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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第百二幕 体育祭・学院対抗ダイバース

 ──“魔専アステリア女学院・体育祭、午後の部”。


 お昼休憩も終わり、午後の部が始まろうとしていた。

 午後は学院全体で行われるダイバース。各学年で全ての最強を決める戦い……って言うのは少し大袈裟かもね。

 あくまで体育祭の一環。でも頼りになる先輩達が相手だし、不安とドキドキが連続して起こってよく分からない状態だよ~。


「結局、アタシ達Ⅰ-Ⅱ(1年2組)のメンバーはアタシとティーナ、ビブリーにルーチェで良いんだな?」


「勿論! ボルカさん達以外の適任はおりません!」

「応援してますわ!」

「あと一人入れられますけど、どうしますか?」


 私達が代表として、もう一人入れる余地がある。

 そもそもの話で、全クラスの人達がチームを組んじゃうと午後では終わらないくらいの数になっちゃうから一つの学年のⅠ組とⅡ組……みたいに複数のクラスで混合チームにして人数を減らすんだって。

 だから私達のチームに入るとしたら、一年生の別クラスの誰かになるけど……。


「フフ、それなら私が入ってやろーかァ!?」

「えーと……貴女は?」


 学年からのもう一人をどうしようかと話し合っていたら、一人が話し掛けてきた。

 誰だろう。同じ学年だから顔くらいは見覚えがあると思ったけど、クラスが違うとホントに面識が無いんだね。


「名乗り遅れたね。私は“カザミ・ミナモ”。Ⅰ-Ⅰ(1年1組)の実力者さ!」


「自分で実力者って言ってる……」

「おー、カザミーじゃん!」

「知ってるんだ。ボルカちゃん」

「まあなー。今の中等部の一年生とは、初等部の頃から一緒のクラスになる事もあったし、大体顔見知りだ」


 現れた人、カザミ・ミナモさん。

 カザミさん……ミナモさん……。ミナモさんの方がしっくり来るかな。こっち側のネームで呼ぶのはレモンさんくらいだけど。

 あれ? けどこのニュアンス、もしかして。


「もしかして、“日の下(ヒノモト)”付近出身ですか? なんとなくニュアンスがそちら寄りですので」

「そーだね。生まれはそっち。でもすぐに引っ越してこの国に来たのさ! と言うか、同年代なんだから畏まる必要は無いよ」

「そ、そうだよね。クラスメイトにもそんな感じだから私」


 たまにこう言った感じの名前の人も居るもんね。多分レヴィア先輩辺りも名前のニュアンスから向こうの遺伝子が流れてるのかも。

 他国とのハーフが居るけど、それは人間の国内でもそうなんだね。

 そんなミナモさんが参加を申し出てくれた。後ろには多分Ⅰ組の人達が。


「もしもの時の為の控えメンバーとして私達もよろしく!」

「学院対抗だからね。勝ち馬に乗るのは私達だよ!」


「そんな感じだ。どーかな?」


「アタシは別に構わないぜ。知った仲だしな!」

「私も構いませんわ! お知り合いではありますもの!」

「私はあまり他の人とは関わらなかったけど、別に否定もしないよ」

「もちろん私だって!」


 混合チームによるダイバース。メンバーは多くても困る事はないかな。負けちゃった時も控え室が賑やかなら楽しいもんね。

 反対の意見は出ず、Ⅰ組とⅡ組の参加者達は決定。このチームで他のクラスや先輩達に挑んで行くよ!


「大まかな流れで言えば最初に同学年で試合をした後、勝ち残れば先輩達との戦いだ」

「問題は無しですわ! 勝ち残り、先輩達への挑戦権を掴みましょう!」

「うん、そうだね!」

「そうするしかないものね」


 最初は同学年での試合。そこから先輩達への挑戦。何はともあれ勝ち進むだけ!

 ドキドキしてきた。体育祭、頑張ってこー!



*****



《中等部一年。種目は障害物競争です》


 今回のダイバースは体育祭にある種目を応用した物。

 行われるのは障害物競争。通常では平均台とか網とか簡易的な物を使って行う物だけど、それをダイバースとして組み込まれたらどんな障害が用意されてるのか。

 私達は私、ボルカちゃん、ルーチェちゃん、ウラノちゃんにミナモさんの五人でそのステージへと転移した。

 そのステージは広い遺跡って感じ。周りには壁があるから迷路にも近いかな。ここに様々な罠? 障害物が仕掛けられているんだね。でも意外な感じ。それは、


「大会じゃなくてもステージは用意出来るんだね。結構貸し出し自由なのかな?」

「ま、それなりの魔法使いや魔術師が何人か居れば色々作れるしな。前の迷宮脱出ゲーム時みたいに遺跡とかを借りる方法もあるし、用意するだけなら割と簡単なんだ」

「へえ~」


 ステージに使われるのは学院が借りた場所。という事は映像伝達の魔道具で見られてるって事だよね。

 恥ずかしい試合はしないように気を付けないと!


「それで、今回の障害物競争。戦略はどうする?」

「うーん、障害物競争だから……先にゴールした方が勝ちだよね。ルール的には……」


『ゲーム:“障害物競争”

・勝利条件:“相手より先にゴールに着く”

・敗北条件:“相手より後にゴールをする”


勝利報酬

・次への挑戦権

敗北対価

・無し


運営コメント

・今回は障害物競争となります。先にゴールした者の多い方が勝利。皆様頑張って下さい。』


 紙に書かれたルールは以上の通り。先にゴールするのは必須として、その人数が多い方が勝利になるみたい。だから全員で相手を足止めして誰か一人だけゴールに着くって言うのはダメだよね。

 一位、二位で1-2フィニッシュが決まれば良いけど、そんなに上手く行くかは分からない。一先ずはゴールに向かう事が最優先だね。


「戦略って戦略もないな。さっさと駆け抜けてゴールしちまおう」

「そうだね。結局はそれが一番の最適解かも」

「ゴールしない事には始まりませんものね!」

「それもそうね」

「フフ、私もその案に乗ろーか!」


 ともかく、先にゴールした方が勝ちなのは変わらない。作戦会議をしている間に先を越されたら元も子もないし、取り敢えず先に進んでから考える事にした。

 私達は魔力で身体能力を強化し、ステージを駆け抜けて行く。


「壁を破壊して正面突破とかした方が楽な気もするんだけどな~」

「それじゃ障害物競争にはならないでしょう。多分破壊した傍から再生するわよ」

「ホントだ」

「試しちゃったのね」


 ボルカちゃんが試しに壁を壊してみると、即座に再生した。

 やっぱりそれ系は付与されているんだね。正規ルートを通らなきゃゴールは出来ないみたい。そして障害物競争の性質上、正規ルートにも罠はある。


「……! 網!」

「普通のやつより強力そうだな。焼き切って突破するぞ!」


 鉄製って程じゃないけど、通常よりも強固な網が降り掛かり、ボルカちゃんは炎魔術で焼き消した。

 その先から転がってくるのは大きな玉。


「大玉転がしじゃないってのに!」

「ここは私が!」


 その玉は植物魔法で受け止め、その間に私達は更に先へ。

 今のところ障害物だけで他のチームの人は見えないね。そう言うルールなんだけど、このまま会わないなら会わないで通り過ぎたらどっちが勝つか分からないのが不安。私達の方が先に来ているって思いたいけどね。


「「「あ!」」」

「「「え?」」」


 そう思った時、明らかに別チームの人達とバッタリ出会した。

 お互いに素っ頓狂な声が漏れ、数秒フリーズ。次の瞬間に杖を構え、互いに魔力を込めていた。


「“ショット”!」

「“ファイアボール”!」


 魔力の弾丸とボルカちゃんの火球が衝突して空気を揺らす。

 ウラノちゃんは魔導書グリモワールをパラパラと開き、魔力を込めていた。


物語ストーリー──“ゴーレム”」

『ウオオオォォォォッ!』

「……っ」

「今のうちに行きましょう」

「う、うん!」


 相手の通り道にゴーレムを設置。気を取られている隙に私達は駆け抜ける。

 更に追い討ちを掛けるよう、私もママの植物魔法で防壁を作って防いだ。


「くっ……! 他のみんなが……!」

「お、また会ったな!」

「ボルカ・フレム……!」


 咄嗟だったから完全に閉じ切るよりも前に一人だけが抜け出していた。

 彼女はほうきリレーでボルカちゃんと戦った風魔法の子。同じ中等部の一年生で、とても腕の立つ人みたい。


「せめて私はゴールに行く! “風の衝撃(ウィンドインパクト)”!」

「だったら決着を付けてやるぜ! “幻影の炎(ミラージュファイア)”!」


 風の衝撃波と炎の……なんだろう。とにかく何かがぶつかってせめぎ合う。

 その隙に私達は障害物を潜り抜け、ゴール付近までへと到達した。


「一位、二位、三位でゴールすれば……!」

「勝利は確実ですわ!」

「そーだね!」

「ボルカさんは足止めしたままだけどね」


 複数の防壁によって完全に妨害した私達は障害物を乗り越え、目論み通り上位でゴール。


「……って! 何これ!?」

「白い粉ですの!?」

「最後の障害物って訳」

「そんなー!」


 直前、ブワッと全方位から避けようの無い粉が降り掛かる。全員が咳き込み、視界が悪くなる。

 次の瞬間、私達はゴールへと入る。最後の最後で障害物なんて……ゴールが決まった瞬間に校庭へ転移し、今回の試合での勝利が確定になった。

 と、とにかく勝ったから良いよね?


「……や、やった! 一回戦突破!」

「体は白く染まっちゃいましたけれどね……」

「まさか途中で粉が降り掛かるなんて……」

「勝ったのに見た目的には負けた気分……」


 全身粉まみれの私達四人。決定した瞬間に転移されたからボルカちゃんを含めて他の人達はなんともない……もうどっちが勝者か分からないよ。

 何はともあれ、一回戦は突破した。


「はあ……汚れちゃったけど勝てて良かった~」

「そうだな~。アタシはそうならなかったけど、粉まみれになるのも面白そうだからなれなくて残念だ」

「変わった観点だね……」


 ボルカちゃんはちょっと惜しそうにしている……なんで?

 取り敢えず次の試合へ。一つの試合が同時進行で行われているからお客さん以外は観戦出来ないけど、その分サクッと次に進める。さっきも言われたように一回戦は必ず同学年のもう一つのチームになるんだって。バランス調整の為とか。

 だから二回戦の相手は大抵その学年で上位の実力を誇るチームになる。

 そんな次なる相手は──


「あらあらぁ~。ティーナさん達が相手ですかぁ~」

「リ、リタル先輩……」


 中等部の三年生、リタル・セラピー先輩達のチーム。

 他の先輩達は知らないけど、一回戦を突破している時点で中等部の三年生の中では一、二の実力者。これは手強い相手になりそうだね……。


「お手柔らかに頼みますよぉ~」

「はい! こちらこそ!」

「やってやりますよ。リタル先輩!」


 私達の相手、リタル先輩。

 勝ち進めばダイバース部の先輩達とは必ずどこかで当たる。それは決定事項。その相手が今回こうなった。

 よーし、このままリタル先輩にも勝って二回戦を突破して見せるよ!

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