表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
141/457

第百四十一幕 尾行

 ──“休日”。


 数日後、学校がお休みの日に私達は取り敢えずで私の部屋に集まっていた。

 やる事はもちろん、ルミエル先輩の尾行!

 だけどあの最強のルミエル先輩を尾行するとなったら一筋縄じゃいかないよね。立場上後を付けられるのも慣れてるだろうし、ちゃんと策を練って行動する。

 今はそれについての話し合いが執り行われる。


「取り敢えず、ある物持ってきて変装の準備は出来たぜ」

「ルミエル先輩の外出時間も把握したわ」

「流石の情報力……。これで行動はバッチリだね」

「それでは次なる作戦についてですわね。と言っても変装して後を追う……という事には変わりませんが」


 ルミエル先輩の尾行に伴い、下準備は終えている。話し合いと言ってもそこまで仰々しい感じでもないもんね~。

 真面目には取り組むけど、割と気楽に行動している。見つかる訳にはいかないからその辺は考慮してね!


「ま、やり方は変装してルミエル先輩が寮を出た頃合いにアタシ達も追うという単純なものだな。ぶっちゃけそれ以外に思い付かないし」

「私達が準備出来てやれる範囲と言うのが限られちゃうから、これもまた仕方無いよね~」

「そろそろ外出の時間帯ですわね」

「ティーナさんの部屋は門の方も見易いし、ルミエル先輩の影が見えたら行きましょうか」


 最初から尾行されている事に気付くなら裏門から出て行くかもしれないけど、流石に現時点ではそんな事もしないよね?

 ウラノちゃんが調べた外出時間までもうすぐ。今から一時間以内に門を出なかったら転移の魔道具か裏門から出ていった事になるからほとんど詰み。

 この時点でもうドキドキだね……。


「……! 居たぜ。ルミエル先輩だ!」

「ホントだ! 流石ボルカちゃんの視力!」


 そんな事を考えていると門に向かうルミエル先輩の姿が。

 私達は変装し、植物魔法でツタもちいて窓から外に出た。

 寮内だと変装した姿の方が目立っちゃうもんね。なるべく普通の道は外れる感じ。でも今日は休日だから私服の子も結構居て、マスクやサングラスをしなければ案外大丈夫そう。……と言うかこれとかは本当に必要なのかな。

 先輩が門を出たのを確認し、その後を追う。


「ホントにこれ付けるの……?」

「そりゃ尾行って言ったらマスクとサングラスだろーぜ!」

「そうなの……? 逆に目立っちゃうんじゃ……」

「バレちゃダメなのは尾行者の顔だぜ。服装も普段の私服とは少し脚色を変えてるし、顔さえバレなきゃ正体は明かされないのさ」

「そ、そうだったんだ……!」


「あまりボルカさんを本気にしちゃダメよ。マスクくらいは良いかもしれないけど」


 何はともあれ、先輩の後を追う。

 一応サングラスとマスクをして。そして私達が四人固まってたらまた目立っちゃうからちょっとバラける陣形で行動を起こす。

 ルミエル先輩は最初に小さな商店へ入っていった。

 ここには私とウラノちゃんが行ってみる。なぜならボルカちゃんとルーチェちゃんは他の人より目立ちそうだから。見た目とか金髪縦ロールとか特徴的だもんね。大型店じゃないとそうなっちゃう。


「何してるのかな……? ウラノちゃんなら口の動きとかで読めない?」

「読唇術は流石に使えないけど、店員さんの態度から普通のお買い物ではないわね。商談みたいな事かしら。上手くいったみたい」


「ふふ、ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね♪」

「はい! あのルミエルさんから支持を頂けるなら今後も──」


 休日なのに全然休んでない……。ルミエル先輩の話術で上手く引き込んでいるけど……なんだろう。とにかくスゴい。


「それでは、ごきげんよう」

「また是非是非いらしてください!」


 ルミエル先輩はお店を出る。

 特に大きな情報は掴めなかったかな。今回の私達の目的はあくまでルミエル先輩が暇な時にサプライズダイバースを開くという事。

 だから見つかっちゃったらいけないし誘える日を探らなきゃならない。まだ今日は始まったばかりだし大丈夫だよね。


「あ、ルミエルだー!」

「こら! ルミエルさんでしょ。すみませんね。ルミエルさん。子供がつい……」

「いえいえ、大丈夫ですよ。私は有名人ですものね。ボク。今度から目上の人には礼儀正しくするのよ。それと、お父さんとお母さんを大事にね。お姉さんとのお約束♪」

「う……うん! ルミエルお姉さん!」

「あらあら、この子ったら」


 ス、スゴい。出会って間もない子供の心も掴んじゃった。

 元々有名人だから道行く人に話しかけられる事もよくある様子。その全てを完璧な対応で相手取り、ファンを続々増やしてる。逆にもう怖い!


「流石だぜ。ルミエル先輩。全く隙が無い……!」

「隙を見つけるのが目的じゃないよ……」

「けど、やっぱり遠いと言葉は聞き取れないわね。もう正体明かして空いてる日を直接聞かない?」

「それではサプライズになりませんわ。それとなく誘い、偶々(たまたま)空いてる日に私達の特別ダイバースが開催される。あら驚き。それがプランですの」


 尾行してから数時間。街の人達とお話ししたり、ちょっとした建物に入って何かを円滑に進めたりと様々。

 後は普通にお店に入ってお買い物をしたりもしてるね。

 そろそろお昼に差し掛かる頃合い、私達は手頃なサンドイッチと持ち運べる飲み物を購入して済ませた。


「あ、これも結構美味しいかも」

「手っ取り早く食べれるのが売りだけど、それで不味かったら商売にならないしなー。早い、安い、美味い。そしてお手軽。休日にも働いている人は多いし、そう言う商品が人気なんだ」

「そうなんだ~」


 お手軽なお昼ご飯はとても美味しかった!

 そこから更に数十分、ルミエル先輩は今度は図書館に入っていった。


「図書館。お勉強でもするのかな?」

「ま、ルミエル先輩受験生だしな。一応。あ、でももう超一流大学に既に受かったって風の噂で聞いたな」

「超一流って曖昧……学校名も出てこないレベルの噂なの……」

「けれどそれは事実よ。情報を集めてる時に私も聞いたもの」

「そうなんだ~。やっぱりルミエル先輩ってスゴいや」


 だったらなぜ図書館に入ったのか。

 まあ勉強は体調が崩れない範囲ならいくらしても損は無いけど、既に合格していてその上で更に積むなんて流石としか言えないよ。

 私だったら余裕が出来たらすぐに遊んじゃうかもしれないから! ウラノちゃんはそもそもで読書が好きだから本を読むと思うけどね~。

 とにかく尾行を続けよう。


「……」


「「…………」」

「「…………」」


 図書館では静かに過ごす。だから私達は散り、四方からルミエル先輩を囲う形で陣取った。

 多分視線とか気配とかには気付かれちゃうからたまにチラッと見る程度でとどめ、基本的には本を読み進めてるよ。

 私が取ったのは植物図鑑。へえ~。こんな種類もあるんだね~って、ついつい夢中になっちゃったり気は抜けない。

 そして一時間程読書をしていたルミエル先輩は本を返却して図書館を出る。この短時間で難しそうな本をあんなに読んでる……スゴい。なんか今日の私スゴいしか思ってない……。


「中々尻尾を出さないな……!」

「ボルカちゃん。趣旨変わってる」

「でも実際そうね。今のところ普通に過ごしてるだけ。本筋のいつが空いてるとかは全く分からない状態だわ」

「それに案外一人で行動していますわね。人気者なので自然と人が集まってきてそんな風には見えませんけど」


 ルミエル先輩の今日一日の行動をまとめると、何もおかしなところはなかった。

 商談をしているような様子はチラホラあったけど、全部が全部丸く収まっている。そもそも目的は空いてる日を探るだけなのになんか斜め上の方向に行っちゃってるような……。ボルカちゃんもノリノリだもんね。


「あら、イェラじゃない」

「む? ルミか。奇遇だな」


「……!」


 すると、ルミエル先輩はイェラ先輩と出会った。

 今の時間は正午から二時間くらい。イェラ先輩の空きを探るのも同じ目的だから都合が良いかも!


「どうしたのかしら? 今日は“日の下(ヒノモト)”で講師をするって言ってたのに」

「それが終わって今帰って来たところだ。皆筋が良かったぞ。どうだ、ルミ。これからカフェにでも寄って茶でもたしなむと言うのは」

「あらいいわね。読書して来たのもあって、私の体が糖分を欲しているもの」

「そうか。丁度良かった」


 スゴい……会ってすぐにカフェに誘って一緒に行動している……。

 あまりに自然過ぎて一瞬気付かなかったよ。案外誘えばダイバースに来てくれるのかな……?


「しかし、その様子だと今日も働き詰めか。たまの休日くらいのんびりと過ごせば良いものの」

「あら、そう言う貴女こそお休みの日なのに講師に行っちゃってるじゃない。たまのお休みなのだからゆっくりと過ごせば良いのに」

「鍛練もまた趣味だからな。私はこれで良いのだ」

「ふふ、相変わらずね」

「お互いにな。今度一日中暇なのは再来週の休日か」

「そうね。卒業式の前だから特に何の用事も入れてなかったわ。何をしましょう」

「休むと言う選択肢は無いのか」

「何かをしていないと落ち着かない性分なの」

「フッ、それもお互い様か」

「そうね♪ でも折角だからその日は何も予定は入れない事にしておくわ。残りを噛み締めたいものね」


「「……!?」」

「「……!?」」


 すると、しれっと次に空いてる日が決まった。

 再来週、卒業式前のお休みの日がルミエル先輩とイェラ先輩の空いてる日!

 私達は慌てて顔を見合わせる。


「ボ、ボボボ、ボルカちゃん……!」

「決まったな。じゃあ早く帰ろうぜ。そうしなきゃバレる可能性がある……!」

「二人とも焦り過ぎ……気持ちは分からなくもないけど」

「そうですわね。早く寮へ戻り、如何様なゲームを開催するかの会議をしましょう」


「「「「おー……」」」」


 四人で話、四人で返事をする。

 ゆっくりと背を向けて離れ、逃げるように寮へと戻った。


「ところで……なぜ後輩達はルミを尾行していたんだ?」

「ふふ、さあ。何かしらね。寮を出る時から尾行されてたわ。あの慌て振りを思うに目的は果たしたみたい。あの子達が行動を起こした直前の私達の会話から察するに、私達がフリーの日を探ってたんじゃないかしら」

「やれやれ。何を企んでいるのか」

「可愛い後輩達ね♪」


 ルミエル先輩達の空いてる日は決まった。後考えるのはサプライズダイバースの内容くらい!

 しかも何の予定も入れないって言ってたから完全にフリー!

 私達は寮へと戻り、先輩達へのサプライズを改めて考えるのだった。

 決行は再来週、卒業式前の日!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ