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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
135/457

第百三十五幕 代表決定戦・個人の部

「また負けちゃったね~」

「だなー。この試合に勝てば代表戦も当確だったのに惜しかったぜ!」

わたくしの光魔法の威力がもう少し高ければ良かったんですのに~!」

「私がもう少し早く倒しておけば良かったわ。ミノタウロスじゃなくて初手から龍で仕掛ければ、ゴールした相手がボロボロの状態なら魔力が尽きていても勝てたかもしれなかったのに」

「私がユピテルちゃんに捕まらなければ~!」


 試合の後、他のチームの観戦をしながら私達は結構気楽にお話していた。プチ反省会だね。

 悔しさはあるけど、戦いには勝てたから割とそう言う考えになっちゃうのかも。

 そんな風に話していると治療を終えた様子のユピテルさんがやって来た。


「“魔専アステリア女学院”の者達よ。先程は見事であった。我らはやられてしまったよ」

「いやいや。負けたのアタシ達だから」

「いや、ルールによって我らが結果的に勝利しただけ。先程の我らを見、我らが勝利したと思う者の方が少なかろう」

「いやいや、ダイバースではルールが全て。それにのっとってアタシ達が負けたならそれは負けだよ。それにユピテルは一人でアタシ達全員に挑んでの結果だしさ!」

「いや」

「いやいや」


 お互いに譲り合いの応酬。

 私達は仕方無いって考えているけど、ユピテルさん的にはそれが納得いかないみたい。

 でもその気持ちは分からないでもない。もし私達の立場だったら全員がやられたのに勝利という事に疑問も浮かんじゃうかもしれない。

 けどそう言うのも含めてのダイバース。このままユピテルさん達が勝ち上がれば私達の強さの証明も出来るから頑張って欲しいなー。

 それを話してみたところ、


「フム、成る程。確かにこのまま我らが残れば必然的に君達が凄まじい強さを誇っていた事になるな。事実そうなのだが、よし、相分かった。君達の分まで勝利を届けるとしよう!」


 との事。

 敗者側が勝者に託すのもまたトーナメントの醍醐味だね。

 とは言え、あくまで団体戦で負けちゃっただけ。個人戦の部ではまだ私とボルカちゃんが居る。“魔専アステリア女学院”の一年生もこんなにスゴいんだぞ! って事を証明しなくちゃね!


「では明日以降の団体戦、しかと見ていてくれ」

「オッケー!」

「頑張ってね!」


 今日の試合はこれで終わり。残りは明日と明後日とで団体戦も終了。

 本来なら私達は個人戦当日まで会場に来る必要は無いんだけど、レモンさん達にユピテルさん達が勝ち残ってるから観戦はしよーっと。

 プレイヤーは特等席で見れるからお得なんだ~。


 それから今日の残りの試合も終わり、私達は学院へ帰る。

 ユピテルさんとレモンさんはここに泊まって明日の団体戦でも朝練をしたりするとか。

 次の日、その次の日も終わって二人のチームは勝ち残っていた。流石だね。

 これで団体戦の部は終了。いよいよ個人戦へと差し掛かる。



*****



《さあさあ! 多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)!! 昨日さくじつまでの団体戦は如何でしたかァーッ!? 聞くまでもありませんね!! 大盛況の大盛り上がり!!! ドッカンドッカン会場が沸き立ちましたァァァ!!!》


「「「ワアアアアアァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!」」」


 声だけで会場は大きく揺れ、ちょっとした地震みたいになる。

 慣れてるけどそれ程までの盛り上がり。音声伝達の魔道具を使ってるとは言え、司会者さんの声量もよく持つよねぇ。


《しかァし!! 今日も世界は熱狂の渦に包まれていますよォ!! そうです!! 今日は多様の(ダイバース・)戦術による(タクティクス・)対抗戦(ゲーム)の新人戦!! 個人の部!! 団体戦では見る事の出来なかった参加者プレイヤーや一風変わった試合が見られまァーッす!!!》


「「「ドワアアアアアァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!」」」


 その言葉と同時にまた大きな歓声が巻き上がる。

 試合前のこの緊張感。会場の雰囲気には慣れたけど、ドキドキする感覚には慣れないね~。


《──それでは! 早速やって参りましょう!!》


 それから少し経て司会者さんによる話は終わり、選手達は試合会場へと並ぶ。今回はクジ引きで決めるらしく、そこからのトーナメント式。誰と当たるもクジ運次第。一回戦からレモンさんやユピテルさんは避けたいところ。全員がとてつもない強者なのは分かり切っているけど、その中でも特筆した人達は避けたいよね。

 私の番がやって来てクジを引く。所属と番号はCブロックの7番。まだ隣には誰の名前も入っていない空欄の所に書き込まれた。同じCブロックの5番か6番。もしくは8番が一回戦か二回戦の対戦相手になるね。


「うげぇ、俺の相手はルーナ=アマラール・麗衛門だ……」

「私の相手はジュピター・ユピテル……憂鬱~」


 すると近くの人達が対戦相手についての話をしていた。

 レモンさんとユピテルさんのクジには当たらなかったね。少なくとも一回戦から負ける危険性が高い存在は二人を除外出来た。

 そして次にクジを引いたのはエメちゃん。

 彼女が引いた番号は──


「エメ・フェアリ選手! Cブロックの8番!」

「……ぇ……」

「あちゃ~……」


 私の一回戦の相手。

 エメちゃんは口を塞ぎ、私は頭を抱える。

 クジ運無いのかなぁ……。どちらにしても当たる可能性がある相手だけど、せめてお友達とは代表戦が決定してからの消化試合で当たりたかったよ。


「ティーナさん……」

「エメちゃん。こうなったら仕方無い。全力で行かせて貰うよ!」

「はい!」


 引いちゃった物は仕方無い。私達は戦うだけ!

 エルフ族の知能の高さを考えれば、純粋に正面からの戦闘が行われる一回戦で当たったのは私的にはラッキーだったのかもね。

 強敵なのは変わらないけど、やれるだけやってみるよ!

 次はボルカちゃんがクジを引いていた。


「ボルカ・フレム選手! Aブロックの1番!」

「っしゃあ、名実ともにNo.1!」

「それは関係ありません!」


 ボルカちゃんはAブロックの1番。これなら仮に勝ち進んでも私と当たる事は無いけど……。


「ハハ、マジかよ。順調に勝ち進めば──」

「──私と当たる事になるみたいだ。ボルカ・フレム殿」

「だな!」


 レモンさんと同じブロック。

 本当に私達はクジ運が悪いみたい。まさか私もボルカちゃんも友達と初戦の方で当たっちゃうなんて。

 ボルカちゃん、レモンさん、ユピテルさん、エメちゃん。戦いたくない人は四人も居るから誰かとはそうなる可能性は確かにあるんだけど、初戦なのが運の尽きだね……。

 でも文句ばかりは言わないよ。ルールはルール。ちゃんとやる!


《それでは! 抽選も終わりました事で早速試合を始めて行きましょう!! 一回戦はシンプルな力と力の勝負!! 各ブロックに集まりの皆さん!! 準備はよろしいですねー!!?》


 クジ引きが終わり、選手達は各々(おのおの)のブロックに移動。

 ついに始まる。代表決定戦、個人の部。どこまで勝ち上がれるのか。代表戦まで行けるのか。

 私の一回戦の相手はエメちゃん!



*****



 ──“キノコステージ”。


 会場から転移した場所は、色々な大きさのキノコが沢山あるステージ。

 通常じゃ有り得ない大きさの物からファンシーな見た目の物まで様々。キノコは菌類だから、植物とはまた違うんだよね。キノコを操っても何が出来るかは分からないけど、植物魔法の対象外かな? キノコが植物魔法の元となる土、水、風から作れるなら動かせるかも。

 何はともあれ、今はエメちゃんの捜索から入っていかなきゃね。


「うわー。大っきいキノコ……」


 目の前にある、くりけばそのままお家に出来そうな程大きなキノコ。近くにある全体的に赤く、白い斑点があるキノコ。更には菌糸が足みたいになって歩くキノコ……。

 このステージを見て回るだけでも少し楽しい。だけどいつでも動けるように油断はしていないよ!


「……」

「……!?」


 次の瞬間、音も無く後ろからレイピアで奇襲された。

 斬られる直前に感覚で分かったけど、気配とか完全に消してた……! これもエルフの能力……? それかエメちゃん自身の努力の賜物かな。


「防がれた……なら!」

「いきなり仕掛けてきたね!」


 レイピアは樹で防ぎ、エメちゃんはそこから飛び退く。

 バフッとキノコを踏んで胞子が舞い上がり、魔力を込め直していた。


「“サンダー”!」

「出たね。雷魔法……!」


 雷撃が剣尖から放たれ、周りのキノコを破壊していく。

 まるでビーム。出力自体はユピテルさんより低いけど、精密性が高い。的確に狙いが定められている。

 どの道当たれば一堪ひとたまりもない雷。1vs1の戦闘なら乱雑に放つよりその方が良いよね。


「“大樹移動”!」

「……!」


 でも、狙いを付けるという意味なら私も負けてない!

 ママに魔力を込めて大樹を放ち、エメちゃんはそれを見切ってかわす。流石に大木を切り裂く程の出力はまだないよね。

 キノコの中に突っ込み、胞子が散って辺りを埋める。お互いに視界は悪くなったけど、エルフ族は耳も良いもんね。位置の特定は即座にされちゃう。だからこの一瞬の上で準備はしておくよ!


「“樹海生成”!」

「ティーナさんの得意技……!」


 ステージを森で埋め、私のフィールドへと変化。

 これで手数も兵力も増やせる。個人戦では基本的に私が有利なのかも!

 でもだからと言って全てが上手く行く訳ではない。結局は私がやられちゃったら終わりだもんね。あくまで地形として利用するだけで、私自身も細心の注意は払う。


「みんな! お願い!」

「沢山来る……!」


 森その物が動き、エメちゃんへと仕掛ける。

 ツタが伸びて絡み付き、大樹の波が押し寄せる。エメちゃんは雷魔法による身体能力強化で逃れ、一気に迫ってレイピアを振るう。

 私は樹に乗って距離を置くけど、即座に魔力から矢を作って射る。

 遠距離も中距離も近距離も完備の万能型。エルフ族は器用だもんね。その血を引いているエメちゃんにも勿論それが出来る。


「負けないよ! エメちゃん!」

「私も負けません! ティーナさん!」


 お互いに向き合い、狙いを定める。雷と木々が衝突して周りのキノコを撒き散らした。

 私とエメちゃん。ダイバース個人の部、一回戦が本格的に始まった。

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