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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百十九幕 学院祭終了・野外学習

 ──“学院祭・最終日”。


 演劇から更に少し経ち、楽しかった学院祭も最終日となった。

 いつも通り男装喫茶を行い、その日の分の仕事を終える。そして午後に他の模擬店や出店を見て回り、そろそろ放課後に差し掛かった頃合い。


「なあ、ティーナ。アタシと一緒に踊ろうぜ!」

「え? ボルカちゃんと?」

「ああ。学院祭の締めは基本的にダンスパーティーなんだ。放課後で日も暮れてきた頃合い。つまり今。この学校では恒例だけど、ティーナは初めてだろ? だから一緒に踊ろうって思ってな」

「ダンス……うん! 良いよ! ボルカちゃん!」


 どうやら学院祭ではダンスパーティーってものがあるみたい。全寮制だからこその催しって感じかな。

 とても楽しそうなそれに二つ返事でOKを出し、私はボルカちゃんと踊る事になった。

 そしてその時間もやって来る。


「ま、テキトーに音楽に合わせるだけだ。ティーナならすぐに掴めると思うぜ」

「うん。ダンスは昔からしてたから知ってるよ!」

「そりゃ頼もしいな!」


 そう、昔からママに見て貰って、お人形さん達と一緒に踊っていた。

 昔していたのにいつの間にかやめた物は多いけど、ダンスは今でもママと踊ったりしているよ!


「それ、ワン・ツー。ワン・ツー」

「よし、リズムに合わせて」

《~♪ ~♪》


 そしてBGMが掛かった。

 音楽に合わせてステップを踏み、ワン・ツー。ワン・ツー。タンタン、タタン。タン、タタン。

 クルクル回ってタン、タタン。

 お互いに手を取り合ってクルリとターン。ボルカちゃんもダンスがとても上手。私達は二人の空間に入っていく。

 私達だけじゃなく、周りのみんなも自分達だけの空間を展開。リズミカルなBGMと共に辺りは一瞬にして舞踏会へと早変わりを遂げた。


「楽しいね。ボルカちゃん♪」

「ああ。アタシのダンスについて来れるなんてホントに上手いな。ティーナ!」


 クルクルターン、タン、タタン。

 タタタン、タタン、タン、タタン。手を取り合って体を支えて華やかな会場ではみんながお花のよう。

 なんて素敵な日なのでしょう。


「フフ、みんな楽しんでるわね」

「早急に仕事を切り上げたかと思ったら……やはりこのパーティーが狙いだったか。ルミ」


「あ、先輩」

「ホントだ。でも周りは躍りに夢中で気付いていないな」

「先輩達も二人で踊るのかな?」

「だろーな。アタシ達も負けてらんないぜ!」

「うん! って、これ勝負だっけ?」


 ルミエル先輩とイェラ先輩の姿も目に入るけど、周りは気付いていないみたい。

 だけど先輩達にとっては注目を浴びない落ち着く瞬間。二人も手を取り、音楽に合わせて体を動かした。


「「「───」」」


 それからどれくらい経ったのだろう。ルミエル先輩とイェラ先輩が踊り始めてから数分後、周りの人達はダンスを止めて先輩達に魅入っていた。斯く言う私達も。

 いつの間にか舞踏会は先輩二人の独壇場となり、軽やかに踊る。

 一人じゃないから独壇場とは違うのかな? でもそうとしか形容出来ない動き。周りの目など気にせず踊り、いつもは騒がしくなるのにそれすら起こらない。

 BGMはまず鳴り響き、数分を経て停止した。その瞬間にみんなの脳裏には、“嗚呼、この瞬間がずっと続けば良いのにな”……ってきっと浮かんだよね。


「フフ、楽しかったわ♪」

「いつの間にか私達だけの舞台となってしまっていたがな。まあいい。食事にでもありつくとしようか」

「貴女も貴女で相変わらずね。イェラ」


 ダンスが終わり、半数以上の人々は余韻に浸る。そして誰も二人の邪魔はしないように入り込まず、遠方から羨望や憧れ。様々な感情で眺めていた。

 結構マナーは良いのかな? こう言う場だと他の人達はワッと集まったりしないんだもんね。

 その後に食事やお話を楽しんだところで宴もたけなわ。楽しかった学院祭は終わりを迎え、今日と言う日が幕を下ろす。

 今日もホントに素敵な一日だったね。そんな日がいつまでも続けばいいなと心から思う私だった。



*****



 ──“数日後”。


 楽しかった学院祭から少し経ち、そろそろ二学期の長期休暇に入るだろうなという頃合い。私達の教室では休暇前のとある実習について話し合っていた。


「もうすぐ長期休暇に入るが、その前に野外学習としての合宿がある。一時的に“魔専アステリア女学院”を離れての活動とする為、それに伴った注意事項や荷物等々。色んな事を話していくぞー」


「「「はーい」」」


 それは合宿についての事柄。

 “魔専アステリア女学院”では中等部一年生の時は野外合宿。二年生になったら人間の国以外の他国への訪問学習、三年生には修学旅行。

 高等部でも一年生、二年生、三年生に伴い、各学年ごとに定められた様々な学習活動があるんだって。

 今はまだ中等部の一年生だから野外合宿だけだけど、各種分野に幅広く活動するからこそ後にあらゆる分野で活躍する生徒が出てくるらしいよ。


「まあ、率直に言えば合宿に行く。必要な物は○○。忘れるなよー……ってだけだからな。詳細を話すつもりで長引かせて授業終了までの時間を稼ぐだけだ」


「先生ー。せめてその気持ちは言葉に出さない方が良いと思いまーす」


「どうせ薄々感付いているんだろー。そんじゃま、色々と決めるとしよう」


 相変わらずな先生と生徒の関係。そんなこんなで合宿についての注意事項などが話される。


「まずは合宿場所だ。ここから数キロくらい行った先にある山が拠点となる。それでいて期間は二泊三日。着替えとかは持って行った方が良いが、山にも転移の魔道具はあるから忘れ物をしてもまあなんとかなるだろう。注意事項は危険な動物や不審者。あと単純に環境だな。足場は悪く、治癒の魔法や魔術が使える人が必ず居る訳でもないから十分に気を付けるように」


「「「はーい!」」」


 山には危険がいっぱい。前の長期休暇で登山をした時は問題無かったけど、万が一があるので十分に注意しなきゃね。

 着替えとかをすぐに取りに戻れるのは助かるかな。必要な時以外学校に戻る事は出来ないけど、最悪の事態は最低限回避出来るようになっている。

 それから細かい説明が入り、消灯時間とかお風呂の時間。宿泊所での過ごし方とかも言われた。


「そんなところだ。他に過ごし方についての質問とかあるかー? 無いなら合宿のしおりを渡して詳しく話すぞ」


「ありませーん」


「そうか。ではこのしおりだが、今話した内容と大まかなスケジュール。起床時間や夕食の時間などが書かれている。くれぐれも無くさないように」


「「「はーい!」」」

「それではページごとに紹介していく。まずは──」


 それからしおりの詳細。その他にも色々と説明が入り、時間は過ぎて授業終了の時刻となった。


「これまで。カバンに入れたり見直したり各々(おのおの)で確認するように」


「起立、礼、着説」


 これで今日の授業は終了。

 いつも通り部活動ヘ向かい、長期休暇明けの代表決定戦に向けて練習練習!

 ホントに二学期は色んな行事が目白押しだね。そんな二学期ももうすぐ終わり、長期休暇へ差し掛かる。

 その前の合宿も満喫しちゃおう!



*****



 ──“合宿日”。


 少しだけ日が経ち、合宿の日になった。

 中等部の一年生は全員が転移の魔道具前に集まり、荷物を抱えてそれぞれ担当の先生に同行する。

 そのままクラスごとに転移し、目的地の山へと到達した。

 ここまではサクッと行けちゃうね!


「それでは大きな荷物を置いたら外に集まるように。登山をするぞ」

「「「はーい」」」


 初日からいきなり登山。野外学習の目的は自然に触れて感性を高めたり物を作って創造性を養ったり、仲間達と協力して協調性を培うのが目的。

 でもその辺はもう問題無いね。ボルカちゃん達とはダイバースや前の休みの登山を踏まえて親睦は深まっているもん。

 クラスメイトのみんなとも、仲良しって段階に来ているのかは分からないけど、多少は深まっている筈だから大丈夫だと思う!

 そう考え、登山を開始した。


「一緒に登ろうぜ! ティーナ!」

「うん! ボルカちゃん!」


 そしてそれについてボルカちゃんが誘ってくれるけど、彼女の人気の割に他の人達からお誘いはないみたい。

 でもその理由は知ってるよ。初めて一緒に山を登った時、ボルカちゃんの身体能力が高過ぎるから行動出来る人が少ないって言ってたもんね!

 ウラノちゃんやルーチェちゃんも誘ってみたけど、彼女達は自分のペースで登るらしく、私達は先行して進む事にした。

 先頭とかは関係無く、最前線と後方を先生達がフォローする陣形で基本は生徒達に合わせるんだって。ちゃんと考えてるよね~。


「よっしゃ。この山は低いし、一番乗りで行こうぜ!」

「うん! けど、既に頂上にはほうきに乗れる先生が待ってるんじゃないかな? 楽するとかじゃなくて安全の為に」

「あ、それもそうだな。んじゃ、生徒では一番乗りだ!」

「オッケー!」


 魔力で身体能力を強化し、ボルカちゃんの後を追う形で山を登る。

 山を使った鍛練はよくしてるし、疲れない登り方もボルカちゃんに教わったからちゃんと付いて行ける。


「お、小川があるぜ!」

「ホントだ! でも今の季節だとちょっと寒いね」

「だなー。流石に今回は足を入れたりしなくていっか」


 サラサラと山頂から流れる河川を見、


「アーアアー!」

「待ってよボルカちゃーん!」


「あの子達……あんなルートを進んでいるの……?」

「ボルカさんにティーナちゃんだね……」


 前の方に居るクラスメイトに見られつつ、ツタを使って近道したり、


「お、花畑!」

「キレイ……」


 道中で色鮮やかなお花畑を見、


「もうすぐだぞー!」

「うん!」


 更にドンドン進んで行く。

 そしてそんな風に楽しんだ道中後、私達は頂上へと到着した。


「着いたー!(生徒では)一番乗りー!」

「やっほー!」


「お、早いな~。魔力による身体能力強化は使用OKだが、それにしても迅速だ」


 山の景色を見、澄んだ空気を感じる。

 季節が変わり、山の木々も赤や黄色に衣替えをしてとても綺麗だった。

 これが初日の登山。野外学習の合宿。この二泊三日も楽しむよ!

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