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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
132/457

第百三十二幕 登り詰めろ! 山頂登頂ゲーム!

 初戦を突破した私達は、そのまま順調に二回戦、三回戦も勝ち上がり、いよいよこの試合に勝てば代表入りも見えてくるものとなった。

 そんな私達の相手は──


「とうとう会えたな。“魔専アステリア女学院”の者達よ。待ちわびたぞ」

「そんなに深い因縁ありましたっけ……」

「あの様に接した夏の大会で戦えなかったのだ。遺恨は色々とあるだろう」


 ──“ゼウサロス学院”。

 ジュピター・ユピテルさん的には結構因縁がある感じみたい。深い意味は無く、単純に前大会で戦えなかったから。

 意外にもそう言う風に思って貰えてたんだね。関わる機会も無かったからユピテルさんは私達にあまり興味が無いって思ってたよ。


「手加減はせぬぞ。しかし良い勝負にしようではないか」

「はい。精進します……!」


 ともあれ試合が行われるのでやる事は変わらない。相手が強敵なのも、人間の国代表レベルなのも承知の上。

 今まで以上に気を引き締めて挑まなきゃならない相手だね。


《それでは第四回戦! 第二試合!! “魔専アステリア女学院”vs“ゼウサロス学院”!!! “登り詰めろ! 山頂登頂ゲーム”!!! スタァァァトォォォ━━ッ!!!》


「「「ドワアアアァァァァァ━━ッ!!」」」


 司会者さんの言葉と同時に私達は転移。

 “登り詰めろ山頂登頂ゲーム”とは一体なんなのか。

 名前の響きからしてレースゲームの登山バージョンみたいな感じかな。

 転移を終え、ブワッとした清涼な風に包まれ、髪を抑える私の目の前には大きな山岳地帯が広がっていた。

 青天井の下、澄んだ空気に青々しい森林がそこにある。

 眼前の山の高さはどれくらいなんだろう。少なく見積もっても標高三〇〇〇メートルはありそうな程だよ。


「今回は山登りか。メリア先輩かビブリー。ティーナが先に登頂すれば勝てるんじゃないかー?」

「そんなに単純にはいかないと思うけど……でも移動術にけた私達の誰かが行くのは良さそうだね」

「そう言う訳だな!」


 メリア先輩のほうき移動やウラノちゃんの召喚する乗り物。そして私達の植物魔法。

 移動に有利なのはこの三つのいずれか。なのでそれをもちいて山頂を目指すのが得策かな。


「そんじゃ早速──」

「我と戦って貰おうか。“魔専アステリア女学院”の者達よ」

「「「…………!?」」」


 行こうとした瞬間、ユピテルさんが私達の前に立ちはだかった。

 居場所がもう特定されちゃったって訳……! 前のレモンさんと言い、多分代表決定戦じゃ魔力とか気配とかから相手の居場所を特定するのが得意な人は多いんだ。

 ルミエル先輩やイェラ先輩も魔力や気配から相手の場所を見つけてたもんね。代表クラスになると必須スキルなのかも。


「此処にアンタが一人で来たって事は……仲間達は先行させて先にゴールしようって魂胆か。アンタ一人でアタシ達全員を足止めして……!」

「そんなところだ。夏に戦えなかった分、今此処で我の力を振る舞ってやろう」

「先にゴールはさせないよ!」


 ママに魔力を込め、植物を辺りへ展開。山全体を包み込み、至るところに意思を持った植物を顕現させた。

 前に見たスライムを参考にしてみたよ。魔力が水溜まりとかに募る事でさながら生き物のようになる性質。それを植物に付与する事で自動的な迎撃防衛システムが形成されるって訳。

 これで“ゼウサロス学院”の人達の足止めもしばらくは出来そう。全員が全国レベルの実力者だから時間の問題かもしれないけどね。


「無駄な足掻きを。どの道我に敗れ去るのだ。決着を遅めたところでどうとでもなろう」

「それについては、やってみなくちゃ分からないっしょ!」


 ボルカちゃんが魔力を込めて身体能力を高め、炎剣を形成してユピテルさんとの距離を詰め寄る。

 彼女はその動きを見切り、ボルカちゃんの炎剣を魔力の障壁で受け止めた。

 そこ目掛け、ルーチェちゃんが仕掛ける。


「“マシンガンシャイニングボール”!」

「厄介だな」


 無数の光球がユピテルさんの体を飲み込み、連続した爆発を巻き起こす。

 その間にメリア先輩はほうきへと跨がっていた。


「そーれ!」

「させるか!」

「あれれー? あんなに爆発を受けて動けるんだー」


 風を込めて飛び立とうとした瞬間に魔力のロープによってほうきが絡め取られ、メリア先輩は自由に動けなくなった。

 その隙も突いて私は植物魔法に乗り、先へ行こうとするけど動こうとした瞬間に植物が切断される。

 誰一人として通す気は更々無いみたい。


「ワザワザやって来たのだ。冷たくあしらわず相手をして貰おうか!」

「こりゃ、倒さなきゃならないらしいな」


 バリバリバリと青白い稲妻を放出して威嚇する。

 雷魔法……と言うよりは魔術やそれに準ずる異能かな。触媒にしている物は無いし。そんな強力なモノを使える相手だったんだね。

 雷使いならエメちゃんも居るけど、また勝手が違うと思う。


「“ゼウサロス学院”の主神として主らを打ち倒そう……!」

「ハッ! 上等だ!」


 雷が放たれ、ボルカちゃんは炎で守護。私は全員を植物で覆って影響を防ぎ、ルーチェちゃんは更に魔力を込めていた。


「“包囲光球”!」

「光魔法。熱と衝撃が主な力。しかしこの神聖な気配。従来の属性は“聖”か」

「気付かれましたの。あまり関係無いですけれどね!」


 当然のように洞察力も高い。

 取り囲む光が爆発を起こして辺りには衝撃波がほとばしる。

 その中をいかづちが駆け巡り、光の爆発は雷によって掻き消された。

 どちらも実体という実体は無い力だけど、元が魔力だからぶつかれば打ち消し合うよね。


「邪魔はさせないよ! “ダウンバースト”!」

「風は雷の友であろう!」


 メリア先輩が重い暴風を落とし、ユピテルさんはそれも守護。風の隙間を稲妻が突き抜けて上空のメリア先輩をかすった。


「……ッ!」

「メリア先輩!?」


 流石の雷。掠っただけでメリア先輩の体へ大ダメージを与えるなんて。

 冬場の静電気だけでも痛いもんね。あの範囲となるとそれだけで意識を失い兼ねない。


「戦力は減らせませんわ! “ホーリーヒール”!」

「……! 痺れが取れてく……ありがとー! ルーチェちゃーん!」

「いえいえですわ! メリア先輩!」


「フム、まずはヒーラーから倒すのが定石だったか」


 意識が飛びかけたメリア先輩はルーチェちゃんが迅速に治癒。ユピテルさんはそちらに意識を向けるけど、その隙を私は見逃さないよ!


「“聖樹の行進”!」

「……! 樹の波か……!」


 ステージ全体に張り巡らせた木々とはまた別に、大量の樹をユピテルさんへ押し付ける。ルーチェちゃんの余波で生じた魔力を借りて聖属性も付与。

 動きさえ止めればメリア先輩かウラノちゃんが抜け出す隙も生まれるもんね。私は足止めに集中した方が良さそう……!


「先に行ってください! メリア先輩!」

「OK! そうす──」

「させぬと言ったろうて!」

「「……!」」


 すると飲み込んだ筈のユピテルさんが周りの植物を雷で焼き切り、一瞬にしてメリア先輩の前へやって来た。

 雷魔術による身体能力強化と切断力が影響したんだ。


「雷使いは大抵速いってのは、アタシも承知しているよ!」

「ほう、速いな。ボルカ・フレム」

「そっちが雷ならこっちは炎だからな!」

「炎のジェット噴射と雷速なら雷の方が速かろうて」


 メリア先輩への阻止をボルカちゃんが防ぐ。

 炎と雷が衝突して広がり、その周りを植物が囲んで動きを抑制する。先輩かウラノちゃんが行ける隙を何とか作り出さなきゃ。


「迅速な対応だが、まだまだ我には追い付けぬぞ!」

ーか、その速度があんなら一瞬で山頂まで行けそうな気がするんだけど、敢えて行かなかった訳か。アタシ達を舐めてんな?」

「舐めてなどいない。今回のルールがなんであれ、プレイヤー同士の戦闘が許可されている物ならば我は真っ直ぐお主達の方へ向かっていた。同年代の強者とは一戦交えたくなるのが戦士のサガよ」

「そうかよ。……って、同年代!? 十二、三歳でそんな話し方……。レモンと違って訛りとかでもないよな?」

「“ゼウサロス学院”の主神を務めるに当たり、それっぽく話そうと思ったのだ」

「ほえ~」


 ユピテルさんは同年代だったんだ……。レモンさんと言いユピテルさんと言い、同年代には思えないような人が多いような……。ついこの間までは初等部だったって事だもんね……。このなりで……。

 そしてしれっと植物の包囲網はまた焼き切られていた。行こうとしたメリア先輩やウラノちゃんも雷の網で阻まれてるね。本当に行かせる気は無いみたい。


「こうなったらみんなでまとめて相手にするしか無さそうね。物語ストーリー──“騎士ナイト”」

「そう言う事かな……!」

「厄介ですわ……!」

「アタシは元々そのつもりだぜ!」

「私も……!」


「本魔法からかる召喚術に辺りを吹き荒れる暴風。天を包む光に燃え盛る炎、そして周囲を覆い尽くす無尽蔵の植物。フッ、思えば風魔法と炎魔法以外全てが特殊な力か。“魔専アステリア女学院”よ。流石の名門校。面白い物を見せてくれる……!」


 そう言い、ユピテルさんは放電する。

 青白い稲妻が山岳地帯にほとばしり、青い晴天の空の下に雷警報発令と言う珍妙な光景が作り出された。

 この天気の良さも地味に厄介だね。雷なんて元々反応する事すら出来ないのに太陽光に掻き消されてより見えにくくなっちゃってる。

 ただでさえ強敵なのにこの環境。植物魔法で“ゼウサロス学院”の人達を足止めしている間に決着を付けられれば良いんだけど……。

 もちろん、私達が勝つ方向で。


「さてやろうぞ。神の元に集いし挑戦者達よ!」

「いや先に仕掛けてきたのアンタ!」

「神って……雷と役職の主神を掛けたダブルミーニングかな?」

「役に成り切ってるとはいえ、相当ですわね……」

「別に良いんじゃないかしら。人それぞれよ」

「そっちが雷神なら私は風神だよ!」

「メリア先輩も乗っかっちゃってる……」


 ゴロゴロと鳴り響く青天の霹靂。生み出しているのはユピテルさん自身。

 強敵なのは分かり切ってる事。依然として油断はせずしっかりと狙って行くよ。

 “魔専アステリア女学院”vs“ゼウサロス学院”。主神一人と私達全員の戦闘が始まった。

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