表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
125/457

第百二十五幕 プレゼント

 ──“ルミナス家・パーティー会場”。


 準備を全て終えた頃にはすっかり日も暮れていた。いよいよパーティーが開催。

 時間的にも今が頃合いって感じかな。見ればお庭の方までイルミネーションや装飾が広がっている。私達が料理している間にここまで進めてたんだ。

 ふふ、すっかりお屋敷が見違えたね。


「それでは、僭越せんえつながら光魔法使いの私がライトを灯しますわ!」

「いいぞ~!」「お願ーい!」


 誰が光を灯すのか。それは光魔法が使えると言う理由からルーチェちゃんの役目になった。

 魔力を通して点けるタイプなのでルーチェちゃんはそれに魔力を込める。

 部屋を暗くしてルーチェちゃんがスイッチを入れ、イルミネーションがライトアップされる。──瞬間、パーッと一気に全体が明るくなった。


「ピカピカしててキレイー」

「ああ。暗くなってきたからこそ映えるな~」


 温かなライトはとても綺麗で落ち着く光景。ママと一緒にパーティーした時の事を思い出す。


【わー……キレイ!】

【ええ、そうね。これから毎年パーティーの時はこの飾り付けをするのよ!】

【うん! ママ!】


 懐かしいなぁ……。ママが■■くなってから……じゃない。お人形さんの中に入ってからこんなに大規模な装飾のパーティーはしなくなったもんね。だからそんな気持ちになっちゃったのかも。

 でも今はみんなが居る。だから寂しく……あれ? 私は最初から寂しくないよね。ママはちゃんと居るんだもん。

 何を思ったんだろう。取り敢えず今は楽しいって事!


「それではこのムードの中で食事にでもしますか?」

「良いですね。ケーキもあるのでしょう? それではロウソクに火を灯して吹き消さなければ!」

「それはお誕生日の作法です事よ」

「「「ホホホホホ!」」」


「な、なんかスゴく盛り上がってる。良い事だけど」

「気にすんな。クラスメイト達はいつもあんな感じだろ?」

「そう言えばそうだね」


 盛り上がってきたところでチーズとトマトソースを使った切り分ける生地を持ち出し、シチューやチキン。様々な料理がパーティー会場に運ばれた。

 クラスメイトのみんなや、先輩達の同級生も後から来て人数が多くなっちゃったから外までパーティーは続いている。

 私のお屋敷は森の中にあるお家。なのでご近所さんに騒音で迷惑を掛けるとかも無く、目一杯騒げるんだー!


「冷え込む季節だけど、みんなが居ると暖かいね~」

「そうだなー。ま、それでも寒い物は寒いけど!」

「体感温度は上がってるよ!」

「心もそうだし、人数が多いから物理的にもな!」


 室内会場も良いけど、せっかく外にも装飾が施されたんだしと私とボルカちゃんはそちらにもおもむいた。

 お庭にも沢山の人が居て賑やか。静かな空間も好きだけど、賑やかな場所も良いよねー!


「やっぱ骨付き肉は美味いな~」

「いつの間に……と言うか豪快に食べるね」

「こう言うのはガッツリいってこそだ! “魔専アステリア女学院”じゃある程度はおしとやかに食べなくちゃならないしな!」

「ふふ、ボルカちゃんらしい」


 チキンを持ってきたボルカちゃんはそれに噛み付いて食い千切る。

 ホントに美味しそうに食べるね。見てて元気になる感じの食べっぷり。

 私も料理を持ってきてボルカちゃんと食べる。手作りの物は多いけど、当然使用人さん達も作っていた。人数が多いからね。どっちもとても美味しい!


「見ろ、チーズが伸びるぜー!」

「でも寒さですぐ固くなっちゃう」

「あ、ヤベ。早く食わなきゃ!」


 切り分けた生地から伸びるチーズを見て楽しむボルカちゃんだけど、寒さによって冷めやすくなったり固まりやすくなっているのでササッと食べる。

 複数枚に切り分けてあるタイプだから私も美味しく頂いた。


「っしゃ、次は室内でケーキ食いながらプレゼント交換だ!」

「別に食べながらじゃなくても良いと思うんだけど……」

「まーまー、行こーぜ!」

「わわ、ボルカちゃん!」


 ボルカちゃんに腕を引かれて室内へ。

 相変わらずの賑わいを見せる会場ではエメちゃんやレモンさんも馴染んでいて楽しそうな雰囲気が醸し出されていた。

 会場の料理は減りつつあるけど、すぐに使用人さん達が追加。ただ増やすだけじゃなくて、減り具合や食べるペースから大凡おおよその配分を割り出して適切な量を的確に選出している。パーティー終了時点には丁度無くなる計算。流石の腕前だね!

 室内でも目一杯楽しんだところで、プレゼント交換を執り行う事にした。


「そ、それでは、持ち寄せてきたプレゼントの交換をしたいと思ぃますっ!」

「声が裏返ってんぞー」

「「「わあああ!」」」


 プレゼント交換。私のお家というのもあって司会進行は私が努める事になった。

 特に大きな事をする必要は無いから大丈夫とはボルカちゃんに言われたけど、それでも緊張はしちゃう。


「えーと、取り敢えず始めましょう!」


 私の言葉と同時にプレゼントが回される。ちゃんと進行役の私も参加するよ!

 でも人数の多さはそれなり。二つのクラス分と先輩達にその同級生、エメちゃんにレモンさん。かなりの人数。

 だけど自分達の手に回り、プレゼントが開封された。


「わあ、ネックレス……」

「お、ブローチ!」

「髪飾りですわ!」

「イヤリングね」


 私が貰ったのは白い真珠のネックレス。ボルカちゃんが青いブローチで、ルーチェちゃんは紫の髪飾り。ウラノちゃんはダイヤモンドのイヤリングだった。

 流石はお嬢様学校。全部が全部、本物の宝石からなるアクセサリーだね。

 因みにルミエル先輩とイェラ先輩の分を含め、プレゼントは二つ余っている。

 先輩達が来るかは分からず、来てもプレゼントとか用意出来ていない可能性もあるので私とボルカちゃんは贈り物を一つ余分に準備したんだけど、見事にその二つが余ったね~。誰も悲しい思いをしないからそれが一番だけど、来てくれると良いな~。


「では、プレゼント交換も終えた所でケーキを分けたいと思います!」


 大きなケーキを全員分切り分けて食す。イチゴにチョコにアイスに様々なフルーツからなるケーキ。どれもとても美味しいね!

 だけど……。


「……夜も更けそうな頃合い、そろそろパーティーも切り上げたいと思います」


 とても楽しかったパーティーはルミエル先輩達が来るよりも前に終わりを迎えようとしていた。

 やっぱり忙しかったんだろうね。先輩の事を考えれば仕方無いと割り切れる。むしろそんな合間を縫ってまで来ようとしていた優しさの方がスゴいよ。

 約束……かぁ。嘘を吐いた訳じゃない。でも、やっぱり約束という単語に思考が少し霧掛かる。

 残念だけど、これでパーティーは──


「──ごめんなさい。少し遅れてしまったわ!」

「悪い。遅れた」


「……!」


 その瞬間、二つの声が聞こえてきた。

 私はそちらの方を見やり、周りからどよめきのような音が聞こえる。

 同時にみんなは息を飲み込んだ。


「「「…………っ!?」」」


「やっぱり少し遅くなり過ぎたかしら……みんな固まっちゃってるわ」

「時刻も時刻だからな。もうすぐ日が変わるぞ」


 先輩達二人はなぜ周りが静まり返ったのか分かっていない様子。しかし、それはすぐ明かされる事となった。


「ルミエル先輩よォーッ!?」

「ナイト様も居るわーッ!!」

「「「キャアアアアッ!!?」」」


「あら、私達が来る事は知らされてなかぅたのかしら?」

「レヴィア達も居るようだが、成る程。ルミの存在は確かにサプライズだ」


 弾けるような黄色い歓声が響き渡り、お屋敷が大きく揺れる。

 もはや悲鳴みたいな感じだけど、周りにはお家もないから近所迷惑にはならないね。

 それと確かに先輩達は誘った事を言ったけど、一括りであって名指しじゃなかったね。


「ティーナさん! ルミエル様達をお呼びになっていたんですの!?」

「そう言えばダイバースの先輩達がみんないらっしゃいますわね!」


「今更ー!? 私達って影薄いのかな……」

「人数が多いですから仕方無いですよぉ~」

「それもそうだな。別に目立とうともしなかったからね」


「ルミエル・セイブ・アステリア。イェラ・ミール。まさかお目に掛かるとは」

「うわわ、本物です……!」


 他のみんなや先輩達だけじゃなく、レモンさんとエメちゃんも反応を示していた。

 確かにダイバースプレイヤーで知らない人は居ない程の有名人。やってなくても名前くらいは誰でも知ってる人だもんね。こうなるのも当たり前か~。

 改めて私ってとんでもない先輩の下で活動していたんだ。なのに部活動自体に入ろうとする人はそんなに居なかった。うーん、不思議だね~。

 とにかく、主役の登場と言っても良い状況。もう終盤だけど、残りの分のパーティーも楽しんじゃおう!


「あ、それとルミエル先輩! イェラ先輩! これ、プレゼント交換の時、先輩達用に取っておいた物です!」


「あら、プレゼント。ふふ、ありがとう。嬉しいわ」

「フッ、すまないな。私達は持って来なかったが……」


「構いませんよ! とても忙しいんですから!」


 先輩達は交換用のプレゼントを持ってきて無かったみたいだけど、それは仕方無いと私達は分かってる。予想通りだよ。

 本当に大変だもんね。来てくれただけで大きな事だ。

 先輩達は口を開いた。


「しかしこのままでは君達に悪いな。こちらとしても何かはしてやりたいところだ」

「そうね。この飾り付けもそう。後輩達が頑張ったのに、何もしない訳にはいかないわ。……そうねぇ」


 何をするか。それについて悩む先輩二人。

 別にいいんだけど、後輩思いの先輩達だからこそ気が済まないみたい。

 それにつき、ルミエル先輩は提案した。


「よし。明日はきっとみんなもお休みでしょう。それでは、私達とみんなでゲームをしましょうか」


「え?」


 ──瞬間、世界は流転し、会場に居た私達はおかしな世界に転移していた。

 そう、おかしな世界。


「お菓子……?」

「だけじゃないぜ……。見ろ、城よりも大きなツリーだ!」

「ホントだ!?」


 クッキーの家。チョコレートの歩廊。アメの木。クリームの地面。周りにあるのはお菓子の世界。前方には巨大ツリーが置いてあり、先が見えない程の天辺には星の輝きがあった。

 ルミエル先輩は言葉を続ける。


「ここは私の世界。と言っても、パーティー会場を通常の数百倍にしてお菓子で再現しただけよ。周りにある物はお菓子やおもちゃ。そして前方のツリー。それが今回のゲームの要」


 ルミエル先輩が創った世界。

 数百倍のパーティー会場って……一体どれ程の費用を掛けたんだろう……。

 ううん。考えるのはそんな無粋な事じゃないよね。私達の為に先輩が用意してくれたんだ。

 それにつき、ルールを説明した。


「種目は“競争”よ。ほうき絨毯じゅうたんに馬車に、大抵の乗り物は用意したわ。対する私とイェラは素のままで妨害するの。誰か一人でも制限時間内に頂上の星を掴んだら勝利。そんな単純なルール。勿論もちろん参加は自由。どうかしら? 私達とダイバースをすると言うのは!」


「「「…………!!」」」


 この会場でダイバースをするという事。細かいルールも無く、ルミエル先輩とイェラ先輩の妨害を乗り越えて一人でも到達したら勝ちの明らかにプレイヤー側が有利なルール。

 みんなの反応はと言うと、


「ル、ルミエル先輩達とダイバース!?」

「す、スゴいです!」

「先輩達とやれるなんて歓迎です!」


「フム、のルミエル・セイブ・アステリア殿。イェラ・ミール殿と一本交える事が叶うとはな。乗らぬ手は無いぞ!」

「ルミエルさんとイェラさんとのダイバース……や、やりたい!」


 もちろんスゴくワクワクしていた。

 当たり前だよね。大スターとやれるゲーム。しかもステージもスゴく楽しそう。

 周りの様子はこうだし、私達も胸が踊っていた。


「やります! 先輩! やりたいです!」

「こんな面白そうな事やらない訳ないぜ!」

「フフン、先輩達が去ってしまって数ヶ月。鍛え抜いたわたくしの実力、ご覧に入れて差し上げますわ!」

「観戦に回るのも良さそうだけど……確かにちょっとワクワクしちゃうかも」


「ルミエル先輩、イェラ先輩との久し振りのゲーム! もっちろんやっるよー!」

「のんびり見るのも良いですけど、私もやりましょうかぁ~」

「先輩達との手合わせ……不足はないかな……!」


「ふふ、そう。それじゃ、全員が参加という事ね!」

「フッ、百人以上の対戦相手。武者震いがするな」


 不参加の人は一人も出ず、みんなでルミエル先輩、イェラ先輩と対決する事になった。

 パーティーにやって来た先輩達のプレゼント。ダイバース。それが開始される!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ