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和かに朝食を

「おはようございます、皆様。今日はとても良い朝ですわね」

 私が食堂に顔を出した瞬間、その場にいた全員が息を呑むのが分かった。それもそのはず、オフィーリアは決して家族団欒の席には呼ばれなかったら。

 長い金髪を高い位置で二つに括り、鬱陶しい前髪は自身で切り揃えた。ジュエリーボックスにはまともなリボンひとつなかったので、丁度手にしていた鋏でカーテンの裾を切って代用した。

 すかすかのクローゼットから一番地味な焦茶のドレスを選び、堂々と着てみせる。本来のオフィーリアの美しさならば、華美な装飾などなくとも十分に輝ける。

 内面の卑屈さと自信のなさが現れ、見窄らしく見えていただけ。何より家族がそれを望んでいることを彼女は知っていたから、そう振る舞っていた。

「オフィーリア、なぜ貴女がここに……」

「あら、いけませんか?お母様。私はこのデズモンド家の長女ですし、愛する家族と朝食を共にしてもなんの問題もないかと」

 風貌の変化に呆気に取られている様を見て、内心笑いが止まらない。そんな間抜けな顔をしていては、オフィーリアを美しいと認めているようなものなのに。

「お姉様ったら、なんて図々しいの⁉︎私は貴女が怖いから、一緒に食事なんて摂りたくないと言ったじゃない‼︎」

 朝からよくもそんな不快な声が出せるものだと、感心すらしてしまう。ヘレナに視線を向けると、あの夜の出来事が走馬灯のように瞼の裏に流れ始めた。

「……ふふっ」

 可哀想に。そんな感想しか浮かばない。

「い、今私を馬鹿にして笑ったわね⁉︎」

「まさか、そんな。可愛い妹を馬鹿にしたりしないわ」

 大きな音を立てて立ち上がる彼女に、私はゆっくりと近付いていく。背の高いオフィーリアが堂々と背筋を伸ばしていると、それだけで小柄なヘレナよりも目立つ。

 朝からきつい香水を振り撒き、パーティーでもないのに派手なドレスと装飾品を身に着け、これでもかと自身を飾り立てている。

 対してオフィーリアは、焦茶の地味なドレス。カーテンの切れ端で髪を結び、揃えた前髪だって所詮は素人仕事。それでも今この瞬間、周囲の視線を集めているのはこの私だと断言出来る。

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