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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百六幕 vsルミエル先輩

「次は私のターンね」

「来る……!」

「ここは避けよう!」

「賛成!」


 無垢の魔力を放ち、私達は避ける判断を下して回避。私達の速度でも避けられるくらいなんて、本当に手を抜いている……というよりは試してくれているね。手自体は抜いていない。どちらかと言えば鍛えている感覚かな。

 だったらその指導に応えながら対処していくしかないよね!


「“フォレストウォール”!」

「あら、私の周りに樹の壁が。小さいわね」


 ルミエル先輩を囲うように植物を張り巡らせ、四方八方をドーム状に覆い尽くす。

 天井にだけ小さな穴が空けてあるけど、まだルミエル先輩に動く気はないと思う。だから私達は仕掛け続ける!


「“残存火炎”!」

「その場に留まる火。私を蒸し焼きにする気かしら?」


 その穴からボルカちゃんは魔術を撃ち込み、全体を火炎で覆って待機。この樹は燃えにくい材質。そこ目掛け、ミナモさんが魔力を込めていた。


「“ウィンド”!」

「成る程。そう言うこと」


 風魔法によって内部の炎を更に燃え上がらせる。

 逃げ場は無くした私達の植物魔法。そこへ炎を撃ち込み、風で煽って熱量強化。

 閉鎖空間で燃やされ続けるこれはとても大変! 私なら絶対に受けたくない!


「やるわね。ティーナさんとボルカさんはともかく、カザミさんを含めた即席のコンビネーションを成立させるなんて」


「全くの無傷……! 一応炎の中に居たんだけど……!」

「ま、ルミエル先輩だしな」

「こーなる事は大前提だよね……!」


 今まで通り魔力の軽い放出で植物も炎も風も全てを吹き飛ばされた。

 ミナモさんの言うようにこうなる事は承知の上。大抵の疑問は“ルミエル先輩だから”で解消される。

 なので既に次の準備はしている。と言うより、ルミエル先輩からも一つだけじゃなくてそれをカバーする作戦。それを更にカバーしてそれもカバーする……要するに二重三重の作戦は立てておくように教えられているからね!

 その教えはちゃんと実行するよ。


「えい!」

「あら、手足にツタが絡まってしまったわね。地面を移動する小さな魔力の気配は掴んでいたけれど、単純に拘束するのが狙いかしら」

「読まれてた!?」


 気付かれないように小さな魔力で操っていたんだけど、それすら看破されちゃったら最早もはや成す術無し。

 魔法に魔術。魔力を使う魔導全般は大なり小なり関係無く分かっちゃうんだね。スゴい感性。

 そしてその上で避けなかったのは、手足が絡め取られただけじゃ何の支障もきたさないって事の証明だよね。実際そうだから困っちゃう……。


「何にせよ、自由は利かない筈! だったら今のうちにけしかける!」

「簡単に脱出されちゃうと思うけど、しょーがないよね!」


 そんなルミエル先輩へボルカちゃんは炎剣を突き出し、ミナモさんは風の塊を作り出して放出した。

 ボルカちゃんの炎は風の塊によって更に燃え広がり、ルミエル先輩は手足を拘束されたまま弾き飛ばした。


「……っ。マジで薄い単なる魔力なのにこの威力かよ……!」

「遠距離でも近距離でも攻撃が通じないなんて……!」

「そんなのあり~!?」


 並大抵、何なら並み以上の攻撃も先輩には通じない。確かに代表戦でも大した負傷はしてなかったもんね……。代表レベルは無い私達じゃ掠り傷を付ける事すら叶わない……!

 何ならまだその場から動いていない……動かせていないもんね……。


「じゃ、次は私のターンね。そろそろ正面から受け止められるかしら?」

「多分無理です!」

「あら、潔いわね」


 てのひらから魔力球を撃ち出す。

 さっきから魔力の球か薄めた魔力の衝撃波しか使ってない……。私達としては陣地が奪われる事無く足止め出来ているから好都合だけど、残り時間はまだまだあるから単純な魔力放出だけでも危ない。

 何より、まだ低く見積もられている事が悔しい~! だったらちょっとは焦らせなきゃ! まずは魔力球への対応から!


「受け止めずとも……“反射樹網”!」

「あら。魔力で強化し、何重にも編み込んだ樹でお返ししたのね」


 魔力球を樹からなるネットで受け止め、少し拮抗。力を加え、弾き飛ばすようにカウンターを放つ。

 魔力はそのままルミエル先輩の元に向かい、


「やるじゃない♪」


 片手で薙ぎ払うように弾き飛ばされた。

 私達が手を加えて何とか止めた魔力の塊を意図も容易く。本人の物とは言え、実力差は明白だね。

 でもそれは今に始まった事じゃない。切り替えて行こう。


「は!」

「やー!」

「粉塵に紛れて姿を隠していたのね。両手に可愛い後輩達なんて、贅沢だわ」

「「………!」」


 左右から挟み込むようなボルカちゃんとミナモさんの奇襲。けど先輩はそれも理解していたようで炎剣と風の刃を両手で防いだ。

 二人は武器を離し、正面から私達の植物魔法による大木が突撃。先輩は片手をかざし、樹の幹はメキメキと音を立てて散っていく。けどそれは囮。本命の大樹は上!


「あら、森が落ちてくるわね」

「凝縮しました!」

「ホント。小さくなっちゃった」


 空中に森を創り、それを一点に凝縮して降下させた。

 本物じゃないけど、再現された森の重さを受ければ流石のルミエル先輩も堪える……のかな? 山を破壊はしてるけど、直接持ち上げたりはしてないよね……多分。


「見た目はそんなに重く無さそうだけど……そうではないわよね」


 落下し、ルミエル先輩は魔力の壁を張って受け止める。次の瞬間に先輩の周りにある大地がひしゃげるように沈み、一気に地面が陥没した。

 そ、そりゃそうだよね。流石のルミエル先輩でも。うん。ちゃんとしてて安心した。

 凝縮した森。その重さは計り知れない。先輩自身は魔力で覆っているから潰れていないけど、重さ自体はのし掛かっているからこうなるのも必然。

 重量に押され、ルミエル先輩は魔力でその小さく重い森を破壊した。


「相変わらずのとてつもない魔力出力。一流の魔法使いでもこうはいかないわ。もっと鍛え上げればいつかは私に並ぶ魔法使いになるかもしれないわよ」


「いつかは……ですか」

「ええ。いつかは……おっと、少し違うわね。私は魔術師の方だもの。魔法使いではなかったわ」

「その間違いは誤差の範囲です!」


 今の時点ではまだまだ追い付けない事の証明。それがルミエル先輩の言葉の意味。

 更に言えば、“いつかは並ぶ”。つまり“追い越す”事は出来ないって遠回しに言っている。

 確かに遠くて及ぶ気がしないけど、それは今の話。いつかは私だって……!


「追い越します!」

「フフ、その意気よ」


 魔力を込め、複数のゴーレムを生成。ステージ全体に植物を張り巡らせているからそんなに沢山は作れないけど、頭数を増やす事で有利に運ばせる。

 勿論私も仕掛けるよ!


「そうね。戦いに置いて数の差は大事。どんな超人でも疲れるし消耗はするもの。でも、疲れるよりも前に全てを消されてしまったら意味は無くなってしまうわ」


「……! 一瞬で……!」

「ルミエル先輩の前じゃ数なんて大差無いか……!」

「それも承知の上だけど……!」


 ゴーレムの群れは即座に消し飛ばされちゃった。

 これがルミエル先輩の実力……と言ってもまだ半分も見せていない。いや、多分1/10すらも……。

 それよりも更にかな。先輩にとっては軽い魔力放出だもんね。よく分かるよ。私が実力不足って言うのは……だから、それは今埋める!


「自然になったゴーレムは、またそこから増やす!」

「……! 離れ、崩壊した植物を再び操作……フフ、植物に限って言えば私の魔力操作と同じような事が出来るのね。ゾクゾクしちゃう♡」


 世界は繋がっている。なのでその世界と繋がっている植物は操れる! 私なりの理論!

 その為に全方位に張ったんだもん。全ての場所、どこからでも攻め立てる事が可能!


「“植物包囲網”!」

「全方位。四方八方。縦横無尽。良いわね」


 伸ばした植物を魔力の衝撃波で破壊。今まで通りの在り方。でも何とかしなきゃ勝てない!


「まだまだ!」

「アタシ達も!」

「居ますから!」

「そうね。ちゃんと警戒しているわ」


 破壊された側から植物同士を繋ぎ合わせて再生。取り囲み、ボルカちゃん達も含めて飛び回る。

 炎剣が通り過ぎ、風の刃が魔力の壁を削っていく。


「ちょっと消耗してきたわね。絶え間無く続く攻撃で弱めている。……楽しくなってきたわ!」


「「「…………!」」」


 一際大きな衝撃波がほとばしり、私達の体と周りの瓦礫は吹き飛ばされる。

 まだ場所を移動していないけど、少し本気になったのかな。本気って言うにはまだまだ遠いけど、力は上げたと思う。


「そう言えば、ミナモさんって水魔法と風魔法が主体なんだね。何となく分かってたけど」


「そーだよ。中等部の一年生なら一、二を争うんじゃないかな。私。高レベルの両魔法使いって思ってるから」


「確かにカザミーの水魔法と風魔法は強力だな。一年生での一番の炎の使い手がアタシなら、カザミーは水か風のどっちかだ」


 ミナモさんの得意分野は水と風。思えば中等部の一年生で二つの属性を扱える時点で才能の塊だよね。

 ボルカちゃんもミナモさんも天才。そしてルミエル先輩はそれを遥かに凌駕する。私はなんだろう。珍しい人形魔法も植物魔法もママとティナの賜物。私に取り柄は無いのかな。私ってなんだろう。本当になんだろう。私は……。


「けどま、一番頼りにしてるのはティーナだ。ルミエル先輩を少しでも焦らせようぜ!」

「……!」


 ボルカちゃんの言葉で遠退いた感覚は再び戻った。

 度々こう言う事が起こる。これは一体なんなんだろう。でもお陰で気は取り戻した。そう、今はルミエル先輩の相手。ただそれだけ!


「そうだね。まずはあの場所から動かす事から始めよう……!」

「ああ、そうだな。やろうぜ!」

「二人だけの世界に入ってるけど、私もやってみせるよ!」


「意気消沈せずに奮起する。素晴らしいわ! 貴女達!」


 植物を生やし、焔が包み、無重力かのように風と水が宙を舞う。対するルミエル先輩は魔力の更なる解放。既に周りの瓦礫は無くなっており、遮蔽も何もない状態。

 まあ遮蔽物それはあんまり関係無いかな。肝心の旗はまだ塗り替えられていないし、時間稼ぎは依然としてやれている。むしろそれが本命だからゲーム全体で見れば私達の有利は変わらない。

 私達とルミエル先輩率いる高等部三年生の行う試合ゲーム。まだ先輩は全然本気じゃない。

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