だけど、団体戦後は個人戦でこの人達と戦うんだよね……。今から不安……。


「ハハ、見事に意気消沈してんな。ティーナ。ほらほら、リラックス。リラーックス」

「ひゃう!?」


 カチカチに固まっている私の首筋が撫でられ、ビクッと体が反応して変な声が出る。

 周りの観客達は試合に夢中だから聞かれてないよね……。

 唐突な行為にビックリした私を見て笑い、ボルカちゃんは言葉を続ける。


「このレベルの中の一人には確実にティーナも入っているんだ。それに、ルミエル先輩に比べたら全員が大した事無く思えるさ!」

「た、確かにルミエル先輩に比べたら少し劣ると思うけど……私は更にそれ以下で……」

「大丈夫だって。全員年齢は同じくらい。経験の差もたった一年で此処まで上り詰めたティーナならあってないようなもんだ! アタシを信じろ!」

「ボルカちゃん……。うん……」


 励まされ、少しは緊張が解れる。さっきも気合いを入れてたもんね。高レベルな試合を目の当たりにして沈んじゃっていたけど、そこの一人に私の存在もあるんだ。

 その手前、団体戦の期間中は情報収集と戦略を練るのに集中して、最善策で挑もう!


 ──その後、何日かに分けて行われた団体戦は魔物の国が一位、人間の国が二位、魔族の国が三位、幻獣の国が四位と言う形で決着が付いた。


「むぅ、してやられてしまったな」

「“ゼウサロス学院”と“神妖百鬼学園”は好成績を収めたが、他のチームが苦戦してしまったな」

「強かったもんね~。魔物の国。特にシュティルさん率いる“神魔物エマテュポヌス”」


 全体的には惜しいって感じ。魔物の国との差も僅差。ちょっと手を加えれば人間の国はルミエル先輩が中等部の時以来の優勝を飾れたんだって。

 団体戦は残念な結果だったけど、個人戦では私の出番! 基本的に総合的なポイント制だからなるべく頑張るよ!!

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