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胸糞の悪い女

「あなたは本当に可愛い猫ちゃんね」

「にゃあん」

「あら、お腹を見せてくれるの?珍しい」

 気位の高い私にこんなポーズをさせるなんて、オフィーリアはある意味恐ろしい。ただ今日は顔色が普段より優れないように見えたから、特別にサービスしてやっただけのこと。

 アレクサンドラは誰にも飼い慣らされたりしないし、居場所は自分自身で決める。

「お姉様、早く開けてちょうだい!」

 せっかく微睡んでいたというのに、不快な甲高い声とドアを叩く煩い音が部屋中に響く。お人好しのオフィーリアは、私を撫でる手を止めて足早に駆けていった。

「どうしたの?ヘレナ」

「どうしたのじゃないわよ、白々しい!」

 顔を見せるなりオフィーリアを怒鳴りつけながら、ずかずかと入り込んでくる。この女が姿を現した瞬間、部屋の空気が淀んだ。

 ヘレナの手には、ずたずたに引き裂かれたドレスらしき布切れが握られている。それを投げつけながら、忌々しげに顔を歪めていた。

「このドレスお気に入りだったのに、そこの馬鹿猫が爪でずたずたに引き裂いたのよ!」

 この女は、懲りずに毎日毎日何かといちゃもんをつけては、オフィーリアの物を奪っていく。ただでさえ必要最低限のドレスや宝飾品しか持っていないのに、それでもまだご不満らしい。

「どうせお姉様が命令してやらせたんでしょう!やり方が姑息なのよ!」

「ちょっと待って、ヘレナ。猫ちゃんがそんなことをするはずは」

「私の侍女が見ていたんだから!毛も付いてるし、言い逃れしたって無駄よ!」

 この女は、ただ美しい姉に嫉妬しているだけ。それに気付かれるのが嫌だから、虐げて表舞台に出さないように謀っているのだ。

 そしてそれは、実の母親も同様。継母であったなら、まだ救いはあったかもしれない。自身が腹を痛めて産んだ我が子をどうしても愛せない、哀れな親がこの世には存在する。

 オフィーリアは、両親から疎まれている。ただ自分達の理想通りに育たなかったからという、笑い種にもならないような理由で。

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