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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百五幕 陣取りゲーム

《学院対抗ダイバース。次の試合は中等部一年生vs高等部三年生になります。種目は“陣取りゲーム”。準備をするので暫しお待ちください》


 発表された種目は陣取りゲーム。どちらかと言えばテーブルゲームな気がするけど、駒の役を私達でする事によって競技の役割を果たしているのかな。

 相手の陣地を多く取った方が勝ちのシンプルなルール。ルミエル先輩達相手にどこまでやれるんだろう。

 チームの人達を見、一つの疑問が浮かび上がる。


「……あれ、そう言えばルミエル先輩だけなんですね。てっきりイェラ先輩と一緒のチームかと思いました」


 それはルミエル先輩のチームにイェラ先輩が居ないという事。

 二人程の実力者ならどちらも学年代表に選ばれない方が不自然だと思ったけど。

 ルミエル先輩は質問に答えてくれた。


「フフ、それはね。有り体に言えばバランス調整の為ね。私とイェラが揃っちゃったら二人で全ての試合を勝ち進めてしまう。だからチームを選ぶ時、私とイェラを別々にして私達が誰にするかスカウトしていくのよ。同じクラスだとしてもね」


「そうだったんですか」


 至極納得の理由だった。

 確かに二人だけの時点で代表戦も優勝していたルミエル先輩とイェラ先輩。この二人がチームメイトになると勝負は歴然。

 分断しても優勝候補の筆頭だろうけど、少しはゲーム性が変わってくるもんね。少なくとも優勝確定から優勝候補まではランクダウンしてる。


《それでは始めます》

「あ、スタートするみたいですね」

「そうね。お互いに頑張りましょう♪」


 ステージの準備が終わり、私達は転移の魔道具へ。そこから移動し、舞台の上へとやって来た。



*****



「ここが今回のステージ……」

「陣取りゲームだけあってシンプルな感じだな。でも街中なのか」


 やって来たステージ、住宅街。

 普通の街中って感じだね。でもビル群とかがある少々都会な街って印象。

 手元にはいつの間にか街のマップと旗のような物が渡されていた。


「成る程なー。陣取りゲームだから、奪取地点には旗を立てて自分の陣地ってアピールをするのか。マップ内でもエリアごとに区分されてらぁ」


「マップに書かれている赤と青の色はお互いのチームカラーって事だね。旗を置いたらマップ内の色が変わる仕組みなんだ。取って取られてを繰り返して、最後に一番多くのエリアを所有してる方が勝ち。地域によってエリアの大きさもまばらだから、どれだけ大きなエリアを多く所有するかが鍵かな」


「一度旗を置いた相手から陣地を奪う事も可能みたいね。大きなエリアを奪ったら誰か一人はそこに待機して取られるのを防いだ方が良いかも」


「シンプルですけれど奥が深いですわ。と言うかこのセリフもう何度か言ったような……」


「そーかもねー。何にしても、早くに行動するのが大事なのはそうかな」


 全員が全員発言したあと、私達は行動を開始する。

 相手があのルミエル先輩だもんね。陣地を全て向こうの色に染められちゃう可能性すらあるレベル差。それを埋めるには、より多くの陣地を先に奪取しておく必要がある。

 そして私は思い付いた。


「みんな! こうしよう!」

「お、ナイスアイデア!」


 みんなにそれを説明して実行に移す。

 いつもルミエル先輩には驚かされてばかりだから、今回は私の方が先輩を驚かせて見せるよ!

 私はママに魔力を込め、先手を打つ為に行動を起こした。


───

──


「君の後輩達だが、君一人でなんとかなるんじゃないか?」

「ええ。ボルカ・フレムが居るとは言え、一度に意識を奪って陣地を塗り替えれば容易く終わるでしょう」


「ふふ、そんなに単純に終わる子達ではないわ。だってほら、見てごらんなさい」


「何が……っ!?」

「あれは……植物……!?」

「無数の植物がステージ全体に……!?」


「考えたわね。先に全てを覆ってしまおうって魂胆。ふふ、早速楽しませてくれるじゃないの♪」


──

───


 植物がステージを覆い尽くし、その一本一本にみんなの旗を渡す。

 次の瞬間、マップ内に表示された色が全て私達のチームカラーへと変化した。

 やった事は簡単。ステージ全域に植物を張り巡らせ、渡した旗を各所に突き刺しただけ。旗自体も余分に持ってるから一度全てを覆い尽くしてもまだ余裕はある。

 戦力的には圧倒的に不利だとしても、一度全ての陣地を奪ってしまえば時間を稼ぐだけで勝利する事が出来る!


「ここからは全部防衛戦になるね。なるべく大きい陣地は守るとして、各所には私が植物でゴーレムとか作って配置しておくよ!」


「もうステージ全体がティーナの植物で覆われてるから兵隊も出し放題だぜ!」


「それじゃ、二、三人で分断。それ+ティーナさんの植物兵団で先輩達を相手にする方針が良さそうね」


「最低でもルミエル先輩は止めておかなくちゃ一瞬で奪い返されてしまいますものね。他の先輩達が手強かったとしても、ティーナさんの軍隊で何とかするしかありませんわね」


「兵力を増やせるだけ十分スゴいと思うよ。それで、ルミエル先輩達と戦うチーム分けはどーするの?」


 ルミエル先輩の相手は必ず誰かがしなきゃならない。一人だけでこの圧倒的に不利な盤面を覆せるだけの力を有しているから。

 他の先輩達は、絶対に手強いのは違いないけどどんなに高く見積もってもルミエル先輩には劣る。だから沢山のゴーレム達で相手にすれば、試合終了までの時間は稼げると思う。希望的観測だけど。

 何はともあれ大事なのはチーム分け。今この瞬間にも陣地が奪い返され兼ねないからね。


「ルミエル先輩には最低でも二人。他の先輩達なら一人とティーナさんのゴーレムだけでも何とかなるかもしれないわ。私も兵隊を出せるもの」


「かもな。どう転んでも肝心なのはルミエル先輩の相手。戦力で言えばアタシは入るとして、後は誰だ?」


「流石、自信満々ですの。私達の最高戦力なのは事実ですから否定は出来ませんが。そうなるとボルカさんと……」


「「私が! ……あれ?」」


 実力。私は私の……私達の実力に自信があるから名乗り出た。

 だけど私だけじゃなくてミナモさんも挙手した。彼女も自分の実力に自信があるんだ……って思ったけど、今回のチーム決めの時も進んで名乗ったから最初からそうだったんだね。


「ハハ。まあ、あのルミエル先輩が相手だもんな。控えも含めた全員で挑んでも足りないくらいだ。それじゃ、上手い具合に対策チームを──」


「──ふふ、最大限に警戒してくれてるわね。嬉しいわ。そんなに意識されちゃうとね♪」


「「「……!」」」


 次の刹那、突如として現れたルミエル先輩の声と共に何の属性も込められていない魔力の塊が放たれ、私達の居た場所が吹き飛ばされた。

 それだけで周りに張っていた植物も破壊されちゃったし、予想通り先輩一人で戦況が一気に覆りそう……!

 そうさせない為には……!


「分断チームはこのまま! 先に行って!」

「わ、分かりましたわ!」

「気を付けるのよ……!」


 位置が位置だったから、私とボルカちゃん、ミナモさん。ルーチェちゃんとウラノちゃんの形に分断された。

 だったらとこのままこのチーム分けでルミエル先輩を相手取るしかないよね!

 先輩もそれを分かっていると思うけど、追う素振りは見せない。それも先輩のやり方だもんね。


「フフ、周りに魔力からなる植物が張り巡らされたから魔力の特定に少し時間が掛かっちゃったわね。もうある程度のチーム分けは終わっていたみたい」


「………」


 という事は私達がどんな風に行動するかは既にお見通しって訳だよね。流石の考察力。

 けど、それならルミエル先輩が飛び回って私達を相手にしない方向でも進められた筈。寧ろ勝率をより上げるにはその方が的確。わざわざここに来たって事は、私達の実力を改めて試しているって認識で良さそう。


「……そう言う事ですよね……!」

「フフ、何を考えたのかは分からないけれど、敢えてこう言おうかしら。そうよ♪」


 一気に先輩の魔力が溢れ出る。無闇に魔力を放出すると疲れちゃうし効率が悪いけど、威嚇や威圧の意味合いを込めたものだろうね。

 臨戦態勢。やる気満々。ルミエル先輩としても後輩である私達との腕試しが楽しみなのかな。それじゃあ期待に応えてみる。


「胸を借りるつもりで精進します!」

「ええ。最強を越えてみなさい」


 その言葉と同時にルミエル先輩は魔力を指先からそのまま放出。それによって周囲は抉れ、瓦礫を除けながら天の雲が割れて直進する。

 私は周りの植物をかき集めて防御体勢に入り、多重の植物+魔力による更なる強化。及びボルカちゃんとミナモさんの魔力出力によって塊を防いだ。


「結構強くいったんだけど、やるわね♪」

「今……!」

「そうだな!」

「援護は任せて!」


 植物と粉塵からボルカちゃんが飛び出し、炎の剣を構え火で加速してルミエル先輩の眼前に迫る。

 ミナモさんが文字通り追い風を吹かしてサポートし、ボルカちゃんは炎剣を掲げた。


「そらっ!」

「青い空ね」

「……っ!」


 振り下ろした炎剣は指先に込めた魔力で弾くように防ぎ、薄めた魔力を体外へ放出。衝撃波となってボルカちゃんの体を吹き飛ばした。

 やっぱりとてつもなく強い。今(おこな)っているのは単純な魔力の放出だけ。それだけで分かるレベルの差。


「“大樹刺突”!」

「太くて大きくて鋭利な樹。こんなので刺されたら一堪ひとたまりも無いわね」

「……!」

「でもちゃんと直撃は避けるように放っている。貴女は優しいわね。ティーナさん」


 射出した樹も片手を突き出すだけで完全に防御。これが最強の程。

 単なる魔力放出や質量だけじゃどうにもならないね。更に言えば、ルミエル先輩はまだ現れた場所から一歩も動いていない。


「これが最強……!」

「へへ、ワクワクしてきた。アタシ達って何処までやれるんだろうな!」

「そーだね。先輩と戦えるなんてとても貴重な体験!」

「二人ともスゴいね……意気消沈しないなんて。……私も呆気に取られてる暇はないよね!」


 ルミエル先輩の実力を目の当たりにし、ボルカちゃんとミナモさんは楽しそうにしている。

 私も胸を借りるって言ったし、押されている場合じゃない!

 私達とルミエル先輩達による陣取りゲーム。既に陣地は全て奪った。残りの防衛戦、ルミエル先輩の足止めに尽力を注ぐ!

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