表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
114/457

第百十四幕 様々な試合

 一回戦が終わり、私は“魔専アステリア女学院”の控え室に来た。

 そこでぐでーんと倒れ伏せ、大きく息を吐く。


「はぁ……何とか勝てた……」

「勝っておいて辛気臭い顔ね」

「だってスゴく疲れたんだもん……傷は回復魔法で治ったけど、精神的にもね~」

「ハハ、分かるぜ。仲間と戦うのって結構大変だよな~。勝負自体は楽しいんだけど、全部知ってるからより集中しなきゃならないし、ティーナの場合はあまり仲間とは戦いたくないって感じだもんな」

「うん。そんなところ」

「全く……ティーナさんらしいけど」


 チームメイト同士の試合後。それでも私とウラノちゃんは仲が悪い訳じゃないから同室に居る。

 ボルカちゃんも順調に勝ち上がったみたいだね。

 でもまだまだ二回戦とかあるから頑張らないと。特に個人戦の初日は試合数が多いからね!


「ま、貴女が勝ったんだもの。私は別に優勝が目的でも無かったし、このまま貴女とボルカさんで順調に勝ち上がって行きなさい」


「そっか。確かにウラノちゃんって優勝とかには興味無いもんね。うん。頑張るよ!」


 そんな感じで会話に一段落。後からルーチェちゃんやメリア先輩も差し入れを持って控え室にやって来た。

 個人戦では二人は観客席に居るからね。あまりお話は出来ないんだ。


《それでは、個人戦、二回戦!》

「あ、始まるみたい」

「んじゃ、行ってくるぜ!」


「頑張ってねー!」

「行って下さいませ!」

「さっき言った通りよ」


 三人に見送られ、二回戦の会場へ。

 今回も勝利するよ!



 ──“二回戦・マモン退治”。


 始まった二回戦は“マモン”を倒すゲーム。

 神話には同名の悪魔が居るけどそれじゃなくて、“魔力の物の怪(マジカルモンスター)”で略して“マモン”。

 ものって言うのはヒノモトでの魔物の総称だね。単純に主催者が魔力で生み出したモンスターを対戦相手より先に倒せば勝ちのゲーム。

 だから私は魔力を込めた。


『───』

「これでおしまい!」


 植物で全身を覆い、茨の棘の要領で貫く。

 コートの内側にトゲを生やしてズダズダにした感じ。絵面的にも対人戦では使えないね。

 それによってマモンの魔力は一気に消え去り、そのまま討伐。私は二回戦も突破した。

 もちろんボルカちゃんも突破したみたいだよ!

 次は三回戦!



 ──“三回戦・宝探し”。


 次の試合は宝探し。ステージに隠されたお宝を見つけるゲーム。

 やった事はあるよね。こういう時は宝の地図を見て、ティナと感覚共有した後に空から大まかな地形を把握。

 記されたヒントを考え、お宝の場所を特定する。つまり場所は……!


「これだーっ!」


 山の奥地を探り、樹で穴を掘ってお宝を発見!

 これも早い者勝ちのルールだから私の勝ちだね!

 Bブロックでは別のルールでボルカちゃんが勝ち進み、私とボルカちゃんはまたクリアした!


「やったな。ティーナ!」

「うん! ボルカちゃん!」


 これで初日は終わり。私とボルカちゃんは互いに勝ち進んだ事を称えてハイタッチ。

 ルーチェちゃん達もやって来る。


「ふふん、流石ですわ。お二人とも!」

「おめでとー!」

「どれも簡単なルールね。貴女達なら余裕を持ってクリアするのは当然だわ」


「ありがとー! みんなー!」

「へへん。ま、ビブリーの言うように簡単なルールだったな。と言うか多分、全編通してティーナとビブリーの試合が一番高難易度だったんじゃないのか?」

「アハハ……確かにそうかもしれないけど、他のみんなも地区大会を勝ち上がった強敵だもん。油断は出来ないよ!」

「そりゃそうだ。ハハハ。んじゃ、明日に備えて英気を養うか!」


 前述したように初日は無事突破! 今大会も会場で寝泊まりは出来るけど、やっぱり慣れた寮の方が疲れも取れるから一度学院へ帰る。

 そしてまた翌日、準々決勝と準決勝、決勝戦が行われる日になった。



 ──“都市大会・個人戦・二日目・準々決勝・シューティングゲーム”。


「見つけた!」

「わわわ!」


 準々決勝、シューティングゲーム。

 フィールドに配置され、出会った瞬間に支給された魔銃で相手を倒すゲーム。

 魔力を込めて撃つものだけど、別に自分自身の力で戦っても良いとされる。でも支給された魔銃なら一撃当てるだけでクリアになるらしく、自信がある人はそれで狙った方が良いみたい。

 そして私は絶賛狙われ中。


「だったら……!」

「……! 植物の壁……完全に防いだって訳。でもそれじゃ私の居場所は見つけられないよ!」


 当たらなければ良いのでその為の対策をする。

 これで私は動けず、今までの戦いから相手は足元とか周りをかなり警戒してるみたい。口には出してないけどね。

 え? なんで全部を樹で覆ったのに分かるのかって? ふふふ、それはね~。


「今!」

「……!? どこ……から……!?」


 彼女の死角を狙い、銃弾を撃ち込んで倒した。

 答えは簡単。既に武器を持たせたティナを回し込んでいたから。

 派手な植物ばかりでティナに攻撃手段はないって先入観が勝敗を決めたね!

 これで私は準々決勝も突破! ボルカちゃんもそうだったよ!



 ──“準決勝・点取りゲーム”。


 そして準決勝。点取りゲームのルールはあらかじめ用意された魔道具を指定場所に入れるという物。体育祭でやった陣取りゲームに似てるけど、少し違う。どちらかと言えば球技に近いかな。

 専用の部活もあるけど、今回はそれに伴った細かいルールを取っ払ったモノ。球技は危険行為が禁止だけど、ダイバースでのゲームは違うからね。

 とは言え基本的には魔道具をゴールに入れれば良いから、わざわざ相手を倒す必要は無いんだけど、倒せばその分自身の点を取るチャンスが増えるから積極的に狙うプレイヤーも居るよ。


「覚悟しろ!」

「……!」


 今の私の相手とか。

 ここまで残っている強者だけあって多種多様の魔法で仕掛けてくる。

 火球が放たれ、避けた先には土の槍。多分二年生だけど、中等部の二年生でも複数のエレメントを扱うのは実力者の証。

 だからここは容赦しない! 既に時間も残り僅かだからね!


「“樹木魔人”!」

『…………』


「ゴーレム……とは違うみたいだ」


 樹から生み出した魔人。集まった植物がそのまま体の一部になり、一気に集って振り下ろす。


「この大きさ……森が落ちてくる……比喩された通りだ。“ファイアランス”!」


 振り下ろした巨腕に向けて炎の槍が放たれ、腕は燃え落ちて消え去る。でも自然の数だけ存在する腕。即座に再生し、一気に相手を飲み込んだ。


「……いや違う……これは……!」


 巨腕はそのまま植物の再生する檻となり、相手を閉じ込めた。

 そう、これが狙い。倒さなくても行動不能にすれば一方的に点を取れる!


「“ファイアランス”! “グランドスピア”! くそっ! 破壊した側から再生する! 地面の底まで張り巡らされてる……!」


 さながら鳥さんのお家。常に再生する檻を前に成す術無く、私は魔道具をゴールへ入れて勝利した。

 やった! これで準決勝も突破! ボルカちゃんも無事に勝利してたし、残るはあと一試合!



 ──“決勝戦”。


 決勝は一回戦と同様、シンプルな戦闘。

 色々なゲームがあるけど、一番単純で分かりやすい魔法の使い方を見極めるには直接戦うのが手っ取り早いんだろうね~。

 私は喧嘩はしたくないし、戦いって言うのも試合形式でしか知らないけど、魔法の応酬が判断しやすいって言うのは分かるよ。


「やはり来たか。ティーナ・ロスト・ルミナス。映像伝達の魔道具でその暴れっぷりはよく見てた。だが、私が勝ァつ!」


「……っ」


 スゴい気合い……。今回の対戦相手の人。

 都市大会の決勝戦にまで残った人だもんね。気合いも強さも大きい筈だよ。

 でもだからと言って負ける気は更々無いよ!


「いきなり行くぞ! “魔電砲”!」

「……!? 電気……!?」


 対戦相手はどうやら雷魔法の使い手みたい。

 水魔法と風魔法が主体の混合魔法。高速で放たれ、掠っただけで意識を失い兼ねない大魔法。

 既に周りへ植物を張り巡らせていたから直撃は避けたけど、守った樹が焦げちゃった。


「いつの間に張っていたんだ。仕方無い。戦闘の基本は近接戦にあり。行くぞ。“雷剣”! そして“雷体強化”!」


「体から電気を発してる……」


「フフフ、驚くが良い。私は神(鳴り)に選ばれし最強の存在だ! 最強の雷闇魔法、ブラックナイトシャドームーンサンダークラッシュの餌食となるがいい!」

「え? ブラックナイト……そ、そんな魔法があるんですか!?」

「無い! だが、いずれは黒く染まり、全てを焼き尽くす雷害となろう!」

「全てを焼き尽くす……とてつもない高温の雷なんですね」

「さあな。それも知らん!」

「え? という事は全部空想で話してたんですか……? 一体何の為に……ブラフだとしたら明かす必要がありませんし……何が狙いですか!?」

「え? な、何がって言われても……私の雷魔法にビビったらそれで良い!」

「つまり威嚇という事ですね?」

「えーと……もういい! とにかくやるぞ!」

「ええっ!?」


 質問していたらスゴい速度で私に迫って来た。

 何か気に障る事しちゃったのかな……無自覚でそう言う事してる可能性もあるもんね……。


「食らえ私の地獄の炎を!」

「雷じゃないんですか!?」

「あ、これは炎魔法が覚醒した時のセリフだ……えーと、神の怒りを!」

「どっちー!?」


 高速で迫り、雷の剣が振り抜かれる。

 反応出来ない程の速度だけど、向こうも制御し切れてないみたい。

 速度だけなら同じ雷魔法のエメちゃんよりも速いけど、その分操作が難しいんだね。


「“暗黒雷鳴超次元斬”!」

「……!?」


 次元……そのレベルの切れ味を誇っているの!?

 複数の樹でガードを試みるけど、これじゃ意味が……。


「……あれ? 全部は切れてない……次元ごと切り裂くとかじゃないんだ……」

「ええーい! 黙れ! いずれはもっとスゴい力を使う予定なのだ! 私は神に選ばれし勇者なのだからな!」

「勇者……あ! かつての英雄よりも前の神話ですね!」

「いや、どちらかと言えば闇の力とか魔王が好きだな」

「発言が矛盾してる……」

「だ、だまらっしゃい!」

「なんで怒るの~!?」


 色んな意味で調子が狂う……けど、相手も自分の動きを捉えられないならやり方はある。

 スゴく速くて一撃でも食らったらアウトだけど、狙いが覚束無いなら!


「“プラントラップ”!」

「……! 樹……いや、神の身でありながら神をもはばむ神樹か……!」

「そ、そんな大層な物じゃありませんよ!」


 よく分からない設定が付け加えられたけど、阻むという意味なら正しい。

 基本的に直線的にしか攻める事が出来ず、必ず私の近くに来るのなら……!


「そこです!」

「……! 地獄に垂らされし蜘蛛の糸。それは救いではなく破滅をもたらしたと言う。それか!」

「違います!」


 本当になんなのこの人……本人は至って真面目みたいだけど、発言がちんぷんかんぷん。一周回って怖い……。

 もう早く終わらせちゃおう!


「貴女を捉えたので、トドメです!」

「なんと……フフ、山をも操り、武器とする。豊穣の女神が居るのであれば君かもしれないな」

「なんの事ですか!?」


 訳が分からない。なので上空に森を作り、それを一点に凝縮させる。

 ルミエル先輩には防がれたけど、今回は……!


「“自然の恵み(フォレストフォール)”!」

「だが、我がいかづちは大地を裂き、山をも砕──」


 雷鳴轟き、降下させた森に当てる。

 轟音と光がほとばしり、雷を押し返しながら頭上に落ちた。


「が……!」

「終わりです!」


 それによって意識を失い、押し潰される直前に転移。私も会場へと戻っていた。


《Cブロック決勝! 勝者、ティーナ・ロスト・ルミナスゥゥゥッ!》

「「「ドワアアアアアァァァァァァッッ!!!」」」


 司会者さんの声と共に響き渡る歓声。

 や、やった! これで私は決勝戦も勝利した! ボルカちゃんと一緒に代表決定戦に行けるよ!

 あ、私の対戦相手も多分来るんだよね……。濃い人だったなぁ……。

 何はともあれ、Cブロックは見事私が優勝を収めるのだった。



*****



「おめでとうございますわ! ボルカさんにティーナさん!」

「おめでとー!」

「おめでとね」


「ありがとー!」

「へへ、これでアタシ達は代表決定戦の切符を掴んだって訳だ」


 私達を祝福してくれるルーチェちゃんにメリア先輩にウラノちゃん。

 私とボルカちゃんもまたハイタッチし、お互いに笑い合う。

 するとそこに声が掛かった。


「あ、えーと……ティーナさんにボルカさん……おめでとうございます……!」

「ん? あ、エメちゃん! どこに居たのー!? 探しても見つからなかったから~! エメちゃんもAブロックで優勝したんだよね!」

「は、はい! 優勝しました! これで私も初めての代表決定戦に進出できます!」


 声の主はエルフと人間のハーフであるエメ・フェアリちゃん。って、知ってる仲だよね。

 そう、エメちゃんがAブロックに居た事は知ってたんだけど、この人混みで見つからなくて……ようやく会えたって感じ。ホントだったら初日の三回戦突破も一緒に喜びたかったんだよ~。

 そんなエメちゃんは一足早くにAブロックを制していた。これで残っていた私達のお友達は晴れて全員が代表決定戦出場だね!


「代表決定戦と代表戦は約半年後……大体五ヶ月後だ。みんなで勝とうぜ!」

「うん!」

「はい! ……って、代表戦に行ける人は限られてるんですけど……」

「大丈夫だよ! きっと! 私達ならね!」

「その自信は何処から……」


 代表決定戦にはレモンさんも出てくるよね。だけど代表戦は“人間の国”としての代表だから本選へ行ける人数は多い方。

 だから初戦で知り合いと当たらない事が一番大事だね! そしたら行けるかもしれない可能性が少し高まるもん!


「そうだ。これからどこか行くけど、エメも来るか? チームメイトも連れてさ」

「え? い、いいんですか……?」

「当たり前だろー? 既に一緒に遊んだ仲だしな!」

「はい! それでは喜んで!」


 代表決定戦まではまだ時間もあるし、これから夕御飯も兼ねたちょっとした打ち上げの予定。それにエメちゃんも誘い、みんなで行く事になった。

 ふふ、楽しみ~。エメちゃんのチームでは彼女しか代表決定戦まで勝ち残れなかったんだって。なんだかんだ私達も私とボルカちゃんだけだし、やっぱり厳しい戦いだったね。……あれ? よく考えたら全員仲間同士で戦って負けちゃってる……もしかして“魔専アステリア女学院”全体でくじ運が悪いのかな……。

 ううん。今はそんなネガティブな事を考えちゃダメダメ。前を向かなきゃ!


「それじゃ行こっか! お店の方は……」

「無論、わたくしが手配済みですわ!」

「さ、流石のルーチェちゃん……」


 そんな感じでルーチェちゃんの手回しは早い。また良いお店を予約したんだろうね~。こんな感じで手際が良い人が友達に居ると全部がスムーズに運ぶね!


 その後、私達は予約したお店へ。そこも高級店だったけどワイワイ楽しむ事が出来、エメちゃんのチームメイト達とも親睦を深めたりした。

 波乱に満ちたダイバース、都市大会。半年後まで少しお休みだから、特訓は続けるとして肩の荷が少しは降りるね。


 私達の新人戦。それはとても順調に進むのだった! そしてこれで新人戦は一先ずの区切りだね! 代表決定戦は五ヶ月後だよ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ