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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
124/457

第百二十四幕 パーティー準備

 ──“二学期の長期休暇・数日後”。


 辺りには様々な装飾品が置いてあり、部屋を彩り飾り付ける。

 現在、私のお屋敷にはボルカちゃん達が来ていた。

 理由は今の時期、世界的に行われるパーティーの準備をする為。“魔専アステリア女学院”に近いし広いから私の家に集まろうって魂胆だね。

 もう一つの候補はルーチェちゃんの家だったけど、それなりに距離があるから断念したの。お休みでも部活動はあるもんね~。なるべく寮近くって言うのが条件。

 何はともあれ雑談しながら作業を続ける。


「そう言えば、なんでこの季節の決まった時期に華やかなパーティーが行われるんだろうね」

「ん? そう言や知らないな。生まれた時からそうだったから受け入れちまってた」

「そう言えばそうですわね。昔から疑問に思わずしてましたわ」


 この時期。なぜか世界では今から行うようなパーティーが開催されている。その理由は分からない。

 それにつき、一番知識人であるウラノちゃんの方を見やる。視線に気付いた彼女はもみノ木に飾り付けしながら口を開く。


「諸説あるけれど、五千年くらい前、英雄の更に昔。太古や古代と言われる時代ね。その時代に女神様が人間に失望し、人々は粛清されたって授業でやったでしょ? 形はどうあれ、それによって平和な世界が創られた。残った人達は人類を絶滅寸前まで追い込んだ筈の女神様に感謝し、その日をお祝い事にしている……と言われているわ。それがこの時期なの。具体的な日数は分からないけれどね」


「へえ。絶滅寸前まで……それで感謝されるって前人類はどんだけ極悪人だったんだよ」


「だから諸説ありよ。世界最長のヴァンパイアでもその時代より前の時代からは存在していない。種族が生まれてすらいなかったって伝えられている。それよりも前に存在が確認されているエルフも女神様とは別件で一度滅んでいるって言われてるし、魔族も然り。だから証人も居なければ証明も出来ないの。この話が生まれた事すら英雄達より前の時代らしいし、今の人類は過去の人類より優れているって事をでっち上げたかったんじゃないかしら」


「ハハ、確かに過去の時代を見た人なんて居ないから話を盛り放題だ」


「そう言う事。取り敢えず、盛り上がれるイベント事が欲しかったんじゃないかしら。五千年前が人類だけじゃなくてこの世界の起源って言われているけど、それよりも前の年代と思われる石碑とかが見つかっているし、そもそもヴァンパイアがエルフや魔族より後に生まれたと言う記録もない。種族の誕生自体はほぼ同時期と思われるもの。調べれば調べる程に矛盾だらけよ」


「不思議な話だね~」


 この時期にパーティーが開かれる理由は以上の通り。

 でもウラノちゃんが推測する限り、文献とか実物と比べても矛盾だらけとの事。

 案外昔の話ってそう言う事が多いよね。

 ツリーの飾り付けを終え、部屋の方に差し掛かったウラノちゃんは言葉を続ける。


「その全ての矛盾を解消する方法があるとすれば、全ての種族と全ての景色。万物が全て同じ時期に突然現れでもしない限りは不可能。全てと言うのは発展した文明も含めて。世界五分前説とかあるけど、それが五千年前に起こらなきゃ有り得ない事態。調べれば調べるだけ馬鹿馬鹿しくなるわ」


「アハハ……バッサリ切り捨てるね……」


 呆れ半分で淡々とつづるウラノちゃん。真面目に調べてるからこそお伽噺のような出来事が正式な記録として残っている事が気掛かりみたい。時間をさかのぼりでもしない限りは分からないもんね~。

 けどま、今はパーティーが楽しめれば良いよね! 私達は飾り付けを終え、綺麗な装飾を施す事が出来た!


「我ながら良い出来映えだ。完璧に仕上げたな!」

「うん! とても可愛い!」

「流石はわたくし。自分の才能が恐ろしいですわ!」

「元々完成していた物を飾っただけでしょうに」


 私達は飾り付けが終わった部屋を眺める。

 樅ノ木にはオーナメントやモール、星を象った物や月を象った物など様々な装飾品が付けられていた。

 それらがキラキラと光、ライトアップ。まだ外は明るいけどそれでも良い雰囲気があった。

 なんでも女神様は光と闇、火に深く関わりがあるから白や黄色、暗めの色に赤い装飾品がよく使われるんだって。

 もみノ木が使われる理由は生命の輪廻を表しているとも言われていて、数千年前この近隣諸国を領地としていたお姫様はその日に産まれたとか。

 この数日は何かと行事が舞い込んで来る時期なんだね。もしかして異世界とかがあるならその世界でも誰かの誕生の日でパーティーしたり……ハハ、そんな訳無いか。


「これで準備は完了だな。誰が来るんだっけ?」

「ルミエル先輩にイェラ先輩に、レヴィア先輩やリタル先輩。メリア先輩でしょ……それとカザミさん。あとエメちゃんにレモンさん!」

「沢山来るなー。と言うか、アタシ達のクラスメイトやカザミーのクラスメイトも来るんだったな」

「そうだね。前にそう話してたから。全員って訳じゃないんだろうけどねー」


───

──


 ──“数日前”。


【なあ、今度の休み、ティーナん家でパーティーしようぜ! いつものメンバーと先輩達も誘ってさ!】

【あ、もうそんな時期だもんね~。うん、そうしよう!】


【ティーナさん。ボルカさん、何をお話しているのですか?】

【何やら楽しげな単語が聞こえましたけど】


【んあ? ああ、そろそろパーティーの時期だろ? だから知り合い誘ってパーティーやろうって話だ】

【パーティー! なるほど! では私達も参加してよろしいですか?】

【んんー。ティーナの家でやるからティーナ次第だな】

【別に構わないよー。みんなでやった方が楽しいからね!】

【ありがとうございます!】

【楽しみですね!】

【他の皆様もお誘いしましょう!】


──

───


 そんな感じ。カザミさんを誘った時も似たようなやり取りでそのクラスの人達が参加したって訳。

 前の体育祭から本当に親しくなったよね~。


「お邪魔しまーす!」

「ティーナさぁん。来ましたよぉ~」

「お邪魔します」


「あ、先輩達だ!」

「誘った中じゃ一番乗りだな。流石だぜ!」


 まず始めにメリア先輩、リタル先輩、レヴィア先輩達がやって来る。

 そう言えばボルカちゃん達以外をお家に招くのは初めてだね。なんか新鮮な感覚。

 飾り付けは終わったけど、まだやろうと思えば付けられる。それに加えてケーキとか料理とかプレゼントとか、残っている事は多いもんね。

 一先ず私達はお料理作りに取り掛かった。


「ティーナお嬢様。お品をお持ちしました」

「ありがとう。メイド長さん!」

「肉に野菜にミルクにチーズetc.色々揃えたな!」

「チキン、ケーキ、シチュー、様々な物を作れますわね!」

「人数は多いからこれでも足りるかしら」


「ティーナちゃんってやっぱりお金持ちの家だったんだねー!」

「“魔専アステリア女学院”に通っている人は大半がそうですよぉ~」

「そう言う学校だもんねー。だから一般からの特待生はスゴいんだし!」


「アタシとかッスね!」

「ドヤ顔で何を言っている。まあ否定はしないけど」


 メイド長さんが料理の材料を持ってきてこっちの作業に取り掛かる。

 本来は飾り付けも料理も使用人さん達がやるって言ってくれたんだけど、たまには私達がやるって断っておいたの! 使用人さん達は驚いていたよ!


「たまには自分で料理するのも良いですねぇ~」

「あー! リタル先輩! 焦げてます焦げてます!」

「リタルはこっちの作業をしてくれ!」


「だ、大丈夫かな……」

「ハハ、先輩達も賑やかだなー」

「私達も負けていられませんわ!」

「焦がし対決は張り合わないでね」


 のんびり屋さんなリタル先輩が火を扱うのは大変みたい。メリア先輩がフォローし、レヴィア先輩が別の作業を勧めた。

 私達は最近野外学習で料理とかをしたばかりだから手際よく進め、ドンドン並んでいく。


「来たよー! って、良い匂いー!」

「「「ティーナさーん。遊びましょう!」」」


「あ、カザミさんと他のみんなだ!」

「家主側のティーナが出迎えてくれ。あの声の数、アタシ達のクラスとカザミーのクラスの大半が押し寄せてる」

「うん! 分かった!」


 料理が並び、他の人達も続々と集まってくる。

 その人達はお手伝いしてくれたり更なる飾り付けをしてくれたり、初めて来る私の家を探検したり様々。

 別に見られて恥ずかしい物も無いし、使用人さん達が居るから危険な事も無いだろうし安心だね。

 料理のほとんどが終わり、リビングの方に行く。そこには自信満々なクラスメイト達が居た。


「ご覧なさい! 私達がした飾り付けですわ!」

「貴女達のもお綺麗でしたけど、この手の分野では負けませんよ!」


「うわあ! スゴーい!」


 私達の飾り付け。その下地はそのまま、更なる強化が施された部屋がそこにはあった。

 見れば渡り廊下の方にも装飾があり、使用人さん達に許可を得て飾ったらしい。

 するとそこにまた来客が訪れる。


「ティ、ティーナさーん? 居ますかー?」

「何をそんなに緊張している。友の自宅に来ただけではないか」

「あ、エメちゃんにレモンさん!」


 エメちゃんとレモンさんの二人。

 私は玄関近くに居たからそのまま二人を出迎えた。


「あ、ティーナさん!」

「赴いたぞ。悪いね、遅くなってしまって。今の時期は転移の魔道具も込み合っており、徒歩で来ざるを得なかった」

「そうなんだー……って、徒歩!? この国から“日の下(ヒノモト)”ってとてつもない距離なんじゃ……エメちゃんも?」

「いえ、私は自分の街から転移の魔道具で近場まで。その道中で疾風のように走ってくるレモンさんと会いました」

「そうなんだ。となると……場所が違っていても転移の魔道具が空くまでの数時間と、レモンさんが走って来るまでの数時間が本当にほぼ一緒だったんだね……」


 来て早々規格外を見せ付けるレモンさん。何時間か込み合っていたとしても走って来るよりは早い筈なのに、ほぼ同じタイミングになるなんて本当にスゴいや。来月はこんな彼女と戦う可能性があるんだね……。

 何はともあれ、これでエメちゃんとレモンさんも揃ったね。ルミエル先輩とイェラ先輩は知っての通り大忙し。今回のパーティーが終わったらすぐに年末年始の行事もあるし、大変なんだろうねぇ。

 パーティー終了直前にようやく来てもおかしくない状況。誘った時に先輩からは「先に始めてて良いわよ。絶対に間に合わせるから!」って言ってたし、開始しちゃおうか。


「それじゃあ上がってー」

「お、お邪魔します」

「お邪魔致す」

「って、レモンさん? なんで靴を脱いでるの……?」

「む? 室内に入る時は履き物を脱ぐんじゃないのか?」

「違うよー。基本的には履いたまま。寝室とか、特定の場所でのみ脱ぐ感じかな」

「成る程。“ヒノモト”とは理が違うようだ。郷に入っては郷に従えと申す。では私もそれに従おう」


 エメちゃんもレモンさんも上がる。だけとヒノモトでは靴を脱ぐんだね。国柄によるちょっとした違いを感じるよ。

 でも甘んじて受け入れてくれたし、これでルミエル先輩達以外の役者は揃ったかな。


「わ、思った以上に人が沢山……」

「ハッハッハ。賑やかで良いな!」


「あ! エルフとハーフの子!」

「それに強いお侍さん!」

「お屋敷にようこそー!」


「ここ、私の家なんだけど……」


 エメちゃんとレモンさんの事を歓迎してくれるクラスメイトのみんな。

 すっかりくつろいでくれてるね。私の家だけど、なんか嬉しい!


「わあ、耳トゲトゲ……でも柔らかい」

「エルフ族とはあまり会えませんからね~」

「ちょ、ちょっと……ツンツンしないでください……」


「こうして見るとレモンさん、体格良いね~。同じ性別とは思えない」

「そうであるか。しかし君達の学校にはイェラ殿が居るであろう。私の目標とする一人だ」

「確かにイェラ先輩もしっかりしてるもんね~。スタイルも良いし!」


 二人もすぐに打ち解けたみたい。……多分。

 取り敢えず全員集合。飾り付けも料理も完成したし、パーティーの始まりだね!

 二学期の長期休み。今度はこのパーティーで思い出作りだよ!

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