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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百二十二幕 野外学習・最終日

 ──“野外学習・最終日”。


 今日は野外学習の最終日。朝いつも通りに起き、または起こされ、朝食へ。

 美味しいご飯を食べた後に昨日作った物の回収を執りおこなった。

 私の作品はこの宿屋に置かれる事になったから回収はしないけど、ウラノちゃんの陶器とか、一日置く必要があった物は今日持って帰るんだって。


「これで良し……ですわ!」

「三人は作品を寮部屋に飾るの?」

「アタシはそうするつもりだぜ。わざわざ家に帰るのも面倒だしな~」

「私は普段使いかしら」

「私のは少し歪んでいるので鑑賞物にしますわ」


 ボルカちゃんの“木彫りの仲間”。ウラノちゃんの“陶器の皿”。そしてルーチェちゃんの“ガラス細工”。

 これらはちゃんと持ち帰って寮に飾ったり、日用品として普段使いするみたい。

 私の作品は持ち帰らないからそういう物も無いね~。思い出の品がないのはちょっと残念かも。

 持って帰っても置き場が無くて困るのはそうだから仕方無いんだけどね~。


「回収したなー。では後は帰るだけだが、時間で言えばまだまだ朝。なので、帰るまで自由行動だ。学院へ帰るのは昼食を終えてから二時間後くらいになるので忘れるなよー。忘れ物も無いようにな~」


「「「分かりましたー」」」


 ここからは帰るまで自由行動となった。

 他のクラスメイトは一度宿屋に行ったり、山の方へ進んだりと色々。

 近くには広場もあるし、自然の中での過ごし方も沢山あるね。


「昼までの自由時間か。実質的な休み時間ってな訳で、どうする?」

「私は図書室で本を読んでくるわ」

「おっと、最終日くらいはアタシ達と行動しようぜビブリー!」

「ずっと行動している気がするんだけど」


 いざ自由行動と言われると何をするか悩んじゃう。ウラノちゃんは図書室へ行こうとしたけどボルカちゃんが引き止め、彼女も渋々乗ってくれたみたい。

 だけど何をするか決めた訳でもない。取り敢えず私達は散歩がてらお話をしながら近場を見て回る事にした。


「何か食い物でも買っとくかー? 今の季節にアイスは無いけど」

「食べ歩きは下品です事よ?」

「最近はそれ専用の食い物もあるから問題無ーし!」

「食い物って言葉遣いもお下品ですわ」

「むぅ、確かにそれはそうだな」


 ルーチェちゃんはあまり乗り気じゃなかったけど、この辺りにもそう言ったお店はあるので結局購入。棒付きの食べ物を頬張りながら道を行く。

 既にこの辺りでは雪も降っており、白く染まっていた。こう言うのを雪化粧って言うんだって。紅葉と雪のアクセントが素敵な景色を醸し出していた。


「雪合戦でもするか!」

「何でそうなりますの……」

「でも雪遊びは良いかもね~」

「そうかしら? 寒いだけじゃない」


 せっかく積もっているのだからと雪合戦や雪遊びを提案してみる。でも二人はそんな気分じゃないって感じ。

 雪合戦がダメならと、雪だるまとかそう言う物を作る方向に変わった。


「結局雪には触れるのね。手袋はしてるけど、それでも冷たいわ」

「アタシの炎を使えば温まるけど、雪も溶けちまうからな~。ちょっとの辛抱だ!」

「三段にするか二段にするか……」

「ルーチェちゃんはすっかり乗り気だね~」


 雪だるま“とか”なので雪のお家とか小動物とか色々作ってみる。

 小動物は簡単だね。雪をちょっと丸めて葉っぱで耳とかを再現。サクッと出来ちゃった!


「じゃーん! 動物さん達の音楽会ー!」

「お上手ですわね。植物魔法で足りない部分は補っております事ね」

「そんな感じ~!」


 色んな動物、幻獣、魔物。植物魔法でパーツや楽器を再現。中々の出来映えだね。昨日も上手くいったし私、物作り系向いてるのかも!


「ルーチェちゃんは?」

「ふふん。私は二段や三段などと言う常識の範囲で収まる淑女じゃありません事よ! 五段の雪だるまさんですわー!」

「たかーい!」


 ルーチェちゃんが作ったのは五段雪だるま。数メートルはある大きさになってるけど、よくあの高さまで作れたね~。

 身体能力を強化して重ねた感じかな。


「ボルカちゃんはー? 」

「フッ、アタシが作ったのはスノーハウスだーッ!」

「おお、雪のお家~!」


 ボルカちゃんが作り上げた物は雪からなるドーム状のお家。

 見た目は雪その物なんだけど、中に入ったら意外と暖かい。

 冬の間なら普通に暮らせそうだね~。


「ウラノちゃん!」

「私は貴女達程じゃないわよ」

「スゴい……! お城……!」

「それに塔ですわね……」

「一番気合い入ってんな~」

「本気じゃないけど凝り性だから」


 ウラノちゃんが造ったのは“日の下(ヒノモト)”で見たようなお城に五階建てくらいの塔。

 スゴいけど、この短時間でどうやってここまで仕上げたんだろう……。本魔法で職人を召喚したらやれるかな?


「ねえねえ、見てあれ!」

「ティーナさん達ですわね」

「スゴい建築……」


 周りの人達も集まってきた。

 ホントに見事な建築だもんね~。特にウラノちゃんの物が。

 でもここに私の楽団員を並べれば形になるね! アンバランスな感じもあるけど。


「雪による創作ですね~」

「私達もやりましょう!」

「汚れてしまいますわ」

「触れなければ良いじゃない!」


 私達に感化されて他のみんなも雪で色々作り出す。

 ちょっとしたお祭りみたいだね~。ふふ、楽しい。

 それから夢中で数時間。私達を呼びに来た先生は完成品を呆然と見上げる。


「一体何をしたんだ……私の生徒達は……」

「あ、先生! この辺の雪が無くなっちゃいましたよ~」

「いや、色々と凄まじいが……どうするんだこれ……」

「暖かくなったら溶けるんじゃないですかね」

「それはそうだが……」


 先生も完成度には感心しているけど、それはそれとして確かに邪魔になりそうな位置で迷惑掛けちゃうかな。

 するとそこに管理人さんがやって来た。


「おお、これは素晴らしい! そうだ! 是非とも溶けるまでの間、この山の名物にさせてくれませんか!?」

「む? いや、邪魔にならないのか? 此方こちらの管理人が良いなら構わないが」

「最近は登山をする人も減ってね! 季節が季節だから仕方無いとは言え、こう言うスポットがあれば客足も増えるかもしれない!」

「そうか。まあ別に費用も何も掛かっていないからいいが、本当に良いのか?」

「もちろん!」


 曰く、季節的に減っているお客さんを増やす為に飾らせてくれとの事。

 ここを丸々一つの雪像エリアにするみたいだね。私達的にも遊びで作った物が他の人達に褒められたら嬉しいし、断る理由は無かった。


「ありがとう。それではまた来て下さい。その時もおもてなしをしますよ!」


「ああ、来年以降も世話になるだろう。中等部一年生はな」


 帰る時間となり、管理人さんがわざわざ見送りに来てくれた。

 私達が作った物が沢山飾られる場所。繁盛したら良いね~。

 楽しかった野外学習も終わり、私達は転移の魔道具で“魔専アステリア女学院”に帰るのだった。



*****



 ──“魔専アステリア女学院”。


「到着。では此処で解散だ。部活動がある者は準備をしておくと良い。まだ上の学年では授業中だったりするので騒がしくするなよ。後に今回の活動をレポートに纏めるから考えておくように」


「「「はーい」」」


 中等部一年生、山の方に遊びに行っていた人達も含めて全員が無事に戻って来れた。

 ただの遊びじゃなくて授業の一環。なので後々レポートを作成する必要もある。これまた大変だね~。でも色んな思い出は作れたし、簡単に終わりそう!

 何はともあれ、これでこの場は解散となった。


「部活まで暇だし少し遊ぼうぜー!」

「今日はずっと遊んでいるような気がするけどねー」

「けれどこれもまた良い機会ですわ!」

「私はパス。雪遊びで疲れちゃったから部活まで休んでるわ」


 ウラノちゃんは普段から外にはあまり出ないから今回結構疲れちゃったみたい。残念だけど仕方無いね。

 なので私、ボルカちゃん、ルーチェちゃんの三人で少しの間お話ししたり見慣れた学院を見て回ったりして過ごす。すぐに部活の時間となり、先輩達と二日振りくらいに練習。

 それも終わって今日の一日も幕を下ろしていく。



 ──“魔専アステリア女学院・大浴場”。


「いや~。宿屋の風呂も趣があって良かったけど、やっぱし此処の風呂も格別だな~」

「そうだね~」


 夕飯を食べ、少しの休憩を挟んでお風呂に。

 雪遊びに部活動。それでも結構疲れるね~。授業程頭は使わないんだけど、肉体的な疲労が残っちゃう。

 でもその疲れもここのお風呂でさっぱり流れてく。一日の終わりって感じだね~。



 ──“自室”。


「ふわぁ……今日はこれくらいで良いかな……」


 レポートを纏め、出された課題も終わらせた私は一つあくびをする。

 宿題はやらなきゃだし、どちらにしても頭は使う事になっちゃったね~。でもちゃんと終わったし、うーんと伸びをしてホッと一息。

 吐いた息は白かった。


「もうこんな季節……ふふ、雪が降ったんだから当たり前だよね」


 この辺はまだだけど、そろそろ雪の季節。二学期の長期休暇も近いし、なんだったら再来月にはダイバース新人戦の代表決定戦が始まるんだ。

 レモンさんやエメちゃん、他の強敵達と当たるし、更に気合いを入れて練習に励まなきゃね。

 入れ直した所で再び眠気がやって来る。なんだかんだ今日も結構疲れちゃったみたいだね。

 レポートと課題をバッグに詰め、ひんやり冷たいベッドの中に入る。今の季節だとあるあるだねぇ。今度の休日にでも魔力をもちいた自動で温める魔道具を買おっかな……。今後も寮生活だし、自宅でも使えるから損はないよね。


「うぅ……寒い寒い。……あ、そうだ。おやすみ。ママ、ティナ、ボルカちゃん」

『ええ、おやすみなさい。ティーナ』

『おやすみー』

『アタシにはもう言ってるだろー』


 就寝の挨拶を交わし、私も眠りに就く。

 野外学習も終わったし、何度か言うようにそろそろ二学期の長期休暇に入る。休み中も部活動はあるけど、また久し振りにお家に帰っても良いかもね。またボルカちゃん達ともお出掛けしたり遊びたいな~。

 来る長期休暇を前に私は胸を踊らせる。

 ……それにしても、今日も色々あったね。雪遊びに部活動に……そんな事を考え、次第に周りの音が聞こえなくなる。今日も終わりを迎えるのだった。

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