---解放---
大聖女とやらが南の魔の領域への遠征から帰ってきたらしい。
そのため聖都は連日お祭り騒ぎだ。
表通りから離れたこの薄暗い裏通りにも喧騒が響いてくる。
私も理由は違うがうかれている。
今日があの悪魔な聖女と約束した協力する期限だからだ。
呪いの腕輪が外されたら泣いて謝るまで殴ってやりたいが、騒ぎを起こして指名手配でもされたら後々面倒なことになるし、そもそもまともに戦ったら瞬殺される。
私の目的はいとしい末弟のところに帰る事だ。
そのためには何でもするし、すべての理不尽を受け入れることをいとわない。
やっとだ、やっと呪いの腕輪が外れるのだ!
最後の仕事の成果と返却する複写の魔法具を準備し、腰の麻袋や聖都から旅立つ為の荷物を確認しながら聖女が来るのを待った。
「今日が約束の期限だ。早く外してくれ」
呪いの腕輪がはめられた右手を聖女に差し出した。
それを見た聖女はいつものように私の右手に触れて浄化魔法で呪いを打ち消す。
頭に響く呪いの声は収まっていくが、いっこうに腕輪が外れる様子はない。
「早くこれを外してくれ」
再度腕輪を外すように要求すると聖女は怪しげな笑みを浮かべた。
「駄目ですよ。まだ調査が終わっていない者たちが残っています。あと一年くらいは働いても」
聖女がふざけたことを言い始めたが、こいつが約束を守らない可能性は考慮している。
私は左手を魔石の入った麻袋に突っ込み、聖女の言葉を遮って声を上げた。
「邪悪なオーラ!!」
聖女が浄化魔法のため私に触れていた右手から魔力を直接送り込む。
表情を変えた聖女が私から離れようとしたが、私は聖女の腕を掴み魔石に蓄えていた魔力も合わせてさらに魔力を送り込んだ。
麻袋の中の数十の魔石が次々と砂のように崩れ去る。
魔石に蓄えていた魔力は元々自分の魔力ではあるが、大量の魔力が体を通り抜ける感覚に頭痛と吐き気がする。
奥歯をかみしめてそれに耐え、一滴もこぼさぬように魔力を聖女に送り込む。
ここでこいつを倒さなければ、きっと一生自由にはなれない。
最後の一つが砂になったと同時に聖女は顔を青くして片膝をついた。
「なぜ、光の属性である私が・・・」
聖女が困惑の声を上げる。
私はその顔を殴った。
属性の相性が悪くても、それを覆せるほどの魔力差があれば問題ないんだよ。
よろめいて倒れた聖女に馬乗りになり、さらに殴る。
右手で、左手で、さらに右手で。
聖女は魔力を乱されて体が思うように動かないのだろう。
「やめな」
ボコッ
「やめっ」
バキッ
聖女が手足をばたつかせて抵抗するがとても弱々しい。
任務のさいに使わずにちょろまかしておいた魔石に貯めた魔力と私自身の魔力をすべて聖女に叩きつけたが、どの程度の時間効果が維持できるかはわからない。
弱っている今のうちに抵抗する力をそいでおかねば。
何発か殴り抵抗がさらに弱まったところで聖女の利き手の関節を極めてそのまま折った。
「ぎっっっっっっ!!」
聖女が叫び声を上げたが、その声は大通りの喧騒に紛れて気づいた者などいないだろう。
私は腕輪のはめられた手を聖女に向かって差し出した。
「外せ」
「なんで、こんな、嘘よ」
聖女が弱々しい声で何かを言っている。
ボコッ!
私は殴るのを再開した。
鼻血が流れ、折れた歯が地面に転がる。
何発か殴ったとき、手にチクリとした痛みを感じた。
どうやら殴ったときに折れた歯の部分で指を切ってしまったようだ。
そういえば素手で殴り続ける必要は無かった。
崩れて砂になった魔石が入っている麻袋を腰から外してそれで殴った。
そして数発殴った後に再度腕輪がはめられた手を聖女に向かって差出す。
「外せ」
聖女の手が伸ばされ腕輪に触れるとそれは簡単に外れた。
カランと音を立てて腕輪が地面を転がった。
これで私は自由だ。
聖女がおびえた目でこちらを見ている。
私は殴るのを再開した。
ボコッ!
「なんで」
聖女のかすれた声が私の耳に届いた。
「あんたが言ってただろう。悪事を犯した者はそれに見合った罰を受けなきゃならないってさ」
しばらくすると殴っても反応がなくなった。
心臓に手を当ててみたが死んではいない。
しぶといやつだ。
私は馬乗りになっていた聖女の上から降りる。
そして念のため腕と足の骨を折ってから聖女の持ち物をあさった。
それなりのお金と換金できそうな装飾品を懐にしまう。
これは泥棒ではなく今まで働いた正当な給料だ。
その後身元がすぐにわからないように服を剥ぎ取り、下着姿の聖女を裏路地に放置してその場を立ち去った。
「運が良ければ命だけは助かるかもな」




