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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百三十三幕 雷神

「“散雷刀サンライト”!」

「太陽の真逆……!」


 雷が刃のようになって散り、辺り一帯へ降り注ぐ。

 切断力はお墨付き。張り巡らした植物類も次々と切り裂かれていく。


「“遠刀炎剣”!」

「炎の剣を伸ばしたか」


 炎剣に魔力を込めたボルカちゃんはそのまま増幅させ、リーチを伸ばして突き通す。

 ユピテルさんはそれを見切ってかわし、雷による身体能力強化で眼前へと迫った。


「させないよ!」

「フム、植物魔法によるサポートがこれ程厄介だったとは」


 雷は触れただけで大ダメージ。ほんの少しでも当たったら気絶の可能性あり。意識を失っちゃったらリタイアになってしまう。

 なので直接的な攻撃はなるべく防ごうと思う。どんなに速くても、狙いが私達の誰かなら周りを植物で囲めば良いだけだもんね!


「ハッ!」

「騎士……本魔法からなる偽物だが、身に纏っている鉄の鎧の影響で電気は通さぬか」

「そうね。足元へそのまま流れてしまうもの」


 ウラノちゃんが生み出した騎士さんが槍で突き、ユピテルさんは先端を手で抑えて防ぐ。

 そこから更に魔力を込め直した。


「雷が効かずとも腕力で潰せば問題無い」

「やれやれ。流石に電気だけの一点張りで此処までは来てないわね」


 単純に身体能力方面での魔力強化。

 腕力で鉄の鎧ごと頭を握り潰し、魔力の欠片となって消え去る。

 その後方から遠距離攻撃が得意なルーチェちゃんが光球を乱射。辺りを光の爆発で包み込んだ。


(どうしても注意が放ってる者の方へ持っていかれてしまうな。植物魔法によるサポートや広範囲攻撃。聖魔法と光魔法による回復と遠距離技。狙いはどちらが優先か。単純に戦闘をするなら回復を先に潰すのが定石だが、この植物魔法は通常のそれとは訳が違う。特筆すべきは凄まじい範囲。取り除かなければ我の仲間達がゴールへは辿り着けない……まあ我の仲間なれば全てを突破して向かう可能性の方が高いがな)


 ルーチェちゃんの光魔法を受けたユピテルさんは急に話さなくなった。

 何かしらを考え中かな? その間にも仕掛けているけど、思考しながらでもちゃんと攻撃は捌いていた。


「やはり先決は……ヒーラーか」

「……!」

「ルーチェちゃん!」


 狙われたのはルーチェちゃん。今の口振りからして中心的に狙っていく事を決めたみたい。

 そうはさせない!


「“樹術拘束”!」

「一筋縄ではいかないか。多人数戦を選んだから承知していたがな」


 バリバリと放電させるユピテルさんを植物で囲んで拘束。その間にルーチェちゃんは離脱。

 拘束は即座に解かれちゃったけど、やられずに済んだから良しとしよっか。


「てか、ずっと戦ってるアタシを眼中に入れないのは失礼だと思うんだけど?」

「そう言う訳ではない。ただ単に近接と中距離技だけの主の優先順位は下がっていると言う訳だ」

「それが失礼なんだよ!」


 ボルカちゃんが加速して迫り、ユピテルさんを焔で包む。

 炎は雷で弾き、熱と電気が辺りへ散った。

 今のところ正面からあれを防げるのはボルカちゃんくらい。植物魔法でも一時的にはしのげるけど、完全に相手取れるのは彼女だけなの。

 ユピテルさん的に優先順位が低くても私達の一番の主力はボルカちゃんだよ!


「フッ、我にとっての火など雷の追加効果に過ぎん」

「じゃあついでにやられるアンタは静電気以下だ!」

「減らず口を……!」

「お互いにな……!」


 轟炎が燃え広がり、天雷が空を埋め尽くす。

 “ゼウサロス学院”の意向で主神とされるユピテルさんだけど、この光景は正に神々の戦いって感じ。そうなるとボルカちゃんも女神様? 炎を司る戦いの女神様って感じだよね。

 そんな戦闘には関係の無い思考がよぎりつつ気を引き締め、植物を放ってサポート。メリア先輩がそこに風を付与した。


「“サポートウィンド”!」

「“大火大炎”!」

「炎の広がりを更に大きくしたか。だが、容易く突破出来る!」

「つまり受けたらマズイって事だろ!」


 打ち消そうとしないって事は、(イコール)受けたら一堪ひとたまりもないという事。

 だから一点突破で逃れるのを選択した。

 元々ボルカちゃんの炎とはほぼ互角だもんね。サポートで強化された力ならそうなるのも必然。

 抜け出した先にも攻撃は仕掛けてある。


「“設置光球”!」

「地雷……ではないな。此処は空中だ。設置型の光か……!」

「その名の通りですわ!」


 光の中に突撃し、光の爆発に飲み込まれる。

 今までと違って雷の守護は間に合わなかったみたい。つまり直撃。身体能力強化分の防御力はあるとして、ダメージは大きいと思う。


「ぬぅ……今のは厳しいな……! 目の前が真っ白になったぞ……!」

「光ですからね……!」


 そして光の中から姿を見せるは傷を負い、服がボロボロになったユピテルさん。

 確かなダメージと視覚への影響はあったみたい。でも決定的な一撃にはならないね。

 だけど私達が少し優位に立てたかな。


「……! そう言えば……本魔法の者が居ない……!?」

「あ、気付かれちゃった? もうここには居ないよ!」

「成る程。大火と光による目眩まし……魔力を有する植物で気配の探知を鈍らせ、山頂へと向かったのか……!」

「正っ解!」


 全員の力無くしてはユピテルさんの目眩ましも出来なかった。だから先に行けたのはウラノちゃんだけ。

 本人が移動すると見つかる可能性もあるのでユピテルさんに仕掛けると同時に彼女を植物に乗せて行かせたよ。

 後はウラノちゃんに頑張って貰うしかない。私達もなるべく早くユピテルさんを倒して先に行かなきゃね……! 倒せればだけど。


「一杯食わされたという訳か。しかし、我の仲間達も皆優秀。ウラノ・ビブロスが何処までやれるかは分からぬぞ」

「ウラノちゃんだってスゴいんだから! 差し向けた仲間達なんてサクッと倒しちゃうよ!」

「フッ、それの結果が分かるのは今から数十分後、試合に決着が付いた時だ……!」

「そうだね……!」


 ユピテルさんの仲間達が強いのは承知の上。だって代表決定戦にまで勝ち残っているメンバーだもん。それは大前提。

 だけど私達も勝ち残ったメンバー。それに加え、新人戦なので同学年か一歳年上程度。勝てない道理はない……!


「どちらが勝者となるか……!」

「強さ比べだね……!」


 雷が更に瞬き、植物がうねる。

 ボルカちゃんもルーチェちゃんもメリア先輩も居る。ユピテルさんに勝ってみせる……!

 私達の勝負はより白熱し、佳境へと入っていくのだった。



*****



「あら、こんなところで二人も阻まれてたのね。それとも待ち伏せかしら?」

「ウラノ・ビブロス……!」

「ユピテルの包囲網を抜けたか……!」


 ティーナさんの作戦に乗り、植物魔法で先行していた私は“ゼウサロス学院”の人達と出会った。

 周りの草木が凍らされているわね。つまりどちらかは氷魔法か氷魔術の使い手。お陰で楽に登山を完了出来るかと思ったのに結局徒歩で行く事になってしまったわ。

 道中で二人の姿が見えたから避けようともしたけど、乗ってた樹が凍った瞬間に見つかっちゃったから今に至るって訳。

 面倒事はなるべく請け負いたくないんだけれどね。


「だが此方は二人!」

「数の差では有利! データによるとウラノ・ビブロスは実力による目立った実績もなし!」

「つまり、お前一人程度ならどうとでもなるという事だ!」

「悪いが行かせて貰うぞ!」


「面倒ね」


 確かに私にはダイバースに置いて特筆する成績や栄光は無いわね。大体なんとなくでやってるだけ。

 個人戦でティーナさんと戦えたのは悪くなかったけど、本来はガツガツ勝負を挑むタイプでもないのよ。

 でもティーナさん達が落胆しそうだし、それもそれで面倒だから真面目に取り組むとするわ。


物語ストーリー──“ミノタウロス”」

『ブモオオオォォォォッ!!』


「一つ目の手駒は迷宮の番人ミノタウロスか……!」

「相手にとって不足は無し! 一気に打ち沈める!」


 消費魔力もそんなに多くなく、単純に体が大きくて力が強いミノタウロスを召喚。

 私自身も本から取り出した剣を装備して構え、向こうの二人も臨戦態勢に入る。


「剣か……! ミノタウロスと剣の同時顕現……!」

「都市大会の録画から剣術を扱える事も心得ている。特に問題は無かろう」

「そう」


 情報は知られているわね。けど別に知られたところで何の問題も無い。

 更に魔力を込め、本の鳥を召喚させた。

 同時に顕現出来るのは二つ。剣は魔力消費も少ない上に一度生み出せば独立するから更にもう一つを作れる。と言っても説明がややこしいわね。

 単純に言えば召喚可能な物が増えてるって事よ。


「さて、数の差では有利ね」

「有象無象が増えたところで問題無い……!」

「構わず仕掛けるぞ! “アイスロード”!」


 魔力が込められ、足場が一気に凍り付く。

 流石は代表決定戦まで残ったチームのプレイヤー。一挙一動で地形その物を変えるわね。


「まあ、力の前には氷はあまり影響が及ばないけれどね」

『ブモオオオォォォォッ!!』


 棍棒を振り下ろし、氷がバキバキと音を立てて破壊される。

 足場が悪いと動きにくいもの。自由にさせて貰うわ。


「……! 私の氷が、薄氷が如く一瞬で粉砕された……!」

「此処まで勝ち残った選手。何もおかしくはないさ! “ウィンドブロー”!」


「壊した氷を風に乗せて……成る程ね。そう言うコンビ」


 ミノタウロスが割った氷はお仲間が風魔法で吹き飛ばし、サスツルギのように向かって来る。

 私の元に降り掛かる物は本の鳥が自動的に防御。大凡おおよその戦い方は把握したわ。この二人には勝てそうだけど、残りの二人はフリーダム。早めに決着を付けないと負けてしまうわね。


「さっさと終わらせましょうか」

「全てを防いだか……!」

「それも予想通り。構わず仕掛けるのみ!」


 風が吹き抜け、周りがまた凍り付く。

 寒さで感覚も鈍くなってしまうわね。おそらくこれも狙い。残りの仲間達がゴールするまでの時間稼ぎが大まかな目的と言ったところかしら。

 でもそうなると、未だにティーナさんの仕掛けた植物の防壁は解かれていないという事。勝ち筋はまだ残っている。

 私と“ゼウサロス学院”の二人組の戦闘。面倒だけど、早期決着が求められるわね。やるだけやってみるわ。

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