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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百二十三幕 二学期の長期休暇

 ──“終業式”。


「……で、あるからして、冷え込みが強くなってくるこの季節。体調管理に気を付け、我が校の一員である自覚を持ち──」


 二学期の終業式。私達は校長先生の話を聞いていた。

 相変わらず長い話。健康管理とか学院の生徒である事についてとか、一学期の終業式とほとんど同じ内容。前にも思ったように大切なんだけど、周りの雰囲気から帰りたいオーラが漂っている。でもこの中で話し続ける胆力は流石と言わざるを得ないね。

 そんな長い話は終わり、私達は二学期の長期休暇に入った。


「よっしゃあ! これで休みだー! 遊ぼうぜー!」

「開始早々……いや、正しくは終わって早々だけど、もうそっちにシフトチェンジするんだ……」

「相変わらずですわねぇ」

「ボルカさんらしいけど」


 終業式が終わり、本格的に休みとなった今、ボルカちゃんが張り切り出した。

 いつもテンションは高めだけど、休みに入ると更に上がるみたい。く言う私も上がってるけどね!

 今日は部活動も無いし、街へ繰り出してみる事になった。


「この辺に新しいお店が出来たんだってさ。行ってみよーぜ!」

「そうなんだ。楽しみ~」


 情報通でもあるね。新しいお店って何のお店だろう。

 私、ボルカちゃん、ルーチェちゃん、ウラノちゃんのいつもの四人でそのお店に入った。


「いらっしゃい。お客様第一号、二号三号四号だね」

「やりぃ! 一番乗りから四番乗りまで独占したぜ!」

「ハハハ……四号まで言うんだ」


 私達が一番早いお客さんみたいだけど、グループなのに四号までカウントするのは初めて。ここの店主はまだ若い女性なんだね。

 そんなこんなで立ち入ったお店。売っている物からして魔道具や薬品とかを取り扱う小物店や雑貨屋みたいだね。

 お菓子とかも置かれてるよー。


「へえ。今時の魔道具から古来の物まで色々取り揃えてんなー」

「こんなの見た事無い」

「使い方も分かりませんわね~」

「フフ、中々面白いお店じゃない。センスあるわよ」


「そう言って貰えると嬉しいよ」


 興味津々に見る私達と、興奮するウラノちゃん。

 確かにウラノちゃんが好きそうな物を揃えている感じはあるや。

 私はフラッと薬品コーナーに立ち寄った。店主さんが調合して作っているみたい。


「お薬かぁ……。原材料は基本的に薬草なんだよねぇ……」

「おや、お嬢ちゃん。薬の調合とかに興味があるのかい?」

「へ? あ、はい。私、植物魔法を使えるのでこう言った物を作れるんじゃないかと思いまして」

「へえ。植物魔法。その年で珍しい魔法を使えるんだね。それならこの薬草とかどう? 疲労回復にピッタリだよ」

「疲労回復の薬草かぁ……」


 薬草とかを見ていたら店主さんが話し掛けてきた。ついでにオススメ商品の紹介。すなわちセールストーク。

 悪くないけど、今はまだ必要無いかなぁ。定期的に疲れるけどすぐに回復出来るからね。

 その思考を読み取ったのか、店主さんは商品を引き下げた。


「今は要らないみたいだね。残念。将来的には重宝されると思うけど。まだ若いものね」

「アハハ……すみません」

「いいよいいよ。これもまた商売だもん」


 ちょっと悪い気もするけど、まあそう言うこと。

 すると商品を見ていたボルカちゃん達が店主さんに話しかける。


「これくださーい。黒トカゲの詰め合わせセット!」

「私はこの本を買うわ。まだ読んだ事がない珍しい本だもの」

「おっ! お買い上げありがとー! 値段は──」


 魔力の増加に役立つ黒トカゲに本。二人らしい物だね。

 ルーチェちゃんは興味深そうではあるけど購入はしないみたい。私と同じ感じかな。


「これからも古今東西、珍品名品を取り揃えておくよ~。どうぞご贔屓ひいきに~」


「ウーッス」

「そうね。色々珍しいお店だもの」

「見てるだけで楽しいもんね~」

「それについては同感ですわ!」


 そんな感じでお店を後にする。

 不思議な感じで楽しい所だったね。

 色々取り扱っている雑貨屋らしいんだけど、主体は薬品とかそっち方面みたい。ちゃんとお医者さんや薬品の免許も持っていて、病院より設備は悪いけどちょっとした治療はしてるって言ってたよ。


「思わぬ収穫があったなー。どんくらい経営するのかは分からないけど、カフェスペースもあるらしいし今度また暇潰しに寄って行こうぜ」

「うん。店主さんも良い人っぽいから悪くないね!」

「中々に興味の引かれる場所でしたわ!」

「そうね」


 お店の感想を言いながら街中を歩く。

 街の方には特に目ぼしい物は無いかなー。季節物の装飾が増えて街全体がキラキラしているくらいかな。

 この季節の街は見てるだけで楽しい気分になるね。平和だな~。


「んでも、この辺りになると女学院生が増えてくんな~。終業式があって部活やクラブにサークルもないから当然だけど」

「何人か顔見知りの人達も居るね~。先輩達はほとんど知らないけど」

「長期休みに入って浮き足立っているんですわ」

「貴女達もその一人よ。傍から見たら私もね」


 私達も含めて制服姿のままで道行く人達もチラホラ。みんながみんな、仲の良い友達と一緒に過ごしている。

 私が“魔専アステリア女学院”に入ってからもう八ヶ月くらい経つんだね~。最初の頃の緊張はもう無いくらい。最初は一人で廊下を歩く事すら怖がってたもんね~。我ながら小心者だったよ。

 同時に、ママ達との会話も少なくなっているような気がする。お人形さんのフリをしているんだから当然と言われるとそうなんだけど、なんか変な感覚。

 それはまたでいっか。とにかく今は今を楽しもう!


「お、“ミニダイバース”で景品ゲットチャンスやってるぜ!」

「ミニダイバース……。小さな試合をして景品を貰えるって事?」

「そんなところだ。飛び入り参加自由だと。行ってみようぜー!」

「うん」

「あ、お待ちになって!」

「やれやれね」


 商店では小さなダイバースを行い、景品を貰えるゲームがあった。

 何を貰えるかは分からないけど、私達も飛び入り参加。会場は少しザワめく。


《おおっと! なんとなんと! 次の飛び入り参加はティーナ・ロスト・ルミナス! ボルカ・フレム! ルーチェ・ゴルド・シルヴィア! ウラノ・ビブロス! 最近(ちまた)を賑わせている“魔専アステリア女学院”の中等部一年生達だァーッ!》


「「「おおおっ!!」」」


 私達もすっかり有名人。元々ルミエル先輩の影響もあってダイバースは人気があるし、地元の“魔専アステリア女学院”出身かつ、代表決定戦まで勝ち上がった期待の新星を謳われる私達が目立つのも無理はないよね。

 でも羨望の眼差しで見られるのは悪くない気分かなー♪

 そんな私達の飛び入り参加で会場は沸き立ち、今回のルールが説明される。


《今回のルールはビンゴ大会ー! でもただのビンゴじゃありませんよ! 参加者達がみずからでビンゴを作って貰います!》


「アタシ達が自らで?」

「どういう事だろう?」


 ゲーム内容は単純なビンゴ。だけど自分達で作ると言うのが気掛かり。

 上手くゲームに組み込まれてるんだろうけど、実際に確かめてみなくちゃ分からないよね。


《習うより慣れよ! 百聞は一見にしかず! やってみましょう!》


 そんな感じでゲームスタート。

 商店の行う小規模なゲームだから転移で別ステージにとかではなく、簡易的な即席ステージが手作りでそこにあった。

 パネルみたいな物もあって、沢山の数字が書かれた看板が一枚どーんと置かれている。

 だけどなんか少し変な感じ。……あ、そっか。


「板が一枚しか無いんだ。ビンゴって全員で指定された数字を空ける物なんだけど」


 違和感の正体はパネルが一枚しかないという事。それに違和感があった理由は以上の通り。

 パネルについてお店を経営している司会者さんから説明される。


《今回のルールは、早い者勝ち100枚抜きビンゴォ! 数字が発表された時、あの巨大パネルに自分が魔法でもなんでもぶつけて穴を空けてください! その穴がポイントとなります! そして、ビンゴになれば当然更なるポイントが手に入るのです! ビンゴの列全てが点数となりますが、穴一つにつき5ポイント入るので沢山空ければ有利ですよー! 加え、発表される数字は一回につき十個! 一人がポイント総取りは難しいので悪しからず!》


 ルールで普通のビンゴと違うのは一回に行われる数字発表の数と穴その物が得点になるという事。

 他にもあるけど、取り敢えずは沢山穴を空ければ勝てるって訳だね!


《それではよーい、スタート!》


 司会者さんの声と共に十個の数字が発表される。それと同時にプレイヤー達は駆け出した。


「貰い!」

「光魔法の連弾は有利ですわ!」

物語ストーリー──“ガンマン”」「へいへいへーい!」

「そーれ!」


 ボルカちゃんが火球と自分自身で穴を空け、ルーチェちゃんは光球を叩き付けてポイント。ウラノちゃんも本魔法から銃使いを呼び出して撃ち抜き、私も植物魔法で穴を空ける。

 ポイントのほとんどは私達がゲット。それに会場は沸き立ち、他の参加者達の闘志に火が付く。


《次の数字は──》


 その後、次々と数字が発表。私達は四人が一列ずつビンゴとなり、全員が景品を貰う事が出来た。

 でも必要以上のポイントは取らないで置いたよ。他のお客さんの中にも欲しがってる人が居る筈だもんね!


「いやー、大量大量……って程でもないか。とにかくゲットだぜ!」

「まだ始まって一日も経ってないのに色んな収穫があったよ~」

「ですわ。しかし、夜は冷え込みますわね」

「そろそろこの辺でも雪が降るんじゃないかしら」


 すっかり暗くなった帰り道、私達は商品や景品を抱えて夜の寒い街を行く。

 綺麗なイルミネーションが輝いており、ムードがあって素敵な雰囲気。部活動はあるけど、長いお休みが始まったんだね~。


「今年もそろそろ終わりだ。今年最後に色々と思い出作ろうぜ!」

「うん! 賛成!」

「ふふん、受けて立ちますわ!」

「まあ、別にいいけど」


 前のお休みでも沢山の思い出は作ったけど、今回もそうする予定!

 私達“魔専アステリア女学院”。二学期の長期休暇が始まった。

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